ぼくらのヒーローアカデミア TS脳無化錬金術ヒーローマリくんちゃんの終活   作:Radrabbit

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ようやっとUSJ編開幕、長くなりすぎて4話に分割です


17話 夢想を蝕むものたち

「久しぶりだね哀、学園生活には慣れたかな?」

「えぇ、お久しぶりですわお父様。アルケミー先生にもよくしていただいております」

「ふふ・・・それは良かった」

 

 アルケミーを通じてドクターへ連絡を入れた翌日のこと。日が昇りはじめた実に健康的な時間にAFOから電話が掛かってきた。

 傍聴対策なのか知らないがご丁寧に父親を名乗り白々しく話しかけてくる様が実に腹立たしい。

 

「ところでお父様。先日のマスコミ騒ぎはご存知でしょうか?先生方が随分と警戒されているようなのですが、少し不安になってしまって」

「もちろん知っているよ。()()()()()()()に色々と教えてもらったからね。でも心配することはない、雄英の先生方はとても頼りになるヒーローばかりさ」

「それを聞いて少し安心しましたわ」

 

 結果は黒。十中八九奴の仕業だろうとは考えていたが、万が一程度に想定していた別のヴィラン組織による犯行ではないという確証は得られた。

 それから学校生活について他愛の無い雑談を少し続け、そろそろ電話を終わろうかと思案していたところで奴が別の話を切り出した。

 

「実は甥が君のところへどうしても遊びに行きたいと言っていてね。お友達も沢山誘っていくと意気込んでいるんだ。来週辺りで何処か空いているかな?」

「予定は空いていますからいつでも構いません。楽しみにさせていただきますわ」

「君の後輩も着いていくそうだから、良ければ()()()()になってくれるかな?タフな個性だから多少荒っぽく相手をしても大丈夫さ」

「それは喜ばしいですわね。歓迎の準備をしておきますわ」

 

 僕の後輩、そして遊び相手、この符号が意味することは即ちハイエンド脳無のテストと捉えていいだろう。それなり数を連れてくるというのなら少数で密かに潜り込むのではなく、黒霧のワープを使って一気に攻め込む算段かな。

 それにしてもハイエンドも想定より随分早く出来上がったものだ。以前ドクターからは試作品が出来るまで恐らく半年は掛かると聞いていたのだけど・・・参ったね。

 

「それに今はあのオールマイトも雄英にいるからね。彼等もNo.1ヒーローを一目見る為にきっと喜んで行くだろうさ」

「そうですわね。私も良い息抜きにするつもりでお待ちしておりますわ」

「もちろんさ、楽しみにしていなさい。また連絡するよ」

 

 そう告げてから奴は電話を切った。全体的に普段よりも意気揚々とした声色をしていた。オールマイトを筆頭としたプロヒーローを擁する雄英に襲撃をかけるというのに、この余裕は果たして何処からくるのだろう。それだけ戦力に自信があるのか?

 

「はぁ・・・まさか本当に襲撃するつもりなんてね」

“まぁまぁ、今確証が得られて良かったと考えましょう”

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 後方黒幕面(AFO)が言っていた襲撃を仕掛ける日程。友人のタイミングというのは、恐らく青山君が「今なら襲撃が可能」と判断したタイミングにやってくるのだろう。

 根津校長の読みでは念押しに青山君本人からの連絡を待って襲撃を仕掛けにくる筈だと言っていた。それ故にここ最近は常に青山君を『千里眼』で監視していたのだ。後で色々謝るからごめんね・・・。

 

「バスの席順でスムーズにいくよう番号順に二列で並ぼう!!」

「・・・・・・・・・・・・」

「どうしたの?哀ちゃん」

「いえ、何でもありませんわ」

 

 今日はUSJでの人命救助訓練がある。盗まれたカリキュラム通りであればこの授業が襲撃するには最適のタイミングだ。

 怪しまれずに連絡を付けるならこのタイミングが最後のチャンスだと思うけど。

 

“動きました。物陰で誰かに連絡していますね”

(ありがと、後は音声を・・・あぁ、当たりだ)

 

 青山君の周囲に放っていた盗聴用ゴーレムから拾った声にはハッキリとAFOらしき相手にこれからの予定を告げる彼の声があった。

 直ぐにコートに取り付けたデバイスから根津校長に合図を飛ばし、何食わぬ顔でバスに乗る。

 

“緊張してきましたね・・・”

(大丈夫、ちゃんと約束通り無茶はせずに勝つよ)

 

 USJにはプロヒーロー達が万全の状態で待ち構えているのだから、安心とまでは言わずとも最悪の事態には繋がらない筈だ。

 

 

 

「哀ちゃん、もしかして体調悪い?」

「?いえ、特に問題ありませんよ。・・・何か心配をかけてしまったでしょうか」

「や、なんとなーく普段よりぼーっとしてる気がしちゃって」

 

(・・・ちょっと意識が散りすぎてたか、勘付かれるなんて情けない)

“青山さんとバスは私が視ておきますから、普段通りにしてていいですよ”

(ありがとね、頼むよ)

 

 青山君を写していた『千里眼』から意識を離して透さんに眼を向ける。ここ数日ずっと『千里眼』に集中していたせいで肉眼の視界をあまり認識できていなかったかもしれない。

 

「・・・実は少し緊張してしまって、それで気が散っているように見えてしまったかもしれませんわね」

「私もさっき話聞いてからは結構そわそわしてるから気持ちわかるかも!一体どんなことするんだろうね?」

 

 それにしても操奈ちゃんが持っていた『千里眼』への苦手意識は何処に行ってしまったのだろう。ここ最近は何だか鬼気迫る勢いで個性使用に貪欲になっている。

 今では増やした視界を一つ二つ自由に任せる程度は問題なく操作できるようになっているし、今も青山君を見ている視界とバスの周囲を上方から見下ろしている視界の二つを見事に制御している・・・あれ、なんか一つ増えた。

 

“癒しが足りないのでマリさんの顔も見ますけどいいですよね?”

(え?・・・うん、いいけど)

 

 彼女がある程度自由に『千里眼』のコントロール出来るようになってから、何故か自分の顔を見る時間が増えた。最近は夜に二人でお喋りしている時も鏡を見ながら話したがるし、何か彼女の琴線に触れることでもあるのかな。

 顔も別に操奈ちゃんそのものなのだから、そんなにじっくり見ても楽しいものではない気がするけど・・・まぁ本人がいいなら好きにしてもらおう。

 

「爆豪ちゃんはキレてばっかりだから人気出なそう」

「んだとコラ出すわ!!」

「その点影山ちゃんは愛嬌があっていいわね」

「愛嬌・・・?」

 

 振り返った蛙吹さんがそう言ってくれたけれど、僕の一体何処に愛嬌があるのだろうか。自分から距離を縮めないお嬢様スタイルはあまり親しみやすいキャラではないし、そのような印象を持たれているとは思えないのだけども。

 

「外見だけだとクール系で冷たそうに見えるけど、意外と冗談も言うし結構ぽやぽやしてるからギャップで人気凄そうだよね」

「ぽ、ぽやぽや・・・?」

「普段はキリッとした顔してるけど、ご飯食べてる時とか一人で虚空を見つめてる時とかはよくぽやーっと気が抜けた顔してるよ」

「なッ、なんですって・・・!?」

 

 な、なんで?影山哀のキャラクターが疑問視されないように結構意識して表情筋は固めていた筈なんだけど?

 

(あ、もしかして操奈ちゃんと話してるときの顔・・・?)

“すみません、可愛いのでいいかと思って放置していたんですが、よくなかったですね”

(どういうことなの・・・??)

 

 何故か最近じっくり『千里眼』で顔見ることが増えたなとは思っていたけども!・・・まぁいいや、今後気を付ければいいだけだし。

 

「今後は善処しますわ」

「何に?」

「キャライメージじゃねぇか?もう手遅れだと思うけど」

「やめときなよ上鳴、本人は気にしてんだからさ」

 

 ふざけた事を言っているとぶち飛ばすよ上鳴君。後耳朗さんもフォローしてくれてるけど顔が笑っているのは見えているからね。

 

「ま、人気と言っても色々あるからねー。そだ!哀ちゃんならグッズとか自分で作れるんじゃない?」

「ッ!!それならネズミのマスコットなんてどうですか?名前はネッズーでぬいぐるみを作りましょう*1

「宣言してから一瞬で崩れたぞコイツ・・・」

「すげぇ、今まで見た事ないくらい輝いた眼をしてやがる」

 

 名前がネッズーは少し安直過ぎただろうか。けれど名前は後回しで構わない。大切なのはどの程度クオリティにコストを掛けるかだ。

 僕の錬成であれば毛並みの再現は簡単だけど、それを量産品として生産するのならかなりの難題になる。この手のグッズは基本生産企業に委託することになるから僕がぬいぐるみを直接製作できるわけではない。

 

 生産過程を全て企業が行う以上、僕に出来るのは精々モデル品を持って行きそれを参考にしてもらう程度だろう。

 けれどあの毛並みを商品として再現するなら生半可な出来栄えには絶対にしてほしくない。あの感動を世に売り出すのならせめて───

 

「校長先生のぬいぐるみは色々な意味で危ないよ哀ちゃん!眼を覚まして!」

「これなら俺にもわかるぞ、校長の肖像権の問題だろ」

「惜しいな。それもあるが世間的にネズミのマスコットと言えば、東京にあるテーマパークの世界的に有名な鼠のキャラクターを指すんだ」

「そうなのか・・・」

 

(あ、青山君の様子はどう?他に何かしてない?)

“異常なしですよ、そのまま可愛くリラックスしててください”

(かわ・・・?まぁ何でもいいけど、そのまま頼むよ)

 

 ──でもどうしよう。もし仮に商品が出せれば何体かは部屋に置くことになるけど、それに触れる度に根津校長の毛並みを思い出してしまうのではないだろうか。

 ほんの少し撫でるだけであれほどに心を奪われてしまったのだから、そんな記憶を四六時中思い起こしてしまってはよくないでは?

 いつか我慢出来なくなって根津校長を攫いにいくかもしれない・・・いや、日常的に抱きかかえてしまえば根津校長も僕のことを直接監視していられるからWin-Winなのでは?どちらにせよ今直ぐ彼に確認を───

 

「あの影山と轟がコントしてる・・・」

「二人とも天然キャラだったのね」

「見ねー間に何かすげぇ仲良くなってんじゃん!」

 

「ものすごくもふもふに仕上げますから、それでもダメでしょうか?」

「ダメだよ!?いつになく押しが強いね!?」

“良い顔ですね。普段より三割り増し幼く見えます”

 

 

「何やってんだアイツら・・・おい!そろそろ着くぞ、いい加減にしとけよ!」

「「「ハイッ‼︎」」」

 

 おっと、そろそろ思考を切り替えないとね。

 

 

◇◇◇◇◇

 

「「「すっげー‼︎USJかよ‼︎?」」」

“思っていたより意外とそれっぽいんですね、怒られなかったんですか?”

(あくまで学校の訓練施設だから、特にお咎めとかは無かったらしいよ)

 

 何事も無くUSJに入ってきたが『千里眼』で確認してみた限り、今の所はまだヴィランが施設内に待ち伏せしているということも無い。であれば機を見て黒霧が一斉に転送してくる手筈になっていると思うけど。

 

HA──HAHAHAHA!!!私が・・・・・・既に来ていた!!!

「ちなみに俺もいるぜリスナー共!!」

「僕もいますよー」

「オールマイトにプレゼントマイク、13号まで!?何か人多くねぇか!?」

 

 予定通りの四人がUSJにて待ち構えてくれていた。オールマイト以外には根津校長から

ヴィラン襲撃の可能性を警戒して念のために、という趣旨で指示を受けている。

 とは言え相澤先輩が内心「ここまで人要るか?」なんて考えているのはわかる。中々心苦しいけれどそれも校長が皆の裏を洗って確実に白だと判断できるまでの辛抱だ。

 それに先程合図を受け取った校長が既に雄英を警戒態勢にシフトしてくれている筈なので、何処かしらで警報が鳴れば直ぐに他の教師陣が向かう手筈になっている。

 

「えー、始める前にお小言を一つ二つ・・・」

(さて、今のうちにこそこそ準備しておこうか)

“『千里眼』フル稼働です!施設内の監視は任せてください!!”

 

 USJ(此処)は資源も豊富にある。何なら必要があれば好きに使い捨てて構わないと許可も得ているので、黒瀬ちゃんがありがたい心構えを問いてくれている間に下準備を始めておく。

 此処はヴィランたちにとっての袋小路。流石に黒霧を抑えて主犯の死柄木君とやらを抑えるのは難しいだろうが、それ以外の有象無象には大人しく捕まってもらう。

 可能な限り脳無も捕縛しておきたいが、あまりに防衛が上手くいき過ぎた場合、流石に裏切りの線で僕はまだしも青山一家に魔の手が伸びる可能性がある。高望みはできない。

 

“施設内で複数一斉にゲートが開きました!!広場が一番近いです!!!”

(きた・・・)

 

 事前に決めておいたハンドサインを密かにオールマイトへ送る。彼の笑顔が一瞬だけ強張り、その横顔を広場へと向けた。

 

「一塊になって動くな!!!マイクと13号は生徒を守れ!!オールマイトは──」

私が行く!!!!

 

 広場方向に出現したゲートから青白い髪の青年が歩を進めると同時、相澤先輩が僕らに指示を出した。そして先輩が指示を出すよりもさらに早く、オールマイトが轟音を立てて広場に突出していく。

 

「DETORIT SMASH!!!」

 

 音を置き去りにした豪腕が青年に振るわれ激しく土煙が舞い上がる。生半可なヴィランなら確実に今ので伸びている筈ではあるが・・・。

 

「危っぶねぇなぁ。流石国家公認の暴力だぜ。俺が無害な一般人だったらどうすんだ?」

「間違ってたら後で幾らでも謝罪するとも!だが此処にワープ個性使ってまで乗り込む輩が一般人は些か無理があるぞ!」

「ひひ、正論・・・」

 

 黒い巨体が青年を庇いオールマイトの拳を受け止めていた。十中八九上位の脳無、彼のパワーを正面から防御したことを鑑みるにアレがオールマイトの為に用意した個体かな。

 

おぉぉおおーるまイ、と?おマエ、か!!!強イな!!

「ぬ!?何という馬鹿力・・・!!」

(アイツが多分オールマイト対策の脳無・・・だよね?普通に喋ってるし、少なくともパワーは互角に近いレベルのハイエンドと考えた方がいいか・・・厄介な)

 

 拳を受け止めた巨大脳無が軽くオールマイトの腕を振り払い、反撃のストレートを見舞う。オールマイトの一撃とほぼ同速度で振るわれた反撃は上手くいなされているが・・・アレは危険だ。

 オールマイト以外が直撃すれば間違いなく()()する程の威力。下手に戦いへ干渉すれば邪魔になってしまう。

 

 想定していた中でも最悪に近いケース。現状最も厄介な戦力であるハイエンドが複数体投入される可能性。

 確かにそれを踏まえて迅速な増援が出来るようにしてもらってはいるが、これでオールマイトがゲートから出てきた脳無を全て制圧するプランは消えたと判断していい。

 

「初めまして平和の象徴。アンタをぶち殺す為に沢山玩具を連れてきたんだ、存分に楽しんでくれよな」

「言ってくれる・・・!!お友達が居ないと怖くて安心できないか!?」

 

 黒霧のゲートから続々とヴィランが歩み出している。わざわざ数を調べなくともUSJ施設を埋められる程に人数は多いけど、脳無以外は寄せ集めの雑兵ばかりと聞く。数合わせ用のチンピラ程度なら最悪生徒達の自衛でもある程度は通用するだろう。

 

(守護獣(ガーディアン)+『潜影』──『影憑法師(ドッペルゲンガー)』)

“影との接続はお任せください!”

(お願いね。操奈ちゃん)

 

 13号(黒瀬ちゃん)の小話の間に錬成していたゴーレムを僕らの影から展開し、皆の視線がヴィランへ集中している隙を付いて各々の影に潜らせておく。雑兵のヴィラン程度ならこの子達で充分時間を稼げる筈だ。

 

「楽しイな!!おぉぉるマイトォ!!!」

「ヒ、火、オレもおもちゃ、欲しいナ・・・」

「vdyx?」

「amgt'p」

「──────・・・・・・」

 

 ゲートを見ればゾロゾロとまるで大名行列でも進んでいるかのように脳無達が次々と歩み出てきていた。

 中から下位のノーマルタイプが殆どだが内一体の喋る個体は明らかにハイエンド、AFOの予定通りならあれが性能テスト用の個体なのだろう・・・だがそれよりも。

 

(ぉ、おま・・・お前!!多いでしょ数が!!どんだけ脳無連れてくれば気が済むんだよバカ!!鹵獲されて解析されるとか考えないの!?)

“・・・どうします?”

(一番死亡確率(リスク)の低い僕らがAFOの思惑通りに、もう一体のハイエンドを抑えるしかないね)

“わかりました。皆さんのことは私が視ておきますから、マリさんは敵に集中して戦ってください”

 

 ここから先は死ぬ気で気合い入れろよ郷里真理、誰一人死なせない覚悟を決めろ。

 

「ヒヒひひ火、楽しミだなぁ・・・」

 

*1
根津校長の毛並みに脳を灼かれた大人。もう手遅れかもしれない




・USJ脳無
めでたくパワーアップして登場。がんばれオールマイト!
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