楽しそうかどうかで決める天才、Vtuberになる。 作:夢野いくや
○千堂視点
デビュー配信まで後10分、音量のチェックや自己紹介用のパワーポイント、原稿の確認も行った。多分大丈夫。俺ならいける。
今までの俺は自分から積極的に何かを行うということが出来なかった。
Vtuberならテンパってもその顔を直接見られることがない。他の人の視線を気にしなくて済む。だからいけるはず。
今すぐに視線を気にしないようにすることは出来ないだろうから、これからちょっとずつ改善していこうと思う。
俺ならいける。この配信が俺の新たなデビューだ!
...
失敗した...
初手の
「ういっす!俺は『千堂一(せんどうはじめ)』人気者になるため自分磨きの真っ最中だ!そのためにこの『メモプロ』に所属して人気者の先輩らから勉強させてもらうぜ!」
という自己紹介自体は悪くなかったと思う。
コメントの反応も上々だったと思うし、どんなキャラかはわかってもらえたと思う。
ただ、その後のムーヴがよくなかった。
一応学生時代にいた人気者のマネをしたつもりだったが、
【なんかモテようとしてるチャラいやつみたい】
【自分を人気者と勘違いした空気読めないやつ感が凄い...】
【小物臭がする】
と散々な言われようだった。
俺から見た人気者のつもりだったんだが、違ったのだろうか?
難しいな~配信者って。
まあでもこれからだろうな!
否定的な意見も多少は見られたが
【頑張れ!】
【なんかお姉ちゃんになった気分】
【微笑ましく見てられるわ】
【次も見るからな!】
と肯定的な意見もそこそこあったし。
Vtuberってデビュー配信とその後で全然違う人って結構いるらしいしな。
清楚キャラを演じていたけど、実際はガハハ笑いするような人とかも入れば、イケボ売りするかと思ってたらオタク売りしてる人らも入るわけだし。
俺はどんなキャラにしていこうか...
誰かの顔色を伺い続けるような生活はしたくないな...
そんなことを考えてるとDMが飛んできた。誰だろうか?
セラヴィス先輩?
「初めまして。『メモプロ』のセラヴィスです。初配信ということで多分色々とこうすればよかったとか反省してるんじゃないかなと思って連絡したよ。自分一人で考えてしまうと悪い方向にばっかり考えてしまうことも多いと思うから何かをあれば気軽に相談してね。」
せ、セラヴィス先輩~。
俺はいい先輩に恵まれたようだ。せっかくなのでお言葉に甘えて相談に乗ってもらおうか。
「先輩。相談に乗って欲しいことがあるんですが時間大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。どうする?通話にする?」
「通話でお願いします!」
ピロン
セ:「どうも初めまして。改めて自己紹介しておこうか。『メモプロ』4.5期生の『セラヴィス·アークバルト』だ。よろしくね。」
千:「先輩初めまして!新人の『千堂一』っす!よろしくお願いします!」
セ:「いいね~。フレッシュだね~。ザ·後輩って感じがするよ。」
千:「そうっすか?そう言ってもらえると嬉しいです。で、相談なんですけど...」
セ:「なんだい?犯罪とかじゃなければ、乗れることなる乗るよ。」
千:「そんなことじゃないですよw。俺、今まで人の顔色を伺って来た人生だったんです。学生の頃は人気者のグループに所属していたと思うんですが、自分から意見とかは全然言わなくて、肯定ばっかしてたんです。だからグループにとってはいてもいなくてもいい存在的な感じでして。」
セ:「続けて。」
千:「でも、そうやって他の人の顔色を伺いたくなくて、自分を変えたくて、Vtuberになったんです。でも、今日の配信の手応えが全くなくて...俺、どうしたらいいんですかね?」
セ:「一応僕も配信見たんだけど、正直な感想を言わせてもらうと『無理してる感』が凄く感じられたね。千堂君からしたらなりたい自分だったのかもしれないけど、演じてる感が伝わってしまったからリスナー達もなんか違うって思ったのだと思うよ。」
千:「でも俺、人の顔色を伺うのをやめたくて...」
セ:「それは全然やめていいと思うよ。やりたいこと出来なくなるし。ただ、キャラが多分君にあってないんだと思うよ。」
千:「どんなキャラがいいですかね?」
セ:「いっそのこと、自分のキャラ付け決める
配信やってもいいんじゃない?それはそれで面白そうだと思うよ。」
千:「なんかそれ、ダサくないっすか?」
セ:「まあかっこよくはないだろうね。でも、そういう配信をやってる人見たことないし、努力しようとしている人、何かを変えようとしている人は応援されやすいしそれはそれで愛され系になれると思うよ。」
千:「そんなもんですかね...?」
セ:「絶対とは言えないけど大丈夫だと思うよ。」
千:「セラヴィス先輩はどんなキャラがいいと思いますか?」
セ:「あくまでも案の一つとして聞いてね?それにしないといけないなんてことはないから。...個人的には後輩感出しまくったキャラがいいと思うよ。多分千堂君が人の顔色を伺ってきたという人生の経験は、人が求めているものをいち早くキャッチする力とか縁の下で支える力として活かすことが出来ると思うんだ。君の望んだ人気者や主人公とは違うかもしれない。でも、そういった名脇役も大事だと僕は思うよ。」
千:「そうですかね...?ありがとうございます。参考にさせてもらいます。」
セ:「頑張ってね。いつでも相談とかには乗るから。」
千:「はい!ありがとうございました!また通話してもらえると嬉しいです!」
セ:「いつでも大丈夫だよ。だって同じ箱の仲間じゃないか。」
ピロン
仲間か...
前のグループの皆は仲間とは言えなかったもんな...
『メモプロ』の皆に仲間って思ってもらえるかな?
早く馴染むためにも自分というキャラを確立させねぇとな。
まずはセラヴィス先輩が言ってたように後輩キャラで頑張ってみるか。
そう言って次の配信準備を進めるのだった。