小鳥遊ホシノのうんちを手に入れなきゃ死ぬらしい 作:カスのゲマトリア
バーが真っ赤になってるのにビビりまくって投稿遅れました
こ、これからもうんちを……!
うんちをよろしくお願いします……!
あ。unp.7冒頭の続きです。
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――――そうして、追憶は終わる。
俺は、俺自身の実情を上手く説明する事に失敗し――というか喧嘩を売る形となり、小鳥遊ホシノの逆鱗に触れてしまったのだ。
どういう事は無い。
心の小鳥遊ホシノが言った通り、単純に自業自得だった。
柴関ラーメンで逃げずにきちんとその場で謝罪と説明が出来きていれば、或いは屋上に呼び出されてから吐く最初の言葉がうんちでは無かったのなら、まだやりようはあったのだ。
「はぁ、はぁ――はぁ、はぁ――ぅぐ……!?」
「……………黒服の手先かなんかだと思ったけど、まさかただの変態だったなんて思わなかったよ……。
いや。それとも……やっぱり黒服の命令なのかな?」
腹部を蹴り上げられ、横向けに倒れていた俺に、小鳥遊ホシノは膝を乗せてこちらの身動きを封じて来た。
声は冷たく――静かな怒気を孕んでいる。
底冷えするような眼差しはこちらを射殺さんとするようだ。
先日の詰問を思い出させるような体制であり完全に組み伏せられてしまっている。
いや――正しく先日の続きなのだろう。
やはり、小鳥遊ホシノは俺と黒服との関連を疑っているようだ。
非常にこわい……こわい、が。
一先ず、今すぐ殺されるという心配は無さそうか?
むしろ――再び事情を説明するチャンスだ。
黒服との繋がりは無いことを説明し、俺が小鳥遊ホシノのうんちを欲する動機を説明する。
事情が事情な以上、下手な隠し立てはできない。
今後も彼女のうんちが必要になる以上、変に誤魔化せばそれが状況の悪化を招く危険性すらあり――俺は彼女に対して正直に、そして怒りを買わないよう慎重に事情を説明する必要があった。
「まず、謝らせてください。柴関ラーメンでの一件は完全に私の落ち度でした。
本当に、本当に申し訳ありませんでした……!」
「…………」
小鳥遊ホシノは何も答えず、静かにこちらを睨みつけている。
怒りで顔を真っ赤に歪ませているが――続きがあるのを察してか、黙って聞く姿勢を取ってくれているようだ。
「ですが私は……あなたのうんちがないと死んでしまう体にされてしまったんです。
それは黒服の実験のせいで、むしろアイツを恨んでます。繋がってなんかないんです」
「――死!? それで……う、嘘を言うな!」
「嘘なんかじゃ――!」
「い、意味がわかんないよ! 頭がおかしい!
…………ねぇ、ただの黒服の手先なんでしょ?
さっきのは嫌がらせかなんかで、本当はなんかロクでも無いことを企んでて…………。
――そうなんでしょ!? そう言ってよ!」
「違います本当なんです……!
本当にあなたのうんちが無いと――死ぬんです!」
「嘘だッ!!」
乗せられていた膝の重みが増し、ギリギリと背中を圧迫してゆく。
とんでもない過重が背中を起点にかかりミシミシという音まで聞こえてくる始末だ。
――――死ぬ……!死んでしまう……!
「がぁぁ……!はひ、広間! 広間のことを思い出してください!
薬がないと死ぬって言ったでしょう!? 薬はうんちの事なんです!!
薬はうんち!薬はうんちなんです!」
「――――っ! やっぱりあれも私のっ……!?」
「はい!!そうなんで痛だだたたたたぁっ!?」
背中にかかる負荷がさらに増す。
ズグン、と鈍い音を立ててクモの巣状に床面へヒビが入った。
まるでプレス機に押しつぶされているような激痛が全身を包み込む。
ダ、ダメだ……! 信じてもらえる前に……死ぬ!
「じゃあ――じゃあなんなのさ!
お前は被害者で!悪意もなく!ただしょうがなく
――私のうんちを盗んだって言いたいのか!!」
「そうです!そうです!うんちを盗んだのは!
一重に命のためです!嫌がらせでも変態的な趣味でもな――があああああ!!痛い痛い痛い死ぬ死ぬ死ぬ!死んじゃうからぁあ!」
嫌な音を鳴らし続ける自身の肉体に生命の危機を感じながら、じたばたと手足をばたつかせていたら、ふと――背中の重圧が収まった。
体制は相変わず変わってはいないが、膝でのプレスを緩めてくれたようだ。
未だにとんでもなく痛むが、それでも急に小鳥遊ホシノが押し黙った事を不思議に思い、恐る恐るその表情を伺ってみると――そこには。
「そんなのって……そんなのってないよぉ」
目に涙を溜めた、一人の少女が居た。
正直、少し意外には思った。彼女はアビドスの上長で、理不尽なくらい強くて、どこか熟練の雰囲気すら纏っていたから。
しかし同時に納得もしていた。
彼女は未だ歳若い――17歳の少女なのだ、と。
善良で、聡い彼女の事だ――。おそらく、俺が嘘をついていないことをとっくに見抜いていて、或いはこれまでの俺との接触からの推測で察しがついていて。
変質者だと思っていた元凶に、当たる事も許されないのであれば、抱えきれない感情が溢れてしまうのも無理からぬ事だった。
「なんでさ……なんで私のうんちがないと死んじゃうんだよぉ……! 意味わかんないよ……!」
「あぁ……ごめんな。本当に」
「うっさい! 勝手にっ、勝手に死んでよ……!
ただでさえ、前の私の姿なのも嫌なのに、その上っ!
その上――なんでうんちなんだよぉ!」
ポタポタと、小鳥遊ホシノの涙が頬に落ちてきた。
俺は――俺は、思わず何も言えなくなってしまった。
普段の俺なら、それこそ自身が泣き喚いてでも、
どうにかこうにか自らの命を繋ぐために何かを言う所だったのに。
彼女が、子供が泣いている原因に自分がなっている事に、少なからず動揺しているのか?
いや、違うか。別に、子供が泣くぐらいは、そんな事はブラックマーケットじゃ日常だった。
なんならこんなトンチキな理由じゃなく、もっと凄惨な理由で流れる涙だって見てきたのだ。
俺はそれを見過ごすような、どこにでも居る、汚い大人だった。
だから、ただ――こんなにも心が乱されてしまうのは……。
『ど……どうするんですか? 私、なんかめっちゃ泣いてますけど……。
私とはいえ、なんかすごく気の毒というか……』
(なぁ……。小鳥遊ホシノ。
うんちじゃなきゃダメなのかな?)
『は? 急に何言ってんですか?』
(俺は今まで――うんちじゃなきゃダメだと思ってた。
でも、それは最初に黒服に言われてたからでしかなくてさ……この涙も――もしかしたら桃色の光に出来るんじゃないか?)
『……! なるほど――やってみます』
そう――そうなのだ。
前回、俺は小鳥遊ホシノが「おしっこ」をしているのかもしれないという懸念を抱え――半ば無理筋にも近い作戦を強行したが。
別に「うんち」だけしか方法がないとは、限らないのだ。
人間の分泌するものは、別にうんちに限った話じゃない。
おしっこでも、汗でも、垢でも、血でも、或いは涙でも――うんちの代用になるのなら、現状よりある程度はマシなのだ。
しかし――――。
『ダメですね……やっぱり、アレじゃないと無理みたいです』
(…………そっか)
『私ってホントなんなんでしょう……?
もしかして私って小鳥遊ホシノの……いえ、考えるべきじゃありませんね。気が狂いそうです』
(そうしとけよ。俺だって同じ気持ちさ)
まぁ、そうか――。
落胆の気持ちがないと言えば嘘になるが、わざわざあの黒服が「うんち」と限定していたのだ。
予想通りと言えば、予想通りだった。
ただ、ならやっぱり――。
「黒服っ……!」
突然そんなことを叫んだ俺に、小鳥遊ホシノはやや赤くなった目で怪訝そうにこちらを見つめた。
「黒服の所に、カチこもうぜ……!
そんで俺の事全部吐かせて、うんちなんか無くっても生きていられる方法を聞こう!」
「……何? その喋り方」
「これが俺の素の口調……腹割って話すっていう意思表示だよ。
い、いやなら敬語に戻しますけど……」
「…………まぁ、別にいいけどさ。
……結局、何がしたいわけなの?」
「言った通り。含みはなんも無い。
あいつを探し出して、俺のことを聞く。
あいつはあれで案外喋りたがりっぽいし、なんか分かるかもしれない」
あと、何も得られなくても最低限ぶん殴る。
「小鳥遊ホシノ……君が力を貸してくれるなら――成功する確率が跳ね上がると思うんだ。
終わらそうぜ――こんな訳のわかんねぇ現状をさ」
「……君を見捨てて、なんなら縛ったりして―――そうやって放置して勝手に死ぬなら、私が動く意味なんて、ないと思うけど?」
「こ、怖いこと言うなよ……。
まぁでも、そんな事するつもりはないだろ?」
「……」
「君が泣いてる理由は、まぁ。これは想像というか願望に近いんだけどさ――。
俺を被害者だと思ってくれてて、そんな俺の事を助けるつもりだけど、その方法が嫌すぎて泣いてくれてた……と思っててさ」
まぁ、また希望的観測だ。俺も懲りない。
しかし――今回はまぁ、分の悪い賭けというわけじゃなかった。
なにせ過去と現在、単純に2人分とは言えないくらいの小鳥遊ホシノの人となりを、俺は知っているのだから。
「なにそれ。……違うって言ったら?」
「俺の知ってる小鳥遊ホシノなら、言わない」
「…………昨日、会ったばっかのくせに」
なぁ、知ってるか? 小鳥遊ホシノ。
お前はよく知らない怪しい奴に「守る」って言ったり、自分が嫌な事なのに思わず「頑張れ」と励ましちゃうような、すげぇ心の優しいやつなんだぜ。
今も昔も。そしてきっと、これからも。
「はぁ……もう、分かったよー。
君のことを信じたわけじゃないけど、黒服の仕業なのは本当だろうしねぇ。」
「……! なら!」
「おじさんも――ぶっ飛ばすよ、黒服」
「…………あ、いや。一応、メイン情報収集な……」
「はは……そうだねぇ~」
目が……目が全く笑ってないな。
いやまぁ普通、ぶちギレるか。
しかしどうやら、俺に向けられていた怒りは黒服に向いてくれたらしい。
しかし、黒服が殴殺される前に、上手く情報を集められればいいが……。
あとは、まぁ。俺が殴るくらい黒服の体積が残っていれば、文句ナシだ。
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「ところでさー。
『俺』って言ってたけど……男なの?」
「ん?ああ……。そうだ――がはっ!?
な、なにすんだよ!?」
「…………変態」
「え、いや、あの。俺は仕方なく……」
「黒服の次は君だからね~」
「ヒュッ!?」
「だからまぁ……それまでは――アビドス高等学校の1年生……竜涎コウでいいよ。
まっ。改めてよろしく、コウくんちゃん」