ぼくらのヒーローアカデミア TS脳無化錬金術ヒーローマリくんちゃんの終活 作:Radrabbit
「はーっはっはっは!秘技、雲隠れの術!」
「
「ふははぬるいぬるい!そんなことではこの魔王クラウディスカイを捉えることはできんぞぉ!」
「まだだよ!ハウちゃんついんべろすもーど!」
「ぬお危っ」
放課後のグラウンドβに真理達はいた。彼らは今複数設置された罠雲へランダムに隠れた白雲達を見つけ出し、身体に付けた風船を割ればご褒美が貰えるというルールでの訓練をしていた。
(背面ジャスト、ここだ)
雲に隠れて機をうかがい、騒ぐ白雲を囮とした背後からの強襲。
この訓練では暗殺者イレイサーの名を押し付けられた相澤が真理の無防備になった背中の風船へチャンバラバットを振るう。
「
(ミニサイズの蜂の群!服に隠していたのか!)
背後からの奇襲に備えた蜂の防壁、真理がカウンターとして潜ませていたゴーレム達が顔を出す。
裾の合間から溢れ出したミツバチサイズの蜂型ゴーレムの群。それらが勢いよく相澤へ襲いかかる。
「ショータ!死ぬなァ!」
「つってもこの数は・・・!!」
ぱん、と音を立てて相澤の背に付けていた風船が割られ相澤の敗北が決定した。
続いて
「ザ・数の暴力!!いいのか!?勇者パーティーは四人までなんだぜ!?」
「そうなの!?」
「今だ!クラウディ
「わあーずるい!」
魔王の命乞いに隙を見せた真理へ卑劣な不意打ちが炸裂する。視界を潰すための大きな雲布団が真理の全身を覆い隠し、それを見た白雲が高笑いをあげた。
「フゥーハハハハハ!!油断大敵!敵の言葉に惑わされてはいけないぞ!」
「ぶー」
まんまと騙された真理が人型のマシュマロとなり身動きを封じられた。口を尖らせて不満そうにしている真理の前に悠々と白雲が歩み寄り、自慢げな表情をして指で鼻を摩った。
「いかがかな?俺の新技、クラウディブラインドは」
「
「こっちの方がかっこいいかなって・・・」
訓練の一環で考えていた技が上手く決まり得意気な白雲に対して、背後を突くまではよかったものの反撃を受けた相澤。
すっかり訓練が終わって反省会に移った雰囲気が流れ始めたその瞬間、真理に纏わりついた雲の中から一匹の
「てい」
「あ」
小型ながら精密に計算された針が音もなく射出され、完全に気が抜けていた白雲の頭上の風船を刺し貫いた。
「・・・まさしく油断大敵!ってやつだナ!」
「この速さで返ってくるとは思わなかったろ」
「ふふーん、むれでおしだせばいっぴきくらいはだっしゅつできるもんね」
今度こそ訓練は真理の勝利に終わった。とんだ失態だと吹き出しながら大の字で白雲が地面に転がり、嬉しそうに走って来た真理を抱きかかえて胡坐を組んだ。
そうしてリカバリーガールから預かっていたご褒美用のサルミアッキを相澤から与えられ、ご機嫌な真理を白雲の膝に乗せての反省会が始まった。
「割とすぐ真理も個性と併用して動くのに慣れてきたなー」
「むしろ最初あそこまでテンパってたのが不思議なくらいなんだが」
「うーむ、心当たりあるか?」
「?」
きょとんと首を傾げている真理を見て白雲は追求することをやめた。所謂暗黙の了解、藪を突いて蛇を出す趣味は彼等にはなかった。
「ま、俺の指導力が天才的だったってとこかナ!」
「なわけねぇ・・・強いて言うなら学習が速いな。教えたことは忘れないし、実践に活かすのもスムーズに感じる」
「てことは単純に経験不足って感じ?」
「どうだろうな。先生方なら何かわかったかも知れないが」
胡座をかいた白雲に座ってのんびり伸びと欠伸をしている真理を見ながら相澤が考察を進めている。
しかし実際には本人から聞き出せることが殆ど無いゆえに、彼等の考察は事実上の暗礁へ乗り上げていた。
「まーほら、よく子どもはスポンジみたいに吸収するのが速いって言うだろ?あんな感じだろ多分」
「
「それにまさか勉強の方は俺らよりできるとは思わなんだ」
「そりゃ雄英入試は本当の子どもに突破できるほど甘いもんじゃねぇし・・・まぁ、文系科目なら俺達もまだ先輩面できるさ」
彼の学習の速さに驚きつつも上手く成長できているのなら問題ないだろうと結論付けて話を続けた。
「いちねんくらいべんきょーがんばったもん。たいへんだったんだよ?」
「なー。俺も懐かしの受験戦争の時は二日に一回は知恵熱出してた気がする〜」
「・・・今受験して受かる自信はないな」
日本最高峰の偏差値を誇る雄英高校の受験は並大抵の努力で突破できるものではない。
口では自分を馬鹿キャラだと言う生徒であったとしても、実際にヒーロー科へ進学するためには日本トップクラスの学力が必須となる。
「かんごしさんにかんじどりるかってもらってれんしゅうしたの〜」
「入院中も勉強してたのか!?すげーなぁ」
現に仮名文字の練習から始める必要性を感じさせる真理であっても、その学力面については日本最高峰の水準に到達している。
「にしてもよくショータが後ろから来てるってわかったな。俺だったら気付く自信ないぜ」
「だっていっつもあいざわせんぱいうしろからくるもん。ばればれー」
「ぐっ・・・」
ずび、と相澤を指差した真理にショックを受けたように彼は呻いた。めきめきと急成長はしているものの、つい最近まで対人戦は素人そのものだった真理。
そんな彼にはっきりと癖を指摘されたことに内心では驚いていた。
「確かにショータが正面から戦ってるのあんま見たことねーや」
「『抹消』で消せないゴーレムを正面から迎え打つのは合理的じゃない」
「それで奇襲がバレバレになんのは非合理的じゃないか?」
「・・・そりゃあ、そうなんだが・・・」
白雲の指摘に何も言い返せず口を閉ざす。彼自身己の手癖については薄々感じていたものの、それを改善するためにどうするべきか悩んでいた。
「そもそも俺は正面戦闘向きじゃない」
「・・・せんぱいよわよわさんなの?」
「そんなことないぞ!自信が無いだけでショータはいつも訓練しっかり熟してるし、オリジナルのサポートアイテムだって練習してんだぜ?」
「じゃあつよつよさんなんだ!」
「そーだぜ!ショータは強いんだ!本気出せればすっげーんだぜ」
自身の戦闘能力を悲観して自虐的な呟きをする相澤の言葉を真理は鵜呑みにしかけ、それを見た白雲が反論を述べた。
彼から見た相澤消太という男の評価は本人の自認とは全く異なる。
相澤本人は体格に恵まれた肉体ではないため素の戦闘能力を低く見積り、その結果として自虐的な自己評価を置いてしまっている。
しかし懸念や不安を捨て敵の分析と打倒に全力を尽くせる時が来たならば、相澤消太と言う男は誰にだって負けやしないと、白雲朧はそう本気で思っていた。
「やめろお前ら」
「でもよー、腹括ったときのショータは本当に凄いんだぜー?」
「だぜー?」
「マジでやめろ」
自身を褒めちぎる二人に相澤は仄かに顔を赤らめた。彼の羞恥心が限界を超えて二人を物理的な口封じをする前に白雲が真理の口を閉じ、ニコニコと笑みを浮かべながら相澤を自慢気に見つめている。
「ま、ともかくこの調子なら体育祭もイケるんじゃないか?」
「ほんと?ぎゃふんできる?」
「できるできる!俺達を信じろ!」
「・・・そこまで気負わなくてもいいぞ。いつも通りの100%を発揮できればそれで十分だろ」
「わかった!」
ここ最近の訓練の成果を振り返りながら白雲がそう真理に告げた。
なんなら寧ろ自分達が1年生だった頃より高いパフォーマンスを発揮できるのではないだろうかと。
白雲達が若干戦々兢々としながら祝杯をあげようとしたその瞬間、訓練場へ新たな乱入者がやってきた。
「見つけたー!!アンタ達でしょ!最近真理を誑かしてる上級生ってのは!!」
「ち、違うぜgirl's・・・俺達先輩、個性の特訓してただけ
「嘘だったらその素敵な髪型ツルツルにしちゃいますからね〜」
そこへ訓練場の扉を叩き開けて鳥塚と蛇喰の二人が入ってきた。彼女達によって山田は濡れ雑巾が絞られている時のような姿で鳥塚の双翼に捕縛されており、彼は助けを求める顔をして相澤達を見ていた。
「つーちゃんとおーちゃんだ!ふたりともどうしたの?」
「どうしたのって・・・真理が最近放課後に怪しい先輩と何処かに行ってるって黒瀬さんが教えてくれたから」
「うちの可愛い真理が変なことに巻き込まれてないかな〜って心配になってたんだよ」
「へんなこと~?」
とてとてと二人に駆け寄ってきた真理は何のことだがわからないとばかりに首を傾げる。当然本人からの聴取では事実がわからないと鳥塚は警戒を解かなかった。
「怪しくて悪かったな・・・」
「もうすぐ体育祭だろ?真理が君らにカッコいいとこ見せたいってんで訓練手伝ってたのさ」
「真理が?」
「あのねあのね!さいきんせんぱいたちとくんれんがんばってるの。もうつーちゃんたちとちゃんとたたかえるんだよ!」
「そう、なんだ・・・もう、気にしないでいいって言ったのに」
「えへへ、ねぇねぇすごい?」
嬉しそうに天真爛漫な笑顔を見せる真理の様子にようやく一安心できたのか、にこにこと笑って抱き付いてくる真理を撫でながら鳥塚は安堵のため息を吐いた。
「とはいえ私達に黙ってたのはお母さん許しませんよ!鳥塚!」
「真理~?もう怪しい人に着いてったら駄目だからね?」
「あはっ!ひゃ・・・くす、くすぐったい~!」
「はぐらかすのはもっと駄目、ね?」
「んひっ・・・わ、わかったからぁ!もうしないぃ~!」
純朴で放っておけない童女のようなクラスメイトがもしや悪い男にでも騙されたのかと本気で心配していた鳥塚と、まぁ雄英の先輩だし最悪でもヘンテコな先輩と遊んでいるくらいだろうと想像していた蛇喰。
方向は違えど真理のことを心配していた二人が実際に本人がこそこそ出入りしている現場に居合わせればこうなるのも必然だった。
「ね、ねぇ~お嬢さん方。その辺にしといた方がいいんじゃ・・・」
「先輩は真理のちょろさを知らないから言えるんです」
「その辺歩いてるおじさんにおもちゃで釣られそうになったときは肝冷やしましたよ~」
「お、おぅ・・・」
鳥塚の双翼に捕まり抵抗している真理を見て白雲が止めにかかるも、半端にはぐらかされていたせいで割と本気で危機感を覚えていた彼女は躾の翼を辞めなかった。
実際訓練が遅くなった日は個性で作った雲に乗せて家まで運んでいた*1白雲には、真理を思って叱る二人を止める言葉を続けられなかったのだ。
「へ、HEYHEY!Girls!今は後輩ちゃんの頑張りを褒めてやった方がいいんじゃない?その娘最近すっげー頑張ってたZE?」
「・・・まぁ、懐いた相手は雄英の先輩ですし、私達のためならこれくらいで済ませてあげますか」
「あとこの子男の子ですよー」
「「「
翼から解放されそっと地面に置かれた山田が二人に声を掛けるも、返って来た衝撃的な内容に上級生三人組の時が止まる。
この数週間で彼等は真理のことをすっかり歳の離れた後輩女子程度に思っていたので、何処からどう見ても男子要素のない彼の性別に気がつくことは無かったのだ。
「やっぱ気付いてなかった。まさか狙ってたりしてないですよね?」
「「してないしてない!!」」
「あなたは?」
「いや、俺別に恋愛に興味ないんで・・・」
「そういうタイプは変に拗れてロリコンに目覚めたりするんですよ」
外見から陰気な性格だと見做された相澤を鳥塚が詰めにかかる。そして彼女の発言に乗っかった白雲も顔を青くして相澤を見た。
それを見た山田も彼に合わせサングラスを震わせながら涙を流すようなフリをしている。
「相澤って真理には結構優しかったよな・・・」
「ショータまさか・・・」
「まて白雲!!俺は本気だ!!」
「本気なんですか!?」
「興味が無い方にだよ!んなわけあるか!!」
未だ人生で出したことの無い程の大声をあげて不名誉な疑惑を彼は否定する。
まさかこんな形でキラーパスが飛んでくるなど想像もしていなかったので、突然の犯罪者疑惑に彼の心臓がバクバクと音を立てて鼓動を激しくしていた。
「マ、こいつは捻くれてるだけで悪い奴じゃないぜ。ネガティブで自虐ばっか考えてるけど、ヒーロー目指してストイックに訓練してるピュアなやつなのサ」
「おう!なんなら俺とひざしの方が女子ウケとか考えてるくらいだ!」
「お前ほど真剣に考えてはねェYO」
「初めからそう言ってくれ」
おどけながら援護をする二人にがっくりした顔で相澤が頭を垂れる。
そうした三バカの気のしれたやり取りを見て、毒気の抜けたような表情で鳥塚が吹き出した。
「ふふっ・・・えぇ、わかりました。先輩方は変な人でも悪い人ではなさそうですね」
「むしろよかったじゃん?同性で仲良くしてくれる人初めてでしょー」
「なかよしさんだよ!」
「はー、ったくこの子は・・・」
「うみゅ」
両手をぶんぶんと振って仲の良さをアピールする真理の両頬を摘んで鳥塚はため息を吐く。
それを見て鳥塚を元気付けようとした真理が両手でピースサインを作り、とびきり可愛らしい笑顔の上に真っ黒な目隠しを錬成して言い放った。
「だいじょーぶ、ぼくてんさいだから!」
「ヘンテコな目隠し作んないの。真理には似合ってないよ」
「それ言うには後身長が60cmは要るんじゃないかな〜」
「ショータショータ、お前もあれ見せてやろうぜ『領域展開!』」
「場を弁えろ、痴れ者が」
「台詞と表情が合ってねー!ミスマッチ!」
死ぬ程雑な振りに表情筋が死んだまま声真似を吐き捨てた相澤*2。音の鳴る玩具で喜ぶ童子のように相澤を見てきゃっきゃっと笑う真理。
鳥塚は三馬鹿+αの日常シーンに真理が心から彼等に懐いていることを理解した。そしてこの先輩達とちゃんと訓練を頑張っていたのなら後はそれを自分達が受け止めてあげればいいと、鳥塚達は体育祭へ気を引き締めることを決めた。
「ま、そんだけ頑張ったなら体育祭楽しみにしてるよ」
「真理のカッコいいところちゃんと見せてね〜」
「うん!」