とにかくハッピーエンド目指します 作:Assナ
転生先がSAOのような世界だと気付いたのは俺が5歳の頃。
当時、病院通いだった俺は看護師たちが会話をしているのを偶々聴いてしまった。名字が紺野という人が近々双子を出産するという話を。
その時、ユウキじゃね?と安直に思い込んだ俺は産まれてくる赤子をユウキと想定して出産後の紺野婦人、病院を含め迷惑行動を起こした訳ですよ。輸血で感染したのなら使われる血液剤を使用出来なくすればいいって。
結果はわからない。
だって、その後俺は他県に住む祖父母の家へ預けられることになったから。軽率な行動をした当然の責任だろう。捨てられなかっただけ両親には感謝しかない。
特に不便はなかった。祖父母はいい人たちだし、自分の子供のように可愛がってくれた。何よりも俺の話を聴いてくれたのは嬉しかった。
預けれてから半年くらい経過したある日、最近?両親が事故で亡くなった話を祖父母から教えられた。教えられたとき、あまり悲しくなかったのは薄情だろうか?
自分が悪かったとはいえ、最後に叩かれた嫌な記憶しかないのが原因かもしれない。
両親が居なくなったからといって特に俺の生活は変わらなかった。
遺産があったのもあるが、というよりどうすればキリトたちに会えるのか?それと同時にあのデスゲームを防げないか?を軸に行動していたからあまり気にならなかったのかもしれない。
それから月日は流れ15歳くらいになった頃、旅行という体で県外に進出し重村ゼミに突撃、目的である茅場晶彦に会えたので説得しようと試みるも失敗した。
説得の副産物としてナーヴギアとソードアート・オンラインのβテスターの権利を獲得したが、どうやら茅場晶彦にとってデスゲームは確定事項らしい。
β版ではひたすらに攻略し情報収集に努めた。結局のところ誰がどういうことをするかを知っていてもソードアート・オンラインの知識と経験がないからとにかく死ぬ気でやった。
そのおかげかキリトと出会い仲良くなれたのはよかった。正式版発売後に会うことを約束したしな。
リアルの容姿でないことは残念だったが、まあ時期が来たら会えるからいいか。
そして、ソードアート・オンラインの正式版がリリースされデスゲームが開幕。
ぶっちゃけ俺はそこまで大したことをしていない。
ゲームクリアはキリトがしてくれるので自分が死なない程度に誰かを助ければいいと思っていた。
時系列で簡単にまとめると。
第1層攻略以降大体、主人公であるキリトやアスナそれとミトの四人で基本的に行動。一人になることはなかったが常に最前線を走っていた、
はっきり言ってめちゃ辛い。付いていくのがやっとでキリトやアスナとの才能の壁を感じたわ。
変化があったのは25階層攻略後に軍の崩壊に併せてヒースクリフが血盟騎士団を結成したので俺とアスナが入団。キリトには渋られたが仕方ない。ミトは攻略組から離脱し生産職に転向。自分の成長に限界を感じたらしい。
キリトとミトとはメッセージでのやり取りは頻繁にしていたが直接会う頻度は減った。
頃合いをみて30階層攻略後にヒースクリフと決闘。
それ以降は特に大きな出来事はない。
アスナの好感度を稼いだ気はないが何故かリアルネームである結城明日奈ということを教えてもらう。キリトにも教えたんだろうなー。結婚の申請したけど断われたし。
キリトが二刀流を獲得して50階層を越えた頃、俺はソードアート・オンラインからログアウトされた。
***
何も言わずにアイツはオレたちの前から姿を消した。最初に気付いたのはアイツと同棲に近いことをしていたアスナだった。
『ザインくんがいなくなった』
『フレンドリストからも消えている』
アスナからのメッセージを見た時、ある可能性が過り頭が真っ白になった。だがすぐに否定しアスナへ始まりの街に向かうように返信する。
まだ決まった訳じゃない。
始まりの街にある黒鉄宮には蘇生者の間という場所がある。本来はそこで復活しリスタートする訳だが、デスゲームと化したこの世界では役割を果たしていない。代わりとして生命の碑というものが設置されておりそこでプレイヤーの生死が確認出来るようになっている。
ここまでのオレたちにとっては無縁の場所だった。
クライン、ミト、エギル、シリカ、リズ、アルゴ、黒猫団のメンバー、友人は誰も死んでいないから。
蘇生者の間にたどり着くとアスナは既にいた。
「キリトくん……」
「ザインの名前は?」
「ない」
「え?」
「ないんだよ!彼の名前が何処にも!」
「そんなバカな」
アスナの言葉が信じられず、生命の碑を確認する。
違和感はあったが確かにアイツのプレイヤーネームであるsainは存在しなかった。
それからオレたちは黒鉄宮から出て友人たちに連絡し、手分けして各階層を探してもらう。攻略組にも頭を下げ攻略を止めて貰い捜索に協力をして貰った。
しかし、アイツは何処を探しても見つからず、半月も見つからなかったから捜査は打ち切られた。
アスナは日に日に元気をなくし、ひと月が経過した頃、遂には壊れた。
「もう何処に行ってたのザインくん」
「え?アスナ?」
「ほら、私たちのお家に帰ろ?」
アスナはオレをザインだと認識し始めた。オレにはどうすることも出来なかった。
アスナの状態をこれ以上は悪化させられない。
否定をすることは簡単だ。けれど、そんなことをすればアスナは本当に死んでしまう。
攻略組から離脱させる話もあった。
だが、今やアスナは攻略組のトッププレイヤーの一員。ザインに続いてこれ以上貴重な戦力を喪うのは流石に不味いこと、オレといる時は比較的に精神が安定しているからと却下された。
それから程なくしてオレはアスナのために血盟騎士団に入り、アスナと結婚した。
オレも結構、心に限界が来ていた。一年以上もの間ともに行動した相棒の喪失はオレにとっても辛い。
アスナが先におかしくなったから何とか自分は壊れちゃいけないと思い留まってるだけ。残っているのはトッププレイヤーとしての矜持のみ。もう長くない。
自分ではどうしようもない現状……そんな時、転機は訪れた。
「え……?」
生命の碑を観に来たオレが目にしたのは、あの日、なかった筈のsainというプレイヤーネーム。しかも、線が引かれていないことから生存していることを示している訳で。嬉しさが込み上がると共にある希望を見出していた。
違和感は確かにあった。
何故、プレイヤーであるザインの名前があの時は無かったのか?
何故、空欄の行があった場所に今ザインの名前があるのか?
ここから先は希望的推測でしかないがーー恐らくザインはあの日、何者かの介入によりこのゲームからログアウトされた、そう考えば辻褄が合う。
そして、介入したのは勿論、茅場晶彦。
それはつまりザインが茅場晶彦を見つけたということ。それは同時に最悪の状況とも言えるだろう。デスゲームを作った張本人がプレイヤーに擬態している。しかも身近な人物で。
オレの中で思い当たる人物は一人しか居なかった。
『神聖剣ってインチキ臭いな』
その人物は唯一ザインが怒りの視線を向けた相手。
「……ヒースクリフ」
オレはその日覚悟を決めた。