ぼくらのヒーローアカデミア TS脳無化錬金術ヒーローマリくんちゃんの終活 作:Radrabbit
「ショ〜タ〜!猫拾ってきたぜ!」
「にゃあ?」
じんわりとした暑さを感じ始めた春の終わり頃、雄英高校二年の白雲朧が後輩を脇に抱えて屋上へ上がってきた。
珍しい昆虫でも見つけたかのような溌剌さで
「じゃあな白雲、刑務所でも元気にしてろよ」
「
「冗談冗談!このナイスガイが誘拐なんてするわけないだろ!?」
せっかく見つけてきた後輩を紹介しようと友達に持ってきたというのに、彼が想定していたのと全く異なるリアクションを返されたことで慌てて弁明を始めた。
「ぼくゆうかいされたの?」
「してないさ!ジェントルマンの俺がそんな真似するように見えるかい?」
「よく軽はずみで何かしら拾ってくるだろ。流石に人間は初めてだけど」
「いつもヘラヘラしてて何考えてるかわからなかったんですけど〜、いつかやると思ってました〜」
「裏声が絶望的に似合ってないぞひざし!」
少々気色悪いにはみ出している山田の裏声にツッコミを入れつつ白雲は掲げていた真理を地面に降ろす。解放された真理はきょとんとしたまま惚けていたものの、ゆっくりと時間を掛けて状況を理解した彼は顔色を蒼白に染めて後ずさった。
「あ、あなたたちだれ!?つーちゃんとおーちゃんじゃない!!」
「アレー!?楽しく打ち解けたと思ってたけど俺の悲しい勘違い!」
「オーGirl!まさかこのDJ山田をご存知無い!?」
「お前のことは同学年のヤツも知らないだろ」
今にも泣き出しそうな後輩を前に男三人衆が慌てふためく。にっちもさっちもいきそうにない二人の様子を見て相澤はまずは事の経緯を問い詰めることに決めた。
「で、お前なんでそいつ連れてきたんだよ。元居た場所にとっとと返してこい」
「野良猫じゃねーんだからさ・・・んでそうそう。昼飯買ってから屋上行こうと思っていたらだね?なんとこの子が中庭で野良猫と会話していたのです!!」
「は?」
いきなり何を言っているんだこいつは、と言葉に出さずに表情で表した相澤に「いやいやわかってますよ奥さん」と言わんばかりに自信満々の態度で白雲は切り出した。
「いやさ。俺たちもね?そろそろ女子ウケというものを考える時期だと思うんデスよ」
「いきなり何を言ってるんだお前は」
「おいおい相澤クンよ。「俺恋愛にキョーミありません」アピールは逆に惨めだぜ!」
馴れ馴れしく山田が肩に腕を回して煽り散らす。ぐいぐいとウザ絡みをしつこく続けられ、星のように煌めくグラスが相澤の頬に突き刺さったことでいい加減苛ついてきた彼は肘鉄を山田へ入れた。
「そのダセェ星型サングラス変えてから言え」
「What’s!?イケてるだろ!」
「星型は正直無いと思う」
「Why!?お前はこっち側じゃないのかよ!」
すんと真顔になって白雲が山田を刺す。彼は友人としてバカなノリで遊ぶ分には星型サングラスもちょうどいい感じにアホっぽくて良いと感じてはいた。
けれど女子ウケは絶望的に悪いよなと内心思ってはいたのだが、先に彼女が出来てほしくないので白雲は今まで何も言ってこなかったのだ。
「はわわわわわ・・・」
「それで・・・なんだ。お前は猫と話せる個性なのか?」
「欲望が滲み出てんぞ相ざワァ!?」
もう一発肘鉄を捩じ込まれた山田が静かに床へ伏せた。
右頬と左頬に一撃ずつ殴られた彼の顔がタンコブのように腫れていたが、誰もそれを指摘することはなかった。
「ね、ねこのね?・・・まずはねこのきもちをかんがえられるようになりなさいって、ちぃばあがいってたから」
「猫の?」
「気持ち?」
「そういうのは多分相澤が一番詳しオボァ!?」
「学ばねーなひざしも」
懲りずに揶揄い続けていた山田がトドメの一撃を入れられ床に倒れ伏した。顔面が地面に激突しないよう『雲』の個性で山田の顔を受け止めた白雲も微妙な顔をして彼を見下ろしている。
「そろそろ俺の顔面がアンパンマンになるぜ?」
「良かったな。皆の人気者だぞ」
「俺は
「サンドイッチ食う?お腹減ってるだろ」
「・・・しらないひとからごはんもらっちゃだめって、つーちゃんがいってたもん」
「たはー!そりゃそうだ!」
山田と相澤が戯れている横で白雲が餌付けに失敗していた。鳥塚翼の教育によって一般常識を少しづつ学び始めていた真理は、最近になって「知らない人から貰ったものを食べてはいけない」という認識を身に付けていたのだ。
「それじゃ自己紹介しようぜ!俺
「・・・ごうりまり、こせいは『れんせい』。ひーろーめいは・・・『あるけみー』にするの。すきなもの・・・おねえちゃん?」
「そうかそうか!仲が良いのはいいことだな!」
「うん!
白雲の相槌に強張っていた表情を柔らかくして真理はあどけなく笑った。それを見て白雲もいつもより3割り増しに快活な笑顔を見せて真理へ話し続ける。
自然と膝を曲げて目線を合わせ、身長の高い彼に真理が怯えず話しやすい雰囲気を作っていた。
「そんでさ、なんで猫の気持ちを考えてたんだ?」
「んとね。ひとのきもちをかんがえるれんしゅうっていってた。さりーあんてすと?ってちぃばあがもってるかみにはかいてたよ」
「ほほう、何やら不思議な響き。よくわからんがテスト勉強中ってとこですかな?」
「そうだよ!つーちゃんとおーちゃんもおうえんしてくれてるの!」
初めは攫われたことへの警戒心で固い態度だった真理も少しずつ心を開いていく。二人の空気が柔らかくなってきたことを察知した相澤と山田も戯れあいを止めて彼らの近くへ戻ってきた。
「Hey!俺たちのことも忘れてもらっちゃ困るぜ!未来の国民的DJプレゼントマイクとイレイザーヘッドをよ!」
「俺を巻き込むな・・・こっちの煩いのが山田ひざし、俺が相澤消太だ。まぁ・・・よろしく」
「笑顔が引き攣ってるぞショータ!」
「ようこそ俺たちの
罅の入ったサングラスを掲げた山田が歓迎し相澤が訂正を入れる。そのままテンションを上げた山田と白雲が意気揚々と肩を組み、一人だけ半目のままローテンションの相澤を間に組み込んだ。
死にそうな顔で嫌々肩を組まされている相澤を白雲と山田が両サイドから揺らす。陽キャと陰キャのリズミカルサンドイッチを目の前で見せられた真理はその光景を面白く感じたのか、身体を左右にゆらゆらと揺らしぱちぱちと手拍子を入れ始めた。
「ね、ね、おにーさんたちはなにしてるの?おゆうぎかい?」
「THE・モテるための生存戦略!ビバ青春!」
「もて・・・?せーぞん・・・?」
「
「きてぃ・・・?」
割れたサングラスをマイク代わりにして山田が高らかに宣言した。非モテ三人衆*1から抜け出し薔薇色の高校生活を送るための作戦会議。
偶に白雲か山田がキッカケを言い出してから始まるいつも通りの日常、昼休みに屋上で高校生らしい馬鹿話をして隙を潰す青春の一幕。それを隠れ蓑にしながら相澤が白雲に視線を寄せる。
「本当のとこ、なんで強引に連れてきたんだ?」
「一人で猫と寂しそうにしてたからさ。元気付けたくて」
「ハァ・・・今度からは事前に連絡入れろよ。俺そういうの向いてねェんだから」
「わりーわりー、明日昼メシ奢っから勘弁な」
小声で白雲と相澤が真理を連れてきた本当の経緯を語る。自分でも人付き合いが苦手な自覚のある相澤は眉を顰め膝で白雲を突いた。
彼とてヒーロー候補生として白雲の行動を攻めるつもりは毛頭無いが、せめて準備くらいはしておきたかったのだ。それをわかっている白雲もニヤニヤとした面を向けるだけで相澤にはそれ以上何も言わなかった。
「むー・・・むー・・・?」
「ま、おこちゃまにはまだ
「わかるもん!そのめがね、すっごくへんだよ!」
「えぇ・・・マジ?そんなウケ悪いのこのサングラス・・・」
宝石のような紅い瞳を真剣に細めて真理が唸る。
自信満々に決め台詞を吐いていた山田だったが、小さな少女*2から「変」と断言されてしまったことには流石に動揺して項垂れた。そこへにこやかな笑顔を浮かべた白雲が相澤と肩を組んだまま山田へ声掛けた。
「ちょうど壊れたし新しいのにしようぜ!今度は俺がサイコーにカッコいいサングラスを選んであげようじゃないか」
「・・・いや、そもそもこれ元々お前が選んだやつじゃね?ファッキン!」
「マジ?そういえばそんな記憶が・・・すまん!ショータ任せた!」
「俺に投げんなよ」
ネタに全振りしたサングラス*3を買わされた山田が白雲にヘイトを向けた。すかさず白雲は相澤を自分の前に突き出し個性で生み出した雲に隠れる。
そうして相澤越しに白雲へ山田が睨みを利かせる奇妙な膠着状態が生まれた。しょうもない争いに相澤が呆れ果てて隠れた白雲を突き出そうとしたその時、置いてけぼりを食らっていた真理が山田の近くに寄ってサングラスをまじまじと見つめて言った。
「これすてちゃうの?」
「んー?まぁこんだけ壊れちまったからナー。幾ら俺がイケDJでも着こなせないアクセってもんはある」
「なおせばいいの?つーちゃんのみたいにして」
「お?キティの個性ってやつ?」
「俺みたいみたい!ショータも見たいよな?」
「俺は別に山田のサングラスに興味ないんだが・・・」
真理の個性に興味を持った二人と腕を引っ張られた一人がわらわらと彼の近くまで押し寄せる。急に寄ってきた三人にびっくりしてのけ反りながらも真理はサングラスを手に取った。
そして掌に乗せられた淡い光と共にサングラスの形を変えていく。彼が友人二人と遊びに行った時に
「スゲー!完全に新品だぜコレ!」
「オシャレ〜。俺のゴーグルもカッコよくてしてもらおうかな」
「珍しいな。修復、復元・・・干渉系か?」
「わ、わ・・・ち、ちかいよ・・・」
生まれ変わったサングラスをまじまじと見つめる山田達に真理が困惑して顔を背ける。慌てて白雲が山田の首根っこを掴んで引き下がり、大きく手を振って無害アピールをした。
次第に驚いてぎゅっと目を瞑り震えていた真理がゆっくりと瞼を開く。
彼は落ち着かない拍動を誤魔化すために一瞬だけ二人に近づき、持っていたサングラスを山田に手渡して三歩分だけ彼等から距離を離す。
「おっとすまん!いきなり失礼だったな!」
「ううん、ちょっとびっくりしちゃっただけだから」
「Thank you!俺にピッタリなniceデザインだぜ!」
作り直されたサングラスを指で掛け直し、山田が機嫌良く歯を見せて笑う。娯楽用ではない小洒落たデザインのサングラスを彼は気に入ったようで、実際にオシャレに興味の無い相澤でも好印象を受ける程度には山田によく似合っていた。
「HEYHEYHEY白雲ボーイ!きっちりカッチリ撮ってくれYO!!」
「くぅ〜これは間違いなく未来のスターモデル!流石はDJ☆ヤマダ!」
「プレゼントマイクと呼びたまえオボロクゥン!」
「その褒めセリフ前も言ってなかったか?」
キメ顔でポーズを次々と取り続ける山田、彼の周りで煽るように写真を撮りまくる白雲、呆れ顔で二人の撮影会にツッコミを入れる相澤。
此処に三年の香山睡まで揃っていれば彼等の普段通りの日常そのものであったが、幸か不幸か彼女が此処に居合わせることは無かった。
「・・・悪いな、いきなり白雲のバカが攫っちまって。あいつも悪気があったわけじゃないんだが・・・」
「んーん、こわくないってわかったからいいよ」
「そう、か」
なるべく怖がらせないよう膝を曲げてゆっくり近づいた相澤に真理は自分から歩み寄った。
学校の課外授業やプライベートでも子どもの相手など殆どした事のない彼にとって、眼前に居る後輩にどう対応すればいいのかはわからなかった。
なので見様見真似で白雲のように視線を合わせて真理と接することを試みている。彼等のじゃれ合いが警戒心を解いたのか、それとも何か切っ掛けがあったのか。
相澤から見て判断できる要素はなかったものの、目の前の後輩を見て少しずつ実感が湧いてきた先輩の立場としての自覚が彼を行動に移していたのだ。
「というわけで!かっちょいいサングラスに直してくれたお礼をさせてくれないか?」
「おれい?」
「カワイイ後輩に一方的に恩を貰ってちゃ雄英生の名が廃るってもんだZE!」
「はしゃぎ過ぎだ。もうちょい落ち着け普段から」
そしてようやく一通り写真を取り終わった二人が戻って来た。
「おれい・・・」
「夕飯のメニューから進路相談まで!オールレンジにカバーしてやんYO!」
「無理して言わなくてもいいが、話すだけでも楽になることはある・・・たぶんな」
「ぇ、と・・・なんでも、いいの?」
躊躇いがちに視線を右に左に彷徨わせている真理が恐る恐る白雲達を見た。
白雲と山田は二人で肩を組んで
「
「そんなもん初めて聞いたが?」
「ま、これでも俺たち2年生だからナ!何でも相談してくれていーぜ!」
「ほんと!?」
「バトル方面に関しちゃ俺は落ちこぼれなんだが・・・」
「存分に頼りにしな!サングラス代だキティ!」
不安から両手の指をつついていた真理も自信に溢れた彼らのアピールに安心したようで。嬉しそうにその場で小さくぴょんぴょん跳ねてはにこにこと笑いながら彼は語り出した。
「あのねあのね?さいきんね、せんとうくんれんでこまっちゃうの」
「バトル系の悩みってYATUネ」
「たたかうのがへたっぴさんなの、それでいつもわあー!ってなっちゃって」
「考えながら戦うのって難しいもんなー」
一度口火を切れば止まらなくなったのか、頬を紅潮させて精一杯喋り続ける真理を微笑ましそうに白雲達が見つめている。
彼らは個性を使用した訓練に自分達が雄英に入りたての四苦八苦していた頃を思い出していた。あれが駄目だった、これが上手くいかなかったと必死に説明をする真理に、どこか懐かしい気持ちを感じながらお悩み相談を聞いている。
「それでね、ぼくがわあー!ってなっちゃうから、いつもつーちゃんたちがまけちゃうの」
「ナルホド、友達に迷惑かけたくねーんだな」
「そんぐらい気にすんなYO。相澤なんて毎回ボコされ続けてしょげてんだぜ。HAHAHA!!」
「喧しい。救助の方はちゃんとできてんだろ?ならそっち方面をメインに据えればいいんじゃないか」
「でも・・・」
二人の言葉にイマイチ納得がいっていないのか彼はもじもじしていたが、まだ彼らの話は終わっていない。彼に近づいた白雲が両手をそっと肩に乗せ、真剣な表情で真理と見つめ合った。
「お前の友達は負けることなんて気にしてないぜ!俺が保証する。じゃなきゃ一緒のチームなんて組まない」
「そーなのかな・・・」
「もちのロンよ!俺だってそーだからナ!何よりチーム組むならダチと一緒がいい!」
「白雲・・・」
「まー、周りが戦闘メインだと自分だけ遅れてる感あって焦る気持ちはわからんでもないなー」
「バトルばっかの
白雲の想いと重なった言葉、それに思い当たることがあったのか真理は視線を床へ向けて考え始めた。そして相澤も彼の考えていたことを知った。いつも対人訓練で足を引っ張っている己と何故彼がチームを組んでくれていたのか。
普段は気にしない素振りをしていても心の片隅に沈んでいた不安。これまでずっと密かに抱え込んでいた友への疑念。それがひっそりと消えていく彼の頭に一つの答えが浮かぶ。
「・・・そうか」
「どしたショータ?トイレか?」
真理の悩みを聞いてから引っかかっていたその感情の名を、珍しく彼は素直に口に出した。
「寂しい・・・んじゃないか?」
「さみしい?」
「あぁ、初めての友達なんだろ?それに訓練や成績で追いつけないもんだから、一人だけ置いていかれてるように感じている」
「・・・さみ、しい」
心に広がっていた感情の答え。それを言い当てられた真理はきょとんとした表情で相澤を見上げていた。
けれど初めてその名を告げられた感情を彼は完全には理解できていない。自分が寂しさを感じていたことを相澤から伝えられてなお、ぼおっと惚けたように寂しいという言葉を反芻していた。
「お、腑に落ちたって感じ?」
「冴えてんな相澤!・・・ん?もしかしてそれオマエも思ってたりする?」
「水臭いなショ〜タ〜!俺達はお前を置いていったりなんかしないぞ〜!!」
「絡むな鬱陶しい!」
「HEYHEY!照れんなよピュアボ〜イ?」
思わぬ相澤の告白に馬鹿二人が即座に反応して絡みかかる。薄く涙すら浮かべて白雲は彼に抱き着いていたし、山田は煽るように背後でラップを奏で始めていた。
口では拒絶している相澤も甘んじて二人の戯れを受け入れていた。そんな三人に何となく楽しそうに思っている真理も、何処となく心がふわふわと浮き上がるような気持ちを感じて少しだけ楽しくなってきていた。
「なかよしさんなの?」
「
「誰よりも輝いてると大評判!」
「抜きん出た問題児って意味だよ誇るな」
「なかよしさんなんだ!」
「「Yeah─!!!」」
真理に仲良し三人衆と認められたバカ二人が相澤を真ん中にして肩を組み、高らかに歌いながら無駄に完璧なリズム感のダンスを披露する*4。
何故ずっと真面目に取り合えないのか問いただしたい相澤だったが、二人のノリを見て楽しそうに笑っている真理を見て小さなため息をこぼし、喉元まで上がってきていた言葉を口に出すことをやめた。
「とはいえな〜。それはそれとして友達のこと、ギャフンと言わせたいよな〜」
「ぎゃふん?」
「すごいぞ真理〜って言われなくないか?」
「いわれたい!」
「だろー?」
バカダンスを見てきゃっきゃっと喜ぶマリの周りを旋回していた白雲が足を止めて真理に提案した。
「何する気だ?」
「迷える後輩を導くのも先達の役目!」
「俺たちはそれ言える立場なのか・・・?」
「もうそろ体育祭だろー?修行の成果を見せるにはピッタリってわけよ。それに・・・」
肩を組む白雲がそっと相澤にウインクを飛ばす。それを受けて瞬時に自分に話が回ってきそうな気配を察知した相澤が困惑して彼を見つめ返していた。
だが白雲は良いアイデアを思いついたとばかりにニヤリと眦を上げ、夏の晴天のような眩しい笑顔を相澤へ向けて笑っている。
「誰かに教えるってのは自分の為にもなるんだぜ。ショータにとってもいい経験になるんじゃねーか?」
「それは・・・確かに一理あるか」
「決まりだナ!そんじゃ早速作戦会議、Let's thinking!」
かくして此処に真理と相澤達の青春の幕が上がる。遠い日の懐かしい思い出、手を伸ばせば掻き消えてしまう陽炎のような儚い過去の残響。
高鳴る胸と期待に心躍らせていた少年が人生を踏み躙られるまでの、一瞬の花火のように短い夏の記憶。