小鳥遊ホシノのうんちを手に入れなきゃ死ぬらしい 作:カスのゲマトリア
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元マーケットガードとして食い繋いでいた俺だが、利き腕を壊しちまってその肩書きすら使えなくなった。
ドン底で、何をするのにも金がいる。
そんな折に見つけた法外な値段の治験バイトは、たとえ胡散臭いと分かっていても飛び付かずには居られなかった。
――しかし、
だが、これまでの言動――治験中に何度か話した――を鑑みるに、ただ妄執に囚われた狂人だと切り捨てるのは躊躇われた。
この黒尽くめの異形は、言葉尻を捉えた胡乱な言い回しを好むきらいはあれど、トンチキな冗句を好む手合いではなかったはずだ。
よって――最も合理的に考えて、俺は自らの耳を疑った。
小鳥遊何某が何者かは知らないが、他人のうんちを必要とする状況など俺の聞き違いでしかないのだろう。
「クックック……聞き間違いではありませんよ。
ええ、えぇ。レトリックや言い換え等ではありませんし、これはそのままの意味で受け取ってもらって構いません。
あなたは――小鳥遊ホシノのうんちを手に入れなければ死にます」
あぁ、なんてこった。
正気で、大真面目に言っているらしい。
では――では、なぜ?
どう言った理屈で小鳥遊ホシノのうんちが手に入らなければ俺は死んでしまうのだろうか。
「端的に言ってしまえば、あなたに行った実験の副作用です。
暁のホルスとしてのテクストからそれた小鳥遊ホシノ個人の側面――アンバーグリス……多面的に見れば神秘の多様性とも……。
クックック……これは拡大解釈でしょうか。
単に不要なものをオミットした結果かもしれません」
あんたは一体何を言っているんだ?
「暁のホルスの神秘の培養物――それらを埋め込めば接木の様に同一の存在に至れるのか……そういったアプローチでした。
当初の目的とは逸れましたが……。
実に興味深い結果に終わりました。鏡をご覧下さい」
黒尽くめの異形はそう言うと、ベッドの上で動けずにいる俺に手鏡を向けた。
「実験」とやらで未だに身体が言うことを効かないが、どうにか顔を鏡に向けると――そこには。
鏡に映っていたのは、元の厳めしいブルドッグ顔ではなく、桃色の髪をしたオッドアイの子供だった。
ふざ、ふざけんな!?
これが実験!? こ、こんなことが許されるはずがないだろうが!!
「クックック……あくまでルールの範疇です。
こちらの契約書にも明記されているリスクですよ。」
そう語ると黒尽くめの異形は治験の前に書かされた一文を指でなぞった。
『甲は乙に対し・・・』と続くその文言は確かに法的な効力を持って黒尽くめの異形を守っているらしい。
そして眉唾だと思っていた先程までの言葉が、急激に真実として現実感を俺にもたらしてきた。
本当に、小鳥遊ホシノのうんちを手に入れなければ死ぬのかもしれない。
「しかしその体のままで元の経歴だと少々動き難いでしょう……これはサービスです」
そう言うと黒尽くめの異形はいくつかの書類やカードを見せてきた。
後暗い経験をしてきたから分かるが、あれは身分証明書だ。それも偽造の。
「こちらは差し上げます。どう使うかはあなたにお任せしますよ。
あと半日もすれば動けるようになるでしょう。
クックック……あなたという変数がどう動くか、楽しみにしてますよ。」
そう言うと黒尽くめの異形は立ち去って行った。
ご丁寧に見やすく置かれた偽造身分証明書を見やる。
『
…………そういえば、なんで小鳥遊ホシノのうんちを手に入れなきゃ死ぬのかよく分かんないままだな。
糞が!!
オリ主はガチのブルドッグです。
キズだらけでなかなか迫力のある顔をしてます。