間章3幕『苦海にもがく黒氷』   作:せっせこパパイヤ

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第3幕『終焉の胎音、巡り駆け抜ける嵐』②

ゼーレ「痛った.....」

 

 

土埃が舞う中、指で右目の瞼を抑えながら、ゼーレが出てきた。その指の隙間から留めどなく鮮血が垂れている。地面に血液の雫が垂れ落ちる程だ。先程、ゼーレがテーヴァーンタカ山に放棄され、ツタが深いところにまで絡んだ、山程の大きさのある遺跡守衛の腕をもぎりとって、こちらに投擲してきた。そんな緊迫した状況で、エウルアがパイモンを抱いて回避し、自分が迫りくる鉄の塊を斬り、事なきを得た。そして、すぐこちらに飛んできたゼーレと交戦し今に至る。

 

 

空「(瞼の傷がまだ治ってない.....。再生能力が落ちてる?それに今まで目に追えなかったのに今では何とか行ける状態......。弱ってる.....確実にゼーレが弱体化してる....!)」

 

 

雨が止んだ後の雲の隙間から流れてくる光のように勝ち筋が見えてきた。だけど、油断出来ない。相手は力を失った七神では話にならないほど力を持つ律者だ。気を緩ませたら一気に逆転されてしまう。

 

 

空は片手剣のグリップを今まで以上に力強く握りしめ、呼吸を整える。

 

 

ナヒーダ「ごめんなさい!今、戻ったわ!」

 

 

その時、スカラマシュが開けた大穴から風を切る音と共に2人が姿を現し、ふわっと地面に着地した。

 

 

スカラマシュの目線は真っ直ぐ、そして睨みつけるようにゼーレを見ていたが、ナヒーダは荒れ果てた大地に驚いている。

 

 

ナヒーダ「なぜ遺跡守衛の腕がここに?さっきの轟音の正体はこれかしら?」

 

 

空「説明は後で!俺とエウルアもまだ大丈夫!」

 

 

ナヒーダ「それはよかった......」

 

 

空「こっちに来たってことは、止まったの?」

 

 

ナヒーダ「ええ。この子の機転で無事活動を停止したわ」

 

 

ゼーレ「あら...」

 

 

スカラマシュ「僕の手で粉々に粉砕しておいたよ。元からボロボロだったから簡単だったさ」

 

 

ゼーレ「そう...。残念ね。もうちょっと耐えてくれると思ってたんだけど....」

 

 

スカラマシュ「(この女、やけに違和感を感じる.....。あのガラクタがこの女にとって大事な物なら分散せずに僕達と戦っているはずだが.....)」

 

 

正機の神が停止し、無事合流できたのか、機運が上がっている雰囲気の中、スカラマシュは目の前に立っている女性に対し、まるで何か歯に挟まったかのような一種の不快感を持っていた。

 

 

彼女の作戦ではどうしてもコアを起動させるための器が必要だ。ならば自然と全員を相手取って、なるべく正機の神が傷つかないように立ち回るはず....。だが、わざと自分からこちらを分断させたのは何故だ?しかも、こちらは既に器を破壊することに成功したのだから焦らないといけないのでは...。何か...おかしい。

 

 

彼女は、別の方法を模索している?一旦この場で勝利を収め、また何かをするのだろうか。

 

 

この女は律者の侵食に加え、旅人とこの女の妹との戦闘、正機の神の遠隔操作でかなり体力を消耗している状態...。そして、斬撃を使おうにも消耗が激しすぎて逆にこちら側が有利になる場合もある。だが、斬撃の使用を諦めるにしても彼女の厄介な点は脅威的な身体能力だ。フィジカルだけで状況を一気に逆転させるポテンシャルを持っている。実に面倒だ....。

 

 

空「(ナヒーダ!ナヒーダ!)」

 

 

ナヒーダ「(!旅人?どうしたのかしら?)」

 

 

緊迫した雰囲気の中、空がナヒーダの脳に語りかけてきた。

 

 

空「(ゼーレは確実に弱体化してる.....。このまま耐久すればいずれ勝てる.....)」

 

 

ナヒーダ「(!本当?それは良かった。さすがに彼女でも正機の神を遠隔操作で動かすのはきびしかったようね。石の元素量にまだ余裕はある?)」

 

 

空「(うん、石はまだ余裕......ん...?あれ?)」

 

 

石の状態を確認するために、空はポケットに手を忍ばせる。だが、指先に伝わってきた石の形状の感触に疑問が浮かび上がった。

 

 

スカラマシュ「それで君はどうする?泣き喚いて、降参するなら許してあげるよ。体が限界の状態で4対1に勝てるとでも思っているのかい?」

 

 

スカラマシュは勝ち誇った声色でゼーレに問いかけるが、帰ってきたのは口端を僅かに上げ、ほくそ笑んでる顔だった。

 

 

スカラマシュ「....?何を....」

 

 

ゼーレ「旅人」

 

 

空「....何?」

 

 

ゼーレ「焦っているわね...。戦いで心を乱すのは良くないわよ?」

 

 

空「...!焦ってなんか...ない...」

 

 

ゼーレ「探し物はこれ?」

 

 

そういうとゼーレが4人に見せつけるように手のひらに持っている物を見せた。それは色々な光を発する石。ーーーナヒーダから貰った石があった。

 

 

空「!?いつの間に!」

 

 

ナヒーダ「!」

 

 

ゼーレ「何か違和感を感じるなと思っていたらこんなふざけた小細工を.....」

 

 

ゼーレは小石を見ながら、言葉を吐き捨てて、手を強く握って全ての石を粉々に粉砕した。

 

 

ナヒーダ「!石が.....切れてる....!」

 

 

ナヒーダがポケットから取り出した石は綺麗に真っ二つになっていた。それのせいか石の光は徐々に失いかけている。

 

 

ゼーレ「あなた達が飛んできて着地した瞬間切っておいた。勿論...全員分ね」

 

 

ナヒーダ「ありえない...!そんな......!(ポケットの中にある石を斬るなんて...!彼女そんなに精密な元素操作が出来るの....!?)」

 

 

ナヒーダは聖鍵殿の地下でしか彼女の元素を目にしていない。あの空間ごと切り裂きかねない斬撃が基準なのだと勘違いしてしまっていた。ーーー

 

 

スカラマシュ「(読みが外れた...!少なくともまだ数回は元素を使えるのか....)」

 

 

空「(この現象千尋の砂漠の地下と同じだ....!あの時は斬撃で剣が斬られていたと納得できるけど、今回はポケットの中にあるものを正確に斬られたということか......)」

 

 

スカラマシュ「(おい、クラクサナリデビ。どうする)」

 

 

ナヒーダ「(一応予備は持ってきたの....だけどこれは形が歪で、所謂不良品だから100%の力を発揮できるかどうか....)」

 

 

ナヒーダがどうしようか脳の思考をフル回転で動かしている時、ゼーレが大穴に向けて腕を伸ばした。数秒もしないうちにフワフワと浮いた赤色のコアがやってきてポスンと手中に収まる。

 

 

ゼーレ「お、きたきた.....」

 

 

ナヒーダ「コア....?今更、何をするつもりなのかしら?」

 

 

ゼーレ「あなた達は正機の神を破壊さえしてしまえばそれで終わりだと思っているの?むしろここからが本番なのに....」

 

 

ナヒーダ「どう...いうこと?」

 

 

ゼーレを除くその場にいる皆が不穏な言動に動揺する。不思議と脂汗が首から流れてきた。

 

 

ゼーレ「終焉機の能力は融合.....私はあなたたちが来る前に既に終焉機と律者の能力の融合を開始していた...。半分の力をコアに讓渡することで、緩やかに融合を始めたってわけ」

 

 

ナヒーダ「!まさか......!」

 

 

ゼーレ「あなた達はコア自体にある元素の貯蓄が少ないために地脈の元素を吸い取っていたと思っているでしょう?半分正解だけど、私はあくまで正機の神のパワーアップのためにやったわけじゃない。全ては私の駒として機能するためにやっただけ」

 

 

ナヒーダ「自分自身を器とする気!?正気なの!?」

 

 

ゼーレ「コアの能力がわかった時点で正機の神はブラフの役割になりさがった。もう、これっぽっちも期待なんかしちゃいない。融合までの時間付き合ってくれてありがとう」

 

 

ゼーレは突然赤色のコアの角を切り取り.....そしてそれを飲み込んだ。

 

 

パイモン「コ、コアを飲み込んだ!?!?」

 

 

ゼーレ「そしてこれで後押し」

 

 

ゼーレがポケットから取り出したのは黒色の光を放ち異様な雰囲気を醸し出している缶詰知識だった。

 

 

ナヒーダ「缶詰知識!(あの子から聞かされた行方不明の缶詰知識は...彼女が持っていたのね...!)」

 

 

ゼーレ「コアを通して得られた融合した後の戦闘データはここに保存してある。律者のエネルギー元は汚染された世界樹。そして、今この情報を私が取り込むことによって、情報が世界樹とリンクし私自身が終焉機の器として完成するの」

 

 

そういうと缶詰知識を思いっきり地面に叩きつけると、その中に詰まっている情報が漏れだし黒い霧として空中に舞った。

 

 

たった今彼女は終焉機と融合を果たした。

 

 

ナヒーダ「(やられた.....!!!)」

 

 

一見外見に変化はない。空は終焉機がどんなものなのか知ってはいたが、融合した結果どんな影響を与えるのか未知数だった。

 

 

ゼーレ「ふふ、力が溢れてくる。まるで生まれ変わった気分。私って生きてる!!!」

 

 

融合を果たした彼女は高々に笑い始め、高揚した口調で歓喜を表現した。

 

 

そして、速攻攻撃を仕掛けてくる。ゼーレが地面に片腕を突っ込むと地面はメリメリと裂け、木の根っこがちぎれる音が鳴り響いた。そしてちゃぶ台返しのように分厚い平板状の土をこちらに投げつける。地面が削れた衝撃で全員の体勢が崩れた瞬間、空の顔面はゼーレの手に掴まれていた。

 

 

空「!」

 

 

そのまま頭を地面に叩きつけると、烈音と共に土埃や小石などが舞い上がり、家が10個ほど入るほどの大きなクレーターが出来上がった。

 

 

空「(早い....所の話じゃない!残像さえ見えないスピードにやられた...!!)」

 

 

エウルア「(え....何が起きて...)」

 

 

エウルアは一瞬何が起きたのか理解出来ていなかった。瞬きした次にはすぐ目の前にクレーターが出来上がったのだから。

 

 

そのまま、スカラマシュの図体に蹴りを入れ、人形を数十メートル先まで吹き飛ばす。

ナヒーダは崩れた地形に為す術なく地面の中に崩れ去った。

 

 

ゼーレ「(さて、最後はパイモンだな....)」

 

 

ほぼ無害に近いパイモンだが、念には念を入れ、気絶程度に済まそうとパイモンの姿を探し始める。

 

 

ゼーレ「(....いない?)」

 

 

入念に周りの景色を見渡したが、あの特徴的な白い服装の人物がいないことに気づいた。

 

 

ゼーレ「(逃げるとしてもそんな時間は経ってはいないはず.....。攻撃の余波のどさくさに紛れて隠れたかな...?)」

 

 

まあいい。逃げたのなら、関係ない。そう思い、空達の方向に向き直した時、ゼーレは信じられない光景を目にした。なんと、目の前の景色が急激に変化し始める。時間が巻き戻ったかのように地形変動規模の山が徐々に修復されて行く。ちゃぶ台返しされた地面は元の位置に戻り、空を叩きつけていたクレーターは消えた。そして、何事もなかったように数秒前の景色に逆戻りしたのだ。

 

 

景色だけじゃない、攻撃によってバラついた空達はゼーレの目の前に立ちはだかっている。

 

 

ゼーレ「なっ......!(時間が巻き戻った.....!?何が起きて.....!!)」

 

 

コアとの融合を果たしたという高揚感も存在している中、ゼーレの心の中でとてつもない違和感も台頭し始めてくる。

 

 

理解が追いつかない思考回路の中、迫り来る片手剣に気づき、急いでそれを回避した。

 

 

そして、ゼーレはとあるひとつの疑問が頭に思い浮かぶ。

 

 

ゼーレ「(もしかして私......輪廻を繰り返してる!?!?)」

 

 

輪廻ーー、アーカーシャが作り上げた英知の1つ。主を失った抜け殻の夢を収穫し、それをまた永遠に繰り返す。夢が終了してしまうとまた別の夢境集合体で同じ夢が発動してしまい、それと同時にアーカーシャ端末の出力も上昇してしまう。

 

 

元来、夢境に閉じ込められてしまった者は輪廻が繰り返されていることを自覚できない。輪廻の違和感を感じ取ることが出来る方法は草元素の祝福を享受することのみ。祝福の効果で過去の輪廻を探ることが可能だ。これがどれだけ力を持った相手であろうとも輪廻を破るのは困難。ーーーだが、ゼーレ・ローレンスは違った。彼女の中にある世界樹が繰り返す輪廻を徐々に知覚し、融合したコアが輪廻を学習して、ここが夢境であると理解出来た。

 

 

ゼーレ「(輪廻....!一体いつから....!)」

 

 

しかし、この違和感を感じ取った以上、糸が絡みまくっていたゼーレの思考回路はクリアになる。同時にこの輪廻を打ち破る方法を思いついていた。

 

 

ゼーレ「(輪廻はブエルの権能の1つ。なら、直接ブエルを戦闘不能にすればいい!)」

 

 

こちらを斬る動作をする空を眼中がないように通り過ぎ、全速力でナヒーダの元に迫りきた。

 

 

空「(...!ナヒーダの元に!?...まさか気づいた!?)」

 

 

スカラマシュ「(ちっ....あの女に今ここが夢境の中ということに気づかれたか!)」

 

 

ゼーレがナヒーダを掴む寸前、真横から碧の刀身を誇る大剣が飛んできた。思わず、ゼーレは手を引っ込める。

 

 

ゼーレ「エル.....!」

 

 

剣を投げてきた人物はエウルアだった。

 

 

エウルア「いい加減にして姉さん」

 

 

ゼーレ「(いや待って...よくよく考えたら、仮にこれが即席の夢境だとしても、ブエルが主って分かりやすいことする...?あっちも、こっちが夢境を知覚するのは織り込み済みのはず...)」

 

 

その時、エウルアの腕に1つ目の、長耳が生えている白いぬいぐるみがあることに気づいた。

 

 

ゼーレ「(あれは...ぬいぐるみ?いや違う...間違えなく、夢境に関係してるアイテムのようね。今まで隠し持っていたのか...。もしかしたら、あれが夢境の主?あれが存在してる限り、私は輪廻からは...!)」

 

 

エウルアの腕の中にあったのは教令院の暴走時に使用されたナヒーダ特製の新型アーカーシャ端末だった。

 

 

輪廻の攻略の鍵が見つかった以上、ゼーレはそれを強奪し、破壊すればいいだけの話。だが、ゼーレは何よりもその行為が一番の壁となり立ち塞がった。

 

 

ゼーレ「(エルが......。やっぱり....できない!)」

 

 

今は敵同士だとしても、あのアーカーシャー端末を奪うのに、確実に妹を傷つけてしまう。それは避けたかった。ゼーレは諦めがつき、突然何も無いところに走り始める。

 

 

それに、空は一瞬何をするのか検討つかなかったが、ナヒーダの叫び声で戻された。

 

 

ナヒーダ「強制的にここから脱出するつもりだわ!」

 

 

夢境のデメリットを理解している各々は、ゼーレの夢境の脱出という行為を阻止しなければならない。空とスカラマシュ、そしてエウルアが全速力で後を追いかけた。

 

 

ゼーレ「(夢境の主を破壊できないとなれば、夢境と現実の境界線を探せばいい....!)」

 

 

輪廻という名の夢境の脱出方法は、夢の主を呼び覚ますか輪廻と現実の境界線を知覚し、それを破壊すること。ゼーレは前者の行為が難しいと判断した途端後者に行動を移した。

輪廻は、アーカーシャが存在しないと発動すらしない。実際、マハールッカデヴァタの記憶をテイワット大陸から消去後アーカーシャ端末の使用は困難を極めた。だが、今回ナヒーダは自身の権能と世界樹を強制的にリンクすることにより輪廻を実現させた。

 

 

さらに、この夢境にゼーレ以外の者は最初から自分が輪廻を繰り返していることを自覚している。あの花神誕祭の輪廻では草元素の祝福を受けたものにしか知覚できないのだが、今回の場合夢境と現実の狭間の境界線の強度を低下させ曖昧にしている。さらに、境界線の外で待機しているパイモンにリンクすることによって外界の輪郭を認識し、輪廻を自覚していた。

 

 

ゼーレ「(どこ.....!?境界線は....!.........あ)」

 

 

必死にここから脱出しようと境界線を目指すゼーレだったが、ふと今まで感じていた違和感が原因で足を止めた。

 

 

空「!?(急に止まった.....?)」

 

 

追いかけていた空とスカラマシュだったが嫌な予感がして、すかさずスカラマシュを呼び止める。

 

 

ゼーレ「(よく考えてみれば.....輪廻が終了し、そして再開するタイミングはどれも私が全滅させてから始まっている....?)」

 

 

夢境の開始そして終了もゼーレが空達を壊滅させてから発動していた。ーーー

 

 

ゼーレはずっとこの夢境の策を講じたのは自分を時間で消耗させることが目的だと推測している。仮に、それが本当ならばナヒーダの夢境の主の場合もっと輪廻の発動の間隔を長くするのだと考えていた。だが、その考えが外れた.....。

 

 

その結論が導かれるのはーーーー、

 

 

ナヒーダ「!」

 

 

空「夢境の結界が!」

 

 

頭の中で結論が出たゼーレは早速片手剣に氷元素を纏わせ、空中に斬撃を放つ。すると、空に大きな亀裂が入り、粉々のガラスが飛び散るように現実世界に引き戻されてしまう。

 

 

ゼーレ「まあ...輪廻のリセット条件を考えるに夢境の主は''私''だったようね」

 

 

ナヒーダ「(しまった....!)」

 

 

ゼーレ「自分が主だと認識してまえば後がなんとなくだけど境界線を知覚できたわね」

 

 

数百回行われたことによる多大なる脳への負担、そしてゼーレ・ローレンスによる夢境の強制終了そのことが起因しゼーレ、スカラマシュ、パイモンを除くその場にいる者に頭痛が走り始めた。

 

 

ナヒーダ「うっ....!」

 

 

空「ぐっ......」

 

 

大いなる隙を見せたナヒーダ陣営を易々とゼーレが見逃すはずがなくエウルアとナヒーダを草むらに投げ飛ばす。

 

 

空「(頭が割れるほど痛い....!!!だけど''エネルギー''は今ので溜まっている....!!今は時間を稼げ!)」

 

 

空は体に喝を入れ、体を動かす。それと同時に夢境のデメリットを無視できるスカラマシュが時間を稼ぐために、誰よりも前線に出た。

 

 

ゼーレ「あははっ!夢境で何百回もやり直して、私の消耗を待ってるつもり!?そのぐらいで勝てると思っているなんて、さぞ頭はお花畑のようね!」

 

 

片腕でスカラマシュの頭を掴むと、腹に膝蹴りを食らわす。その勢いで岩肌に人形が吹き飛んだ。

 

 

ゼーレがすかさず追撃することを理解すると、空は全速力でその場に向かう。

 

 

白い歯を剥き出しにしているゼーレの体に片手剣をぶつけたが、切り傷が着いた程度だった。

 

 

空「(硬い.....!!!素の身体能力に体を元素で強化しているんだ.....!!)」

 

 

ゼーレ「あなたの攻撃が1番生ぬるい!」

 

 

空の服を掴み、雑巾を振り回すかのよう、空の体を地面や岩に叩きつける。

 

 

空「うがっ....!」

 

 

スカラマシュ「君が感情の起伏が激しい愚かな人間で助かったよ.....。全く.....この上ない馬鹿だね.....」

 

 

大岩に体を持たれているスカラマシュが小さく、そう呟く。

 

 

ゼーレ「......?」

 

 

思わず、ゼーレは攻撃の手を緩ませる。

 

 

スカラマシュ「もう、こんなものでいいだろう?クラクサナリデビ」

 

 

ナヒーダ「ええ!準備は全て整ったわ!」

 

 

スカラマシュが壁に押し付けられながらも不敵な笑みを浮かべ、ナヒーダに合図を送る。

 

 

ゼーレ「何をするのか分からないけど、何も....。!」

 

 

再び、景色が突然切り替わった。

 

 

今まで押さえつけていたスカラマシュと空が自分の目の前から消えて、自分から距離を取っている。

 

 

ゼーレ「(は.....?また、景色が変わって.....?夢境は破壊したはずよ...!?)」

 

 

確かに自分は境界線を破壊して、夢境を消滅させたはずだ。だが、たった今この空間が輪廻している。

 

 

その時、ゼーレの耳にガラスにヒビが入る音が聞こえてくる。空間の上部の一部分に小さな亀裂が入り、そこから空が入ってきた。

 

 

ゼーレ「(...!?旅人が...もう1人!?)」

 

 

急いで後ろを振り向こうとした瞬間、ドスンーーという衝撃と共に突き刺さった鈍痛が心臓の中心から体全体に染み渡る。恐る恐る、後ろを見る。たった今、夢境に侵入してきた空とはもう1人の夢境の中にいる空が背中からゼーレの心臓を刺していた。

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