訳アリヤンデレ魔法少女   作:あめざり

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今回は主人公目線の話じゃ無いです


1.初陣

魔獣との戦い、それは命の取り合いだ。

入ったばかりの新人も、何度も死線をくぐっているベテランも、皆等しく死ぬ覚悟を持って挑まなければならない。

 

この様な事を、魔法少女になった当時、言われた事を覚えている。

当時の私は「そんな当然の事を何故言うのか」と思っていた。

だって魔獣というのは心の底から恐ろしく、一部のものにとっては仇敵だ。わざわざ言わなくても全力で、覚悟を持って臨むに決まっている、と。

 

この言葉の真意を、私は今思い知った。

あれは新人に向けられた言葉じゃない。

"未来になるベテラン"に向けた言葉だった。

 

そしてそういう大切なことは、取り返しがつかなくなってから気付くものだ。

 

 

 

「ねぇフレイル、この魔獣…C級上位って話じゃなかったっけ…?」

 

そう零すのは私の相棒、登録名『ミラライト』。

相棒とは言っても、まだ本名を教え合うほどの関係じゃなく、あくまでお偉いさんが付けた登録名で呼び合う出来立ての相棒。

そんな彼女の使う魔法は『鏡面』、物体の平面に対してのみ効果を持つ魔法で、対象を特殊な鏡にすることができる。

その鏡は魔法攻撃を反射する、魔法主体の魔獣相手には強力な魔法。

まだ威力の大きい攻撃は反射できないが、B級の平均程度の魔獣相手なら完封出来るほどの性能を持つ魔法…だったのだが。

 

今回は見事に、彼女の必殺の間合いから外れた相手だった。

奴はただがむしゃらに魔法攻撃をするのではない、光線上の魔法をくねらせ、彼女の専用装備である『鏡面の盾』を見事に回避し側面や裏側を執拗に狙ってきた。

 

魔獣のランクは基本的に、魔獣が出現した際の魔力の総量で決まる。

だから今回の様な技術面での強さは無視されがちなのだ。

 

しかしこれは私たちのせいでもある。

魔獣が魔法を巧みに扱うことは極めて稀だが、そう言った場合への事前対策について魔法少女になりたての時教えられた。

もちろん初めはさまざまな状況に対応できる魔法少女に協力を要請したり、ある程度様子を見たりして情報を集めてから挑んでいた。

だが今回は、私たち2人での少人数かつ情報無しでの戦闘開始が祟ってこの様な結果になってしまった。

 

これはつまり、慣れから来る油断。

 

 

今更警戒しても意味がない。二人とも満身創痍、まともに通じる攻撃手段もない。

もうここまで…と諦めかけたその時。

 

『そっちに援軍が一人向かってる。お前らは即撤退しろ』

 

通信デバイスから聴きなれた声が聞こえた。

鶴城麗先輩、元魔法少女課所属で私の事を育ててくれた人。

 

「鶴城先輩!?今は警務課所属では…何で魔法少女課に通信を…!」

『察しろバカ。それより早く撤退だ撤退』

 

この人の言う「察しろ」とはつまり「口外できないような事」、もっと言うなら犯罪まがいの事だ。

何をしたのかなんて考えたくもない。数多ある擦り付けられた責任(古傷)が疼くから。

 

「その援軍が誰だか知りませんが…3人で戦った方が勝率が…」

『勝率なんかあいつ一人で100%だ。…戦いたいなら好きにすればいいが、足を引っ張ったら殺されるかもな。まあ健闘を祈る』

 

それだけ言って鶴城先輩は通信をぶつ切りする。

 

「撤退って言ったってさぁ、この足で逃げれるわけないよねぇ…」

 

ミラライトの足は、敵の魔法攻撃で焼け爛れ、少し骨が見えている。

 

頭が混乱していた。

もしかしたら、隣に倒れている彼女を見捨てれば、私は逃げられるのではないかと思うほどに。

でもそれすらできず、私はただ茫然と立ち尽くすことしかできなかった。

 

だけれどそれじゃあダメだとすぐ思い直す。

自分に問いかける。「お前は何のために魔法少女になったのか」と。

魔法少女になるための改造手術は現状不可逆。

一生真人間に戻ることはできず、将来は閉ざされ一生魔獣と殺しあう日々だ。

 

私は、子供の頃助けてくれた魔法少女のように、成るんだと。

そんな夢を思い出した。

 

 

魔獣の口内が青白く光る。何度も何度も見続けた魔法攻撃。

私はミラライトの正面に立ち、庇うように魔獣と対面する。

今私ができる最大限の抵抗はこれだ。

助ける、絶対に。

この子だけは…!

 

 

 

 

 

「私、現着」

 

背後から声が聞こえる。

そこに居たのは同い年くらいの、赤いメッシュの入った黒髪の少女。

 

恐らくは先輩の言っていた援軍だろう。

だがその風貌からは、魔獣を前にした時の緊張などが一切感じられない。

慣れというよりもどこか気の抜けた、素人としか言えない立ち振る舞い。

 

 

だが私は次の瞬間、目を疑うような光景を目にした。

 

 

私の事を後ろに投げ飛ばした後、魔獣に対し瞬間移動にも見える速度で突進し、魔獣の頭部を蹴り一発で貫いたのだ。

そして魔獣はそのまま倒れ、全身から魔力を放出しながらはじけ飛んだ。

 

「え、えぇ…?助かった…のか?」

 

あまりに現実味のなさすぎる瞬殺劇を目の当たりにし、私はそんな当然のことを呟くしかなかった。

 

『お、間に合ったか』

 

先輩からまた通信が入る。

 

「鶴城先輩…何者ですか彼女…下手したら現役時代の先輩より強いですよ」

『そりゃそうだ。何を隠そうそいつのランクは、日本で12人目の"S級"だからな』

「はあ!?なんで警務課所属のくせしてそんな奴抱えてるんですか!?」

 

S級魔法少女

事実上の最高峰ランクであるS級は、現場経験の豊富さや突出した才能を持つ事が大前提とされる者たちだ。

基本はもっと高ランクの魔獣討伐に当たるはず…曲者とはいえC級魔獣相手に出撃するほど軽い存在じゃ無い。

 

『…1週間前に捕まった拗らせ監禁殺人野郎を魔法少女にしたんだ。最初は適当に凶悪犯を処分する為の言い訳の為だったんだが…いざ改造手術をしたらS級が生まれちまって…本格的に実戦運用せざるを得なくなった』

 

犯罪者の魔法少女化に関してはよくある話だ。

増えていく魔獣災害、そのたび死んでいく魔法少女達。

夢見る少女を募集するだけでは国防が成り立たないとなった国のお偉いさん方は、犯罪者には刑罰の免除を、身寄りの無いものには生活保障を与え、黒い経歴を持つ魔法少女を増やしていった。

 

特に犯罪者には、取り調べの際に疲弊した容疑者を警務課の者達が勧誘すると言うが…

 

『まあそう言うわけだ。私はそろそろ通信してるのがバレそうだから切るぞ』

 

そう言うと先輩は通信を切る。

気づいたらもう、S級の新人もいなくなっている。

凶悪犯があんな力を得て、一体何をしでかすのか。

彼女は正義の味方なのか、否か。

 

私はしばらく考えた後息を吐き、疲れが押し寄せたのか地面に倒れ込んでしまった。

 




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