楽しそうかどうかで決める天才、Vtuberになる。 作:夢野いくや
○??視点
他人の顔色を気にしない人生だった。
学生時代は一人机の上で本を読んでいるタイプの人間だった。
友達と呼べる交遊関係はなかった。
移動教室の時も一人、昼食の時間も一人、登下校も一人で部活にも入らず帰宅部だった。
体育の時間は「二人組作って~」ではなく、背の順で前から二人組を作る制度だったので余って先生と組まされるということはなかったが、特にペアの人とも会話はしてなかったと思う。
中学や高校の時は自己紹介とかあると思うが、それも特に凝ったことも言わず無難なことしか言わなかった。
始めは声を掛けてくれる同級生もいたが、当たり障りのない返答をしていたら次第に声を掛けられることもなくなり気付けば立派なボッチになっていた。
そういう生き方を選んだのは自分だったので特に後悔があるわけではない。
アニメとかで青春をしてるのを見るとそういう学生生活も楽しかったのかもしれないなとは思うのだが、もう一度学生の頃に戻ってもおそらく変わらないだろう。
大学生となっても変わらず、友達と呼べるような人物はいない。
ただ、趣味と言えるものとして読書とゲームがある。
一時期は某スリーマンセルのバトルロワイヤルFPSゲームでソロ最高ランクにも到達するほどのめり込んでいた。
それでも一緒にやるような友達がいたわけではなかった。
将来の夢があるわけでもなく、ただ学生生活を送っていたのでとりあえずこのゲームの腕を活かすためにプロゲーマーを目指してみることにした。
いくつかプロゲーム事務所を受けてみたが、全て落ちた。
ゲームはチームで行うことが多く、コミュニケーション能力が致命的な俺はどこにも引っ掛からなかったのだ。
そんな中、とある動画を見つける。
ゲームの実力は俺よりも下だろう。でも同時接続は1万人ぐらいで一つのコンテンツとして成り立っていた。
他者を気遣う言動、チームとして動くためのオーダー、配信自体を盛り上げるための小話やリアクション。
今の俺に足りないものを持っていた。
ただ、その事務所は既に100人以上のライバーが所属しており、コミュニケーション能力の欠けた自分では無理だと悟った。
そこでもう少し小さな事務所を受けることにした。
所属ライバーは10人ぐらいで、ゲームに特化したライバーはゼロ。
そこで自分が入り、ゲームの観点から事務所自体を盛り上げると面接で伝えた。
その考えに間違いはない。
ただ、面接を担当してくれていた社長に言われた言葉が今も心に残ってる。
「君、今まで本気になったことある?」
言葉に詰まった。
手を抜いていたというわけでないが、他者と関わらず楽な道を歩いてきた。
「ウチの事務所はまだ小さい。だからこそ一人一人の繋がりを大切にしている。君に他者との繋がりを大切に出来る?」
すぐに答えることは出来なかった。
でも自分の今の思いを言葉にすることにした。
「今まで他者との関わりを絶って生きてきました。でもそのままじゃダメだと感じました。今の自分ではすぐに『はい』と答えることは出来ないと思います。はっきり言って出来る自信があるわけでもありません。でも変わらないと、変われないといけないと感じています。」
流石に面接では落ちたと思ったが数日後、合格の連絡が届いた。
ただ、もう一つ別の連絡も届いてた。
「ウチのライバーに何でも出来る天才がいる。彼に一度悩みを打ち明けるといい。彼ならきっと力になってくれるから。」