ぼくらのヒーローアカデミア TS脳無化錬金術ヒーローマリくんちゃんの終活   作:Radrabbit

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8話 人と個性は使いよう 後編

 透さん達とささやかな感想会をしながらモニタールームへと帰還し、すぐにオールマイトからの講評が始まる。

 

「本試合のMVPは影山少女だ!・・・というわけで、まずヴィランチームはどういう作戦だったのか解説してもらってもいいかな?」

「構いませんが・・・作戦の解説ですか?」

「自分で作戦を振り返るのもまた経験だからね!」

 

 てっきりこれまでの試合と同様にMVPの発表から講評に移るものだと思っていたが・・・成程。この試合は事前に情報を得た上で作戦を練った前提条件が異なる試合だったからね。試合で作戦通りに動けたかどうかも教材になるわけか。

 

「では僭越ながら・・・コホン。まず全階層に配置したゴーレムと透さんの存在を警戒させて時間を稼ぎつつ、焦らせた二人を落とし穴を始めとした罠に嵌め捕縛するのが第一プラン。これは時間は稼げましたが、轟さんの氷結で失敗しました」

“時間制限を気にしてもっと焦るかと思っていましたが、意外と冷静でしたね”

(轟君が冷静なのは想定していたけど、障子君もかなり落ち着いてたのは驚いたよ)

 

 最低限建物丸ごと氷漬け戦法を封じることができればいいと想定していたが、二人とも割と落ち着いて行動できていたのは高評価。僕が入学したての頃なんて事あるごとにあわあわしながら戦っていたというのに、この分なら体育祭後のインターンに行くことが出来れば良い経験が積めそうだね。

 

「そして罠を突破してフェイクの核兵器近くまで侵入された場合に私が二人を適当にあしらって時間を稼ぎ、隙を見て核を回収しにきた一人を透さんに捕縛させ、残り一人を私達二人で詰めるのが第二プランです。

逆に私が捕縛されれば戦闘中に再配置しておいたゴーレムで撹乱しつつ、透さんに時間切れまで逃げ回ってもらうのが第三プランですね」

“上手くいってよかったですね!”

(ふふん。作戦通り、かんぺき~)

 

 今回の試合は葉隠さんの存在で轟君に氷結規模のセーブを強制させられたことが一番大きい。安全を度外視して最初の試合のように大規模氷結で攻めてくるなら此方も荒っぽい手段で押し潰さないといけなかったから、比較的平和な試合ができて良かったよ。

 

・・・やっぱりなんかレベル高いよな、轟少年みたいにご両親がプロヒーローとかかな?

「轟達との戦闘中にロボの操作までやってたってのか?メチャクチャレベル高ぇー、漢だぜ!*1

「ロボではなくて()()()()です。後私は女なのですが?」

「才能マン多すぎない?アホになってウェイウェイしてた俺が情けなくなるんだけど」

“情けないですねこの人、ヒーロー志望ですよね?”

(やめたげて操奈ちゃん、まだ雄英に入ったばっかなんだから)

 

 今回の作戦とは別に爆音流しつつ建物へ催涙ガスを主流とした複数のカラフルなガスを散布して視界を潰しつつ気温を極限まで上げ下げしたり、葉隠さん人形を人質にしてゴーレムで囲んで潰す作戦等も考えていた*2。でもこの評判ならむしろやらなくて良かったかもしれないね。

 

「終始時間稼ぎを徹底して制限時間による勝ち筋を残しつつ、ヒーローチームの対策を練って捕縛を狙う作戦。見事だね!十分プロに近いレベルと言っていいんじゃないかな?」

 

(実際プロですからね・・・あっあっあっ待って恥ずかしくなってきた。僕子ども相手に結構大人げなくなかった?)

“今更ですか、ならどうしてやったんです?”

(・・・だって負けるのはヤじゃん?)

“お馬鹿負けず嫌い・・・”

 

 操奈ちゃんに呆れられつつも表面上は澄まし顔で講評を受ける。結構大人げない戦い方をしてしまったかもしれないが、逆に加減し過ぎても轟君相手だと負ける可能性はかなり高かっただろう。小技は苦手みたいだったけれどそれがさして気にならない程度には出力が明らかに異次元だった。

 普通あそこまで出力が上がる前に色々小手先の技術を身に付けるものだと思うけど・・・エンデヴァーの教育方針かな。

 

「逆に轟少年、防衛拠点までの罠やゴーレムに冷静に対処していたのは素晴らしかったが・・・最後の氷塊による意識誘導は減点だ。自分で対処できない大技を仕掛けるのは良くないぞ。敵を倒せたとしても、その攻撃で建物や民間人を巻き込んでしまっては本末転倒だ」

「すんません、影山にも叱られました」

「あの場面ならあそこまで氷塊を大きくせずとも氷柱などで視線の誘導をするだけで十分だ。君が影山少女を釘付けに出来ていれば障子少年が核を回収する隙はあったからね・・・まぁアレは偽物だったわけだが」

「自分の個性()が簡単にあしらわれたように感じて、多分意地張ってたんだと思います*3

「原因がわかっているならヨシ!今度機会があれば安全な戦い方でリベンジするんだぞ!」

 

 成程、確かに自分の個性が簡単に無力化されたらムキになってやりすぎる気持ちは僕にも理解できる。実際にさっきからずっとゴーレムのことを皆からロボロボ言われ続けて結構腹立ってるからね。A組の皆にロボではなくゴーレムという認識をきちんと持たせるには意外と時間がかかるのかもしれない。

 総じて葉隠さんと障子君にお褒めの言葉を頂いた後、オールマイトが授業の締めの言葉を紡ぎ出した。一方蛙吹さんは相澤先輩と比べると拍子抜けだと言うが・・・ああいった心臓に悪いタイプの授業は多分先輩だけだから安心するといいよ。

 雄英に勤めている教師の名簿は確認したが、人柄で悪い噂を聞くようなヒーローは居なかったと思う。・・・ミッドナイト(睡先輩)は少し意地が悪いかもしれないけど、除籍級レベルのことは流石にやらない・・・筈。

 

「そして私は緑谷少年に講評を聞かせねば!」

「先生、後で私も保健室に伺ってもよろしいですか?あのレベルの怪我であれば私の個性でも治療できますので」

「え、ホントかい?ならリカバリーガールには私から話しておくよ。あの疲労具合だと今日中には治せないだろうから、空いた時間に寄れば大丈夫だと思う!──では!皆着替えて教室にお戻り‼︎」

 

 言うと同時にオールマイトが爆速で保健室へ疾走していき、大量の砂埃を掻き上げながら数秒と経たずに視界から消失した。なぜ毎度のことながら高速移動してるのかな。恐らくそこまでする必要があるのだろうけど、情報が無いから大した推測もできない。

 

“マリさん、今回はチャンスですよ”

(うん、行き先がわかってるなら問題無いね。保健室を『千里眼』で見張っとこう)

 

「ねぇねぇ哀ちゃん!治療もできるってホント?」

「えぇ。私の個性は使用する際に対象を『解析』し、一度『分解』した後に『再構築』するというプロセスを踏んでいます。ですから人体であっても同様の手順ができれば治療が可能なのです」

「あんなに戦えるのに個性で治療もできるなんて、将来はより取り見取りだねー」

「透さんに作ったスーツもその応用ですね」

 

 人体錬成自体は慣れたものとはいえ他人の肉体を錬成するときは流石に神経を使う。それに失った手足や臓器、血肉までは即座に戻せないので過信は禁物だ。首が捩じ切れたりすると流石の僕でも1分以内が救助限界で、経験上1分過ぎると首を繋げて脳を修復しても脳死状態になってしまう。

 そうして葉隠さんや八百万さん達と他の試合も含めた振り返りをしながら移動している途中、僕らが更衣室に到着するより前に保健室に変化が現れた。

 

“リカバリーガールと、ベッドに寝かされている緑谷さん・・・“

(それと後一人、随分と急いで今やってきた痩身の人は誰なんだろうね?)

“服装はオールマイトですけど・・・”

 

 息を切らして保健室へと入室してきたのは骸骨を思わせる程に痩せ細っている金髪の男性。明らかに体格の合わないブカブカのコスチューム・・・先程オールマイトが身に纏っていたものを着ている。まさかオールマイトが途中でコスチュームを脱いで通り掛かりの男性に着用させるような意味不明な事はしないだろう。

 状況的に考えれば恐らく彼がオールマイト・・・なのだと思うが、えぇ?本当に?リカバリーガールと会話している内容が分かれば判断しやすいんだけど、生憎『千里眼』で音声は拾えない。

 

(んー・・・困ったな。音声が拾えそうな機器も置いてないし・・・遠隔で盗聴器錬成する練習しておけばよかった)

“そこまで行ったら犯罪じゃないですか?”

(実は覗き見も十分アウトなんだよねぇ)

 

 考えてみれば彼にオールマイトの面影は感じられはするのだが、今まで見てきたオールマイトの姿と『千里眼』に映る彼の姿があまり結びつかない。雄英に来る前OFAについてAFOに詳細を聞いたことはあるけれど、『僕が持つべき力の結晶』といった曖昧な説明しかされなかったんだよね。

 これまでのオールマイトを見てきた限り、どう考えても超が付くほどの増強系で変身系の個性では無さそうなのだが*4。OFAについてもっと色々探っておけばよかったかなぁ、でも下手に突いて蛇出したくなかったんだよね、あの禿あからさまになんか拗らせていたし。

 

“もしかしてオールマイトの弱体化というのがあの姿のことなのでは?”

(あぁ成程・・・え待って、それメチャクチャ弱くなってない?体格的に全盛期の半分どころじゃないよね?)

 

 ・・・もしもこれが事実だとすればこれまでに考えてきた方針が全てお釈迦になるレベルの話だ。AFOの打倒についてはオールマイトに丸投げして脳無達の相手やドクターの確保を他のヒーローと共に行う予定だったので、彼が頼れないとなると他に一体誰がAFOを倒せるのだろう。

 長年オールマイトに追随してきたNo.2エンデヴァー、安定した実績と実力を持つベストジーニスト、戦闘狂のミルコ、凄まじい駆け足でチャートを進んでいる新規精鋭のホークス等々。トップ10ヒーロー複数人で囲んで叩けばいけるか?・・・いや、AFOを倒す算段については直接奴を打倒したオールマイトに一任する方が確実だろう。

 

 保健室では幾らか痩身の推定オールマイトとリカバリガールが問答を交わした後、彼はベッドで寝かされている緑谷君と少しやり取りをしてから退室した。緑谷君がやたら姿勢を正そうとしている態度から彼と少なからず面識があり、一定以上の敬意を抱かれている人間なのは間違いないだろう。実際に彼がオールマイトであるのなら納得の仕草だ。

 

“オールマイトと緑谷さんって関わりありましたっけ?”

(んー・・・まだ会って二日だしさしてそれっぽいところは見ていないけど・・・もし緑谷君がOFAの継承者なら、彼のチグハグな個性とオールマイトの痩せ細り具合にも納得だけど)

 

 オールマイトが既にマトモに活動を続けられない程弱っている身体であるのなら、雄英校内ですら人目を忍ぶように高速で移動していた理由もわかる。今見ている細身の姿を隠す為なのだろうし、もう長く戦えないのなら引退を見越して個性を譲渡するのも当然と言える。

 後は念の為に直接あの男性が本当にオールマイトなのか確認をしないとね。ここにくる前の『OFAの継承者候補を探しておいで』なんて指令ならAFOもOFAが既に譲渡された可能性はまだ想定していない筈。奴や青山君が何か勘付く前に仕掛けられるように準備を整えないと。

 

(ま、その前に緑谷君の治療からだけどね)

「哀ちゃんお手洗い?なら私も行くー」

「いえ、緑谷さんの治療に行ってまいります」

「休み時間10分だよ⁉︎」

「治療には5分もかかりませんから」

 

 これでも僕は災害救助と復興支援メインで10年張ってたヒーローだ。死んでさえいなければトリアージ黒に分類される手遅れの人間であろうと生存させるのが僕のお仕事なのでね。

 1分1秒治療が遅れれば取り返しがつかないような患者を捌き続ける現場と比べればなんてことありませんわよ・・・なんてね。

 

 そして教室を出てそのまま急足で保健室へ向かう。治療は1、2分で終わるだろうが移動時間とリカバリーガールへの説明が8分で済ませられるだろうか。本当なら放課後に早めに行こうかと思っていたけど、今日はオールマイトを待ち伏せする予定に変えたので急いでいこう。

 

 それにしても雄英の保健室に行くのなんて何年振りかな。卒業後も何度かリカバリーガールに伺う用事はあったけど、雄英に行くこと自体はあまり無かったし。

 

(リカバリーガール、僕が学生の頃からずっと雄英にいるけど今何歳なのかなぁ)

“聞いたことないんですか?”

(気になって一回聞いたことはあるんだけどね、ひぃん・・・思い出したら身体が震えてきたよ・・・)

“えぇ・・・一体何されたんですか・・・”

 

 操奈ちゃんとお喋りしながら歩いているうちに保健室に到着。先程見た時緑谷君は起きていたけど今は疲労の残る表情でぐっすりと眠っている。やっぱり試合で体力を使い切っていたみたいだね、この分だと1、2時間は目を覚まさないだろう。

 

「リカバリーガール、失礼いたします」

「あんたがオールマイトが言ってた治療のできる娘さね?早速聞くがどういう治し方するんだい?」

「私の個性『錬成』によって損傷した部位を細胞単位から一度分解し、正常な状態に再構築します。アルケミー先生と同じ手法ですね」

「へぇ?あんたあの子の弟子なのかい?」

「いいえ、ですが縁あって個性の使い方を師事させて頂いたことがありまして」

 

 リカバリーガールにざっくり説明を続ける。アルケミー時代の僕と今の身体で『錬成』も少々変異はしているがやり方に変わりはない。個性の並列使用に慣れれば手で直接触れずとも遠隔での治療もできるようになるだろうが、現状でトライするには危険だ。

 治療を試せる実験台も居ないからね。アルケミーがAFOの監視下に無ければあの身体で幾らでも試せたんだけど。

 

「ご心配でしたら私の腕に傷を付けて治療して見せましょうか」

「自傷を許す医者が何処にいるさね。ふむ・・・いいよ、やってみな。ただし最初は傷の浅い左腕からだよ」

「承知しました」

 

 お試しの許可が出たのでまず緑谷君の身体を解析していく。ベッドで眠る彼の胸部に手を伏せ個性を使って内部の確認・・・左腕は軽い火傷と擦り傷程度だが右腕は派手に細胞が壊れまくっている。

 しかしこれは酷いな、内側から爆弾でも破裂したのかって位歪な壊れ方。

 一番不味そうなのは靭帯へのダメージかな。筋肉と骨ならリカバリーガールの治療で持つだろうけど、彼女の治癒で擦り切れた靭帯までは治せない。僕の錬成なら問題なく戻せるがこんな個性の使い方してたら半年持たずに腕が使えなくなってしまうだろう。

 

 一先ず左腕の負傷部分を再構築、治した後に再度解析して治療結果に異常が無いかチェック・・・問題無し、綺麗さっぱり元通り。

 

“わぁ、逆再生みたいに傷が治りましたね。ちょっとグロいですが“

「完了です。右腕もすぐ治せますよ」

「負傷の確認から治療が終わるまで10秒ってとこかい。右腕治すのに何秒かかる?」

「5秒あれば十分です」

「・・・恐ろしく速いね。右腕も治してやりな」

 

 解析は既に完了しているのでそのまま右腕を再構築。指が欠けたりしてなくて良かったよ、欠損した部位は別途で培養しないと戻せないからね。

 しかしまぁ、何か個性が変だね。因子が濃いというか密度が高いのか。とは言え普通の人の因子に比べると違和感はかなりある。僕らみたいな脳無は別種の因子が複数体内に流れているけれど、彼の場合は同種の因子ではあるのだが何処か違和感を覚える。溶け込んでいる・・・いや、混ざっている、とか?

 ・・・んー、あれだね。普通の個性が単色のサイズが大小様々なボールだとすれば、彼の場合は巨大な上にグラデーションが綺麗な虹色のボールみたいだ。

 

「治療の腕はアルケミーと近いレベルかね。あんた、どうやってここまで腕を上げたんだい?」

「家庭の事情で色々ありまして、自身の肉体に個性を使う機会が多かったのです」

 

“そんなこと言っちゃっていいんですか?”

(彼女は信頼できる人だからね。僕らが訳アリの人間ってことは早いうちに知っといてもらおうと思って)

“それなら彼女には協力を要請するんですね”

(後々ね、今はオールマイトが先かな)

 

「・・・ふむ。どういう事情であれ、もし助力が必要ならイレイザーを頼ってやんな。アイツは頼りになる男さね」

「承知しております。必要になったときはお二人に声を掛けさせていただきますよ」

「おっと忘れるところだった、飴はいるかい?特別にあんたには味を選ばせてあげよう」

「・・・サルミアッキ、は無いですよね」

アルケミー(あの子)が雄英に来るって聞いたから丁度用意してあるよ・・・好きな味までお揃いとはねぇ」

「それは・・・奇遇、ですね」

 

 久しぶりに味わう独特な味わいの飴を口に放り込む。つい癖で選んでしまったが不自然に思われていないだろうか・・・まぁ、どの道話を通す下準備が整えば此方から情報は開示するつもりではあったから、早いか遅いかの違いでしかないだろう。

 彼女を疑うようで心苦しかったがこの部屋にも本人にも不審な仕掛けは無く何かあったような形跡もない。これでようやく心置きなく彼女を白と信頼して行動できる。

 

「それではまた、失礼いたします」

「ま、好きな時にまたおいで・・・あぁ、緑谷(この子)みたいに大怪我で運び込まれるんじゃないよ」

「重々承知しておりますわ」

 

 ここで敢えて後ろ暗い事情があることを仄めかしているのは昔から彼女とは付き合いがあった信頼できる人だからだ。今雄英にいるヒーローの中で学生時代から関わりがあったのは四人。ミッドナイト(睡先輩)プレゼントマイク(山田先輩)イレイザーヘッド(相澤先輩)の先輩達三人と、そして最後の一人が彼女。

 学生時代は相澤先輩の助言から彼女に教えを乞い、災害救助メインのヒーローとして活動することを決めていた。講義以外でもよく会いに来ていたし、勝手ながら祖母のように慕って甘えていた覚えがある。

 

 リカバリーガールはその希少な個性と社会への多大な貢献により根津校長に近しいレベルの権力と影響力を持っており、もしも彼女がAFO側であれば雄英その他諸々は詰みに近い状況と言える。

 だが僕にはリカバリーガールにAFOとの繋がりは無いという確信があった。けれどそれは信頼からくるものではなく、僕が半年前にAFOに殺された時の奴の発言。『君のことは知らなかったけど、君の個性にはとても興味が湧いたよ』なんて台詞は僕のことを本当に知らないと言わないだろう。

 僕の個性を使った治療についてはリカバリーガールが一番良く知っている。学生時代に免許皆伝は頂いていたし、彼女本人から治療可能な人間は自分より多いと太鼓判を押して貰った。AFOの潰れた頭や生命維持装置が必要な肉体を元に戻す程度なら素材さえ用意してしまえばさして難しいことではない。

 

 それ故にもし彼女がAFOと通じているなら僕を奴に突き出さない筈もないし、それが難しくとも彼女から患者として紹介すればいい。実際そういう事例は何度かあったし、ヴィランによる被害で特殊な治療が必要な患者とでも適当に偽って僕に治療させることだって簡単だ。それにドクターも散々僕のことを『後数年早く見つけていれば』と愚痴を吐いていたからね。

 ・・・もしやリカバリーガールは僕が面倒事に巻き込まれないよう個性の詳細や治療について意図的に秘匿していたのだろうか。

 そこまでしてくれていたというのに当の僕は死体と個性を好き勝手に弄られ、せっかくの彼女の気遣いを無下にするような失態で申し訳なさが込み上げてくる。

 ・・・なんて様だよ、本当に。

 

“マリさんどうかしたんですか?保健室を出てから何だか静かな気がします”

(んふふ、なんでもないよ。リカバリーガールの顔の皺が全然増えてないなぁと思っただけ)

 

 けれど過ぎた過去は今更変えられない。いつまでもクヨクヨしてたら操奈ちゃんに余計な心配をさせてしまうからね。僕は超天才錬金術ヒーローアルケミー。明るく前向きなヒーローとして切り替えていかないと。

 

 

 

 

 

「おかえりー、ねぇ哀ちゃん哀ちゃん!さっき皆で話してたんだけどね。放課後に戦闘訓練の反省会しない?」

「良い心掛けですね・・・ですがすみません。放課後は急用が出来てしまいまして」

「そうなのか・・・いや、何でもねェ」

「?何か御用があればまた今度お声がけしていただければ」

 

 保健室から教室に帰ってくると透さんから反省会に誘われたが断った。せっかくのお誘いを断るのは心苦しいのだが今日はオールマイトの状態確認が最優先。けれど轟君も何か気になることがあるようだから、明日こちらから声をかけてみようか。

 彼だって毎日雄英にいるわけではないから、今日を逃すと次にいつコンタクトを取りに行くチャンスがくるかわからないからね。

 

“授業時間以外はずっと神出鬼没でしたからね”

(今日はあれから姿が変わっていないから、楽に補足できてよかったよ)

“後は放課後まで待つだけですね”

*1
リスペクトの意

*2
学生への加減を知らない畜生

*3
志々雄真実ごっこなどが余裕綽々の態度に見えており、本人は無意識だがわりと癇に障った結果

*4
ギャグ描写で流されてはいるがマッスルフォームに個性が関係無いのはかなり謎、マーベルのハルクを意識しているのだろうか。彼も普通の肉体から筋肉ムキムキの姿へと変身している




・オールマイト
1試合分追加されたことで保健室までマッスルフォームが持たなかった。

・錬金術ヒーロー アルケミー
災害救助と復興支援を主として活動していたヒーロー。ヴィランと直接戦闘することは少なく全国的な認知度は低め。13号やワイルド・ワイルド・プッシーキャッツとのチームアップが多かった。
ほぼ死亡扱いの状態から治療された人やその家族等から熱烈な支持を受けている。また、災害で完全に倒壊したりヴィランに破壊された建造物の復旧支援等で被災地の人々から支持が高い。

・リカバリーガール
アルケミー本人の常軌を逸した個性ゆえのトラブルや厄介事に巻き込まれても問題無く処理できる地位や権力が手に入るまで、自分の影に隠して経験を積ませつつ成長を見守る方針だった。公安なんかとも色々揉めていたかもしれません。
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