ぼくらのヒーローアカデミア TS脳無化錬金術ヒーローマリくんちゃんの終活 作:Radrabbit
体育祭編で強引に挟むほかに丁度よさげな章が無かったともいいます。
ちなみにサブタイ4文字のお話がマリくんちゃんの過去編です。
「おはよー!君がアタシのお隣さん?」
「ひぃっ!?・・・ご、ごごごめんなさい!すぐのくから!」
「どしたどした、そんな震えないでも・・・あ、もしかして私の顔怖かった?」
「こ、ここわわわくなんてないよ?ほんとだよ?」
「怖かったかぁ・・・」
郷里真理の死から11年前。雄英高校ヒーロー科1-A教室にて。
桜の花びらが開いた窓から流れ込む出会いの季節、隣の座席に座った蛇を連想させる爬虫類系のような異形系女子の挨拶におろおろと視線を泳がせて震える一人の生徒──郷里真理がいた。
「
「いやいや待ちなって
「ないよ」
蛇喰の子ども受けの悪い人相を背後に座る両背から翼の生えている
この光景を頬杖をついてにやにやしながら笑う鳥塚だったがそれを蛇喰が気にすることもなかった。そして長年の経験からどう対応するべきか知る彼女はとっておきの持ちネタを真理に披露する。
「こーいうときはね・・・ほれ!蛇ギンチャクの舞!」
「わぁ!なにそれなにそれ!すごーい!」
手品でも見せるかのような気軽さで蛇喰の頭部が8分割され、B級映画のポスターに載っているエイリアンを思わせる形状に変形する。
うねる海洋生物染みたそれを見た真理は怯えるでもなく面白い玩具でも見たかのようなリアクションで手を叩いて喜び、恐怖から一転してキラキラとした輝きを瞳に宿していた。
「うわ怖」
「ああん!?可愛くてぷりてぃでしょうが!」
「蛇頭がクリオネみたいに割れたら怖いんだよ寄生獣か己は」
「シンイチ・・・」
「せめて右腕で喋ってくれない?」
うんざりした表情で鳥塚が蛇喰を見つめていた。
蛇喰は普段から子ども等に見た目を怖がられたときのための持ちネタを幾つも持っていたが、今回の頭部8分割は鳥塚にとっても初めて見る新技だった。
蛇喰の披露する持ちネタの7割は大抵鼻で笑える変顔なのだが、今回披露されたネタは偶々真理に受けただけで余計に状況を悪化させる3割のようだ。
「それで、君は誰?なんかちっこいけど、ほんとに新入生?」
「ぁ・・・ぇ、えと、ね。ちゃんと15さいだよ・・・たぶん」
「ふぅん、まいいや。そんで名前何?私は
「なんか悪化してない?」
「ごうりまり、です・・・よろしく?」
疑問符を浮かべながら真理も挨拶を二人に返す。
ひらひらと軽く手を振る鳥塚と笑っているのかいないのか分かりづらい蛇フェイスの蛇喰を前にどうすればいいのか彼は少し戸惑っていた。
「にしても隣の席がこんなかわいい女子で安心したよ。ゴリッゴリの鷹みたいな筋肉マッチョ系だったらどうしようかと思ってたんだよね~」
「高1にそんな格闘漫画みたいなの居たらドン引きだわ」
「?・・・ぼくおとこだよ?」
「・・・その制服女子のヤツだよね?」
蛇喰と真理がお互いに見つめあいながら同時に首を傾げた。
数秒の沈黙の後、女子制服の理由を聞かれたと気が付いた真理が手を叩く。
「こっちのほうがおねえちゃんがよろこぶとおもって」
「そっかー、うんうん。かわいければ何でもいいよね」
「よくないよ・・・あー、まァ~・・・暫くは私らと一緒に動こうね。めんどいし」
「・・・いいの?」
上目遣いで不安そうに尋ねた真理に蛇喰が頷く。8分割した頭部を戻し、鉤爪の付いた両の掌を真理へと向けた。
「グループ結成じゃん!いえーい!」
「・・・なにそれ」
「ハイタッチ、初めて見る?」
「うん」
「掌同士で叩くんだよ。嬉しい時の挨拶みたいなもん・・・ほれ、やってあげな」
恐る恐る小さな両手を差し出した真理がそっと蛇喰と手のひらを合わせた。
鉤爪が当たらないよう限界まで爪を根元に引っ込めた蛇喰が優しく指を絡ませて手を握り、遊ぶようにゆらゆらと繋いだ両手を振った。
次いで片手を鳥塚の手と合わせ、三人合わせて儀式でも行うかのようなポーズが形成される。
「・・・?」
「・・・❗️」
そのまま暫くの間手を合わせた状態で無言の時間が流れていたが、やがてじれったく感じてきた蛇喰が真理にバレないよう密かに変顔を始め遊び出す。
しかしそれに気が付かないまま不思議そうな表情で繋いだ手をずっと真理は眺めていた。
やがてそんな彼に堪えきれなくなった鳥塚が堰を切ったように笑い出し、蛇喰も釣られて笑い始めた中で真理だけが疑問符を頭に浮かべていた。
「はーっ・・・こっそり変顔すんなって、絵面シュールすぎ」
「いいじゃんいいじゃん。せっかく雄英で新しい友達出来たんだし、楽しくやってこうよ」
「とも、だち?」
「あれれ、もしや私らちょい馴れ馴れしかった感じ?」
友達という単語に目を見開いて真理が驚いたようなリアクションをした。
その反応を見た蛇喰が距離感の詰め方を間違えてしまったかと慌てて鳥塚に視線を向ける。すると鳥塚は冷静に続きを聞くようアイコンタクトで蛇喰に伝えた。
「ううん・・・がっこうにかようのはじめてだから、おともだちのつくりかたがわからなくて」
「お!ならアタシが第一号立候補しちゃお」
「ほんと!?」
「変なこと吹き込むなよ?・・・あー、私2号で。お前ら二人にすんの怖いわ」
意気揚々とハイタッチを繰り返す二人とそれを温かい目で見守る鳥塚。歪さを抱えた真理とそれを気にしないことを選択した二人の新しい友情が此処に始まった。
「えいっ!・・・あれぇ?」
【ー1m!!】
「投げ方わかんない子だとこうなっちゃうんだよねぇ」
「それ以前の問題じゃない?筋力isワーストってやつ」
「てりゃあ!・・・なんでぇ?」
【ー2m!!】
「「あぁ・・・」」
新入生の恒例行事として始まった個性把握テスト。ボールの投げ方も知らない真理が悲惨な成績を叩き出す横から二人に憐みの目線を向けられていた。
「持久走どうすんの?絶対100mも持たんでしょ」
「握力も10kgいかなかったかんね。てか握力計の存在知らんかったし。うりうり~」
「ふにゃー!!」
「落ち着きなって、蛇喰もあんま揶揄うなし」
「めんごめんご」
悲惨な現状と本人の空回り具合を見て空気を和らげようとして冗談めかした蛇喰に、両手を挙げた真理が彼女の胴体をポカポカ叩いて抗議の意を示した。
湧き上がる怒りで鼻息を荒くして暴れる真理を後ろから鳥塚が抱きしめる形で抑えたものの、尚も興奮が収まらない真理は腕を振り払ってその掌を地面へ降ろした。
「もうわかったもん!こーすればいいんでしょ!」
──【
「なんか出た!」
「動物出す個性?召喚系ってやつじゃね」
「Gau!」
接地した真理の掌から激しく稲妻が溢れ出し、狼獣型ゴーレム──
勇ましく遠吠えを響かせる
「いくよハウちゃん!」
「本人走ってないけどいいのかなあれ」
「先生止めてないし、別にいいんじゃない?」
結果的に言えば4本足で俊敏に駆け出した
持久走の疲労で皆が息を整えている中、これまでの惨敗を吹き飛ばす圧倒的な勝利にテンションの振り切れた真理が向日葵のようなとびきりの笑顔を浮かべている。
そして喜びを全身で爆発させるように両手をぶんぶんと振り回したまま蛇喰達に突撃し、二人に抱き着いた真理は尻尾を振りちぎる飼い犬を撫で回すノリで受け止められた。
「やるじゃん真理!褒めて遣わそ~」
「えへ、えへへ!すごい?ねぇねぇ、ぼくすごい?」
「凄いぞ~偉いぞ~、真理は賢いね~」
「み、耳と尻尾の幻覚が見える・・・」
「個性を使った体力テスト」という記録形式の流儀を理解した真理はその後の種目でゴーレムを利用した好成績を残し、前半で惨敗した分と相殺し平均程度の順位に収まった。
「みてみて!あさつうがくろでみつけたの!」
「んん・・・?なにこれ」
「でっかいかぶとむし!」
ある日の朝は真理が拾ってきた昆虫を嬉々として二人に見せつけていた。
ワサワサと蠢く6本足、黒光りする胴体と豪快な二本角。それは日本古来から生息する子どもに大人気の昆虫。
「これクワガタじゃない?」
「おー・・・?ほんとだ!」
「真理、道端でデカいゴキブリ見つけても絶対持ってこないでよ。もしやったら羽擽りの刑だから」
「ぜったいやらない!」
両翼を広げて脅しにかかった鳥塚にクワガタを手放し身体を抱きしめて震え上がる。
そして不意に真理の手から解き放たれたクワガタが自由を求めて羽ばたき、蛇喰の顔面にタックルを喰らわせた。
「へびゃ!?」
「あ、ごめん」
「あぅ・・・ご、ごめんね」
「へへ、安いもんさ。私の顔面くらい」
「いや安くはないでしょ」
判別の付かないしたり蛇顔で決め台詞を吐いた蛇喰に鳥塚が冷静に突っ込みを入れた。本人は決して口にしないが、彼女も鱗のケアや湿度管理は欠かさない乙女であることを鳥塚は知っているのだ。
「でもカブトムシのゴーレムいいんじゃない?空飛ぶし」
「空浮かすなら鳥がよくない?」
「つーちゃんみたいな?」
「・・・普通に恥ずいな。鳥はやっぱナシで」
頬を朱に染めた鳥塚が照れたように片手でひらひらと顔を扇いだ。
しかしぽやんとした表情でじっと自分を見上げている真理に段々と羞恥を強く感じてきて、誤魔化すように彼の頬を弄って遊び始める。
「??なあに?」
「なんでも」
更に両翼を伸ばし欠かさず手入れを重ねているふわふわの羽毛で包み込む。そのままわしゃわしゃと頭を撫で回せば嬉しそうに笑って鳥塚の手を受け入れ静かになった。
「んに」
「真理も結構人慣れしてきたね~」
「私らだけでしょ。他の人にはまだビビってるし」
「びびってない~」
羽毛にくるまれフニャフニャに蕩けた真理を愛でている鳥塚が呆れたようにされるがままの彼を見た。
最初に出会った頃と比べれば彼女たちに怯えるようなことも無くなったが、他のクラスメイトに絡まれるとすぐさま二人の背後に隠れてしまう。
そんな臆病な彼をどうしたものか扱いに困っていた二人であったが、当の本人が最近彼女達に懐き始めたこともありゆっくりと慣らしていけばいいだろうという結論に至っていた。
「大丈夫かねぇ、こんなんで」
「ぼくてんさいだからだいじょうぶだもーん」
「よっ!偉大なる錬金術師!超スーパー天才真理ちゃん!」
「蛇喰も無駄に煽てんなって。調子乗ってこの子が怪我したらどうすんの」
「けがしないもん」
「させないもんねー」
「えぷっ」
1-Aクラス初の戦闘訓練。
良いところを見せようとして空回りした真理が上空の死角から鳥塚に捕獲され、大量に量産されたゴーレム達は何の役目も果たせず彼の訓練は終了した。
「は、えっ、ちょっ、真理!?血!色んなとこからめっちゃ血出てる!」
そして訓練後の反省会で講義を聞いている途中、真理が眼や耳、鼻と口など様々な箇所から血を垂れ流して崩れ落ちる。
慌ててペアを組んでいた蛇喰が動揺しながらも彼の身体を支えて教師に助けを呼んだ。
「ら、ら・・・ぃ、ら・・・じょ・・・ぁ?ご、ぶぇ」
「先生ぇ!真理が!」
「すまん郷里!すぐ保健室へ運ぶ。お前達には悪いが待機だ!」
喉に詰まりかけた血が塊となって吐き出される。
今の彼は過度な錬成のフィードバックにより脳が損傷した影響で手足が痙攣し、言語野に一時的な障害が生じていた。
震える真理の身体をしっかりと抱えた教師が最速かつ安全な速度で保健室へ運び、リカバリーガールによる緊急手術が行われることが決まる。
「この馬鹿!どうしてこんなになる前に止めなかった!!」
「すみません!・・・恐らく許容範囲を逸脱した個性の
「全く・・・今すぐ手術だよ!早く部屋から出な!」
担ぎ込まれた保健室で慌ただしくオペが開始されたものの、幸いなことに意識を保っていた本人による自己錬成も並行して行われていた。
リカバリーガールの治癒と同時に真理の肉体が淡い光を放ち続け、不規則に乱れていた呼吸も徐々に正常に収まっていく。
(どうしてこの状態で個性が使えてるんだい?・・・麻酔で意識は落ちている筈だけれど)
殆ど手遅れだった容体が急激に回復し始めたことに疑問を覚えていたリカバリーガールだったが、苦しんでいた真理がひとまず一命を取り止めたことに安堵のため息を漏らす。
「んん・・・ぁ、なおしてくれてたひと」
「もう目が覚めたのかい?」
(治してくれていた・・・私のことが認識できる程度には意識は保っていたと)
細く狭められた眼を見開いてリカバリーガールが驚嘆をあらわにする。
真理は手術を終えて数秒と経たないうちに身体をのんびりと起こし、まるで寝起きのような気軽さで両腕を伸ばしリラックスしていた。
「身体に異常は?何処か痛みや違和感はあるかい?」
「ぜ・・・
「作り直した、ねぇ」
深く皺の刻まれた眉間を寄せて彼女は思考を巡らせる。
入学前の調査書類によれば彼は自分の肉体を錬成することで精神的な安定を保っている。それもかなりの高頻度。
しかし彼が行っている人体錬成の詳細は雄英側も把握していなかったが故に、その矯正についてはリカバリーガールに一任されていた。
「わあ!」
「おや、何かあったかい?」
「これなあに?ふわふわ!つーちゃんみたい!」
「それは・・・」
瞳を輝かせた真理が元気よくベッドから抜け出しデスクに走る。
丸い耳とずんぐりむっくりした胴体、表情のデフォルメされた愛嬌を感じさせるぬぼっとしいたクマのぬいぐるみ。
彼は何ら特別ではない量産品のそれにゆっくりと手を触れ、まるで宝石を見るかのような煌めいた視線を向けていた。
「忘れ物のぬいぐるみ*2さね・・・気になるかい?」
「おぉー・・・ぬいぐるみっていうんだ・・・」
「手荒く扱うんじゃないよ。他人の物だからね」
生まれて初めて見る愛らしい玩具に真理が目を奪われている間に、そっとリカバリーガールが保健室の「手術中」ランプを消した。
彼は赤子に触れるかの如く優しく両手でクマを抱え上げて光に翳したり顔に近づけて香りを嗅いでいる。やがて肌触りを気に入ったのかぬいぐるみを胸元で優しく抱きしめ、機嫌よく頬擦りすら行っていた。
「真理!!!」
「リカバリーガール先生!真理は!?」
「落ち着きな二人とも。手術は無事・・・まぁ無事に終わったよ。本人も見ての通り元気さね」
手術中を意味する灯が消えたのを確認した瞬間、蛇喰と鳥塚が慌ただしく保健室の戸を開けて入って来た。
普段は飄々とした態度で澄ましている鳥塚は今にも泣きだしそうな表情で真理に抱き着く。
そして自分が心配されていることを理解できず不思議そうに彼女を見上げている真理の姿を見て、ようやく一段落着いた彼女は緊張が緩んで地面に膝を着いた。
「ぉ・・・おはよ?」
「~~~っこのバカ!!」
「わっ、つーちゃん?」
「怖いことすんなってぇ・・・私死んじゃうかと・・・」
はらはらと涙を流しながら彼女は抱きしめた彼の首筋に顔をうずめる。それを擽ったそうに首を捩る真理を見て気の抜けた蛇喰もベッド横のパイプ椅子に腰を降ろした。
「翼、ちょい落ち着き。真理が困ってるよ」
「大蛇だって慌てすぎて頭めっちゃ分裂してたじゃん!」
「えと、これくらいじゃぼくしなないよ?」
「んなわけあるか!絶対ヤバかったでしょアレ!」
「あれくらいべつにへいきむぎゅ」
この期に及んで戯けたことを抜かす幼児に痺れを切らした鳥塚が抱きしめた真理を力強く固定し、不安や焦燥など様々な感情がないまぜになって若干震えていた羽先を脇腹へ向ける。
「ねぇ真理、本当に
「うぇ・・・?だ、だってべつにへーきだもん・・・」
真理の返答を聞いた鳥塚の顔がすっと無表情に変わり、胴に回した両腕で彼の衣服をたくし上げた。
「つーちゃん?・・・どうしたの?」
「真理は1回身体にわからせた方がいいのかな」
「ね、ねぇつーちゃん・・・おかおこわいよ?」
そして動きを封じた彼女は真理の柔肌を羽で優しく擦り、弱弱しく身を捩って抵抗する彼を手足で固定しながら責め苦を始めた。
「ひゃっ、や・・・はね、ひっ・・・くす、くすぐったいぃ・・・」
「せんせー、この子反省の意思が見られませーん」
「や・・・なん、でぇ・・・ひ、やめ・・・やめぇ・・・!」
「やれやれ、困った子だねぇ」
自分が責められている理由を理解できない彼に絶え間ない羽攻めが続けられていた。
次第に真理の頬も紅潮して段々と息が荒くなり、崩れ落ちそうな身体を支えるため必死に彼女へ縋りつく。
「・・・ひ・・・ん、ぅ・・・なん・・・なんでぇ・・・?」
「私がなんで怒ってるのか、本当にわかんない?」
「わかん、な・・・ぃ・・・」
やがてとろんとした瞳で妖しげな雰囲気を醸し出してきた真理を見て、保健室の隅で傍観者に徹していた蛇喰がそっと口を開いた。
「絵面が犯罪的」
「・・・マジ?」
「鳥塚ってそっちの才能があったんジャァ!?」
「すぅー・・・」
蛇喰から白い眼で見られた彼女は慌てて真理を解放し、片翼で蛇喰をはたいてから彼から最も遠い椅子に腰掛けた。
責め苦から解放された真理が無言で蛇喰の元へ駆け出し彼女の膝に座り、蛇喰の両腕を使って赤面した顔を隠す。
「ちょっとやりすぎたわ・・・ま、まじでゴメン・・・」
「・・・・・・・・・」
避難した蛇喰の膝上で小刻みに震えながら真理は無言を貫いていた。
鳥塚にとって数分にも数時間にも感じられるほど緊迫した空気感の中、隠れた両腕の隙間からゆっくりと真理が鳥塚を覗く。
未だ紅潮した頬のまま真理は彼女を見つめ、恥じらいを覚えたばかりの乙女のように小さく呟いた。
「・・・つーちゃんのえっち」
「ミ゜ッ」
「やぁロリコン、気分はどうかな」
「殺せよ」
「しんじゃだめ!・・・あんまりわかんないけど・・・なんか、はずかしくなっちゃっただけ、だから」
「あぁいや、今の本気じゃないから。ごめんね真理」
身を乗り出して大声を上げた真理に鳥塚が頭を下げる。
少し気まずくなった雰囲気を払拭するためについやり始めた二人のじゃれあいを止め、蛇喰が膝に乗せた真理をあやし始める。
「さ、二人とも安心したなら帰りな。暫く様子見て問題無ければ教室に返すよ」
「「はーい」」
頃合いを見てリカバリーガールが声を掛け二人の退室を促し、蛇喰が膝上に乗せていた真理を抱き上げてベッドに座らせた。
リカバリーガールから保健室での経過観察を言い渡され不満げに口を尖らせる真理を残して蛇喰達が席を立つ。入って来たときとは打って変わってリラックスした笑顔で二人が真理に手を振り、あからさまに納得していない彼の様子にくすくすと呆れながら戸を開けた。
「むぅ・・・」
「そんな不貞腐れんなって・・・まー、大事無くてよかったよ。話はまた後でね」
「『私真理に何かやっちゃったんじゃ・・・』ってめちゃくちゃテンパってたもんね~」
「アンタもお互い様でしょうに・・・」
「真理も大人しくしてるんだよ~。無事に検査終わったら帰りパフェ食べ行こうぜ、鳥塚の奢りで」
「は?」
チロチロと茶目っ気たっぷりの仕草で舌を出し鳥塚を揶揄う。
それを受けて青筋を立てた鳥塚が翼を広げて蛇喰を簀巻きに仕上げて外へ出ていき、「ぱふぇ・・・?」と未知の食物を理解するため思考を回している真理に見送られて二人は退室した。
「良いお友達じゃないさね」
「うん!はじめてのおともだちなの!ふたりともすごいんだよ!」
「そうかいそうかい。仲良しなんだねぇ」
初めて出来た友人を褒められた真理は嬉しそうにニコニコと笑っている。そんな無邪気な笑顔を見せる彼を彼女は眉間へ皺を寄せながら見つめ、真理にわからない程度の小さな溜息を吐いた。
「〜〜♪」
(色々訳アリとは聞いてたがここまでとは。全く惨いことをする・・・試験に通れば誰でも入れていいってわけじゃなかろうに)
「とはいえ、
類を見ないほど卓越した精密な個性。特に人体の治療という観点で見れば不治の病であっても根本から作り直す、失った臓器の再生等、彼女の個性でも救えない手遅れの命を助けることすら可能だろう。
だが、それ以上に彼の個性はできることの幅が広すぎる。
単純に悪用するための手段として考えれば文字通り
その辺の
「?」
「なんでもないよ・・・さて、菓子は余ってたかねぇ」
しかしその危険性と能力に反して本人の精神性があまりにも未熟だった。
在籍していただけで教育機関に通った形跡は無く、入院していた病院でも問題は起こさなかったものの他人との交流には消極的。
そして見ての通り甘く見積もっても幼児と同程度の精神性。どう考えても雄英へ通っている場合ではなく専門の治療機関に預けるべき状態だった。
「お、あったあった。食べるかい?チュッパチャプス」
「ちゅっぱ・・・ちゃぱす?」
「菓子類は大体初見ってとこかねぇ」
それでも彼はヒーローを志し独学ながら雄英入試をパスできるほどの学力と個性を身に付けた。
そして何より雄英以外に彼の
「ほれ、この丸いのを口に入れて少しづつ舐めるんだよ・・・あぁ、白い棒は食べ物じゃないからね」
「・・・???*3」
「コーラ味はちょっと早かったかね・・・?」
実際に本人を見て色々と根津校長へ言いたいことはあったものの、こうして入学している以上自身が面倒を見る他ない。
幾らプロヒーローといえど雄英に子育て経験者はリカバリーガール以外に居なかった故に、必然的に自分が最も近くで接することになると考えていた。
「さあさ、ベッドにお戻り。良い子で大人しくしていればその分早く帰れるよ」
「
(ズレた認識の矯正には手を焼きそうだけど、性格は素直で能力も十分以上。正しい道を歩ませ年齢相応にしっかり育めば・・・私の後継に据えるのも悪くないかもねぇ)
そうと決まればまず何から着手するべきか、手始めに幼児向けの絵本でも買ってこようかと思案する。
リカバリーガールは久しぶりに腕の鳴る3年間になりそうだと胸に期待を抱きつつ、飴を気に入ったのかちらちらと次を強請る視線を己に向ける真理の為に机の引き出しを漁り始めた。
・蛇喰 大蛇(じゃばみ おろち)
保護者1号、蛇と蜥蜴を足して割った容姿の異形系。梅雨ちゃんのお友達の蛇ちゃん寄りのお顔。
・鳥塚 翼 (とりづか つばさ)
保護者2号、肩甲骨のあたりから鷹のようなムキムキの翼が生えている。ローテンション系女子。
・郷里 真理(高校1年生の姿)
オーバーホールに関わらなかったエリちゃんことようし゛ょ1号。おともだちができて嬉しい。
・黒瀬 亜南(くろせ あなん、13号)
捏造の塊。真理をちらちら遠くから見ている。
・『錬成』くん
出力調整をミスると脳がお亡くなりになる個性界の恥。どっかのオールマイトファンを見習ってほしい。