ぼくらのヒーローアカデミア TS脳無化錬金術ヒーローマリくんちゃんの終活   作:Radrabbit

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初投稿なので色々表記や設定がおかしくなっていたらすみません


1章 哲学者の揺籃
1話 闇の底からこんにちは


 S県辺境の山奥にひっそりと佇むとある小さな小屋、その地下に秘密裏に建造された極秘のラボ。暗く静かな部屋の中で、一人の少女と一人の仮面をつけた男が和やかに談笑していた。

 

「これからは寂しくなるね、哀」

「えぇ、お父様。ですが本当によろしいのですか?雄英には青山優雅をスパイとして送り込む予定と聞きましたが」

「構わないよ、情報源は多いに越したことはない。それに万が一彼がヒーローに絆されるかもしれないからね」

「確か彼の親を人質に取っているのですよね。"私のように"はしないのですか?」

 

 雄英高校にこれから送り込む少年を話題にくすくすと笑う少女に、男も嗤いながら返答を返す。

 

「君は彼とは違って特別だからね。同じことをしては彼は使い物にならなくなるさ。それに君にはあまり実感が湧かないだろうけれど、家族と天秤に掛けさせれば大抵の人間はどんな悪事だって働くものさ」

 

 とても使い勝手がいいから君も機会があれば試してみるといい。そう何でもないことのように男は少女に促し、話を続けていく。

 

 

「それと、雄英には教師として『アルケミー』を潜り込ませてある。彼は脳無としては失敗作だが体内に仕込んだ情報収集用のドローンは役に立つ。君の指示もある程度は受け付ける用に調整してあるから、好きなように使いなさい」

「ありがとうございます、お父様」

「これからは雄英高校が君にとってのアカデミアになる。より多くの個性を学び、プロヒーロー達をつぶさに観察し、いつか君が素晴らしいヴィランとして花開くことを期待しているよ」

「お任せください、お父様の期待には必ず応えてみせますわ」

 

 ニコリと満面の笑みを浮かべて少女は男に礼を返し、緩やかな足取りで部屋を出ていった。やがて少女の足音が聞こえなくなると男は思案するように腕を組み、仮面の下に手を添える。

 

「しかし急造ながらいい具合に仕上がったね。これで黒霧のレベルまで個性の練度を仕上げられていれば良かったんだが・・・仕方がないね」

「アルケミーの個性がベースですからな、アレは本人の知識量と経験で伸びるタイプじゃからのう」

「彼は個性と死体両方が特殊な珍しいサンプルだったからね。時間があればもっと色々と試したいことがあったんだが」

 

 仮面の男─AFOは部屋の奥から出てきた小柄な老人─ドクターと会話を始めた。偶然の産物から生まれた彼女は最近ようやっと完成したハイエンドと比べても柔軟な知性を持ち、戦闘面においても彼らを凌駕しうるポテンシャルを持つという確信が彼にはあった。

 だが彼女の最も奇妙な点はその肉体にどれだけ改造を重ねようとも時間経過と共に素体である「影山操奈」の姿へと再構築され、しかしながら個性容量の増幅と身体能力の向上は見られていることだ。

 

「十中八九アルケミーの個性である『錬成』の影響じゃろうが、一体どのような使い方をしていたのか聞いてみたかったものじゃのう」

「死後も肉体に影響を与え続ける個性・・・彼が僕らの仲間になってくれていれば、マスターピースの研究もより捗っただろうね」

「あやつを確保するのが後3年は早ければ今頃にはマスターピースも完成してやもしれんというのに、なんとも間の悪い奴じゃ」

 

 想定外の研究結果ではあるものの、目指すべきマスターピースの前身としては十分以上の成果を得ることができていた。戦闘面においてギガントマキアに比類するレベルのハイエンド脳無の量産、それすら視野に入る程の研究成果であったのだから文句は言えないさ、とAFOは続けた。

 

「過ぎたことを悔やんでも仕方ないさドクター。それに、哀のお陰でいいデータが取れたんだろう?」

「うむ、これなら本命の調整時は以前の想定よりも更に速く進められるじゃろうて、"ドールちゃん"様々じゃ」

 

 弔の教育や敵連合の為の下準備にマスターピースの研究etc・・・ここ数年は二人にとって非常に重要なタスクが数多く存在していた。組織が最盛期であれば何の問題なく並行して進められていただろうに、オールマイトによって齎された被害は計り知れない程だ。

 

「しかし、本当に"ドールちゃん"をヒーロー共の巣窟に送って良かったのですかのぅ?ワシらの傑作に悪い影響を与えんか不安で不安で・・・」

「今の僕らの手元ではあの個性の練度を積ませるには些か不向きだからね。餅は餅屋というだろう?雄英には個性教育機関として、彼女を最高のヒーロー(ヴィラン)に育てて貰おうじゃないか」

「それに安心しなよドクター。仮に彼女が()()()()()()()()()、僕らの得になることは変わりないからね」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「あ゛あ゛ーキッツ、つら、しんどすぎる。後何回僕はあの糞仮面ヴィランのこと『お父様』呼びしなきゃならないんだよ」

 

 小さなアジトで影山哀(ドール)に与えられた私室の中、僕は備え付けられている無駄にフカフカなベッドに寝転びながら愚痴を吐いていた。

 

“マリさんが始めた呼び方でしょう?文句なら過去のマリさんに言ってくださいよ”

 

 頭に直接響く女の子の声──この肉体の本来の主である影山操奈(かげやまあやな)。不運にもヴィランに目をつけられ悪趣味な死体人形にされてしまったが、幸か不幸かこうして自我を取り戻すことができた彼女が返答を返してくれている。

 

「そりゃそうなんだけどさー、だってこう・・・見た目的にもさ?自我を獲得した改造人間が生みの親に対する振る舞いとしては、アレが一番それっぽい接し方じゃない?」

“それはそうですけど・・・でも、随分様になっていましたよね、哀お嬢様?”

「やめてぇ!もう三十路になる人間がお嬢様のフリしてるの結構メンタルにきてるんだから!」

 

 今はこうして僕に揶揄いを入れる位には精神が回復したが、最初の頃はそれはもう酷い有様だった。当然だよね、いきなりヴィランに殺されたと思ったら自分の死体が勝手に改造されて、挙句の果てに知らないおじさんが自分の身体を動かしているときた。

 ヒステリーを起こして脳内で泣き続ける彼女に当時の僕は殆どアクションを起こせずにいた。詳細のわからない気色悪いカプセルに入れられていたあの時は、どれだけ自分の行動が糞爺とあの屑に把握されているのかわからなかったせいで従順なフリをしてやり過ごすことしかできなかったのだ。

 言い訳になってしまうがあの頃の彼女にはとても申し訳ないことをしてしまっていたよ。今こうして話し相手ができる程度には回復してくれて本当に良かった。

 

“そういえば、さっきのやり取りの・・・青山さん?でしたか。彼に対してかなり悪趣味じゃなかったですか?”

「ああ・・・あれね、AFOがどれだけ青山君って子に仕込みをしてるかわからなくてさ。今の『アルケミー』みたいにされているのか、それとも今後そうするつもりなのか探りを入れたくてね」

 

 今のアルケミーこと郷里真理(ごうりまり)は、僕の死体に僕の個性の複製を突っ込んだアルケミーのように喋ってアルケミーっぽく動く人形になっている。連中によればどう調整しても生前の言動をトレースするのが関の山で、些細な指示しか受け付けない癖にヴィランらしく他人を害する命令をすると勝手にフリーズしていたらしい。その上他の脳無のように改造してみても勝手に肉体が改造前に戻るせいで使い道にも困っていたんだと。

 それ故に一時期は廃棄して『事故死』にして処理するかどうか悩んでいたそうだ。人の死体を何だと思っているのかな。

 

 まぁそれはともかく、ヒーローとして動いた結果死んだ僕(アルケミー)はいいとして、まだ子どもの青山少年にどんな悪意が向けられているのかを知りたかったわけなのです。

 幸運と言っていいかわからないけれど、彼はご家族の命と引き換えに情報を提供する係で、『アルケミー』のような取り返しの付かない状況にいるわけではなさそうだ。

 

「青山君はご家族の身柄を無事に保護することができれば、後はヒーローの手で助けて守ることができる。それがわかっただけで十分だよ」

“そうだったんですか・・・。すみません、でしゃばるような事を言ってしまって”

「いやいや、悪趣味な言い方をしたのは事実だよ。それにそもそも、あの時僕が操奈ちゃんのことを助けられていればこんな悪趣味なことにはならなかったんだよ。本当にごめんねぇ・・・」

“マリさん・・・”

「・・・ま、今はこんな陰鬱な場所から雄英に行けることを喜ぼうよ。オールマイトもいるしプロヒーローだって沢山いるんだよ?AFOのことも、操奈ちゃんのことも、全部何とかするさ」

 

 現状AFOからは雄英に入ってからはオールマイトの殺害や嫌がらせに役立ちそうな情報と、彼が持つOFAという個性の譲渡先候補の人間を探すことを主な任務として受けている。

 

 彼の個性が代々引き継がれていたモノなのは驚いたけど、AFOが持つ個性を奪い与える個性に比べればまだ現実的に思えるね。

 最も一番重要なタスクは"より練度を上げ個性を成長させること"らしいが、そんなこと言われなくてもやってやるし、磨いた力で叛逆するつもり満々である。

 

 そして奴曰く今のオールマイトは弱体化しているらしいが、あの異次元の強さを誇る傑物が多少弱体化した程度で殺されるというのはちょっと考えられない。

 確かにAFOも数多の個性を操るチート野郎で実際僕も殺されたが、昔何度か見かけたオールマイトの次元が違う『ちょっと生まれる世界間違えていませんか?』ってくらいの巫山戯た強さに比べればスケールは小規模なものだった。

 それにアイツ昔オールマイトに殺されかけてバレないように必死で逃げ出したみたいだし。今も必死にコソコソ隠れて暗躍しているのがオールマイトを恐れている証明だろう。

 

「オールマイトが弱体化って言ってもねぇ・・・知ってる?昔見たことあるけどさ、瞬きの間に百人単位でヴィランを制圧したり拳一つで雲を吹き飛ばして雨から晴れにしたり、たった1日で日本全国自分の脚で飛び回って複数の犯罪組織を壊滅させたりとかね」

“それは流石に誇張も含まれているんじゃ・・・?”

「いいや、全部事実だよ。それだけの偉業を何のこともないように軽く熟てしまうから、彼は【平和の象徴】なんだ。ご都合主義の権化と言ってもいいくらい」

“・・・無茶苦茶な人なんですね”

「だからこそAFOがオールマイトを殺すっていうのも結構違和感というか『コイツ本気で言ってんのか?』って感じはあるんだよね」

 

 何かオールマイトを殺すための秘策があるのか、それとも今なら本気で殺せると思って言っているのか。一度戦って殺されかけているというのにここまでの大口を叩けるということは、それだけの準備──例えば僕らみたいな改造人間の兵隊を大量に抱え込んでいる等とか?

 

“あっ!オールマイトの個性は他人に譲渡できるんですよね?それを後継者に譲渡したら個性が無くなって弱体化してしまうんじゃないですか?”

「おぉ!冴えてるね操奈ちゃん。確かにオールマイトのあの強さがOFAありきなら譲渡後は無個性になるし、AFOがそれを狙っている可能性はあるか」

 

 そうであればオールマイトは雄英高校の生徒の誰かへOFAを譲渡する予定か、或いは有望な後継者を探しにきているのかな。よく考えてみれば彼も既に引退を視野にいれてもいい年齢だろう。

 AFOの狙いはOFAの継承者を見つけておいて、譲渡後に後継者がオールマイト並に使いこなして強くなる前にその子からOFAを奪うか殺すかして、無個性になったオールマイトを殺害するといったところだろうか。

 それなら後はAFOの暗躍から学生達や他のヒーローへの被害をどれだけ抑えられるのかと、アルケミー・青山優雅・そして影山哀以外で雄英にAFOの手先が潜り込んでいないかどうかが問題になるかな。

 

 あの見るからに性格悪くて他人を碌に信用してなさそうなやつのことだから僕には特に言ってないだけで他にも雄英にスパイを潜り込ませているか、アルケミーのような情報収集用の手段がある可能性も考慮する必要があるだろう。

 

 最善最速はオールマイトに最速でコンタクト取って憎き顔面工業地帯をブッ捕まえてもらうことだが、アイツワープ系の個性まで持っている上に全国に拠点があるみたいなんだよね。まったくどこまで組織規模が大きいんだか。

 僕が確認している限り殺人・誘拐・暗殺・人体実験等々ヴィランがやりそうなことは一通り網羅しているようだ。このやりたい放題でよくぞ今までオールマイトから逃げ隠れしていたなと思うほどに隠蔽能力にも長けている。これで実は国家と裏で繋がってましたとか言いだしたら完全にヒーロー映画に出てくる巨大ヴィラン組織の親玉だよ。

 そして1番の懸念点が何処かから僕の裏切りがバレた時点でAFOが別の拠点へ雲隠れして襲撃できなくなるだろうことと、僕(操奈ちゃん)も含めて青山君とご家族が口封じで殺されるかもしれないことだ。

 

「アイツらの組織規模やコソコソ量産しているらしい脳無軍団も勘案すれば、AFOにカチコミする時はオールマイト以外にも信頼できるプロヒーローが結構必要な大規模作戦になるだろうからねぇ。正直一般プロヒーローしてただけの僕には手に余りすぎて潰れそうって言いたいくらいだよ・・・」

“大丈夫ですよマリさん、私も付いてますから!”

「女子中学生に慰められる三十路ヒーロー男性・・・・・・うぅ、なんて情けないんだ・・・」

“マ、マリさん・・・”

 

 現状今の僕にできることはAFOの計画とやらに探りを入れるくらいで、雄英に入ってからが勝負どころになる。どれだけ早く信頼できるヒーローを探し人を集め、オールマイトを中心としたクソカス捕縛作戦が展開できるかが要だ。

 当然裏切りがバレるわけにはいかない。この際アルケミーはどうでもいいが操奈ちゃんそのものであるこの身体を無事に守りつつ、青山君とご家族の安全を確保しなきゃいけない。 

 最悪ご家族が何処かの拠点に監禁されているか、そうでなくとも直ぐ口封じ出来るように部下のヴィランなりに監視されている可能性もあるだろう。

 怪しまれないようハゲ共に情報も幾らか流さないといけないだろうが、それでいて被害も出ないようにしなければならない。

 

 ・・・あー!もぉー!やることが多い上に制約が多い!僕やってらんないよこんなの!

 ハリウッド映画のスパイ作品じゃないかこんなのさあ!僕はジェームズ・ボンドでもイーサン・ハントでも無いんだぞ!でも無理とか言ってらんないしぃ!うぎぎぎぎぎ・・・

 

「んむむむむむむ・・・」

“マリさん雄英に入ってからのコトをずっと考えてるみたいですけど、受験は大丈夫なんですか?教材にはまだ手をつけてない様子ですけど”

「・・・・・・は?受験?なんで?」

“もしかしなくても聞き流してましたね?怪しまれないために裏口入学のような手段は使えないって”

 

 突如放り込まれた爆弾に思考が一旦停止する。今から一週間で受験?何考えてんのあのハゲ仮面。

 

「む、むりでしょ。だって試験まで後一週間くらいでしょ?いくら僕が超天才錬金術師ヒーローとはいえ限度があるって」

“実技試験の内容と筆記試験の答案は既に盗み出しているそうですから、丸暗記でどうにかなりますよ”

「・・・僕の文系科目の成績、聞きたい?いつも赤点だから毎回補習が凄く大変でさぁ」

“現実逃避してないで勉強してください。私も一緒に覚えますから、それなら半分で済むでしょう?”

「や、やだぁ!それならカンニング用のアイテム作るからぁ!もう二度と雄英の受験勉強はしたくないの!」

“どれだけ文系科目が嫌なんですか・・・いいから始めますよ”

 

 雄英卒業するときに二度と文系科目の勉強なんてしないって決めたのにどうしてこんなことに・・・。許さん、許さんぞAFO!オールマイトがお前の平たい顔面をミンチにするのを*1震えて待ってろよ。

 

 

 

*1
ミンチにしたら駄目です




1つ問おう!読み専から書き手になるには何が必要だと思うかね?そう、勢いだ!

マリくんちゃん
・組織規模はヤバいけど(弱体化した今の)AFOに(大凡全盛期くらいの)オールマイトを繋げればどうにでもできると考えている、特大ガバ。
・オールマイトが死ぬ程弱体化しているのを知らないので、引退するまでにはOFA譲渡するのかなーくらいに考えている

AFO
・オールマイトへの愚痴は色々言っていたが、自分との戦闘で彼を瀕死にまで追い込んだのが弱体化の要因である事を偶々言ってなかったのが功を奏した。
ドクター
・正直アルケミーの死体はもっと弄り回したかったけど、時間と手が足りなかったので使い捨てドローンに改造した


ちなみに全盛期オールマイトの逸話として重い荷物を持ち上げる感覚でハリケーンをベアハッグで霧散させる(???)。東京大阪間(約550km)を14秒で走り抜ける(??????)等があります。な、なんか一人だけドラゴンボールやってる・・・。
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