ロボアニメ世界に転生したので、最高に気持ち悪い謎の仮面キャラを貫くことにする。   作:聖成 家康

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六話 失礼だと言った

 

 ミハイルに呼び出され向かったのは、艦内でも人気の少ない場所。

 〈レギオン〉のパイロットならば――と期待していたが、彼女の面持ちからして、そんな気分ではないようだった。

 

 

「ごめんなさい……こういう事するのは、あんまり良くないんだろうけど」

 

 

 サングラスを取りながら、何故だかもどかしそうにしている。

 意を決して彼の方を向いたミハイルは、予想通りのことを口にする。

 

 

「……()()()()()()、どうして使い方を知ってるの」

 

 

 案の定、彼女はそれについて尋ねてきた。

 

 ”マサムネ”との戦闘で、彼の駆る”ガーゴイル”は赤い彗星のような機動を発揮し、それのみに留まらず、出力されるビームセイヴァーの火力も上がっていた。

 

 〈フォースレヴ・システム〉――。

 セカンドシーズン、物語中盤で明らかになるゲイズチェイサに密かに導入されていた、クリムゾンリアクターの出力上限を解除するシステムの通称。

 

 だが、それを発動させるためには数多ものヒントを得ねばならない。

 出現によりファーストシーズンから張られた緻密な伏線が一気に回収される重要な要素だ。

 

 

 彼女にそういう概念がある筈ないが――知っていれば、不思議に思うのは当然である。

 

 

「フォースレヴ。〈アーク連邦〉がクリムゾンリアクター搭載型を開発した段階から、OSに組み込まれていた機能。起動用のボタンは自爆装置に偽装されていて、実際にそれを押してもリアクターが爆発するだけ」

 

 

 ひんやりとした空気が頬を撫でる。

 こちらを訝しむような目は、黒のレンズ越しでもその鋭さを容易に伺うことができた。

 

 

「運が良かったのかもしれないな」

「……あなた、()()()()()()()

 

 

 鋭い指摘に、流石のウィザードも尻込みをした。

 転生者、いわばこの世界の運命(シナリオ)を知っている彼は、彼女の知り得ないことを数多く熟知している。

 そんな説明をして、信じてもらえる訳がないが。

 

 

「未だ、そのシステムはブラックボックスなのよ? 存在自体を知らない人だって多い」

「……そうか――何か、条件のような物があるのか? それには」

「いや、私に聞かれても!! あなたが自分でやったことでしょ!?」

 

 

 ミハイルは第一印象に沿わない、えらく張った声を漏らした。

 彼女自身も、いけない、と言った感じで口を手で覆った後に、呆れるように肩を落としながらため息を吐く。

 

 

「あなたといると、調子が狂うね」

「どちらが本当の君か、今の私はそれが気になって仕方がない」

「……そういうところとか」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 セカンドシーズン第三話。

 

 主人公の保護された戦艦”ハンドレッド”は、コロニーで敵対した勢力の追撃を受けることになる。

 

 

 

《敵機接近!! 各員、第一戦闘配備!! パイロットは至急格納庫へ移動せよ!!》

 

 

 分かってはいたが、実際にその時が来ると焦燥に駆られる。

 所詮、運命を知っていようがどうしようもないのだと、彼はその時に悟った。

 

 

 パイロットスーツに着替え、格納庫に向かった彼が見たのは、誰よりも早く支度を終わらせたミハイルと、それに食いつくアスカの姿であった。

 

 

「貴女は戦闘に出せない! 民間人なのよ?!」

「ボクはあれを――〈レギオン〉を動かせる!! それに、攻めて来てるのはあいつらなんですよね!?」

「許可できない……! 貴女みたいな子を……」

 

 

 もう少しで激しい揉め合いになりそうな二人の間に、とある人物が割って入った。

 

 

「何もできない民間人がいきがるな」

 

 

 パイロットスーツに包まれた、長身で細身、緑の髪色をした青年はアスカを彼女から引き剥がし、冷徹な声音をぶつけた。

 

 突然の事で、アスカは一瞬何も言い返さなかったものの、すぐに頭へ血が昇った様子で同じように怒鳴り返した。

 

 

「何もできないだって……!? あなたに、ボクの何がわかるって言うんだ!!」

「お前はただの民間人で、小娘だ。《ラウンズ》の一員としては認められていない」

「っ……!! またボクを、女だからって……!!」

 

 

 血が沸騰しているのでは無いかと思うほど荒れ狂ったアスカは、その青年に殴りかかろうとした。

 それを見てつい、ウィザードは止めに入ってしまう。

 

 

「あ……」

 

 

 小さな拳から繰り出された渾身のパンチは、ウィザードの片手で容易に受け止められた。

 割り込まれた青年は、彼の顔を覆う仮面を見て息を呑む。

 

 

 アズチ・グレード。”ハンドレッド”のクルーにしてゲイズチェイサのパイロット。堅物で融通が利かず、主人公とよく対立関係にある、物語には必須のキャラクター。

 だがカップリングが豊富な本作で、アスカとアズチは人気で同人誌が溢れかえっており、中でも『奈良も戦国も知るもんか!!』というタイトルの本は、薄い本が分厚く感じられる名作であった。

 

 

「貴様、仮面の……」

「アズチ・グレード准尉。貴様の役目は、か弱き者をいたぶることなのか? そんなに戦いを好むのならば、私が相手になってやろう。雄々しく、猛るように()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

「は……?」

 

 

 アズチは勿論のこと、その発言に他二人も引いていた。

 

 

「何を言っている……冗談は仮面だけにしろ」

「ミスター・ウィザード、推して参る!!!!」

 

 

 そう叫びながらウィザードが、パイロットスーツのファスナーに手を掛けた。

 

 じー、という地獄の鐘のカウントダウンが鳴った途端、ミハイルが顔面蒼白で阻止してくる。

 

 

「やややややめて!! ゼッタイダメ!!」

「え……大尉、そんなシュミ……え?」

「その呼び方やめて。私まで同類みたいになるから」

 

 怒り狂っていたアスカまでも冷静に困惑する状況を作り出す。

 とても、戦う前の雰囲気とは思えなかった。

 

 

「何をしている、早くコックピットに乗らないか!!」

「え? 俺……?」

 

 

 この状況を、全部アズチに押し付けてからウィザードはコックピットに乗り込んだ。

 険悪なムードだった三人はこの状況を「あいつが悪い」と、あっという間に意気投合してからコックピットに搭乗する。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 生体電気の伝達良好。

 クレナイ粒子生産率正常。

 全武装オールグリーン。

 

 

 ――機体に特に異常は無い。

 〈フォースレヴ・システム〉発動後、機体の出力が低下していた。リアクターの出力上限を解放した代償と考えると当然のことではあったが、それが今ではきっぱり無くなっている。

 

 

「〈フォースレヴ〉の発動条件……か」

 

 

 それは、作中でもあまり描写がされていない。

 公式からの明言もされてはいたらしいが、設定などをあまり気にしない彼は、チェックを怠っていた。

 

 

 唯一作中で描写された発動条件――受信している生体電気の発信者が《体内のクレナイ粒子量が標準値以上である》――〈アルカナ〉であることだ。

 

 リアクターから生成されるクレナイ粒子には、物体を透過してくる物もある。が、そういった類のものは毒性も無いため人体に影響はないし、体内に入っても自然にどこかへ放出されていく。

 

 そのため、標準値といっても極めてゼロに近い。

 メディカルチェックが入るのだが、そこでそのゼロに近い標準値以上の数値を出した人間――それが〈アルカナ〉。

 

 だがファーストシーズン終盤で判明したその設定は、セカンドシーズンの中盤にならなければ深掘りされない。そのため、この時点で登場人物のほとんどが〈アルカナ〉と言う概念すら知らない。

 

 

 〈アルカナ〉は作中で最終的に三人になる。

 ミハイル、アスカ、そしてリアム。

 

 ただ、なぜ彼彼女らが〈アルカナ〉になれたのか、クレナイ粒子がどうして体内に残留しているのかははっきりしていない。

 

 

 この作品には、設定のみならずそういうあやふやな部分が多い。ほとんどメカのかっこよさと物語としての完成度の高さ、メッセージ性の強さで人気を保っているアニメである。

 

 

 

(戦闘後のメディカルチェックで異常は無かった……なら、何故私はあれを発動させることができた?)

 

 

 愛の告白で頭が沸騰し、何も考えずアニメの真似事でボタンを押したが、あれは本来極めて危険な行為だ。

 〈アルカナ〉でなければ、単なるリアクターを爆発させるためのスイッチなのだから。

 

 

《ウィザード機、カタパルトに接続。進路上に問題なし、整備班は所定位置から退避を》

 

 

 可愛らしい、ハキハキしたオペレーターの声が聞こえてくる。

 

 

 ウィザードはそれを聞いて、現実へと意識を集中させる。

 

 彼女と対面で話して分かったこと。それは、()()()()()()()()()()()()()()()ということだ。

 ミハイルに怪しまれるような行為は、極力控えた方が良い。

 

 

 ミスター・ウィザードは、名も戸籍も()()()()()()()()()()()()彼女のような人間に探りを入れられたら一発だ。

 

 次の戦闘であれは使わない方が良い。いや、〈フォースレヴ〉の存在が明るみに出る、アニメの中盤にあたる時期まで控えた方が賢明だろう。

 

 

 ”ガーゴイル”は武装こそ違うが、スペック上は量産機の”ヴァリアンス”と同じなのだ。

 

 うまくやるしかない。

 

 

 メインモニターが、開放されたハッチの先にある紺碧の深淵を捉えた。

 三つのランプが赤、黄、と変わり緑へと変化した瞬間、ウィザードは操縦桿を押し倒しつつペダルを踏み込んだ。

 

 双翼を模したスラスターユニットに火が付き、蒼炎の種が鉄筒の中でメラメラと燃え始める。

 

 

《進路クリア、”ガーゴイル”発進どうぞ!!》

「ミスター・ウィザード、”ガーゴイル”、いざ参る!!」

 

 

 どこまでも続く紺碧の宇宙(そら)

 

 火花を散らしながら発進した黒の魔物が、くるりと翻り、スラスターを爆ぜさせて猛進していった。

原作の「反逆機兵レギオン」、読んでみたい?

  • その旨を良しとする!!(YES)
  • 私は辞退させてもらう。(NO)
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