終焉のパラティリシ   作:わふ.

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七話 魔族

 

「確かここだよな。指定された場所」

 

 時は遡り、約三十分前。恭也はとある人物に言われ、商業区にある空き地へと来ていた。

 

「やあ、待たせたかな」

 

 そしてちょうど、その人物が現れた。

 

「君が狩生恭也君だね?」

 

 話し掛けてきたのは、恭也とあまり歳が離れてなさそうな男性。

 

「……」

「? どうしたんだい? そんなに僕の顔をじっと見て」

「いや、何処かで見た顔だと思ってな」

 

 穏やかな青年の顔に恭也は見覚えがあった。本人その者を知っていた訳ではなく、最近会った誰かに似てると思った。

 

「あれ、僕の事まだ聞いてなかったんだね」

「あん? 俺はあの女──片桐先生にここに行けって言われただけだぜ? 行けば分かるって言われてな」

「はぁ……姉さんったらまた端折って……ああ見えて面倒くさがりなところがあるからなぁ」

「姉さん……? あんた、もしかして!」

「うん。僕は君の知る片桐響の双子の弟だよ」

「なるほどな。他人の空似って訳じゃなかったんだな」

 

 彼に対する最初の既視感の正体はそれだったんだなと納得するように恭也は頷く。

 

「まずは自己紹介からだね。僕の名前は片桐(つかさ)。CSのB級隊員をやっている」

「CS……? じゃあ、あんたが俺とバディを組むっていう……」

「うん。よろしく、恭也君」

 

 司は微笑みながら右手を出して握手を求める。

 

「……訓練学校の担任の弟とバディを組む事になるなんてなぁ。ま、こちらこそよろしく頼むぜ」

 

 恭也はそれに応じて握手を交わす。

 

「悪いね。訓練学校もあるのに、本業の方も掛け持ちする事になって」

「気にすんな。元々希望してた事だからな」

「そう言って貰えると嬉しいよ。少し前に、僕のバディが()()()()()()ね。困っていたんだ」

「……そうか。大変だったな」

「ありがとう、恭也君。そう言う訳だからよろしくね。あ、CSの任務の方は、学業に支障が出ない範囲で回すから心配しないで。何で君が今更訓練学校に通ってるかは分からないけど、あくまでも今は偃月の学生だからね」

「おう」

 

 笑顔を映す司の表情は、やはり何処か落ち込んでいる様子だった。

 

「でね。君にここに来て貰ったのは早速、手伝って欲しい事があったからなんだ」

「へっ、着任早々任務かよ?」

「まぁね──昨日の深夜、この空き地周辺に魔族が出たんだ」

「……被害者は?」

「三人。その内二人はその魔族に、もう一人は使役する魔物に殺害された」

「…………」

 

 空き地の地面には薄らと血溜まりの痕が残っていた。司の言う事件のそれだろう。

 

「生憎この辺りは開発途中でカメラが設置されていない。それに他のカメラにも映っていなかった」

「転移系の魔法を使って移動してるって事か?」

「恐らくね。それでこの事件を担当しているチームが捜索に少し手こずっているみたいなんだ」

「だから俺達が救援に当てられたと?」

「うん。ここは商業区だし、人通りが多い。一刻も早く対処しないといけなくてね」

「でもどうすんだ? 手掛かりがねぇんだろ?」

「それは……まぁ、担当している彼らと同じで、地道に探すしかないね。被害者からの動向からして……捜索範囲はこれくらいだね」

 

 司のディールに映し出されたマップ情報を見て、恭也はげんなりする。

 

「……げっ……マジかよ。結構広いな」

「こればっかりは仕方ないね」

「そーだな」

「それじゃあ、早速行こうか」

 

 二人は空き地を出て、魔族の捜索を開始した。

 

「──一応、やっとくか……」

 

 直後、恭也は足を止めて目を瞑った。

 

「ん? どうしたんだい?」

「────」

 

 それを疑問に思い、司は彼に問うが返事は返ってこない。

 

「? 恭也君一体……」

 

 黙り込んだままでいる恭也に痺れを切らし、肩を掴もうとした時。

 

「──片桐」

「え?」

 

 急に言葉を発した恭也に司は驚く。

 

「大丈夫? 急に黙り込んだりして。具合とか──」

 

 それが気掛かりな司を一蹴し、彼が唐突に放った言葉はこうだった。

 

「魔族の位置が分かった」

「え? 何だって?」

「俺が先導する」

 

 恭也は司を半ば無視した状態でクロノスを起動させた。

 

「先に行くぜ。とにかくあんたは付いて来い」

「え? あ、ちょっと!」

 

 戸惑う司を置き去りにして裏路地を走って行く。

 そして、駆けた先に辿り着いたのは、魔族が天華を殺めようとしている場面だった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「あ……」

 

 間一髪命を拾った事、恭也がいきなり現れた事に天華は驚き、地面に座り込んでしまう。

 

「何だよ? 腰抜かしたのか?」

「そ、そんなんじゃ……!」

 

 慌てて立とうとするが、上手く足に力が入らない。恭也の言う通りなのだろう。

 

「ま、そこで見とけや。俺がこいつを殺すところをな。さて──」

 

 恭也はそう言って、魔族の方を向く。

 

「──待たせたな、魔族さんよ……へぇ、赤色の角か。そこそこ強ぇんだな。下の上くらいに」

「おい。さっきから舐めた口叩きやがって、このガキ。下の上? お前が俺を殺す? 亜人如きが舐め腐りやがって!」

 

 魔族は怒りを露わにして怒涛を上げる。

 

「そうやってギャーギャー喚くから弱いんだろ。その拳は飾りか? さっさと来やがれ」

「こいつ……! ぶっ殺してやる!」

 

 魔族は拳を振り上げ、恭也へと襲い掛かる。

 

「柳一刀流……」

 

 恭也は太刀を構え──。

 

「一閃」

 

 静かな素早い太刀筋で──。

 

「──あ……?」

 

 伸びてくる腕を斬り落とした。

 

「──お、俺の──俺の腕がぁぁぁ!」

 

 腕が斬り落とされた事に気が付いた魔族は痛みで苦しむ。

 

「やっぱ弱ぇな。お前」

「ぐ……! お前ぇぇぇ! 俺の腕をよくもぉぉぉ!」

「もう眠っとけ」

 

 捨て身で向かってくる魔族の首を軽々と斬りはねた。

 太い首からは魔族の体内に流れる紫色の血が吹き出し、大きいな肉の塊がドスンと音を立てながら地面に倒れた。

 

「ま、魔族を……簡単に……」

 

 先程まで手も足も出なかった相手が糸も容易く倒された事に、天華は驚くしかなかった。

 

「大丈夫かよ?」

「……だ、大丈夫よ、もう……あ……」

 

 立ち上がろうとするが、まだ足に力が入らない。

 

「……ったく。無茶しやがって」

 

 恭也はそれを小さく笑いながらゆっくりと引っ張り立たせた。

 

「あ、ありがと……」

「おう……そろそろだな……」

「──おーい!」

 

 そこでやっと彼の後を追っていた司が到着した。

 

「はぁ……はぁ……あれ? 終わったの?」

「ああ。雑魚だったぜ」

「はぁ……流石A級のCS隊員……」

 

 恭也の実力に司は案の定驚いていた。

 

「……A級……?」

「ん? 君は?」

 

 司はそこで天華の存在に視線が移った。

 

「同じクラスの不知火天華だ。こいつは偶然居合わせたみたいだぜ? 不知火、こいつは俺とバディを組む事になったB級のCS隊員だ」

「あ……不知火天華です……その……魔族に襲われてた人がいて……」

「助けに向かったって事だね?」

「……はい。でも……」

 

 その先を言い濁す天華。

 

「そうか」

 

 司は無惨にも転がっている人間の死体を見て状況を察した。

 

「色々言いたい事はあるけど、君が無事で良かったよ。とにかく、他のCS隊員に連絡するから、恭也君は彼女に付いていてあげて」

「おう」

 

 司が連絡するまでもなく、小夜未とあの男性が呼びに行っていたCS隊員が現場に到着したのは、その後僅か一分後だった。

 

「後処理は僕達の方でやっておくから、恭也君は二人を寮まで送り届けてあげて。君もそのまま帰って良いから」

「おう。後頼むわ」

「色々言いたい事があるけど、後日じっくり、ね。特に()()()()()()()()()()()()()……とかね」

「…………」

 

 威圧する司の目を後に、恭也は二人を連れて駅方面に向かった。

 

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