ぼくらのヒーローアカデミア TS脳無化錬金術ヒーローマリくんちゃんの終活 作:Radrabbit
「全員揃ったな、これから個性把握テストを行う」
「「「個性把握テストォ⁉︎」」」
「えぇ⁉︎入学式は⁉︎ガイダンスは⁉︎」
「そんな悠長にしている時間はないよ」
皆の疑問を代弁してくれた茶髪ちゃんが疑問を投げてくれたが、相澤先生は全く取り合う様子はない。・・・そーゆートコだぞ先輩!ちゃんとコミュニケーション取れ!
「ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈。中学の頃からやってるだろ?個性禁止の体力テスト・・・合理的じゃない。影山、中学の時ソフトボール投げ何mだった?」
「・・・私ですか?」
「お前が一般入試の主席だからな、記録の参考用だ」
(ちょちょちょっと待って⁉︎聞いてない!僕が主席とか聞いてないし体力テストとかしてないって⁉︎)
“ど、どうします⁉︎マリさん中学生の頃の記録覚えてないですか⁉︎”
(そんなの覚えてるわけないでしょー⁉︎)
そもそも僕が主席とか初耳・・・あーっ!AFOが即ぶっ壊した*1投影機械!アレでしょ多分!
「?どうした影山」
(・・・あ、操奈ちゃん!君のソフトボール投げの記録とか覚えてる⁉︎)
“え、私ですか?・・・えぇと、確か8m位ですかね。10mは超えてない筈です”
「すみません、以前測ったのが一昨年だったもので。確か・・・8m位だったと思います。」
「そうか・・・爆豪、お前は何mだった?」
この人僕の記録が参考にならないから他の生徒に話流しやがった!そりゃそうだろうけどさ!何か他の皆から『え?主席なのに8mなの?マジで?』みたいな目線感じるんですけど!腑に落ちないんですけど!
「・・・・・・この白髪が主席だァ?8mとかふざけてんのかテメェ」
「個性無しの記録ですから、それに身体もあまり強くなかったもので」
「チッ、67m」
相澤先輩に指名された不良生徒──爆豪君が物凄い目つきで僕のことを睨んできている。そんな見ないでよ恥ずかしい。というか君も人とちゃんとコミュニケーションしないタイプの人なのかな。
「じゃあ爆豪、個性を使ってやってみろ。円からでなきゃ何しても良い、はよ。思いっきりな」
「んじゃあまぁ・・・死ねぇ!!!!」
(えぇ・・・嘘でしょ・・・)
“本当にヒーロー志望なんですかこの人、AFOのスパイじゃなくて?”
(いやぁ、こんなあからさまにヤバイ子は違うと思うよ、うん)
ドン引きする僕らを他所に相澤先生からボールを受け取った爆豪君は、軽く腕のストレッチをして罵倒を叫びながらボールを放り投げた。大きな爆発音と煙幕を出しながらかっ飛んでいったボールはすぐに見えなくなり、少ししてから相澤先生が持っていたタブレットに『705m』と記録が表示された。やばぁこの子、個性の殺傷力が高過ぎるよ・・・。
そして爆豪君の記録を見てからすぐに『面白そう!』という声が皆から上がった。それはそうだよねー、今まで自由に個性を使ったことないだろうし、こういった体力テストでも思いっきり個性が使えるなら楽しいもんね。でも・・・。
“どうかしたんですか?”
(やー、先輩の顔見てみ?すんごい冷めた眼でこっち見てるし、『楽しく個性を使って体力テスト〜』って感じじゃあないでしょ)
「面白そう・・・か。ヒーローにための三年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?・・・よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」
“えぇ⁉︎そんな理不尽ありなんですか⁉︎”
(雄英ってこういう自由なところあるからねぇ・・・それにしたってここまで振り切れてるのは初めてだけど)
「生徒の如何は教師の自由。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」
ニヤリと口角を釣り上げ相澤先輩が僕ら生徒を見回す。確かに合理主義の塊の相澤先輩が教職になったらやりそうなことだけどさぁ、初日だってのに飛ばしすぎじゃない?あぁいや、初日だからこそなのかな、諦めさせるなら早い方が合理的ってさ。
「自然災害、大事故、身勝手な敵、いつどこからくるか分からない厄災、日本は理不尽にまみれている── そういう
まぁ1番の問題は僕らの個性を何処まで誤魔化すかである。入学前から影山哀の個性届けから逸脱しない範囲で使うことは決めていたから、殆ど自由に使う気ではあるけどね。
というか個性より身体能力の調整の方が大変かな。見た目は先程申告した通りの*2華奢な乙女でも中身は改造人間だ。影山哀の個性である『錬金』無しでぶっ飛んだ記録を出すのはよろしくない。
とは言え除籍するってのも本気なんだろうし、下手に加減し過ぎて見込み無しって判断されちゃうのは怖いからね──あ、青山君が物凄い青ざめた顔で固まってるじゃんか。そうか、入学初日で除籍になんてなったらご両親がどうなるかわかんないよね。間が悪すぎるよ相澤先輩・・・。
“青山さんのこと、陰からこっそりサポートしますか?”
(いや、それこそバレたら二人纏めて除籍ものだよ。可哀想だけど彼には発破掛けて自力で頑張ってもらうしかない)
そうと決まれば善は急げである。第一種目が始まる前にそっと青山君の側に向かい声をかける。
「もし、そこの貴方。顔色が優れないようですが、調子はよろしくて?」
「なななななにを言ってるのかなレディ?僕は
緊張なんてしてないとも、うん、全く平ききっきさッ!」
“これ・・・大丈夫ですか?”
(まーまーここはお兄さんに任せてみてなさい)
全身をガタガタ震わせる彼の肩へ添える様に優しく手のひらを置き、仄かな微笑みを浮かべて優しく囁く。大気の組成をちょちょいと弄ってリラックスしやすいアロマ系の香りを錬成。
ついでに彼の体内をちょびっと解析──ふんふん、健康状態は問題無し、怪しい機械や詰め物もなければ個性因子もひとつだけで特に異常もない。よかったぁ爆弾とか仕込まれてなくて、一先ず安心していいかな。
「あまりに緊張している様ですのでひとつ助言を、と思いまして──よく考えてみてください。いくら雄英高校とは言えど入学初日に正当な理由もなく生徒を退学させることなど、一介の教師にできることではありません」
「そ、それって・・・っ!」
「つまり、彼の除籍宣言は私達生徒の一切の出し惜しみの無い全力を引き出す為の嘘偽り・・・気にすることはありません。貴方はただ全力を出せば良いだけなのですから」
「なるほどね・・・感謝するよ、それなら楽勝さ、ウィ☆」
先程までの青い顔から一転して自信に満ちた煌めく笑みを浮かべ、星を纏いながらズンズンと歩いていく青山君。自信があるに越したことはないけどさ、切り替え早すぎない?これが若さなのか。
“こんな嘘を付いて申し訳ないですが・・・元気が出たみたいでよかった、ですね?”
(や、完全に嘘ってわけじゃないよ?見込み無しなら除籍するのは本気だろうけど、見込みが有るなら除籍はしないってコトだと思うよ「全力で乗り越えろ」って言ってたし)
“そ、そうだったんですか⁉︎”
(逆に見込み無しならクラス全員除籍の可能性・・・は流石にないか、でも一人じゃなくて複数人除籍の可能性は全然あるんじゃないかなぁ)
“どっちにしろダメじゃないですか!うぅ・・・お腹が痛くなりそうです”
◇◇◇◇◇◇◇◇
というわけで第一種目50m走。僕らは出席番号7番なので四組目、金髪でチャラチャラした雰囲気の上鳴君と一緒である。最初は結構遠慮気味ではあったけれど、彼の会話にサクサク相槌を合わせているうちに普通に話し掛けてくれるようになった。
やっぱりこのお嬢様スタイル接しにくいかな・・・かといって今更キャラ変はできないんだけどね。文句は操奈ちゃんからしか受け付けないよ。
(ちなみに50m走はお幾つなの?)
“13秒ですが*3何か?”
(アッ・・・ご、ごめんよぉ)
「影山は個性無しだと50m何秒だったんだ?」
「13秒・・・ですね」
ソフトボール投げの記録も相まって幻滅されるものかと思っていたが、彼はその見た目とは裏腹に態度は変わらず話を続けてくれた。
「おー、結構運動とか苦手なタイプだったん?受験のロボとか大変じゃなかった?」
「個性を使えば十二分に補えましたから、今回のテストも問題無いかと」
「すげーじゃん影山!俺も負けてらんねーな!」
ニカッと人好きのする笑顔を浮かべた光属性の上鳴くんに癒されながら順番を待ち、遂に僕らの番がやってくる。
“私がやるわけじゃないですけど、何だか緊張してきました・・・”
(現場でヴィランと戦うのに比べたらお茶の子さいさいよ、ドーンと見ておきなさいな)
「んじゃ・・・スタートな」
気怠げな相澤先輩の合図に合わせて脚を踏み出す──ことはなく、足元の地面がベルトコンベアのように高速で動き出し、一歩も踏み出さないまま僕の身体はゴールラインを超えた。記録は2.7秒。セメントスのような物体を操作できるヒーローがよくやってる自分ごと動かす手法だ。彼ならもっと早く動かせるだろうけど僕のやり方だと速度はそこまで出せないんだよね。
“これいいんですか?”
(いいとも、あくまで個性を上手く使って早く移動すればいいだけだからね)
「うおおお普通に負けたー!しかしすげーな影山、まさかベルトコンベアを作っちまうとは!」
「そのまま走っても遅いですから・・・あぁ、地面は綺麗に戻してありますので心配は結構ですよ、相澤先生」
「ならよし」
「アレいいんだ・・・」
小さくクラスメイトから疑念を呈す声が聞こえたが、先生が良しと言ってるので無問題です。それに見てご覧なさいあのポニテお嬢様を、『なるほど!』みたいな顔で見ていて早速参考にしているよ。君らも発想を柔軟にして個性を使ってみなさいな。
続きまして第二種目握力。握力計グリップの接続部分をちょいと弄って240kg。流石に電子基板についての知識はあんまり無い、今後は勉強して弄れるようにしておいた方がいいかな。もちろん微笑んで元に戻してますよアピールも欠かさない。・・・くそう、もう見てくれないじゃん先輩、判断が早すぎるよ。
“握力計に細工は良く無いのでは・・・?”
(見てご覧なさい操奈ちゃん、あのポニテ女子なんて万力使ってるよ。個性のテストなんだからあの堂々とした立ち振る舞いを僕達は見習うべきだよ)
“あぁ、文字通り個性の使い方を見ているんですね。体力テストという形式に囚われていました”
そのまま第三種目立ち幅跳び。50m走と同じく足元の地面を使うが今回はそれに乗ったまま空中へ浮かばせる。アルケミーの『錬成』だけでは出来ないことだが今の僕には可能だ。『邪眼』という眼で見た対象を意のままに動かす個性を使う。ドクターに付与されてから監視のない私室でのみこそこそ練習していたのもあって練度がまだまだ浅いけれど。
可能な限り速度を上げてみるが僕自身を乗せたままだと重心が不安定になって大して速度が出せないな。自分の身体を直接操作した方が速いまである。すぐに計測範囲の砂場は通過したがこのままどうするか困った僕はそのまま相澤先輩の所まで戻り、取り敢えず曖昧に微笑んでおいた。
「先生、私は何処まで飛んでゆけばよろしいでしょうか」
「影山、その状態はどれだけ維持できる」
「これだけなら後十数個動かしていても半日は持ちますが、他に思考リソースを割いた場合は長持ちしないかと」
「そこまで分かっているならいい、記録は無限にしておく」
「無限⁉︎スゲェ‼︎無限が出たぞ‼︎」
クラスメイトから歓声が沸く。褒めてくれるのは嬉しいけど純粋な『錬成』でやったことじゃないから複雑な気分。
(いやー悪いね無限なんて見せつけちゃって。大人気なくてすまない。君らも無限出しちゃってもいいんだよ?まぁ難しいだろけどね!むはは!)
“マリさん・・・そもそも個性の数で圧倒的なアドバンテージがある上にプロのマリさんが誇れることなんですか?”
(ひぃん・・・じょ、冗談だよ。せっかくの高校生活だから操奈ちゃんにも楽しんで欲しくってぇ)
“もう、そうゆうことなら許してあげますけど・・・”
操奈ちゃんはチョロいね。まぁ僕にとっては気分の重くなる生活だけど、操奈ちゃんにとっては人生初の高校生活だからさ。こんなスパイ活動に付き合わせてしまう身としては少しくらいは明るい気持ちで過ごして欲しいのです。
続く第4種目反復横跳びはシューズの底面と床を錬成して細工はしたが、逆に調整が面倒だった。後列の増強系を持ってない女子の動きを別の『個性』で視ながら合わせたけど最初から個性使わない方が良かったかもしれない。記録は37回。
“周りを視過ぎて酔ってしまいそうです・・・”
(本来の視界より外側を見るの、結構違和感あるからねー)
第5種目はソフトボール投げ。使える材料が周りの土塊だけなのがやり辛いところ。事前準備無しだと周囲環境に依存しちゃうのが『錬成』の弱点なのよね。やたら爆豪君からの鋭い視線が強くなっている気がするが、それは一旦無視してボールに集中する。
「相澤先生、このボールを多少歪めた場合計測に問題はあるでしょうか?」
「細工は構わんが、弄りすぎると記録が取れなくなることだけ念頭に置いておけ」
「かしこまりました」
ボールそのものを錬成するのはやめておこうか。周囲の砂を持ってきてボールを覆い作り変えて十分に強度を確保しそのまま空中に浮かべる。周りの土塊だとバリスタかゴーレムが精々、ゴーレムにボール持たせて延々と走らせてもいいけど、せっかくだから『錬成』以外の個性を組み合わせて使うのもいいだろう。
今回は『千里眼』『視掌』『邪眼』で試してみようか。
『千里眼』は視覚を拡張し最大数百m程遠くまで広々と見渡せる個性、眼を瞑っていると発動出来ない。『視掌』は視覚内に捉えているものに「手で触れる」ことができる個性、『錬成』と最も相性がいい。『邪眼』は先程立ち幅跳びで使用した眼で見た対象を操作する念力のような個性。全て『錬成』と組み合わせる前提で組み込まれた個性の皆さんである。
彼らと意思疎通ができれば使い方を聞けたんだけど、流石にそう都合よくはいかなかった。今の所自力でトライアンドエラーするしかないね。
周囲に土塊から錬成した槍を複数待機させ、コーティングしたボールを前方45度の角度で最大限強く邪眼でかっ飛ばす!・・・勢い足んないね!あんま飛んでないけど想定内。
「何だありゃ、土の槍?」
「土でボール包んで飛ばしてる。土を操る個性なんかな?」
「ボールの勢い的に爆豪よりはそんな飛ばなそうな感じか?」
“遠距離での『邪眼』操作、上手く出来そうですか?”
(いーや、遠くなればなるほど精度が下がる。体感200m開くと全く駄目だね。ま、その為の槍です)
肉眼と『千里眼』で観測しているボールの軌道から落下速度と移動距離を算出し、落下軌道に合わせて待機させていた槍を片っ端から射出しつつ、次の弾もどんどん追加で錬成していく。
「今度は槍どんどん飛ばしまくってる!まんまガトリングじゃん!」
“操作出来なくなったボールに槍を当てて無理矢理飛行距離を伸ばしているんですか、めちゃくちゃ力押しですね・・・”
(数うちゃ当たるってねー、『錬成』に割いてる思考リソースを複数の個性制御にバラけさせるのはやっぱりキツいね、要練習だ)
記録527.4m。即席の的当てにしてはそこそ当たったけど駄目だね、ボールを外して落下した槍も多いし、そもそも現場であんなマネしたらただの無差別爆撃になっちゃう。全然スマートじゃない。
「影山は遠距離での物体操作が課題ってところか。課題がわかりやすいのは楽でいい、励めよ」
「精進いたします」
(ん、この感じ懐かしいね。先輩にアレコレ駄目出しされてた学生時代を思い出すよ。昔も色々指導してくれてたなぁ)
“非常識な人に見えて、ちゃんと教師らしくしてはいる・・・のでしょうか”
(仲良くなってからは結構デレてくれるんだけどね〜。えへ、昔先輩達と一緒に猫カフェとか行ったことあるんだよ)
“猫カフェ⁉︎・・・人は見かけによらないんですね”
ソフトボール投げが終わってからの待ち時間に操奈ちゃんと秘密の雑談を続ける。さっきの上鳴君とかと喋っててもいいけど、テストが折り返しにきて緊張が強くなってきてる様子だからね。
青山君には僕の都合で声を掛けたけど、僕のキャラ的に初日から積極的に親交を深めにいくタイプじゃないからさ。もっと喋りやすいキャラにしておくべきだったかな、でもそれでAFOとドクターの前でやり過ごせる自信は無かったからなぁ。
「また無限が出たぞ!マジやべぇ!」
「いやーそれほどでもぉ・・・えへへ」
“無限、出ましたね?”
(マジか、正直無限は流石に出ないと思ってたのに、最近の子の個性は凄いんだねぇ〜)
“そういうこと言うのおじさんみたいですよ”
(お、おじさん呼びは辞めて欲しいかなぁって)
操奈ちゃんに詰られつつテストを眺めていると、ちょうど緑髪の子が1回目のボールを投げ終え記録は46m。至って普通の記録だったが何か慌てた様子で先輩を見ている。
「そうか!視ただけで人の個性を抹消する個性!抹消ヒーロー、イレイザーヘッド!」
(んー?今個性使おうとしたのかな?)
“個性を抹消する個性?随分特殊な個性ですね、AFOの所でも聞いたことない気がします”
(先輩の個性相当に希少だからね、それもあってずっとアングラ系なんてやってるんだろうけど)
どうにもあの緑髪の少年が個性を使おうとして先輩に消されたようだ。確かあの子は今までのテストで一度も個性使っていなかったね、そこまで使い辛い個性・・・先輩がわざわざ抹消で消したあたり、何か訳アリな感じかな?
「緑谷出久、お前じゃヒーローにはなれないよ・・・個性は戻した、ボール投げは2回だ。とっとと済ませな」
幾らか問答を済ませた後、先輩は冷たく緑谷君に除籍宣告とも取れる言葉を放ち個性を切る。
(ふぅん?反動で身体が壊れる位強力な増強系ね)
“緑谷さんは大丈夫でしょうか・・・”
(難しいかな。彼が何か一つ、先輩が見込み有りだと判断を撤回させる何かを見せないと厳しい・・・けど、まだ彼諦めてはいないみたいだね)
円に戻った緑谷君は小声でブツブツと何かを呟いていた。あの顔は必死になって思考を回している表情だよ、僕も昔よくやってたからわかるとも。・・・お、覚悟を決めたみたいだね、一体何を見せてくれるのやら。
「SMASH‼︎」
“かなり飛びましたよ!あれ結構行くんじゃないですか⁉︎”
(むむ、指先のみに個性を絞ってそこだけを代償にしたのか。・・・相当加減が制御出来てない、しかもたった一回の反動であそこまで壊れる?まるで個性が発現したばかりの幼児みた・・・あ゛)
何気なく彼を見ていたが、一つの可能性が脳裏をよぎる。AFOはオールマイトがOFAの継承者を探しに雄英に来たと推測していたが、もしかしたら・・・逆なのかもしれない。
“700m超えですよ!凄いじゃないですか!・・・どうしました?”
(あー・・・いや、もしかして緑谷君の個性ってOFAってやつじゃないよね?よりによってこのクラス青山君が居るんだけど・・・)
“え?オールマイトってもう個性を譲渡していたんですか?”
(わかんない・・・OFAが既に譲渡済みなんて話AFOからも聞いてないし、てっきり雄英にOFAの譲渡先候補を見つけに来ているものとばかり)
大記録を打ち立て自分がまだ動けることを宣言した緑谷君を先輩がニヒルに眼を見開いて認めてくれたっぽい一幕があったけれど、ちょっとそれどころではない。突然放り込まれた危機に意識が持って行かれている。
(なんで?あと10年くらいは余裕で現役いけそうじゃん⁉︎もしかしてOFAの譲渡先を見つけに来たんじゃなくてOFAの後継者を育てに雄英に来たってコト⁉︎もしかしてオールマイトって今物凄い弱体化してる⁉︎)
“あわわわわわわ・・・⁉︎”
(まてまてまて冷静になれ・・・すー、はー・・・よし、まだ彼の個性がOFAだと決まったわけじゃない。オールマイトから確証が得られるまでは、下手に決めつけて動かない方がいい)
深く深呼吸をして荒れた感情を整える。殆ど情報のない状態から自分の憶測で動くのは危険だ。彼の個性やOFAについての真相はオールマイトに直接確かめればいい、今は青山君が緑谷君を疑っていないかだけれど・・・わからん、全然わからん。
アレはどういう感情なの?指を壊した緑谷君に驚いているのか引いているのか、それともOFAの後継者っぽい奴を見つけて固まっているのか判断が全くつかない。青山君は意外と演技派だったりするのだろうか。
“杞憂だといいんですが・・・うぅ、入学初日からこんなことになるなんて・・・”
(ま、早めに知れてよかったと考えようか。最初の想定より早くオールマイトとコンタクト取った方が良さそうだけどね)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その後の種目は可も無く不可もなく、というかテストより緑谷君の観察に勤しんでいた。あの後彼は一度も個性を使わずにテストを終え、それより前もソフトボール投げ以外でも個性を使っておらず記録も芳しくないため成績最下位は恐らく彼になるだろう。
「じゃパパッと結果発表だ。トータルは単純に各種目の評点を合計した数。口頭で説明するのは時間の無駄なので一括表示な」
“私達は2位でしたか、ちょっと残念です”
(八百万さん持久走で原付バイク、ソフトボール投げじゃ大砲出してたからねぇ)
“私達も大概ズルみたいなものでしたが、彼女も大分無法でしたね・・・”
創れる物のバリエーションなら既に僕より遥かに多いだろう、流石にちょっと凹む。
「ちなみに除籍はウソな。君らの最大限を引き出す合理的虚偽」
「「「ハァ━━━━━⁉︎」」」
「あんなのウソに決まっているじゃない、ちょっと考えればわかりますわ」
「僕は最初から気が付いていたけどね☆」
“青山さんって結構図太いんでしょうか・・・?”
(この分だと緑谷君の個性に疑問を持ってない・・・といいなぁ)
「これにて終わりだ。教室にカリキュラム等の書類あるから目ぇ通しとけ、後影山は山程飛ばした土槍元に戻してから教室戻れよ」
「・・・かしこまりました、相澤先生」
(忘れてたぁ!急いで戻すよ操奈ちゃん!)
“なんだかちょっと締まらないですね。ほら、マリさん走って、ファイトです!”
入学初日の青山君、除籍されようものなら後々AFOの存在が露見するリスク排除の為に親子共々こっそり消されていた可能性もあったりするのでは?と考えると緑谷君以上にド緊張していたろうなと思い、本作はこんな感じになりました。
原作の青山君はきっと内心ドキドキでテストに取り組みながらもめぼしい結果の出ない緑谷くんを見て安心していたりしたのかなぁと思ったり。