ぼくらのヒーローアカデミア TS脳無化錬金術ヒーローマリくんちゃんの終活 作:Radrabbit
“そういえばマリさん、着替えの時に物凄く自然体でしたね
(うん?何か問題あった?)
“無いことが問題なんですよ!マリさんって大人の男性なんですよね?普通動揺とかするんじゃないですか?”
(え・・・あぁ、特に意識してなかったや。僕何か失礼なことしちゃってた?)
“いえ、別にしてないですけど・・・リアクションが薄すぎませんか?あ、もしかして男性が恋愛対象だったりします?”
(そんなことはない、と思うよ?でも恋愛とかは正直よくわかんなくて)
散らかした土の処理が終わって更衣室から出た帰りに操奈ちゃんから何故か詰問が始まってしまった。確かに最初は一瞬男子更衣室に間違えて行きかけたけどすぐ戻ったし問題ないよね?けれど彼女がそう言うということは他に不味い部分があったのだろう。しまったな・・・クラスの皆から変にマイナスな印象を持たれていないといいんだけど。
“そういうことじゃないんですが・・・クラスメイトの皆さんの着替え姿を見て、何か感じたこととか無いんですか?”
(んー?肌綺麗だなぁとか髪ちゃんと手入れしてるなぁとか、後は流石に胸は僕より大きいなぁとか?)
“私はまだ成長期ですから!後セクハラですよソレ!”
(え?・・・ああいや、操奈ちゃんじゃなくて郷里真理の胸と比べての話だよ)
“は?マリさん男性なんですよね?”
(戸籍も身体もちゃんと男性だよ?)
“??????????”
操奈ちゃんが固まってしまった、そんなに変なことを言ってしまったかな。・・・いや、彼女は思春期の女の子なのだからここは大人の僕がちゃんと汲み取ってあげないといけないだろう。・・・あ、そっか、なるほどなるほど。*1そういうことね。
(大丈夫、安心して?いざとなったら僕の『錬成』でバストサイズ位*2ちょちょいのちょいだから、発育を心配することはないよ、ね?)
“違いますって‼・・・マリさんは女性とお付き合いしたいとかキスしたいとか考えたことないんですか?・・・あと、胸の話についてはまた後で教えてください”
(ない、かなぁ?世の中の男性は女性と付き合いたがったり生肌や裸体を見て性的興奮を覚えるらしいけれど自分じゃ経験が無いからなぁ。僕が男性のスタンダードよりズレてる自覚はあるけど・・・)
“うぅん、マリさんって所謂草食系男子っていうものだったんですかね”
(それ多分使い方違うんじゃないかな・・・)
操奈ちゃんと謎の恋愛談義を続けつつ教室に戻ると、飯田君と麗日さんに保健室から帰ってきた緑谷君が残って談笑していた。彼の指ちゃんと治してもらえたんだ。この短時間で済んだってことは骨までぐちゃぐちゃに粉砕・・・までは流石にいってないみたいだね。リカバリーガールが治せる範囲で良かったよ、個性使うたびに手術しないといけないくらい重症になってたら相澤先輩に何言われるか分かったものじゃないからね。
「てっきり私以外の方は全員帰ってしまったと思っていましたのに、偶然ですわね」
「影山さんだ、おかえりー。テストのアレ凄くカッコよかったよ!槍をビュンビンーって飛ばすの!」
「そうなのですか?私としては個性制御が未熟故の苦肉の策でしたから、見苦しいものに見えたかと思いましたのに」
麗日さんは褒めてくれているけど、自分的にもあんなにお粗末なものはプロになって以降今までになかった。新入生基準なら凄くてもプロ基準ならあまりにも杜撰で雑多な個性制御だよ・・・は、恥ずかしい、影に入って隠れたい*3くらい。
(恥ずかしすぎる・・・死ぬ、死んじゃう・・・相澤先輩にバレたら詰められるくらい雑だったのにぃ)
“隠れ家を出てから初めてちゃんと組み合わせて使ったんですし、そこまで卑屈にならなくてもいいじゃないですか。私は良かったと思いますよ?”
(あそこじゃ手の内を見せないようにしっかり修練できなかったとはいえ、ここまで複数個性の同時制御が難しいとはね・・・)
それを考えるとAFOは一体どんな頭をしているのだろう。あいつの
(急に物凄い早口!)
“ほら、緑谷くんも褒めてくれていますよ”
「緑谷君、影山君が困惑しているぞ。語るのはいいが少しストップするべきじゃないか?」
「ご、ごめん!いきなり気持ち悪かったよね・・・」
「いえ、そこまで褒めてくださるのは嬉しいですからお気になさらず」
いい加減個性テストから話を逸らしたいので二人が残っていた理由を聞いたところ、彼らは緑谷君が保健室から帰ってくるのを待っていたらしい。友人思いのいい子たちだね、操奈ちゃんの友達になって欲しいくらいだよ。
「それでねー、デク君の事をなんて呼ぶか話してたんよ」
「俺としては蔑称を渾名にするのはどうかと思うんだが、本人が気に入っているのなら口を出すべきでは無いのだろうか・・・‼︎」
“む、難しい問題ですね”
「私はいいと思いますよ?蔑称をポジティブなイメージに変換できるならそれに越した事はありません」
「むぅ・・・確かに、本人にとって嫌な思い出をプラスに変えられるなら悪くは無いか」
教室を出て歩きながら聞くに、緑谷君は爆豪君からこれまでイジメのような扱いを受けていたようだ。彼はあからさまに虐めっ子の不良みたいな言動をしていたし納得である。ソフトボール投げの時に緑谷君に何か突っかかっていた覚えがあるが、彼の個性について思考を回していたから流してしまっていた。
今後もあのような振る舞いを爆豪君が続けるなら止めに入らないといけないか、相澤先輩に矯正して貰えればそれが一番なんだけどね。
「皆さんは電車通学でしょうか?」
「そうだよ!影山さんは近いの?」
「高校から一人暮らしをすることになりまして」
“実際は私と一緒ですから二人で同棲ですけどね、えへん”
(何故そこでえらぶるの・・・?)
何故か操奈ちゃんが自慢げに宣言を放つけれどそれってそんなに重要なことだろうか。何か高校生の女の子の琴線に触れることあったのかな・・・。
「一人暮らし・・・俺も自立を考えるべきだったか」
「えーでも大変だよ?私も一人暮らし始めたけどやること多くて毎日忙しくて忙しくて、親に頼れるなら頼っちゃってもいいと思うけどなー」
「ひ、ヒーロー科の過酷なスケジュールをこなす事を考えると、家の事まで手を回すなんて僕だったら絶対疎かになっちゃう自信があるよ」
「それほどでも・・・あるのでしょうか?」
一人暮らしってそこまで言うほど大変だったかな、中学の頃にはもう一人で暮らしてたから殆ど苦戦した記憶とか無いんだよね。・・・あぁ、僕は『錬成』使って結構不自由なく暮らしてたけど、生活に直接役立つ系の個性じゃない人だと確かに慣れるまでは大変に感じるか。
“私のことは今日から家族のように思ってもらっても大丈夫ですよ!”
(あ、ありがとうね?)
先程からやたらと操奈ちゃんが家族アピールをしてきている。かなり懐いてくれているみたいで嬉しいけれど、彼女の家族がもう誰も残っていないことを考えるとかなり重めの発言だ。彼女が僕のことをどう思っているのか一度真剣に話し合った方がいいのだろうか。
「私はここで」
交差路の途中で足を止める。ここからは夕日に照らされた帰り道を緑谷君が行き、僕らは日陰に覆われた横道を通って帰っていく。・・・やだな、嫌な想像しちゃった。ま、そうだね・・・操奈ちゃんがあっちの明るい道に行けるように僕が頑張んないと。
「・・・影山さん?」
「どうかしましたか?」
「あぁいやいや!ちょっと様子が気になっただけというかなんというか」
「大丈夫ですよ、今日のことを思い出していただけですから」
横を向くと緑谷君がこちらの顔を心配そうに見ていた。そのつもりは無かったけれど少し顔に出てしまっていたのかな。でも飯田君と麗日さんは不思議そうな顔をしている・・・この子がよく人の顔をよく見ているのか。まだ個性の反動で身体を壊してしまうくらいの未熟者だけど、そういうところはしっかりヒーローらしい子なんだね。
「それでは皆さん、また明日からよろしくお願いしますね」
「もちろんだよ!また明日ねー!」
「俺の方こそよろしく頼む」
「僕も個性のこととかで相談するかもだし、これからもよろしくお願いシマス」
三人と別れてから帰路に着く。操奈ちゃんと二人きりで路地を歩きながら話すのは今朝ぶりだけど、他の人とマトモな会話をした*4のなんて半年以上前だから、こうした二人だけの話もなんだか久しぶりのことのように感じてしまう。
“皆さん明るくていい人達ですね。明日からも安心して通えそうです”
「うん、青山君の無事も確認できたし一先ず安心かな。次は如何に早くオールマイトを捕まえるかだ」
“今日はしっかり睡眠を取らないと駄目ですからね?”
最近は睡眠時間を削って個性制御の練習をしていたのだが操奈ちゃんから心配されてしまったようだ。元は自分の身体だし気になってしまうのだろう、『錬成』で体調は整えているから大丈夫なことは伝えていなかったかな。
「身体的には何日か寝なくても問題無いし、『錬成』で逐一健康状態は調整してるから大丈夫だよ?」
“前私に「身体的には問題が無くても精神状態が著しく悪化するから、例え眠れなくても睡眠はとりなさい」と言っていたのは誰でしたっけ?”
「あっハイ、僕です・・・今日は大人しく寝ます・・・」
また怒らせちゃった・・・うぅん、普通の人は徹夜で半年活動したりとかしないもんね。駄目だな、個性ありきで動くと基準がアルケミー時代の自分になってしまう。あー・・・学生時代はよく先輩たちからその辺叱られっぱなしだった気がする。卒業してからは偶にリカバリーガールからお小言を言われるくらいですっかり気にしなくなっちゃっていたな。
これからは操奈ちゃんが気にしないように色々注意して動かないと。他にも叱られそうなことあったかなぁ・・・取り合えず身体が傷つきそうなことは避けるか。
お仕事したくないザウルスねぇ・・・