目が覚める。それと同時に襲い来る身体中の痛みと瞬く光を煩わしく感じた。
「…知らない天井だ」
腕に違和感を感じ見てみると、複数のチューブが刺さっていた。
って事はここは病院?
とりあえず冷静に何があったかを思い返してみる。
確か試験とかでめちゃくちゃ強いロボットと戦って…急に力が湧いてきて…
「お、ちゃんと生きてるな」
「麗さんじゃないですか」
ドアを横に勢いよく開けて麗さんが部屋に入ってきた。
口には相も変わらず煙草を咥えている。
「病室でタバコはダメですよ」
「ほら、タバコは元気の素だからな。お前の為を思ってのことだよ」
息をするようにつらつらと言い訳を吐く麗さん。
常識的に考えて副流煙で元気になるなんてありえないのだが、さも当然かのように話す為たまに頭がこんがらがる。
「まあそれはいいんだが…呼び出しだ。早く準備しろ」
「いや、私怪我してるんですが…」
「大丈夫大丈夫、検査したけどすぐ回復するってさ」
そう言うことじゃないんだよな…と思いながら、寝ていたベッドから立ち上がり、腕に刺さったチューブを引っこ抜いてから用意された服を着る。
服にはデカデカと有名な映画のロゴが書いてある。
正直ダサいから着たくないのだけど…
(あ、これ麗さんの……)
服に付いた匂いは麗さんのものと一致していた。
私の鼻と脳がそう言っているのだから間違いない。
「麗さん、この服かっこいいですね」
「そうか?いやぁ…分かってるなお前」
麗さんは少し顔を紅くしながらそう言った。
なんやかんや麗さんが笑っている姿はあまり見ないし新鮮だな。
「ほら、行くぞ」
そう言われて私は麗さんについていく。
ドアを開けて廊下に出ると、窓からは夕陽が差し込んでいた。
どうやら相当寝ていたらしい。
「それで…いったい何の用で呼ばれたんですか?」
私はさっきから残っていた疑問を投げる。
少しの沈黙の後、麗さんは口を開いた。
「…部隊配属だ。お前の事を欲しいって奴がいてな、そいつの部隊に入ることになったんだよ」
「へぇ…で、その人って誰なんですか?」
「朝話しただろ。測定不能級の1人、魔法少女ゴッドレイ。そいつからのお誘いだ」
確か元猟奇殺人犯のゴミクズだったっけ。
情報規制されてるって話だし、相当強い人なんだろう。
「まあ私から言えるのは一つ、1秒たりとも気抜くなよ。イラつかせるようなことしたら殺されるからな」
「…善処しますけど」
「マジで頼むぞお前…」
その後も何度も念押しされながらも、病院外に停まっている車にまで案内された。
「それじゃ、頑張ってな」
「あれ?麗さんは付いてこないんですか?」
「私は他にやることあるんだよ」
若干ついてきてほしくもあるけど、まあ仕方ない。
私は配慮できるタイプの人間だからね。
***
大きなビルの前で車が止まり、ドアが自動的に開いた。
雲の上まで届くのではと思うほど高いビルは、黒光りした金属の装甲で覆われていた。
ビルと言うよりは要塞という方が正しいかも知れない。
歩きながら中に入ると、一直線の通路の先にエレベーターが佇んでいた。
「そういえば何回に行けばいいんだろ…」
そう、私はマジで何も聞かされていないのだ。
とりあえず全階止まればいいか、なんて脳筋じみた事を考えていると、エレベーターが勝手に動き出した。
多分私の情報が登録されていて、自動で目的の階まで連れて行ってくれるのだろう…と信じたい。
それから数秒後、エレベーターは60階で停止した。
ドアが開くと、目の前にはメイド服の女の子が1人。
「アイリス様ですね。この部隊の給仕を担当しております『秦野 冥』兼『サーヴァント』でございます。お好きな方でお呼びくださいませ」
そう言うと彼女は見惚れるようなカーテシーを見せた。
てかどこかで見た事あるなと思ったら魔法少女だったか。
魔法少女『サーヴァント』、ランクはB級で固有魔法は時間逆行。
固有魔法に関しては良く知らないけど、過去10秒間以内の時間にいた状態まで自分の時間を戻せるとかだったはず。
もっと上を目指せる魔法だと思ってたけど、本業はメイドの方なのかな?
「じゃあ…サーヴァントさん。ゴッドレイって人から呼ばれてきたんですけど」
「把握しております。ですが今は訓練中ですので…それとも少しご覧になりますか?」
私はその提案に対してコクリと頷き、私が彼女について行く形で案内される。
「ここには多くの魔法少女が在籍しており、その大半は戦闘系の固有魔法を持った、A級以上の戦闘力を持つとされるもの達です」
通路の真ん中を歩きながら彼女はそう語る。
「そして、そんなエリート魔法少女達を従えているゴッドレイ様は、文字通り『測定不能級』と言うわけです」
「性格はアレですがね」と続けるサーヴァント。
言葉の節々から、彼女がゴッドレイとやらを尊敬しているのがわかる。
そんな事を話していると、いつの間にか訓練場所に着いていた。
このビル自体が要塞のようだったが、それを見た後でも際立つ分厚い金属の扉。
言うならば金庫の扉のようなそれをサーヴァントが力いっぱい押す。
ギリギリと嫌な音を出しながら扉が開く、それと同時に中の少女がこちらを振り返る。
褐色の肌とエメラルドグリーンの目、髪は少し黒ずんだ白色の可憐な人だ。
「…おいそこのガキ、今すぐに出て行くか死ね」
そんな見た目から放たれた第一声は、冷たい声の暴言であった。
「ゴッドレイ様…例の魔法少女でございます」
「なら尚更だ。俺の邪魔する奴ァ入れるわけにはいかねぇ」
なんだコイツ。一言一言全てが頭に来る。
でも麗さんには念押しされてるし…
「だからあのクソアマの魔法少女は嫌なんだよ」
「あ?お前今、麗さんのこと『クソアマ』って言ったか?」
思わず心の声が口に出る。
私が馬鹿にされるのは許さないけど、麗さんのこと馬鹿にする奴はもっと許さないからな私。
「てめぇもだよクソガキクソアマコンビが。飼い主にケツ拭いて貰いに帰りな」
今度は思わず手が出る。
私は即座に固有魔法発動、身体強化最大にした状態で目の前の奴に向かって突進した。
厚い鉄の壁をぶち抜き、2人で地面から60階の上空に出る。
「お前ぶち殺す!!」
「テメェもだよクソガキが!!」
ダメそうですね…