ぼくらのヒーローアカデミア TS脳無化錬金術ヒーローマリくんちゃんの終活   作:Radrabbit

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20話 All for you

 

 

「ふぅ・・・・・・流石に、この数はキツイな」

「お、お疲れ様轟君!!怪我とかは大丈夫!?」

「それはお前のほうだろ。何だその指、めちゃくちゃになってんぞ」

 

 脳無の群と戦っていた緑谷達三人は無事・・・とは言えないものの、最低限の負傷で戦闘を切り抜けていた。

 優秀とはいえ素人同然の子どもを連れてプレゼントマイクが数十の脳無達を抑えられたのは、一重に轟と彼の相性が良かったことと、事前の戦闘での消耗が溜まっていたからである。

 

 幾らタフネスと素の身体能力に特化したタイプの脳無と言えど、『抹消』により個性を欠如した状態でマイクの広範囲攻撃を何度も受け続けられるような技量を彼等は持たない。

 今回の襲撃の為に質より量を優先されて生み出された脳無達は、何度もマイクの必殺が直撃したことで限界に達しようとしていたのだ。

 痛みを感じない兵隊であるが故にまるでゾンビのように不死身に思えても、実際には途中で力尽き倒れた個体がいるように限界の近い脳無が殆どであった。

 

「めちゃくちゃ助かったけどよぉ!緑谷お前後でマジ説教な!」

「え゛!?」

「たりめぇだろバカ野郎!お前ェ指どうなってんだ!?TVならモザイクレベルだぜソレ!!」

 

 特に轟の氷結に拘束された状態ではマイクの攻撃の通りが格段に向上した。身動きすら取れない状態で受けたのだから当然だが、この結果は彼が氷を放ちやすいよう轟の周囲で護衛と陽動に徹底した緑谷の功績でもある。

 

 戦いが始まる前、個性の制御に失敗した瞬間己が役立たずどころか邪魔な荷物になると緑谷は考えていた。それ故に最も戦闘不能になるリスクを抑え、かつ敵を倒しやすい陣形を築く為自分の指を犠牲にする戦法を思い付いた。

 その成果が今の状況であり、彼がこの後数日に渡り複数の教員から絞められることが確定した瞬間でもある。

 

「赤黒くなった指構えてるお前見た時は流石に焦った」

「俺ァ後ろ見て心臓止まりそうになったぜ」

「す、すみません!・・・早く個性の制御できるようにならないと」

「ま、ともかくサンキューなBoys。後はイレイザーとオールマイトがどうなってんのか気になるとこだが・・・」

 

 中央広場を見下ろすマイクの眼には倒れ伏す巨漢、破砕された噴水に浮いている黒霧、白目を剥いて倒れている死柄木弔の姿が映っていた。

 状況だけ見れば間違いなくオールマイトの勝利だ。しかし彼は立ち尽くした姿勢のまま動くことなく不動を貫いている。

 

(んー・・・限界ギリギリまで消耗したっぽいな。あっち行ってやりたいとこだがいい加減緑谷達下がらせねぇとなぁ。イレイザーに殺されちまうぜ・・・今なら半殺しで済むかな・・・)

 

 イレイザーから任された二人を連れてあの場に行くのは避けたい。特に緑谷はそろそろアドレナリンも切れて痛みで行動不能になる頃合いだろう。

 しかし限界間近のオールマイトを置いて撤退するのも不味い。その内倒れているヴィラン達が復活するかもしれないし、最初に潰したチンピラ達もそろそろ目覚めるかもしれない。イレイザーがサクッと解決して戻って来てくれれば非常に助かるのだが、一体どうしたものか。

 

「ん?」

 

 顎に指を添えて思案するマイクの横を一発の弾丸が通り抜ける。一瞬間を開けて二発三発と弾丸が放たれていった。

 

「また新手か!?」

「いやいや違ぇよ!後ろ見てみな、よぉーやっと来たぜあいつら」

「あれは!?」

 

 マイクの言葉を受けて振り返った二人の眼に、次々とUSJへ入ってくる雄英教師達の姿が映る。

 四方八方にヒーロー達が駆けて抜けていき、各自が生徒達の保護へ迅速に向かう。その内根津校長を肩に乗せたエクトプラズムが方々に分身を飛ばしながらマイク達の場所まで降りてきた。

 

「すまない。()()()()()()()()ヴィランの掃除に手間取ってしまった。皆無事かい?」

「根津校長!」

「外でリカバリーガールが待機しているのさ。エクトプラズム、二人を連れて彼女の所に」

「ヨク頑張ッタナ前達。後ハ我々二任セテオケ」

 

 エクトプラズムの分身が緑谷を担ぎ上げ、片脇に抱えられた緑谷は彼をハッと見上げて救援を求めた。

 

「そうだ!エクトプラズム先生!向こうで相澤先生が戦ってるんです!すぐに救援を!!」

「安心シロ緑谷、スデニ他ノ者ガ各方面ニ向カッテイル」

「念の為複数で行った方がいいぜ。火力だけならエンデヴァー級だ」

「ナント・・・連絡ヲ入レテオコウ」

 

 マイクの補足に警戒度を引き上げたエクトプラズムが復旧した通信機でヒーロー達へ伝達を行う。そして彼に続きセメントスが中央広場に向かい、辺りに倒れている脳無やヴィラン達をコンクリートで捕縛していく。

 

「ゲフッ!!ゴフッ!!」

(直撃は最後まで避けていたというのに、それでもここまで消耗するとは・・・完全に想定外だ)

 

「ご無事ですか?オールマイトさん」

「セメントス!すまない、手間をかけるね」

「いえ、こちらこそ救援が遅れて申し訳ない」

 

 頭を下げつつ捕縛作業を続けるセメントスにオールマイトが血反吐を吐きながら言葉を交わす。活動限界に近づいていた彼からすれば大変ありがたい助けであった。

 ハイエンドがいつ動き出しても対応できるよう構えていた身体から少し力を抜き、口から煙を思い切り吐き出して一息ついた。

 

「しかし恐ろしいヴィランですね。まさかオールマイトさんをそこまで追い詰める程の相手とは」

「彼は・・・いや、確かに難敵だったよ。相澤君達の助力が無ければ危なかったかもしれない」

 

 話している間にもぐるぐるとハイエンド(フィスト)の全身を包むように強固にセメントが張り巡らされ、他のヴィラン達と比べても一層頑丈に拘束がなされていた。

 そして最早自力での脱出は不可能と断言できるほどに固められていくその姿を、息を殺して静かに見つめている人間が一人。

 

(不味い・・・ヒーロー達が次々と集まってきている・・・!()()が起動しない以上何とか隙を見て死柄木弔を逃さなければ!)

 

 実のところ黒霧はほんの少し前に辛うじて意識を取り戻していた。だが彼は目を覚ましてすぐハイエンド(フィスト)が完全に停止させられたことに気がつくと、噴水に倒れ伏した格好のまま気絶したふりをしてオールマイトに付け入り撤退する隙を伺っていたのだ。

 彼は僅かでも状況を把握しやすくする為にほんの少し体勢を整えようと身じろぎし、数瞬の隙間を縫って個性(ワープゲート)を使おうとしていた。

 

(もう少し・・・二人の意識が完全にハイエンド(フィスト)に向いた瞬間ゲートを展開する他ない!)

 

 彼にとって最も不運だったのは、二人の注意がハイエンド(フィスト)に向き黒霧への警戒が薄くなる瞬間を見逃すまいと全神経を注いでしまった結果、彼自身を注視していた相手を見逃してしまったことだろう。

 

Boooom!!!!

 

「ヌォ!?」

「オォイモヤカスてめぇ!!今動いたな?探ってんだろ?オールマイトの意識が逸れる瞬間狙ってワープしようって魂胆だろォ?わかりやしィんだよ馬鹿がァ!!」

「爆豪少年!?」

「いきなり何してんだ爆豪!?せっかく気絶してたかもしんねぇのに!」

「よォく見りゃコイツがこそこそ動いてんのわかるだろが、目ん玉かっぽじって見殺しやがれ」

 

 身動ぎしていた黒霧を爆豪が爆破し押し倒した。飛ばされた先でヴィランを片付けた爆豪と切島は脱出口を抑える為に黒霧を探していたのだ。

 そしてこの広場に到着して早々爆豪が黒霧を目敏く見つけ爆破し、恐ろしいほどの勘の良さで彼の霧化できない本体に掌を乗せている。

 

「っぱ胴体は霧に出来ねェんだろ。わざわざヒントくれて助かったぜ・・・おっと、一応言っとくがお前が何かしたと俺が判断した瞬間爆殺する。死にたくなきゃ大人しくしてろ」

「それ完全にヴィラン側の台詞だぜ爆豪・・・」

「すまない爆豪君、助かったよ!」

「ケッ」

「先生に向かって何つー態度取ってやがる!すんませんセメントス先生!拘束終わったらすぐコイツと下がりますんで!」

 

 詰み、の二文字が黒霧の脳裏に過る。ハイエンド(フィスト)は沈黙したまま拘束され、彼自身の偽装も見破られた。  

 影山哀(ドール)と遊んでいる筈のレオンの音沙汰がなく、あの耳に悪い爆炎すら聞こえず静かになっている状況から見て救援は来そうにないことを彼は静かに悟った。

 

(申し訳ありません・・・死柄木弔・・・)

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・ア゛」

「ム、意識が復活したのか?」

「全身を固めてありますが、念の為目を離さないようにしましょう。貴方をそこまで追い詰めた相手です。警戒して損はない」

 

 沈黙していたフィストの意識が復活する。けれど全身をセメントで固められた彼は僅かに指先を動かすことすら許されず、呼吸する為に顔部分だけがセメントの塊から出されている状態で固定されていた。

 如何にオールマイトに匹敵するほどのフィジカルを持つ彼であっても、関節一つ動かせない状態で固められてはセメントを砕く程の膂力は発揮できない。

 

『おや、困っているようだねフィスト君』

 

 呻いているフィストの脳裏に声が響いた。ゆるゆると酷く曖昧になっていく自我の境界で、深く冷たい声が耳元で囁くように指示を出す。

 

『こういう時の為に教えたことがあるだろう?その通りにやってみせるんだ。・・・このままではオールマイトに負けてしまうよ?』

「Gi・・・ガ・・・」

 

 囁く声にフィストは拒絶の意を示すように呻いたが、それを押してAFOは彼に話を続ける。

 

『駄々を捏ねてる場合じゃないだろう。その為に脳無を沢山連れて行かせたんだぜ?皆の力を合わせてオールマイトを倒すんだ!』

 

 フィストの意思に反するように彼の身体に細く細やかな赤い線が走り、ふるふると液体が震えるように波紋が走る。

 

「ん・・・?何だ、様子が──」

「離れるんだセメントス!!」

 

 

「Aarrrrrrrrrr!!!!」

マジかよ(Jesus)!君ちょっとしつこ過ぎやしないか!?」

 

 歪に膨張した肉体が砂の城を崩すが如く容易くセメントを破壊し、みるみるうちにフィストがその姿を変えて真っ黒なスライムのような形態に変化した。

 粉砕され吹き飛んだセメントの破片が辺りに舞い上がり、スライムから伸びた触手が彼と同じようにセメントで固められていた脳無達に突き刺さっていく。

 

『【粘体】+【融解】ほら頑張れ、もっと脳無を集めないと身体が崩れてしまうよ』

 

「なんだなんだ!?倒したんじゃなかったのかよ!」

「キメェな・・・おい、黒霧(コイツ)から目ェ離してんじゃねェ」

「無茶言うなよ!?」

 

 突き刺した脳無達の肉体がぶるぶると溶け、脈動する触手が飲み干すようにその液体を取り込んでいく。

 やがて絶えず胎動する悪意の煮凝りがマウントレディに比類するほどの巨人へと形作られていった。

 

『よしよし、良くできたねフィスト──さぁ、まずは黒霧を取り戻すんだ』

「Qxaaaaaaa!!!」

「不味い、そこから離れるんだ二人とも!!──ガハッ!?

 

 オールマイトは爆豪達二人に警告を放ち自らも彼らを救わんと脚を振り上げたが、先程までフィストを倒す為に重ねた無茶が数秒彼の脚を止める。

 そして顔面を蒼白にしたセメントスが盾を形成するよりも早く、巨大な拳が小さな子ども二人に振るわれた。

 

「爆豪少年!!切島少年!!!」

 

 オールマイトを彷彿とさせる拳圧が大気を揺るがし、丁寧に黒霧の真上を殴りつける。次の瞬間には黒霧の側から人の姿が消え失せ、勇敢な少年二人の末路をオールマイトに想起させた。

 彼が己の判断の遅さを呪い、脳髄が沸騰するかのような激情が込み上げてきそうになったその瞬間、頼もしい声が彼の耳に届いた。

 

「ったく、緑谷といい爆豪といい、威勢が良すぎるってのも考えもんだよ」

「相澤君!!」

「・・・ッソがぁ・・・!!」

「え!?なに!?なんか俺引っ張られた今!?」

「私今間違いなく寿命が縮みましたよ・・・」

 

 地面の赤い染みになる寸前で二人はイレイザーの捕縛布によって巻き取られていた。

 少し息の乱れていた相澤は最悪の想定をして張り詰めていた呼吸を整える。もし先程影山が自分を説得してこの場に向かわなければどうなっていただろうか。

 彼は肝の冷える想像(IF)を首を振って追い出し、救助した生徒二人をエクトプラズムの分身に預けて前線に上がる。

 

「また助けられてしまったね。本当にありがとう相澤君」

「別に気にしなくていいですよ。仕事ですんで・・・で、コイツさっきのヴィランですよね。今どういう状況ですか?『抹消』使ってますけど姿が戻らない」

「あの沢山いた脳味噌ヴィランを片っ端から吸収しちゃってね・・・」

 

ラウドヴォイス!!!

「ダメだな。削れるっちゃ削れるがすぐ再生しちまう」

「っかぁー!ちったぁレスポンス返せってのスライムマン!!」

 

 巨人化したフィストはマイクの騒音に全く反応を示さず、スナイプの狙撃で表層に傷は付けられているものの有効打にはなっていなかった。

 

TEXAS SMASH!!───・・・この形態でも『ショック吸収』は機能しているのか、全く厄介だな・・・!!」

 

 拳圧で肉体が波打つように撓み巨体が少し仰け反った。しかし怯む事なく反撃の拳と触手の群がオールマイトへ襲いかかり、彼は細かくステップを刻むようにして攻撃の隙間を避ける。

 

「デカくなった分多少動きは鈍くなってはいるが・・・吸収したヴィランを全身に外装として身に纏っているわけか。奴さんとことん『抹消』が嫌いらしいですね」

「校長、ドウ攻メル?」

「大丈夫、情報収集はこれで十分なのさ──オールマイト!まだやれるね!?」

ゲフッ・・・当然です!!

 

 血反吐を吐きつつオールマイトは根津校長に応えて気丈にその拳を握る。根津校長が手短に作戦を皆に伝え、暴れる爆豪と申し訳なさげに頭を下げる切島を抱えて下がるエクトプラズムの分身を除き彼らは聳え立つハイエンドの眼下に並び立った。

 

「まずは動きを止めるよ!」

「大震捕強!!」

「強制執行ジャイアントノーツ!」

 

 セメントスの操るコンクリートの大波が素早くハイエンドの下半身を包み込み固定。そして今出せる全ての分身を集め巨人を模したエクトプラズムの分身が背後からハイエンドを羽交締めにし、セメントの上から重ねるように首から下を分身の中へと沈めていく。

 

「次!隙間を抉じ開けるよ!」

ブラスト・ブレッド、頭に全弾ぶち込むのは流石に初めてだな」

 

 スナイプの銃器から放たれた六つの弾丸が正確に頭部へ撃ち込まれ、貫通力に秀でた弾丸が表面装甲に小さな傷を生む。そして弾頭に込められた爆薬が炸裂し、連鎖的な爆破がフィストを襲う。

 

「Nu、too!?」

 

 急所に集中して解放された火薬によって頭部装甲に刻まれた亀裂が深く広がった。とはいえこのままであればほんの数秒で癒える傷だろう。

 だが、この場にはそれを許さない人間しか存在しない。

 

「一点集中ゥ──ラウドヴォイス!!

「Aaaaaa!?」

 

 エクトプラズムの身体を駆け上がったマイクが超至近距離でノイズを解放。粘性の装甲が爆音波に共振し開いた隙間が徐々に押し広げられ、ようやっとその地肌を光に晒す。

 

「相澤ァ!!」

「イレイザーだ山田!──『抹消』効いてます!!オールマイト!!!」

「ッ!!??」

更に向こうへ(Puls ultra)!!DETROITォ──」

 

 オールマイトは強く深く拳を握り、今度こそ彼を立ち上がらせてしまわぬようにと死力を振り絞る。イレイザーの捕縛布がマイクを回収したのを視界の隅で確認し、その無防備な頭部へ全てを解き放つ。

 

「SMASH!!!!!」

 

 拳を叩きつけられた空間が歪む程の一撃。

 巨人を抑え込んでいたエクトプラズムの分身が瞬時に弾け飛び、固定されたコンクリートが木っ端微塵に吹き飛んだ。

 

「────a・・・g・・・・・・

 

 絶命に近しい攻撃を受けたフィストは轟音を立てて大地に倒れ伏し、今度こそ抵抗を完全に停止させる。

 

 そして──盛大にその巨体が弾け飛んだ。

 

「ギャ〜っ!?臭ェし何かぬるぬるしてんだけど!!」

 

(糞っ!目眩しか!)

「誰かワープ個性のヴィランを!!」

 

 巨人と化したフィストの個性を消している間も黒霧が動けぬよう注視していたイレイザーだったが、その身を包む程大量の粘性の液体が降りかかった事でそれを振り払う隙が生まれてしまった。

 

『身体を繋ぎ止めていた個性が消え甚大なダメージを受ければ、当然その肉体は形を保てず四散する。だが囮としては十分機能したね。数の多い失敗作の処分には役立ったかな』

「まさかここまでしてやられるとは・・・我々は些か雄英を舐め過ぎていたようです」

「ボロカスにやられるしキショい泥も被るし最悪だったぜ・・・でも今回のでよぉくわかったよ」 

 

 漆黒の霧が広がり死柄木弔の身体を包み込んだ。遠距離に居たため泥を被っていなかったスナイプとエクトプラズムが追撃を仕掛けるが、黒霧の展開したゲートに阻まれ未遂に終わる。

 満身創痍の身体で憎しみを滾らせた死柄木弔が、同じように全身ズタボロの姿で彼を見ているオールマイトを睨み付けた。

 

「俺はお前が大っ嫌いだ・・・次は必ず殺すぞ、平和の象徴(オールマイト)

 

 

 

 

 

 

「titi」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

『お疲れ様弔、今回は残念だったね』

「話が違うぞ先生・・・!あれだけ戦力連れてったのに負けたじゃないか!・・・何が最上位(ハイエンド)だ!!出来損ないの間違いなんじゃないか!?」

 

 音声だけが流れるテレビ台からAFOが通信を繋げ、ボロボロの身体で死柄木が激昂しながら答える。

 彼の思い描いたプランでは絶対的なハイエンドの力でオールマイト共々惨たらしく殺す清々しい算段を立てていたというのに、それを盛大にぶち壊されてしまった怒りのままに吠えた。

 

『弔!ワシとAFOの愛しい大作に向かって何ということを!!』

「炎狂いの方も白チビに掛り切りで碌に役に立たなかった!生徒のガキ一人殺せないで大作!?自信過剰すぎて笑っちまうぜ!」

『ドールちゃんは特殊な性質の試験作なんじゃ!後発のレオンちゃんと渡り合えたこと自体が価値のある結果なのじゃよ!』

 

『まぁまぁ落ち着きなさい二人とも。今回は丁度いい模擬テストだったとでも思えばいいさ』

 

 憤慨する死柄木とドクターがヒートアップしていく前にAFOが宥めにかかる。

 

『ハァ・・・しかしまさか二人とも回収出来なんだとは、可哀想にのぅ』

「申し訳ありません・・・彼等を転送する余裕はありませんでした」

『あまり気負わなくていいさ黒霧。それによく見てみるといい、片方はちゃんと()()()()()()()()()()

 

 AFOの言を受けてゲートを開いていた場所を黒霧が見れば、丁度脚元に機械仕掛けの鼠のような小さな物体が彼等を見上げていた。

 

「ッ曲者!!」

「ti──」

 

 静かに地面を這っていた鼠が黒霧に踏み潰される。鼠は鈍い音を立てて砕けバラバラになって地面に散らばり、零れ落ちたパーツが転がって死柄木の脚に当たった。

 

「お前さぁ・・・何余計なもの飛ばしてんだよ。此処がヒーローに嗅ぎつけられるだろうが」

『弔、よく見なさい。それはヒーローの物じゃないよ』

「あ゛?」

 

 ガリガリと喉を掻きむしって苛立ちを加速させる死柄木がAFOの指摘を受けて足元をよく見つめた。

 すると潰れたネズミの残骸からコポリと水中から浮上するように、炎狂い(レオン)の頭部が床に転がった。

 

「・・・・・・」

『レオンちゃんではないか!!【超再生】が機能しなくなる程に頑張ってくれたんじゃのぅ・・・なんて親想いな子なんじゃ

『流石にハイエンド同士だと彼女も加減に苦労したようだね。黒霧、それをプラントに送ってくれるかな?』

「了解しました。・・・やれやれ、遊び過ぎないようにと忠告はしたのですが」

 

 黒霧が首を振りながらレオンの頭部を何処かへと転送する。それを何となく見つめていた死柄木はゲートが消えてから視線をテレビ画面に戻した。

 そして尚も涙声で話すドクターが死体人形に向けるあまりの熱量に、怒りを通り越して引いた死柄木は椅子に深く腰掛けて溜息を吐いた。

 

「向こうも首だけになってりゃ面白いけどな」

『超再生以外の耐久系個性は入れとらんから直撃すれば消し炭の筈、じゃがレオンちゃんを送ってくれたということは!無事テストを乗り越えてくれたようじゃのう!!』

「あ?あの白チビ死んでもいいのかよ」

『試作機と言ったろう?元々アレは()()()()()()()()。死ねば雄英に大打撃、生きている間は雄英が勝手に育てて良いデータが取れる。だから極論、どう転んでもいいのさ』

「ふぅん・・・ま、どうでもいいや。次はもっと強いの寄越せよ先生」

 

 奈落のように澱んだ瞳で彼はAFOへ気軽に声を掛ける。気を利かせた黒霧がカクテルを用意し、顔の手を外した死柄木が緩く波打ったグラスの水面に映る己の血走った眼を見つめた。

 

『もちろんさ・・・ただ、もっと強い個体を作るなら時間が掛かる。それに君もその傷を癒さないといけない。じっくり時間をかけて準備を整えよう』

「・・・・・・」

『そして君がこの社会の新しいシンボルになるんだ。世界に“死柄木弔”という恐怖の象徴を示す為にね』

「随分大層な目標設定なんだな。初回がこんなザマで出来んのかよ」

 

 今回の手酷い敗戦を思い起こした死柄木が、突き刺すような鋭い痛みを発する腹部を撫で苛立ち混じりにAFOへ返答した。するとゆっくりとだが絶対の自信に満ち溢れた声音で彼を安心させるように言葉が送られる。

 

『大丈夫さ弔、例え何度失敗したっていい・・・全ては君のためにある。その為に僕がいるんだぜ』

 




一部の先生方の判明している技が少ない為考えられた捏造技シリーズ

・大震捕強
判明している必殺技が「破城槌」しか無いセメントスの捏造捕縛技、普段は技名言わずに拘束するせいで拘束技の名前が全然わからん・・・。

・強制執行ジャイアントノーツ
バイツで呑み込むにはサイズがデカすぎるので派生技みたいな感じに。巨大化ヴィラン系相手にするときは巨人形態のままプロレスやったりできる・・・といいなぁ。


・ブラスト・ブレッド
何一つ技名がわからないスナイプ先生の捏造技。普通の弾丸だけだと流石に威力が足りない筈なので高火力技の一つや二つはあると思いたい。
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