セリカさんの誘拐事件から2日後の早朝
「あ~~~~~~」
そんな呻き声のような声をあげながら、私は椅子にもたれかかる。疲れた。
なぜこうなっているのかというと、端的に言うなら徹夜したからだ。昨日の朝にリン行政官から「そろそろ仕事しろよ(意訳)」という連絡が来たため、取り敢えず私がシャーレに戻り仕事をしてたのだ。
ちなみに先生がいない理由は生徒の誘拐とかいうそれなりのことが起こったので会議なりなんなりして対策しよう。という話になったからである。
ちょっと仮眠してからアビドスに行こう。朝は…エンジェル24に行けば良いか。そう思いながらタイマーをセットしてソファに横になる。
「あ〜〜おやすみ〜〜〜」
と、誰に言うでもなく呟いて目を閉じる。
1時間ほどしてアラームで起きる。思わずため息が出た。眠い。けどまあ前に真夜中から朝方どころか昼まで仕事したことあったからそれよりかはマシか。
そんなどうでもいいことを考えつつ、執務室を出るのだった。
そして、エンジェル24で軽い朝食を買い食いしてからアビドスに来た…のだが
「先生、なんでアヤネさんちょっと機嫌悪そうなんですか?」
"まあさっきちょっとね…"
そう、書記であるアヤネさんの機嫌が悪そうなのだ。普段優しい人がキレると怖いのでなるべくノータッチでいきたい。
などと考えていると対策委員会の会議が始まった。
そこで衝撃の事実が発覚する。
「……えっ、すいません、もう一回お願いします」
「はい、昨日私たちを襲ったのは便利屋68という…アユミさん?どうしたんですか?」
「うぉぉ……嘘でしょ…」
「ん、アユミが壊れた。」
「ちょっとシロコ先輩、叩こうとしない!叩けは直るとかじゃないから!」
「頭抱えちゃってますね☆」
そりゃ頭も抱える。だって…
「それ、私の幼馴染2人の会社です…」
「「「「「"えっ"」」」」」
「なんなら片方社長です……」
「「「「「"えっ"」」」」」
なんでこうなった…
その後一応便利屋に関しての概要なりなんなりを教えた。
「へ〜…なんか弱点とかないの?」
「いやそう言われましても…」
う〜ん、どうしたものか、と考え込む。
アルちゃんとムツキちゃんはかなり昔からの付き合いだ。そんな友達を売るようなことをしていいものかな。
まあいっか。多分アルちゃんも「友人と立場の違いで対立して戦うなんて、すっごくアウトローじゃない?」って言ってくれるよ、うん。
「まあ強いて言うならアヤネさんみたいなオペレーターがいないことですかね。一応作戦参謀役はいるんですが、前線にガッツリ出てるので、どうしても処理能力は落ちます。なので戦術をコロコロ変えながらいけば何とかなるんじゃないでしょうか。」
と言っておく。別に間違ってはない。まあアルちゃん達なら小手先の戦術だと正面から押しつぶして終わりだろうけど。
「というかさ、アユミちゃんがこの子たちを説得できたりしないの?」
「まあ厳しいですかね。彼女たちにも色々あるので。」
ホシノさんの疑問にそう返答する。というかそれ以上に私個人としてやりたくない。友達が本気で頑張っていることに水を差したくはない。態々言わないけども。
「まあこの辺で次の話題に行きませんか?」
「そうですね」
そんな短い会話とともに議題が変わる。なんだかアヤネさんが複雑そうな顔をしていた。これは、ムツキちゃん辺りがなんかしたな?割と怒ってるけどでも私の友達だし…ってなってる感じかなぁ。別に気にしなくていいのに。
そうして会議は進み、ヘルメット団の使っていた戦術兵器が現在は流通していないものであるということから、出処の調査のためにブラックマーケットに行くことになった。
…徹夜明け早々に重労働になりそうだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そうして私達はブラックマーケットに来た。
疲れが溜まってたこともあり、思ったことが口を衝いて出る。
「久しぶりに来ましたね…」
「あれ、アユミちゃんは来たことあるの?」
「風紀委員会の頃に何度か来たんですよね」
『ゲヘナの風紀委員会ってそこまで管轄広いんですか?』
「いや、そうではないんですけど…」
アヤネさんの疑問に思わず口籠る。これ、言って大丈夫なのかな。
「ん、隠し事は良くない」
「大人しく話しましょうか☆」
あっあ、逃げ道が塞がっていく…この二人、大して重大じゃない雰囲気を感じ取って悪乗りしてるな?まあ機密でも何でもないし良いけど。
「えっと、ゲヘナの生徒会みたいな組織からの無茶振りでブラックマーケットまで追いかけなきゃいけないみたいなことが割とあったので…」
「む、無茶振りって。それ大丈夫なの?」
「セリカさん。無茶振り聞いたら仕事が止まるし無視したら予算減らされるような状況だとしても、それが平常なら大丈夫と言えるんです。」
「えぇ…」
前門の無茶振り、後門の予算削減である。あの状況で腐らないヒナ委員長は凄いよ。
そんな話をしながら歩いていると銃声が響くと同時に
「わわわっ!そこどいてくどさいー!」
誰かが全力ダッシュでシロコさんにぶつかった。
あの制服…トリニティ生?!なんでこんなとこに?!私は反射的に被っていたベレー帽を押さえる。面倒事はヤダ!いやもう巻き込まれてるけども!
「痛た…ご、ごめんなさい!」
「大丈夫…なわけはないか。追われてるし」
「それアユミちゃんは何してるんですか?」
そんなことをしていると正しくチンピラといった風貌の生徒が走ってきた。ほほう、なんとなく状況は察した。
「シロコさん、ノノミさん」
「ん、分かってる」
「お仕置きですね~☆」
コソコソと動き出す2人を横目に見つつ、一応話は聞いておく。
「なんでトリニティの生徒追いかけてるんですか?」
「あぁ?そんなの決まってんだろ!拉致って身代金を頂くためだ!」
「拉致って交渉!なかなかの財テクだろ?」
ああ、やっぱ予想どうりだったわ。慈悲は要らない。やっちゃえ2人とも!
そうして2人がスケバンをボコし、件のトリニティの生徒…阿慈谷ヒフミさんの話を聞いているのを尻目に考える。
トリニティか。もしかすると不味いか?…いや、こんなとこに来るような生徒がティーパーティと関わりがあるとも思えないし…ただついこの前それで痛い目を見たし、連絡だけしといた方がいいか…?
「むむむ…」
「アユミちゃんも可愛いと思いますよね〜?」
「へっ!?何がですか?!」
不味い。思いっきり聞き逃した。
「ペロロ様です!!!」
そう言ってアイスを口に入れられている鳥…鳥?の人形を見せてくる。あー思い出した。モモフレンズってやつだ
「えっと、まあ、可愛い…と思います…?」
「ですよね!!!」
「えぇ…アユミ、嘘でしょ…?」
『セリカちゃん、アユミさんの顔見て』
「あっ」
しまったな、勢いで返事しちゃったけど面倒くさいぞこれ。多分私今めっちゃ引き攣った笑顔してる。
一応モモフレンズは前に仕事で関わったから最低限知ってるしなんとか話は合わせられるか。というかなんとか合わせよう。
"そろそろ移動しないと増援着ちゃうんじゃない?"
「そっそうですね移動しましょう早く行きましょ!」
ありがと先生ぇ!!!
そうして私達は(割と強引に)移動するのだった。
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そうして寄ってくるチンピラを撃退しつつ移動した後、ホシノさんが無理やり勧誘したことによりヒフミさんも加わり、7人で探索していたのだが、一向に見つからなかった。ここまで見つからんもんかね。
今は皆でたい焼きを食べて休憩しつつ、ヒフミさんのブラックマーケット講座、特に闇銀行についての話を聞いている。
その最中にマーケットガードが近づいてきたため一旦身を隠す。現金輸送車が丁度現金を運んできたらしい。書類にサインしている。その金風紀委員会に分けてくれないかな。
私としてはその程度だったのだが、どうやらアビドスの皆には違うらしい。
「なんで!?あれは毎月うちに来て利息を受け取ってる銀行員…?」
おっと、マジか。闇銀行とつながってるってことは十中八九六でもないぞ。
「どうにかしてお金の流れを追えませんかね。そしたら何か分かるかもしれません、」
「アヤネちゃん。さっきの輸送車のルートは…」
『駄目ですね。オフラインで管理されてます』
「あっ!さっきの書類は証拠になりませんか?」
うーん悪くないけど方法が…と考えていると、シロコさんがとんでもないことを言い出した。
「残された方法は一つ。銀行を襲う」
おっと、マジか…先生は、あっあれは"仕方ないかぁ…"って顔だわ。
シロコさんが「これはアユミの」と覆面を渡してくる。
マジでやるの?そう思いつつ覆面を受け取り、気付く。これ覆面つけるなら帽子取らなきゃいけない。それは不味い。そんな感じはしないが、もしもヒフミさんがゲヘナへ嫌悪感を持っていると面倒なことになる。
少し頭を捻りつつ周りを見渡し、お面屋を見つける。あれにするか。
ちょっと待ってください、と一言断ってお面屋に近づく。店先に並んでいたペロロのお面…の横にある般若のお面に手を伸ばす。あっちはちょっと…
「ん……」
シロコさんにすごく悲しそうな顔をされた。ごめんて。
「後で説明するので許してください。」
「ん、内容による。けど今は許す。」
お許しも出たことろで今度は先生に近づく。連邦生徒会所属であることがバレないようにしないと不味いから、どうにかしないとね。
「先生、上着お借りてもいいですか?」
"良いけどどうして?"
「流石に連邦生徒会の服で強盗するわけにはいかないので…」
あぁ…と納得したようなリアクションをしてからスーツを渡してくれる。シロコさんとノノミさんからの視線が痛い。チラチラこっち見ないで。今度借りてくれ、私は知らんから。そう思いつつスーツを羽織る。
そんなこんなしているとヒフミさんが説得(?)をされており、紙袋を被っていた。というか私たち2人以外はなんで割と皆初めから乗り気なのか。
まあでも、やるからには全力で。久々だけどやりますかね。目を閉じる。深呼吸をしながら自分の頬をペチペチと2回叩く。
儀式のような、それでいて慣れ親しんだその動作を終え、目を開け、お面をつける。
「もう大丈夫です。では、行きましょうか」
"へっ…?あっうん。それじゃあ皆、銀行を襲うよ!"
やっと主人公を深掘りできます。長かったよ…
そして今回内容も長かったです。なんとかここまで1話で描きたかった。
ここからアビドス編はサクサク進む予定です。
《予定》ここ大事です。