ぼくらのヒーローアカデミア TS脳無化錬金術ヒーローマリくんちゃんの終活 作:Radrabbit
波乱の入学初日が終わり雄英高校の日常が始まった。昨日は入学式をスキップしての個性把握テストがあったことでクラスでは今日からどんな授業が始まるのかと戦々恐々とした雰囲気が流れていた。
とはいえ流石の相澤先輩も入学早々連日でプルスウルトラを強いる無茶はしないようで、皆の予想とは裏腹に極々平凡な授業風景が流れていた。丁度今も英語の授業で
「それじゃ、この英文のうち間違っているのは?」
“普通ですね・・・もっと特殊な内容かと思っていたのですが”
(ヒーロー関連以外の科目は他の学校とそこまで大差ないからねー、本番は実践訓練が始まってからかな?)
“今日は午後からヒーロー基礎学でしたよね、どんな内容なのでしょうか”
(僕の時は確か・・・ダミーロボ相手に全力で個性使ってその時点での個性最大出力の確認だったかなぁ)
平穏な雰囲気のまま午前の授業が終わり昼休みの教室で持ってきたお弁当を食べる。お弁当組は少なく殆どが学食に行っていて、残っているのは八百万さんと男子が数名、砂糖君と常闇君だったかな?二人とも高校生男子とは思えない彩り溢れたお弁当を食べているようだ。そこは流石に雄英生といったところか。
(で、どう?『千里眼』は上手く使えそう?)
“難しいですね、個性を使う感覚がイマイチ実感できていません。自分の個性なら問題無く使えるのですが・・・”
(気にしないで、ちょっとずつ地道にやっていこう)
前々から少しづつ彼女に僕らに付与された個性を試してもらっているがその結果は芳しくない。今日は『千里眼』を試してもらっているが個性を使う感覚があまり掴めないようだ。個性テストのときのように僕が使って拡張した視界に関しては彼女も見ることができているのだから、切っ掛けさえ掴めば恐らく個性の使用もできると考えている。まぁこの辺はゆっくりやっていくしかないかな。
現在の操奈ちゃんの肉体は『錬成』の
彼女自身の個性である『潜影』は脳無になる前と同じように使えるようだけど、それ以外の個性制御は躓いてる感じ。
“見つかりそうですか?オールマイト”
(ぜーんぜんダメ。雄英校内なのに『千里眼』の視界で追えない位高速で動き回るせいで補足できないや。職員室にも居ないし、一体何処に行っているのやらって感じだよ)
“雄英の外にヴィラン退治に出掛けているとか?”
(雄英周辺での目撃情報も朝の通勤時以外サッパリ無いからその線も考えにくいんだけど、まさかこんなことで躓くなんてね・・・)
入学前に想定していたオールマイトとコンタクトは何故か彼が高速移動の末行方をくらましていることで上手くいっていない。何が理由でそんなことしているのかさっさと本人に確認したいのだが、直接会って監視の目が無いことを確認しながらでないと不安が大きい。
手紙やメールでの連絡はオールマイト以外が目にする可能性がある時点で避けたい。せめて青山君のご両親の身柄が保護できていればここまで慎重にしないで済むのだが、AFOに探りを入れても『二人はいつでも殺せる状態』『青山優雅が怪しい素振りを見せたらまず片方を見せしめに殺す』ことまでしか分からなかった。
パッと思いつくものとしては「二人を何処かの拠点で監禁している」「本人達は家で暮らしてはいるがAFOの部下が常に監視している」「AFOの個性等で身体にいつでも始末できる仕掛けが施されている」位かな?
(二人の居場所とどんな手段で口封じをする算段をしているのか分かれば強引な手段も取れるんだけどなぁ)
“『
(こればっかりはAFOと青山君両方に勘付かれないよう時間を掛けて調べるしか無さそうかな。その間にオールマイトと連携が取れればいいんだけど)
青山君本人には特に仕掛けは無かったが、彼がAFOと直接連絡している現状青山君に僕らの立場を明かせない。その上『
(あ゛ぁ゛〜。相澤先輩達が確実に信頼できるって分かれば真っ先に先輩達に白状するのにぃ)
“まぁまぁ、今はオールマイトを最優先にして接触する手段を考えましょうよ”
(いっそのこと職員室で出待ちしてやろうかな・・・)
◇◇◇◇◇
「ねぇねぇ影山!昨日のテストで見たけどさ
、アンタの個性って何なの?」
「ケロ、土を操る個性なのかしら」
「そーいや俺も聞きそびれてたわ、あの槍のやつとかすげー応用してたよな」
昼休み終わり間近になって周囲の座席の芦戸さんや蛙吹さん、上鳴君達が集まってきていた。昨日のテストでの使い方が目立っていたからのようだ。
“やたら人気ですね・・・?”
(土槍ガトリングは結構派手ではあったからね・・・ひぃぃ!恥ずかしい!恥ずかしすぎるよぉ!操奈ちゃん変わってぇ!)
“無理ですって、愚痴なら後で幾らでも聞いてあげますから・・・”
羞恥心で崩れそうな微笑みを維持しながらクラスメイト達からの質問に応えるのはかなりハードだよ。な、何という苦行・・・。
「わ、私の個性は『錬金』と言いまして、物質を同系統の物に作り変えたりそのまま操作することが可能な個性ですわ」
「なるほどなー、めちゃめちゃ応用出来そうで便利な個性じゃん」
「所謂錬金術ってやつ?八百万のみたいに何でも作り放題なの?」
「あそこまで万能ではありませんよ。錬金術の基本は等価交換、1の質量からは1を、土の性質からは土の性質の物質しか作れませんから」
八百万さんの個性の詳細は分からないが、少なくとも『錬成』のように何かしらの制限はあるだろう。僕の場合は物心ついたときからずっと姉さんから錬金術を学んでいたからここまで扱えるが、AFOのような知識も何も無い人間がいきなり行使できる個性ではない。父や姉さんの代まで研究を続け受け継がれてきた知識が無ければ泥団子ひとつ作れやしないだろう。・・・ふへへ、今の僕は姉さんのように立派なヒーローになれているでしょうか。
「でも流石は主席1位といったところなのかしら、私達よりもずっと個性を使いこなしているように見えるわ」
(そりゃあ一応プロヒーローですもの・・・こんな雛鳥達に個性の練度で負けてたら形無し所じゃないよぉ)
思考を飛ばして羞恥心を誤魔化そうとしたけれど、そろそろ微笑みを顔に貼り付けるのが限界に到達しそうだ。だが幸いなことに授業開始の本鈴と共に救いの声が廊下からやってきた。
「わーたーしーがー・・・普通にドアから来た‼︎」
「オールマイトだ!すげぇ、本当に先生やってるんだな!」
“わー!私オールマイトのこと初めて生で見ました!ちゃんと実在するんですね!”
(操奈ちゃんそこから疑問持ってたの?)
「今日はヒーロー基礎学!ヒーローの素地を作るために様々な訓練を行う科目だ!単位数も最も多いから気をつけような!」
千里眼越しではなく久しぶりに生で見たオールマイトはやはり画風が違う。んー、こうして見ても特に弱体化しているようには見えないが・・・確かに昔観た時と比べれば体積は減ってるかな?直接触れて解析すれば分かるだろうから、機会があったらぺたぺた触りに行こうかな。
「早速だが今日はコレ!『戦闘訓練』‼︎」
マッシブにポーズを決めながら『BATTLE』と書かれたカードを掲げるオールマイト。昔から思ってたけどそのカード必要なのかな・・・。
「そしてこちらが・・・入学前に送ってもらった個性届けと要望に沿って誂えた戦闘服‼︎」
“あれ、私達の戦闘服って要望送りましたっけ?”
(んふふ、実は操奈ちゃんが寝てる間にこっそり作っていたのです。いっつさぷらーいず)
“は?また徹夜したんですか?”
(し、してないよ?・・・毎日ちょびっとずつだから、無理はしてないから)
ストレスの掛かる日々の中で少しは喜んでもらおうと完全に善意のつもりで動いていたのだけど、最近僕の無茶に厳しい操奈ちゃんの怒りを買ってしまった。細部の意匠に拘りすぎたせいで一週間位寝てなかったことは黙っておかなきゃ・・・。
「着替えたら順次、グラウンドβに集まるんだ!」
「「「はーい!」」」
“今嘘つきましたよね。今日からマリさんが眠るまで子守唄歌ってあげましょうか?”
(な、なんでわかっ──は、反省するから!それは本当に勘弁してぇ・・・)
感情の消えた抑揚のない声が非常に怖い。ただ可愛い戦闘服で操奈ちゃんを喜ばせたかっただけなのに、どうして僕は訓練前から彼女に詰められているのでしょうか、なんでぇ・・・。
(・・・あ、またオールマイトが高速移動してる)
“随分忙しないですね。何をそんなに急いでいるのでしょうか?”
また『千里眼』の観測を振り切ってオールマイトが消えてしまった。ただグラウンドβに移動するだけだというのに、一体どんな理由で急いでいるのやら・・・。
「影山〜!早く行こうよー!」
「すみません芦戸さん、少々考え事をしてしまって。すぐに行きます」
歩みが遅れていた僕を気にしてくれたらしく芦戸さんが声をかけてくれた。ふむ、他の子のコスチュームはどんな仕上がりになっているかな。操奈ちゃんのだけ場違いになっていないといいんだけど・・・。
「なになに、コスチュームの出来栄えが気になってる感じ?」
「そうですね、自分で用意したので悪目立ちしないか心配になってしまって」
「ケロ、コスチュームって自分で用意してもよかったのね」
「プロに任せた方が確実ではありますが、自分で使用するものは自前で用意したくなる性分でして」
僕の場合はアルケミーのコスチュームを軸に改造する方が早くて確実って理由だから、普通はサポート会社に任せた方が安心なので知らなくても支障はないよ。
「じゃじゃーん!どうどう⁉ザ・エイリアン!」
「おお〜、かっこいいね!」
「ひぇー、コレ絶対パツパツんなるや。ちゃんと要望書いとけば良かった〜」
「そう?結構いい感じじゃない?宇宙飛行士みたいでさ」
更衣室では早速皆コスチュームに着替えており、それぞれ可愛らしいデザインやカッコいい意匠のデザインだったのだが・・・何故か一人だけとんでもない露出度のコスチュームになっていた。
「八百万⁉︎流石にそれは返品モノじゃないの⁉︎」
“ち、痴女が!痴女がいますマリさん⁉︎”
(い、いや流石に伝達ミスか何かなんじゃ・・・)
思わず操奈ちゃんが痴女扱いし、芦戸さんもツッコミを入れているが当の八百万さんは微塵も狼狽えた様子がない。まさか
「八百万さん。もし気に入らなければコスチュームは何度でも修正できますし、場合によっては制作を別会社に変更することも可能ですわよ?」
「いいえ、注文通りのデザインですわ。むしろ注文よりも隠されている程なのですが・・・」
“やっぱり痴女なんだ・・・”
操奈ちゃんドン引きである。あまりに凛々しい横顔に僕も言葉に詰まってしまった。まさか本当に露出狂・・・?
「えぇ・・・と、あぁ、もしかして個性の関係なのでしょうか?」
「そうですわ。服で肌が覆われていると個性が使い辛くて・・・」
“痴女じゃなかったんだ・・・”
彼女の紛らわしい言葉選びに動揺してしまったが、睡先輩のような個性の都合でコスチュームが特殊な人は幾らか存在している。彼女もそうなのだろうが睡先輩といい八百万さんといい、彼女達には羞恥心というものが存在しないのだろうか。
“マリさんの個性が露出しなくても使える個性でよかったです”
(そんなことで褒められてもちょっとね・・・それと、人の事を痴女なんて言ったらダメだよ、ね?)
“すみません、驚きのあまり動揺してしまいました・・・”
確かにヒーローのコスチュームを見慣れていなかったら痴女扱いしたくなる気持ちも理解できるよ?僕も学生時代に睡先輩のコスチュームにドン引きして逃げたら山田先輩と一緒に*3簀巻きにされたことあるもの。
それは置いといて僕らも持ってきたコスチュームへと着替え始める。操奈ちゃんが気に入ってくれるといいんだけど・・・。
“これは・・・”
(操奈ちゃんは綺麗寄りの可愛い系だから、ちょっと落ち着いたデザインにしてみたよ)
“凄く可愛いです!コートも錬金術師って感じで雰囲気が出てますね!”
(ふふん、そうでしょうそうでしょう。僕の力作ですから)
ブラウスの上に防刃素材のベストを重ね、細身のシルエットを維持しつつ下半身は膝丈までのフレアスカート。黒タイツとショートブーツで両手以外の露出は極限までカット。
肌の露出が多いと嫌な視線を向けられることが多いのでね、操奈ちゃんはそういった目で見られないようにしたいのです。
特殊素材で構成したリボン等の装飾も多めに繕い、コートの内側は収納多めにして素材や道具を仕込めるようにしてある。操奈ちゃんの『潜影』で影には色々仕舞ってあるけど大っぴらには使えないからね。コスチューム自体を錬成の素材として使えるようにしつつ、見た目は可愛さに全振りした形だ。
「ファンタジーの錬金術師って感じ?影山のコスチュームかなり凝ってるねー」
「褒めて頂き恐縮です。ですが芦戸さんのコスチュームもとてもお似合いですよ」
「もうヒーローネームも考えてあるんだよ。その名もエイリアンクイーン!」
「それはやめておいた方が良いのでは・・・」
“何か有名なモチーフがあるのですか?”
(とあるSFホラー映画で有名なモンスターだね。結構グロテスクな見た目だからヒーロー名には向いてないかな)
そうこうしている間に全員の着替えが終わり、各々コスチュームのデザインを褒め合ったり修正案を出し合いながら更衣室からグラウンドβへと移動していく。
“マリさん⁉︎裸に手袋とブーツの変態がいます⁉︎”
(もぉー操奈ちゃん?またそんなこと言ってぇ、そんなの実在するわけ・・・変態だ───⁉︎)
「な、ななななッ、なんて格好をしていますの葉隠さん‼︎」
「へ?何か変だったかな?」
戯けた事を抜かす彼女に慌ててコートを羽織らせ身体を隠させる。倫理観はどうなっているのこの子⁉︎義務教育の敗北だよこんなの!
「全裸に手袋とブーツで出歩く人間はもうヴィランです!破廉恥です!貴女の倫理観はどうなっていますの!」
「ゔェッ⁉︎そこまで言っちゃう⁉︎」
「ま、まぁ影山、確かに服装はヤバいけど見えてないからまだよくない?」
「見えてない??何からナニまで丸見えではないですか何を言っているのですか耳朗さん
‼︎‼︎」
“お、おかしいですよ皆さん。マトモなのは私達だけなんですか?”
葉隠さんだけでなく耳朗さんも戯けた事を言い始めたせいで、まるで僕等だけが可笑しいみたいになってしまっている。というか他の女子も何で「そこまで言わなくても・・・」みたいな眼で止めてくるの?おかしくない?
「あっ、もしかして影山さ、葉隠のこと透明に見えてないんじゃないの?」
「何を当たり前の事を言っているのですか?葉隠さんの何処が透明──成程、透明になる個性ですか。はぁ・・・心臓に悪いですよ葉隠さん」
「ビックリしたのは私だよ⁉︎というかもしかして何だけど・・・私のこと見えてるの?」
僕らが異常者ではなかったのだと判明して安堵の息をつく。メチャクチャ怖かったよ。
「はい、全身隈なく見えています。お陰でとてつもない変質者が現れたのかと思って混乱してしまったのですが・・・良かったです」
「和かな笑顔で言わないで⁉︎私的には何も良くないよ⁉︎」
八百万さんに続いてとんでもないコスチュームが出てきたせいで驚いてしまったが、これが最近の雄英生のレベルなの?入学早々から飛ばしすぎじゃないかな。僕もプロだと言うのに何度も動揺して情けないところを操奈ちゃんに見せてしまった。
“全然良くなくないですか?マリさんには全身見えてるんですよね?”
(そうだけど、他の人から見えてないなら取り敢えず問題無いかなって)
“マリさんってやっぱり人としてズレてると思います”
(え、ほんと?・・・そんなに?)
私がサポートするので深く考えないでください、と言われてしまった。中学生から見ても明らかに問題があったのか。・・・後で教えてもらおう。
「葉隠さんは先生とコスチュームの相談をしましょうか。他の方にも個性で貴女の姿が見えてしまう可能性がありますからね。恥をかく前に対策しましょう」
「今が人生で一番恥ずかしいかもだよぉ」
「まーま、気がつかないまま裸見られなくてよかったじゃん」
「どうか男子の中で私が見える人が居ませんように・・・」
祈る葉隠さんの肩をそっと叩き操奈ちゃんからアドバイスを貰いながら慰めの言葉を掛けつつ、グラウンドβへと向かった。
コスチュームはグラブルのジャケットをコートに変えたクラリス(光)をアレンジしたようなデザインをイメージしてます。
ファッションわかんね〜って思いながら書いてます。
セリフのフォント弄ったり考えるの結構楽しいですね。ギャグテイストなシーンだと全てのセリフを弄ってしまいそうで怖いですが。