学マスに脳を焼かれたので新作を書きました。
2025年は色々更新していきます、よろしくお願いします!
人は何故形のないものを形作るのだろうか。
実体のないものを、実体として造り出す。その過程に、造り出された像に願いや祈りを乗せて。
あるいは風景を写真に閉じ込めるように、実体のないものを像に閉じ込めているという考えもある。三次元空間では認識できないものを、封じ込めるように。
『
だとしたら、誰が造る?何故造る?それに興味があったから、俺は『
4月7日。私立初星学園の教室の片隅で資料に目を通す。
学務から借りたリングファイルをめくりながら、その中身に目を通す。ただのリングファイルならよかったが、やけに厳重なセキュリティが施されている。
それもそのはず、今目を通してるのは明日入学式を迎える初星学園アイドル科の生徒名簿及び各種データ帳なのだ。個人情報の塊。下手なことをすれば入学早々退学になりかねない代物だ。できる限りは触りたくはないというのが本音である。だがそんな危険な物に目を通さなければならない。なぜなら、俺はプロデューサー科の生徒だからだ。
初星学園は中等部、高等部にアイドル科と呼ばれるアイドル養成コースがある。そもそも初星学園がプロダクションでもあることから、アイドル科の生徒は学生でもあり芸能活動に身を置く存在にもなる。そんな彼女たちをプロデュースするのが俺たちプロデューサー科の人間である。
たいていのプロデューサー科の生徒は自らの手でトップアイドルを──ここでは『
『
そんな不純ともとれる動機のせいもあってこの名簿に目を通すのは同期の中ではおそらく一番遅くなったのだろうが……おかげで資料についている些細な跡で誰が関心を集めているのかをある程度探ることができた。
やはり、入学試験主席合格の『花海咲季』だろう。
高い実力とポテンシャルは目を見張るものがある。が、経歴に違和感を感じる。
確かに、申し分ない経歴だ。陸上や球技など、個人種目では軒並み一位をかっさらっている。が、一位を取ったあとその競技では一切の入賞がない。別の競技になっている。少し調べてみるか。
「……そういうことか」
母校の中総体入賞報告がイニシャルで学校だよりに掲載されていたが……一位はS・H、二位がU・Hで固定化されていた。資料によるとこの子には妹がいるらしく、イニシャルもおそらく一致する。とするならば、この子は逃げているのか……?
「いずれわかることだろう、次は……」
次によく見られたであろうページは『月村手毬』だろうか。
中等部No.1ユニット『SyngUp!』のメンバーであり、圧倒的な歌唱力を武器にしている。が、素行に問題ありか……おそらくこの文面で大半は次のページに向かったのだろうか。……『SyngUp!』が解散した理由にも一枚嚙んでいることは明白だろうが……そこはこちらの手綱でなんとかなるか?参考までに別の『SyngUp!』のメンバーにも目を通しておくか……
「ん……?」
ページをめくる手が止まる。末尾にたどり着いたからでも、『SyngUp!』のメンバーにたどり着いたからでもない。不意に空白が目に入ったからだろうか。中等部の決していいとは言えない成績欄だろうか。だが、今確実に何かがページをめくる手を止める。資料に目が吸われていく。
「藤田、ことね……」
ダンスの成績はいいが、レッスンへの参加率がやや低い。素行が悪いわけでもないが……とりわけ目立ったものはない。だのに、なのに、まるで何かが繋がったかのように……あるいは衝動に駆られるように思考が組み立てられていく。
「だから人間は偶像を造るのか……?」
古来より偶像は宗教と密接な関わりがある。だが三大宗教はそもそも偶像崇拝を禁止ないし忌避している。なのに何故仏像やマリア像などがある?
偶像そのものではなく、偶像が象ったものが重要なのか?
だとしたら、『
「……それを探りに来たんだろ……守月衛次」
しわを寄せた眉間をつまみ、椅子にもたれて天井を見る。レンズに反射する西日を鬱陶しく思いながら、資料に目を戻す。
「この3人なら、答えをくれるか?」
手帳に必要そうな情報を全てまとめてリングファイルを学務に返却する。
入学式はプロデューサー科の生徒なら邪魔にならない二階席で式を観覧できる。だが、式が終わるころでは遅いだろう。内部進学組の二人なら式の前日である今日でも学園にいるはずだ。レッスン室付近を通って帰ろう。夕飯は適当に買っていくとして……明日入学式が始まる前に花海咲季とコンタクトをとる。そのプランでいこう。
俺は──『
──何を造る?『
──なぜ造る?
──どう造る?
わからない。だから、これからそれを知るために、探るために俺は進む。
まずは、レッスン室に赴こう。