ぼくらのヒーローアカデミア TS脳無化錬金術ヒーローマリくんちゃんの終活 作:Radrabbit
4月には投稿する予定を立てていたのに気がつけば6月、時の流れが早すぎる・・・。
「あらまぁ」
“な、なんかマスコミが沢山いますね・・・”
ここ数日で少し慣れてきた雄英高校の校門前までの道をやってきたところ、入り口前に大量のマスコミが押し寄せてきていた。
率直に言えば物凄く邪魔、体育祭や文化祭みたいなイベントではよくマスコミが出入りしていたけど、不祥事やトラブルでもない限り普段はこうして校門前に集まることなんて無いんだけどね。
“そんな人が集まるようなことありましたっけ?”
(オールマイト目当てのマスコミかな。こんなとこに朝から張り込んでるなんて大変だねぇ)
“あぁ・・・有名人も苦労しますね”
雄英のゲートギリギリまでマスコミの波が押し寄せてしまっているせいで生徒達も結構足踏みしているようだ。適当にオールマイトの人形でも作って外に誘導・・・はやめとうか。
どうせ暫くは毎日人が押し寄せるだろうから、オールマイトが彼らの相手をしてマスコミが来なくなるまで待った方が早いかな。
「すみません!教師オールマイトの授業はどのような感じですか?・・・あれ?さっきまでそこにいた子は?」
“わざわざ影に潜ってまで避ける必要あります?“
(いやぁ、昔からマスコミは極力相手しないように言われてたからつい・・・偶々透さんが通りがかってくれてよかったよ)
ちょうどいいところに物理的に影の薄い透さんが来てくれたので、彼女の制服の影に潜り込んだまま校門を通過する。彼女も上手いこと他の生徒に隠れてマスコミをやり過ごしてきたようだ、助かるね。
そして予想はしていたけど影に潜ったままだと校門のセンサーは誤魔化すことができるようだ。役に立つ機会があるかはわからないけど。
マスコミには個人的にいい思い出も無いし、学生の頃からずっとリカバリーガールから口酸っぱくインタビュー等では余計な情報は何も喋らないように言われていた。それ故にマスコミを見るとつい避ける癖が染み付いてしまっているのだ。
「インタビューに答える暇があったら一人でも多く救助しに行きな」だったかな。今思うとアレも彼女なりの気遣いだったのだろう。
「おはようございますわ。透さん*1」
「おわぁ哀ちゃん!?いつ間に背後に!?」
「実はマスコミがあまり得意ではなくて、つい隠れてしまいました」
「あぁなるほど・・・なるほど?」
今日も可愛いですね、いやいやそれほどでもなどと戯れながら教室まで移動する。しかし何故透明である筈の彼女の姿が見えるのだろうか。
『眼』に関わる個性が何か影響しているのだろうかと思うのだが、これまでずっと個性を使っていないタイミングであっても透さんの姿は見えていた。
・・・個性のオンオフは関係無くても個性そのものが眼球か視神経なりを変質させているのかな。
異形系ではない発動系統の個性であっても成長に合わせて体質に影響を与えるケースはよくある。特にヒーロー志望の子は過酷な訓練を経て肉体がより個性に最適化したり、あるいは逆に悪化して個性が使い辛くなることもあった。
それと同じような変化か、若しくはドクターの改造で個性に合わせて視覚に調整でもされているのか。・・・まぁいいか、視えるからといって困ることが現状あるわけではない。この謎は後回しでもいいだろう。
「昨日の戦闘訓練お疲れ、Vと成績見させてもらった」
朝のHRで相澤先輩から昨日の戦闘訓練について派手にやっていた爆豪君と緑谷君がお小言を言われていた。・・・あれ、意外とあっさり終わっちゃった。まぁ二人ともそれぞれちゃんと受け止めている様であるし一度言えば十分か。
緑谷君は個性の制御があるからまだわからないけど、個性テストで見せた行動から発破を掛ければ愚直に同じ真似は繰り返さないタイプだと判断したのだろう。
「それと轟、爆豪達の試合見た後にあんな真似するとはいい度胸だ。反省文10枚今日中な、緑谷と爆豪は7枚」
「は!?」
「そりゃあんな危ねぇ爆破ぶっぱなしてたらそうなるだろ」
「るせぇぞ醤油顔‼︎」
「入学早々反省文・・・」
「・・・・・・・・・」
神妙な顔から一瞬でキレ顔に変わった爆豪君と決意を感じる瞳からネガティヴモードでぶつぶつ言い始めた緑谷君、そして真顔で固まったままの轟君*2。『千里眼』のお陰で目を向けなくてもこうして顔が見えるのはいいね。
「さてHRの本題だが・・・今日は君らに学級委員長を決めてもらう」
「「「学校っぽいの来たー!!!」」」
“う、うるさ・・・”
(みんな元気だねぇ)
普通の高校なら精々数人くらいしか立候補しないだろうが、ヒーロー科においてはこと全員がやりたがる大人気役職だ。
・・・いや、轟君だけ頬杖付いて窓の外見ている。彼はあまりこういうのに興味ないらしいね。
「静粛にしたまえ!!多を牽引する責任重大な仕事だぞ・・・!『やりたい者』がやれるモノではないだろう!!」
クラスの子達が皆挙手し自らが立候補して行く中で飯田君がそこに待ったをかけた。曰く民主主義に則ってリーダーを決めるのであれば投票で決めるべき議案であると。
いや、まぁ、確かにそうなのだけど顔を合わせて数日のクラスメイトから有効票を獲得するのは難しいんじゃないかなぁ。
「時間内で決めりゃなんでもいいよ」
“えぇ・・・しかも寝袋に入るんですか”
(仮眠じゃない?睡眠時間足りてないのかなぁ。教師って忙しいみたいだし)
先輩は特に飯田君の発案に反対せずそのまま寝袋に入って睡眠をとり始めた。そして彼の提案通りに投票が行われ緑谷君に3票、八百万さんに2票が入る。その他は殆ど自分に投票していたけれど何故か飯田君には1票しか入っていない。
僕らは彼に投票したのだけど、彼自身は自分に投票していなかったのだろう・・・生真面目で将来色々と苦労しそうな気質だ。
本人的には苦にならないのだろうけど、潰れないように程々な柔軟性を持てるようになるといいねぇ。
「僕三票───‼︎⁉︎」
「1票・・・すまない!俺に投票してくれた人!」
“自分に入れてなかったんですか・・・?”
(誠実でいいんじゃないかな?今回は落選しちゃったけど、来期に期待だね)
“マリさんは立候補しなくて良かったんです?”
(いやぁ、流石に雑事やってる余裕は無いからね・・・もしかしてやりたかった?)
“面倒な役回りは私も嫌ですから、気にして無いですよ”
投票結果から緑谷君が委員長、八百万さんが副委員長に就任。壇上の緑谷君は緊張のあまり片言になってしまっているけれど大丈夫だろうか。
「そんじゃHRは終わりだ、残りの委員は午後に決めるからそれまでに考えておけよ」
“何にしましょうか“
(無難に保健委員にしておこうかな、個性も活かせるし)
「次の1限はサポートアイテムに関する授業予定になってる。昨日の戦闘訓練で気付いたことがあれば相談するも良しだ。機会は活かせよ、特に緑谷」
「──はい!」
元気の良い返事を返す緑谷君、何気に先輩も目を掛けてくれている。こういうところを見ると先生っぽくて少し感動する。
そしてHRを終え寝袋を脱いだ先輩がのそのそと教室を出ようとした瞬間、廊下の外から小柄な人影が彼に向かって高速で飛びついた。
「お久しぶりです相澤センパァイ!!愛しの後輩が会いに来ましたよぉ!!」
「いきなり何すんだ郷里、まだHR中だぞ」
「HRは終わりってさっき言ったじゃないですかぁ〜」
(み゜っ゛・・!!??)
小柄な人影──
毎度思うけど子猫みたいに持つのやめて欲しいんだけどなぁ・・・じゃなくて!
確かに昔はそんな絡み方してた覚えはあるけどさぁ・・・!!流石に学生時代しかやったことない筈なんだけどなその絡み方ァ!!!
「誰あの人!?」
「先生の彼女とか?」
「いやぁ流石に違うでしょ」
「小学生はヤバめの犯罪ですよ先生!!」
「喧しい。彼女でもガキでもねぇしコイツは歴としたプロヒーローだ、今年で29のな」
「超天才錬金術師ヒーローこと『アルケミー』でーす!みんなもこれからよろしくねぇ?」
首根っこを摘み上げられたままウインクし、満足げな笑みを浮かべながら自己紹介を続けた。
ブツブツ・・・
「錬金術師ヒーロー『アルケミー』!主に災害救助や復興支援で活躍しているヒーローで熱狂的なファンが多いんだ!それにどう見ても10代前半の
ブツブツ・・・
「「「ハァァァァ!!!??」」」
“は・・・?なん、え、なにがなんですって?”
(そういえば、操奈ちゃんが僕の姿見るのはこれが初めてになるのかな?)
彼女の自意識が覚醒するよりも前に
残念ながらAFO傘下の都合よく人間を処理をするための病院だったから、直接入院記録を辿ってドクターの研究所を見つけることはできなかった。
・・・ま、あそこもそのうち調査が入る筈だから、何かしらドクターに繋がる手掛かりを見つけてくれればいいんだけど。
あのマッドサイエンティストAFOのフォロワーなのかなんなのか知らないけど、いつも悪趣味な脳無デザインの
“どこからどう見ても私と同年代くらいの女の子ですよね?”
(まぁー、そのぉ・・・ほら、大人になった自分とか想像できないじゃん?)
“ただの若作りじゃないですか!しかも性別違いますし!”
(へ、へへへ・・・)
金糸の如くサラサラと流れる長髪に煌めく紅玉を想起させる瞳は我ながら素晴らしい出来栄えだと感嘆できる。
けれどここまで仕上げるのにどれだけ試行錯誤を繰り返して辿り着いたのかを彼女に伝えるのは中々難しい。
あまり褒められる理由ではないし、彼女に話せばきっと、多分・・・いや絶対かなり怒られるような気がするもの。
しかしながら郷里真理の外見が華奢な10代前半の女性であることを知らなかったのであれば、これまでの大袈裟なリアクションにも納得できる。
どこか会話が噛み合わないなぁとは思っていたけどこれが理由だったのかぁ*3。スッキリしたよ。
「静かにしろ」
「「「はい・・・」」」
「改めましてサポートアイテムやコスチューム関係の授業を担当するアルケミーだよ。デザインが可愛くないとか色が気に入らないとか、ほんのちょっとしたことでも良いから気軽に相談してねぇ〜」
ひらひらと手を振りはにかむ
僕らがこうして雄英に来なければずっと誰からも疑われずに情報を流せていたのではないだろうか、ゾッとする話だ。
「俺はもう出る。生徒に余計なちょっかい掛けるなよ」
「そんなことしませんよぉ。あ、今度
「予定が空いてたらな」
“・・・何の話でしょうか?”
(睡先輩が飼ってる猫の話だよ・・・新しく孫が生まれたなんて知らなかったけど)
あの様子だと他の先輩達とも問題無くコミュニケーションは取れているらしい。もう既にAFOに先手を打たれて・・・いや、雄英に勤めることが決まったのなら先輩達に絡みに行くのは
何か意図したものではないだろう。ドクターもそこまで詳細な指示なんて聞かないからわざわざ頭に機械を埋め込んだのだし。
“大丈夫ですか?あまり・・・気分のいいものではない、ですよね?”
(んー・・・まぁ、ちょっとだけね。随分溶け込んでいるなとは思ったけど、最初から予想は出来ていたから)
想像していたよりは些か驚いたけれど、依然やるべきことに変わりはない。どの道あの身体の
──本当に?──
小さな疑問が脳裏を過ぎった。
──あれが本当に
・・・偽物の人形があそこまで完璧に生きた人間として振る舞うことなど果たしてできるのだろうか。幾ら生前の言動を模倣するにしたって限度がある・・・あんなの。
──あっちが
・・・どうでもいいでしょ、僕が偽物とか本物とか。もう死んでるんだし、仮にあれが本物の
──最初からずっと偽物のクセに、今更何を気にしているの?──
『自分でもわかっているでしょう。貴方のせいなのよ?』
・・・・・・
『紛い物の癖に!私の■■に近づかないで!』
・・・・・・・・・・・・
“───リさん!!マリさん!!!!何惚けてるんですか!!”
(ぇ・・・・・・ぁ?あぁ、ごめん、ね。ちょっと眠くて)
“とっくに授業始まってますよ、もー!やっぱりめちゃくちゃ気にしてるんじゃないですか!”
(ほ、ほんとに!本当に眠かっただけだから!──実は最近寝てなくてさぁ!)
“は??”
・・・それから、アルケミーは何の差し支えなく授業を進めていた。オールマイトと同様に教師初心者の筈だが手慣れた風に講義が出来ているのは、過去にインターン生を受け入れた記憶でも残っているのだろうか。
最初の騒ぎとは打って変わって静かな雰囲気のまま授業が終わった。・・・いや、峰田くんが血走った眼のままずっと何かをぶつぶつ言っている*5。ちょっと怖いね。
「アルケミー先生、個性のことで相談があるのですが、後程お時間をとっていただくことは可能でしょうか?」
「ん?いーよいーよ。放課後でもいいかな?」
「えぇ、構いません。場所は後でお伝えしておきますわね」
AFOがアレを調整したと言っていたが実際にどの程度僕の言うことを聞くのか、情報は引き出せるか・・・本当に偽物なのかは直接調べてみるまではわからない。
授業中ずっとアレに解析を掛けてみてはいるけど全て弾かれてしまっている。『錬成』同士で干渉しているのかわからないけれど、どの道詳細に調べるための時間は欲しいかったからね。
一応オールマイトには放課後に出歩かないよう連絡しておこうかな。現場に鉢合わせされても言い訳に困るし。
「授業でちらっと聞いた感じ、哀ちゃんとアルケミー先生の個性って結構似てる?」
「・・・そうですわね。それ故にお聞きしたいことがありましたので、早速機会を活かしていこうかと」
「いいなぁ〜・・・あ、そじゃん。コスチュームのこと相談すれば良かったかも」
「私の方から通しておきますよ。試作品を作ったのも私ですから」
「ほんと?ありがと〜!」
現状AFOの端末でしかないアレに関わりに行こうとするのは流石に止めさせてほしい。些細なことがきっかけでうっかりAFOに目をつけられるようなことがあれば後悔してもしきれない。
彼女の『透明化』はかつて操奈ちゃんを誘拐した脳無の上位互換と呼べる個性だ。
奪われようものなら視覚で捉えることのできない悪夢のようなハイエンドが誕生しかねないからね*6。
“しかし本当にいい度胸をしていますねマリさん。はじめてですよ、この私をここまでコケにした*7おばかさんは”
(ア、アヤーナ様!*8どうか、どうかお許しください!この度は誠にごめんなさいでしたぁ!!)
家に帰ったら土下座の練習しよ・・・。
委員長投票数を黒板に出したコマ、0票トリオ以外で1票自己投票しているであろう葉隠さんだけ表記が省かれているの透明人間感あって好き。