ロボアニメ世界に転生したので、最高に気持ち悪い謎の仮面キャラを貫くことにする。 作:聖成 家康
《ウィザード大尉……!》
アスカの喜びを聞きながら、自らを鼓舞しつつ、ウィザードは戦いに舞い戻る。
とはいえ、あの娘が最期に施してくれたのは、残念ながらその場しのぎの手当に過ぎない。
いずれガタが来る。自身にも、機体にも。
そうなる前に決着をつけなければ、今度こそ終わりであった。
スティングを放つ。
しかし、光線は撃たない。あくまで囮だ。
「あの男の戦法を使わねばならないとはな」
スティングを、半ば突撃兵の如く泳がせる。
スティングイコール全方位攻撃という先入観が、奴自身の首を絞める。
翻弄される"エレムルス"に一撃を叩き込む。
軋む関節の音が確かに響く。相手も満身創痍。武士たるもの、平等の戦いでなければ燃えぬというもの。
弾かれた一撃は、死角からの奇襲となって牙を剥く。
しかし、"エレムルス"はそれすらも防ぐ。
《死に損ないが。どこまで私の足を引っ張るつもりだ》
「ケジメと言ったはずだ。兄上」
ぶくぶく膨れ上がった戦争という産業が、兄や父を狂わせたのか。違う、兄や父がこの戦争という産業を肥えさせ、世界の中心とさせていったのだ。
逃げた自分のせい、目を背けようとした自分のせい、そう思うのは傲慢だ。だが、この世界に片隅にある悲劇的な結末の数々は、この結果である。同じ血を持つものとして、止められたはずのものとして、ケジメはつける必要がある。
《そうも私の野望が分からんか。つくづく出来の悪い弟よ。世界には圧倒的な支配者が、力が必要なのだよ》
「確かにそうだ。だが私が否定する。それは貴方ではない」
"エレムルス"の一閃が機体を掠める。
熱を帯びた飛沫が空へと散らされた。
"アマクサ"の矛先も、隻腕の付け根を突く。
弾ける稲妻と立ち昇る黒い煙。マニピュレータをやればこちらのものだ。武士道には反するが、相手も重んじぬのなら、押し付けるのはむしろ失礼というもの。
だが、油断ならないのは腸に抱えるビームカッター。
接近戦は避けねばならないが、避けている場合ではない。彼の身体が保つ保証もない以上、短期決戦で沈めなければならない。
組み立てた勝利のビジョン。
アスカとだけでは、それは実現できない。
必要なのは——もう一人、この場にいるはずのない者。
満身創痍な"エレムルス"の右脇に、光刃が突き立てられる。
背後から迫る"ウロボロス"。決死の覚悟で放った一撃が、奴が腸に抱える隠し玉を確実に穿つ。
《仮面の!》
「言わずともだ!」
動きが封じられた"エレムルス"の左脇にここぞとばかりにスティングによる一斉攻撃を放つ。
"ウロボロス"を突き飛ばし離脱するも、奴は必殺の隠し玉を完全に封じられた。
隻腕から放たれるビームを、二機は華麗に避ける。
そうして放たれた同時攻撃は、"エレムルス"の隻腕に直撃。弧を描きながら体勢を崩し吹き飛ばされる。あの巨体も、満身創痍では二機分を受け止め切るのは不可能だったらしい。
スラスターを一気に吹かす。
間合いを詰め、至近距離で一閃。
"エレムルス"のマニピュレータが弾け飛ぶ。
奴にまともな攻撃の手は残っていない。
だが、仕留めきれない。
口の中に鉄の味が滲む。
むせ返るような匂いにえづきそうになる。
「これだけのGに耐えられないとは……流石に限界か」
足を止めたのが仇となった。
"エレムルス"の放った光線が、"アマクサ"の頭部を貫いた。
砂嵐の後、コックピットが一瞬にして闇に包まれる。
たかがメインカメラをやられただけ……だが、パイロットの身体の方はもう保たない。
——頭に電流が走る。
声が聞こえた。レギオニスが伝える、彼女の声。
「……承知した。それでこそ、この世界の主人公だ!」
闇の中不敵に笑う仮面の男。
振り下ろした拳は、自爆スイッチに触れられた。
”
首を失おうと、"アマクサ"は彼の声に応えた。
紅く輝く機体。次に放たれた光線を、残像を残しながら回避。
"エレムルス"に突撃しては離脱、突撃しては離脱を繰り返す。機体を無碍にするような無駄に等しい行動のように思えた。
機体から溢れだすクレナイ粒子——否、意思を持って蠢く無数の生命が、あたり一帯に散らばり始める。
《なんだこれは……こんなもの……! この声はなんだ……!》
「分からぬか兄上。これは警告だ、争いを知らぬ者たちから、争いしか知らぬ我々への!」
《戯言を……!!》
無茶苦茶に散らばったレギオニスが、遠方の仲間からのあらゆる声をジャックし、
刹那——宇宙の遠くが、紅の煌めきを魅せた。
巨砲を構えた"アストラル"。
機体を紅で包み込みながら、赤き彗星となりて戦場に舞い降りる。
《動け、"エレムルス"! 何故動かん!》
"エレムルス"は動けなかった。それもそうだ。パイロットの操縦が無ければ動くものも動かない。
《これはボクだけじゃない、戦争で傷ついた、死んでいった人達の思いだ!》
《そんなものが、ゲイズチェイサを倒すものか……!》
何年も続いた地球と宇宙の戦争。
その最中で、死ななくていい人が何万、何十万、何百万と死んでいった。傷つくべきでない人たちが傷ついた。
災禍の中、叫び続けた者がいた。
理不尽に足掻こうとする、運命に抗おうとする者がいた。
「ゆけ、
《ここから、いなくなれぇッ———!!》
巨神に突きつけられた巨砲。
容赦という文字を知らず、その砲口からエネルギーが解き放たれた。
赤き奔流が咆哮のように宇宙を薙ぐ。
あらゆるものを、その場にあった全てを薙ぎ倒していくように、粒子の激流が流転してゆく。
赤が消えた。
そうして、宇宙の真ん中でまた赤が爆ぜる。
この爆ぜた赤が、最後の赤であると願って。
◇
「"エレムルス"撃沈……敵、戦闘継続不可能……!!」
"ハンドレッド"の張り詰めた空気がぷつりと切れた。
歓喜の声というよりは、驚愕と安堵の入り混じる、静かな声音で上書きされていく。
「残兵に注意し、彼らを回収した後速やかに本隊と合流する。そこまで気を抜くな」
「はっ!!」
と、ヨハンは命令するも彼自身も内心はすべてが終わったつもりでいた。
頭部を失いながらも、最後まで戦場に立ち続けていた"アマクサ"を、モニター越しに一瞥する。
思えば、何かが動き始めたのはあの男がこの船に乗ってきてからだと。あれを飼い慣らすのは大変だったが、最後まで船から投げ捨てずによかったと、ヨハンは今更ながらに考えていた。
「少尉、レイに伝えてほしい」
「ご自身でどうぞ、艦長」
「……そうだったな」
つい癖で、リアムにそう言いつけてしまった。
もう終わったのだ。宇宙に残り続けるどころか、軍人として生きていく必要もない。
「君はどうする、連盟の英雄」
「……それは世界が決めることです。僕の役割は、きっと世界に委ねるべきなんです。《アルカナ》——選ばれた人間である僕の役目は」
嫌味には聞こえない殊勝な言葉に、ヨハンは微笑みをこぼした。
「アスカちゃんっ! 大丈夫!?」
アルバが彼女に訴えかける。先程から、戦闘に出ていた三機とも微動だにしなかった。
《だ、誰か!! 大尉が、大尉が死んじゃう!!》
モニターに映し出されるは、泣き顔でぐしゃぐしゃになったアスカの顔。
一大事ではあったが、張り詰めていた彼女の顔がこんなふうになっているのは、一同安堵するところがあった。
《落ち着け——仮面のとアスカを乗せ、俺が戻ります》
アズチがヘルメットのひび割れをテープで塞ぎつつ応じた。今や動けるのは"ウロボロス"一機。リアムは少々複雑な心情だった。
「どうしよう……無事に帰ってこられるかな……」
「大丈夫よ」
不安に押しつぶされそうになるアルバに対し、ミラは悠然と構えていた。
「お姉ちゃん、まだ油断は——」
「私には分かるのよ。あの男はなんだかんだで生き残るの」
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その旨を良しとする!!(YES)
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私は辞退させてもらう。(NO)