間章3幕『苦海にもがく黒氷』   作:せっせこパパイヤ

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第4幕『流離の死魂に穿つ決別の炎』①

窓から夕日が差し込んでいるのでランプを付けなくても良いと思っていたが、椅子に座って早3時間、気づいたら目の前の文書を読むのさえ困難な暗さになっていた。

 

 

このまま仕事を進めるには行かないので、マッチ箱からマッチを取り出し、銀色のランタンに火をつける。

 

 

ほの暗い灯りによって、机に置かれた山積みの資料。蓋の開けたインク瓶とインクを吸った羽根ペン。そして、書きかけの羊皮紙が姿を表す。

 

 

ジン「ふぅ...」

 

 

執務室で山積みの仕事を捌いていたジンだったが、疲労感に襲われていた。まるで子供1人が両肩に乗っかっているように肩が凝っている。

 

 

流石に休憩しようとぬるま湯につけてあった黄ばんだ絹布を取り出し、それを絞った後自分の目の上に乗せる。

 

 

この休憩方法は最早ルーティンになっていた。仕事に追われる日もこれで乗り切っているのだが、実際に効果があるのどうか自分では分かっていない。だが、精神面での効果があるのだとジンの中では思っている。

 

 

ジン「(そろそろ古くなってきたな...。交換しなければ...)」

 

 

ファルカ大団長が騎士団の半数を連れて遠征に出てから数年経ったが、その間代理団長として日々雑務に追われている。

 

 

その状況下で、人手がいない状況でどうすればモンドの皆を守ることができるのか、自分はどんな存在になればいいのかどうか思慮を巡らせていたが、そんなことを考えれば考えるほど答えが見つからない。

 

 

仕事だけじゃない。親の離婚後、妹バーバラとの関係もギクシャクしている。彼女が元気にしているとはいえ、私が向き合えていないのは事実だ。

 

 

それに、ローレンス家の''彼女''のことも正面からしっかり話せていない....。これに関しては、まだ彼女の足跡が掴めていない以上無理な話ではある。だが、対面した時には....。

 

 

ジン「(私は、まだまだだな)」

 

 

ああ、ダメだダメだ。こんなことを考えていては息抜きにもならない。

 

 

夜番の団員がモンド城を巡回している今、騎士団にいるのはジンたった1人だけ。

 

 

息抜きをするため机の引き出しを開き、とある本を一冊取り出した。

 

 

『少女ヴィーラの憂鬱』ーーーーそう恋愛小説。

 

 

ジンは夜な夜な恋愛小説を読むのが趣味なのだ。だが、決して激務や親の離婚の影響ではない。恋愛小説にある両思いや脆そうな絶妙な関係が好きだからなのだ。

 

 

ジン「(この本を読むのはこれで7回目だが、いつ見ても私の乙女心をくすぐってくるな)」

 

 

そんなことを考えていると、コンコンと部屋のドアをノックする音が鳴る。

 

 

現実に引き戻されたジンは急いで本を元の場所に戻し、姿勢を正した。

 

 

ジン「(てっきり、私以外居ないかと思っていたが、違ったか...)入ってくれ」

 

 

掛け声の後、ドアゆっくりと開く。そこにはリサが立っていた。

 

 

ジン「...リサ?帰っていたのでは?」

 

 

リサ「やっぱり、まだ仕事をしているのね」

 

 

ジン「当たり前だろう。住民同士のトラブルの仲介、団員の始末書、モンド城の外の魔物の対処、騎士団の雑務....まだまだ積み重なっているぞ。そんなリサこそこんな時間まだ残っていてどうしたんだ?珍しいじゃないか」

 

 

リサ「帰る途中、書斎に忘れ物を思い出したの。確か、ガイアが禁書に破れている部分があるって私に言ってきてね。そこの部分を家で確認しようと......」

 

 

ジン「その書斎の忘れ物が本か?」

 

 

リサ「そうね。何としても禁書のページを破ったお馬鹿さんにお灸を据えないとね。禁書には元素マークを予めつけておいたから紙のページと犯人の行方は簡単に見つかりそうよ」

 

 

ジン「リサは相も変わらず本に関する仕事だけは私以上にきっちりとこなすな。その熱意をもう少し他に活かして欲しいのだが...」

 

 

リサ「...例えば?」

 

 

ジン「そうだな...主に騎士団の薬剤の補充とかだな。ガイアを通してホフマンやスワンに薬剤の調合と補充を丸投げしていると本人からよく聞いているぞ。リサさんが仕事にやる気を出してくれませんーって...」

 

 

リサ「うっ」

 

 

ジン「それ以前に毎朝、私がリサを起こしているのもそうだが...」

 

 

リサ「ジン。あなたが責任感が強くて優しい人物なのは分かっているのだけれども、さすがに度が過ぎているわよ。その山積みになった仕事もそう。全部自分で抱え込むつもり?事務に一部仕事を流すのも手でしょう」

 

 

ジン「そこは安心してくれリサ。これは私がチェックを入れるだけなんだ。量は多いけれど、時間はそこまでかからない。今日は元々早く帰るつもりだったからな。何故か今日は住民からのヘルプもなかった...」

 

 

リサ「元々?」

 

 

ジン「実はスメールに行っているエウルアから手紙が帰ってきた。それの返信を書くのに少し手間取っている」

 

 

リサ「あなたからエウルアは今、スメールに行っていることは知らされていたけれど、あの子手紙なんて寄越していたのね。だけど手紙を返すのにそこまで手間がかかるの?」

 

 

ジン「返しの手紙を出すこと自体は簡単なんだ...。だけど、怖くて手が動かなくてな....」

 

 

リサ「こ、怖い...?あなた、20数年生きている中で手紙なんて何回もやってきたのに怖いだなんて.....。まさかエウルアに返信するのが怖いだなんて言うんじゃないんでしょうね?」

 

 

ジン「ああいや、私はエウルアのことを立派な騎士だと思っている。遊撃小隊の戦績が彼女を皮切りに伸びていることを思うと彼女は実力と高貴さを兼ね備えた人物だ」

 

 

リサ「あっ、もしかして....エウルアのお姉さんのことについて....?」

 

 

ジン「そのまさかだ。彼女の手紙にはそのことについて書かれている。私はそれを見て会いたくなったんだ。これは好奇心じゃない、義務だからだ」

 

 

リサ「義務って...。たかがあなたのお母さんがあんなことを...」

 

 

ジン「リサからしたら、たかがと思うだろうな。私がこうしないと気が済まない。だが、何故か怖いんだ。自分自身と向き合うような感じがして...。リサ...私が真面目すぎるだけだろうか...」

 

 

リサ「ドが着くほどね...。そうね...私はあなたが満足するまで好きにしたらいいと思うわよ。クヨクヨしているなんてあなたらしくないわ、ジン」

 

 

ジン「そうか...」

 

 

その時、扉の向こうから少なくとも数名の騒がしい声と足音が聞こえて来た。

 

 

リサ「あら...なんの騒ぎかしら」

 

 

ジン「巡回していた団員達が帰ってきたのだろうか。それにしては早い時間だが...」

 

 

リサ「もしかして泥棒?」

 

 

ジン「まさか。わざわざ騎士団の財産を狙う愚か者がいる訳がないだろう」

 

 

様子を伺うために2人は部屋から出て、音がするホールへ向かう。

 

 

泥棒ではなかった。だが、それよりも深刻な状況が広がっていた。

 

 

複数人の団員が慌てて人が乗った担架を運んでいたり、怪我をしている団員を治療室に運んでいる途中だった。

 

 

ジン「どうした!?何があったんだ!?」

 

 

「だ、団長!緊急事態が起きました!」

 

 

ジン「!、君達はエウルアの遊撃小隊か!今晩は任務のはずでは!?」

 

 

「そのまさかです!副隊長も怪我しているようで....!」

 

 

ジン「私も手伝おう!リサ!ありったけの薬を持ってきてくれ」

 

 

そこから数時間、数十人の治療活動を行い、ようやく落ち着いてきた。

 

 

怪我の重症度は千差万別で、切り傷程度で済んでいる者も居れば、包帯が血で滲む程の者も居る。

 

 

ジン「(酷いな....。だが、死亡者がいなかったのが幸いか....)」

 

 

負傷者で満杯になった部屋の中、椅子に座って休憩していた。そうしていると、1人の団員がジンに近づいてくる。

 

 

「ジン団長。ご協力頂き感謝します」

 

 

ジン「いや、気にしないでくれ。何故、こんな事態が発生したのだ....?失敗と聞いたが魔物に怪我を負わされたと....?」

 

 

「結論を言いますとそうなります...」

 

 

ジン「そうか...すまない」

 

 

「えっ?」

 

 

ジン「私の配置ミスだ。エウルア隊長が抜けている中、君たちにもいっその事休暇を与えるのがベストだった。私は遊撃小隊の戦力が欠けた状態でいつも通りの任務をするべきじゃないと判断してヒルチャール関連の任務を回したのだが...」

 

 

「い、いえ!ジン代理団長の責任ではありません!私達も最初は順調だったんです。ですが、アクシデントが起きました...」

 

 

ジン「...アクシデント?」

 

 

「えぇ...。実はーーー」

戦いから3日後、ガンダルヴァー村のベッドの上で目が覚めた。コレイやティナリ、そしてパイモンの話によるとあの日、村に着くと同時に地面に倒れ込んでしまい、意識を失っている時でも頑張って介抱していたらしい。

 

 

意識を取り戻した後、ティナリの指示で体に巻いていた包帯を外す。出血こそ止まっていたが、ゼーレの斬撃の傷は生々しく刻み込まれていた。

 

 

ティナリ「旅人、かなりピンチだったんだよ?」

 

 

パイモン「ピンチ?どういうことだ?」

 

 

ティナリ「傷の出血が止まらなくてね...。この3日間で少なくとも5回は巻き直したかな?替えても替えても赤い斑点が止まらなかったけど、昨日の夜にようやく止まって安心したよ」

 

 

パイモン「ひええ...!よ、良かったな!旅人!」

 

 

空「パイモンは知らなかったの?」

 

 

パイモン「うぅ...オイラも目が覚めたのは1日前だからな....。ティナリよりコレイの手伝いとかやっていたからあんまり旅人を見ておく暇がなかった...」

 

 

空「手伝いするのはいいことだけど、パイモンも気絶してたの?」

 

 

パイモン「そ、そうだぞ!オイラも頑張ったんだからな!」

 

 

空「...本当?どんな風に?」

 

 

パイモン「えーと..えーと....うぅ....そ、そうだ!ゼーレを必死に止めてたじゃないか!そう!それだ!」

 

 

空「......まぁ、それはありがとう」

 

 

パイモン「へへん!」

 

 

ティナリ「ゼーレ...?誰?それに止めてたって....君達はこんな傷を負うまで何をしていたの?」

 

 

パイモン「えーっ......それは....」

 

 

パイモンがティナリの素朴な問いに口を詰まらせて返答できずにいた。

 

 

言い出せない2人を見て何かを察したのか、納得して首を縦に振る。

 

 

ティナリ「答えたくなかったら言わなくてもいいよ。秘密は誰にでもあるからね。それに、ほんの興味本意で聞いただけだし....君はテイワット大陸を旅する人だからアクシデントは付き物だしね」

 

 

パイモン「その....ごめんな....」

 

 

ティナリ「君が謝ることじゃない。ただ僕が思うのは怪我した時、僕に頼ってくれればいいだけさ」

 

 

空「わかった」

 

 

傷口に粘液性がある緑色の液体を塗りつけ、包帯を再度巻き直す。

 

 

ティナリ「よし、これで治療完了だよ。今、君の体は血液が大量に抜けている状態だから、ここ数週間はお肉と魚を多めに食べるといい。幸い、お肉はスメールシティに大量に流通しているから良かった」

そこから一日ベットの上で過ごし、パイモンに連れられて再びデーヴァーンタカ山に来た。どうやら、ナヒーダがパイモンに伝言していたようで、是非目が覚めて怪我が治まったら昼間にデーヴァーンタカ山に来て欲しいとのことだ。

 

 

パイモン「ふー....ある程度旅人の怪我が治まったな!」

 

 

空「やっと痛みもある程度引いてきた...。血はたまに出るけれど...」

 

 

パイモン「ティナリも、ここから無茶に動いたりしなかったら日常生活に戻れるよって言ってたもんな。だけど....」

 

 

空「俺も正直、無茶しかないよこれから先も。安全な旅なんてないんだし」

 

 

パイモン「そうだよな....。1週間ぐらいスメールで安静にしたら、いよいよフォンテーヌに足を運ぶなんてどうだ?」

 

 

空「随分気が早いねパイモン」

 

 

パイモン「スメールにずっと留まる理由なんてないだろ?一応は危機は過ぎ去ったんだし...」

 

 

空「...俺はまだ嫌な予感がする」

 

 

パイモン「えっ?」

 

 

空「それはゼーレからもたらされるのか、もしくはまた別からやってくる厄災なのか分からないけども....(このまま全てが終わるとは思わない....。それに、前に見たモンド城の記憶の夢がどうも頭に引っかかる...)」

 

 

パイモン「そうだな...」

 

 

空「....考えたけどこの体が治ったとしても、跡は一生付きそうな気がする」

 

 

パイモン「そ、そうなのか?」

 

 

空「考えてみてよパイモン。律者の斬撃を手加減とは言え食らったんだ。寧ろこれで済んだのが奇跡とも思える。一生傷で収拾がついたなら御の字」

 

 

パイモン「まあ、オイラは旅人が無事で居てくれたら何も文句はないもんだ」

 

 

空「そういうパイモンは怪我はないの?」

 

 

パイモン「土山に放り投げられた時に付いた擦り傷と穴に落ちた時のちょっと打撲した程度だぞ。それももうとっくに治ったけどな!」

 

 

空「そうなんだ」

 

 

パイモン「それに今心配なのはエウルアのほうだぞ...」

 

 

空「あっ....そういえばエウルアは?完全に忘れてた....」

 

 

療養中、ずっとベッドの上で過ごしていたのに加え、日中誰もいないので、他のメンバーの事を聞く暇がなかった。

 

 

空は心の中で静かにエウルアに謝る。

 

 

パイモン「旅人が後遺症で頭がぼーっとしているのは分かるけど忘れておくなよ....。エウルアな...。旅人と一緒で、治療中なんだ。だけど、目を一向に覚まさないんだ...」

 

 

空「えっ...」

 

 

パイモン「別に重症だからではないらしい....。旅人より怪我はしている訳では無いし、体のどこにも異常がないから、ティナリも頭を傾げていたぞ...」

 

 

空「.....」

 

 

パイモン「コレイが1番慌てふためいていたんだけどな.....。ガンダルヴァー村で安静していて、コレイが毎日世話をしているってさ」

 

 

空「そうなんだ....。だけど、あの戦いでエウルアが追いついて来ただけでも偉いと思うよ。ハードすぎる...。それの反動で意識がないだけだと祈りたいけどね」

 

 

パイモン「そう...だな...」

 

 

そういう会話をしている内にデーヴァーンタカ山の頂上に着いた。

 

 

デーヴァーンタカ山の地形のほとんどが変化しており、大地の皮膚が怪我したような地形の陥没や裂け目が山頂からでも確認できる。以前は、緑が生い茂り自然豊かな場所だったが、今は大岩が露出していた。特に巨大な遺跡守衛の腕が、まるで天空を貫く槍のように、静かに、しかし力強く山肌に突き刺さっている。その近くには家が10個入る程の巨大なクレーターがあり、改めて見るとよく生きていたなと背筋が凍った。

 

 

パイモン「ひええ....酷い惨状だな....」

 

 

空「....だね」

 

 

パイモン「んー...どうやって降りる?以前まであった通り道が戦いで潰れてるぞ...」

 

 

空「回り道になるけど、反対側に移動して降りよう。ナヒーダは、洞窟遺跡の入口に居るんでしょ?」

 

 

パイモン「そうそう。ナヒーダを待たせているし、早くあっち側に行ってみようぜ」

 

 

 

 

 

パイモンの言った通り、ナヒーダは洞窟遺跡の入口に立っていた。

 

 

パイモン「ナヒーダ!待たせたな!」

 

 

ナヒーダ「あら、パイモンに旅人」

 

 

空「ごめん、体が動くまでに結構日数がかかちゃった」

 

 

ナヒーダ「いいえ、気にしていないわ。逆に、この日数で動けるまでに回復したのはさすが旅人と賞賛すべきところよ。わたくしはもう少しかかると思っていたのだけれども....」

 

 

パイモン「それでオイラ達をここに呼んだ理由ってなんなんだ?もしかして正機の神の後処理とかか?」

 

 

ナヒーダ「正機の神はもうこのまま放置することに決めたわ」

 

 

パイモン「ええ!?だ、大丈夫なのか?」

 

 

ナヒーダ「正機の神はあの戦いで完全に活動を停止してしまったの。元々、教令院が起こした暴動でボロボロになっていたところに彼女が無理やり起こしたのが原因で、ついに機体が耐えきれなくなったみたいね。あの機体を動かすパーツもエネルギーも破壊されてしまった今、このまま自然に還すことにしたわ」

 

 

パイモン「そ、それならいいんだが...」

 

 

ナヒーダ「わたくし達がここでやっていたことは2つ。1つ目がバリアと滞留した元素の排除よ」

 

 

パイモン「バリア?ゼーレがこの山に貼っていたやつか?そんなの貼った本人が居ないのにバリアが機能しているなんてあるのか?」

 

 

ナヒーダ「不思議なことに1部だけ崩落しているの。バリアがあることで野生動物がここを出入りできないから、頑張って跡形もなく処理したわ」

 

 

パイモン「あんな分厚いガラスみたいなバリアを全部撤去したのか?ひえー......」

 

 

ナヒーダ「かなり大変だったわ...。1点集中に他元素を当てて中和をするだけなら労力はかからないのだけど、何しろ範囲が....。だけど、あの子がアパーム叢林まで吹き飛ばされた時に割れたバリアの部分から消去することで事なきを得たわ。そして谷底に滞留していた元素も除去しておいたわ」

 

 

パイモン「あ、そういえば今日ここに来る時、そこまで元素の気配がなかったな...。前は布で口を覆ってないと通れなかったのに...。あんな、高密度の元素の量を片付けたっていうのか?」

 

 

ナヒーダ「ええ、その通りよパイモン。これはバリアを取り除くより簡単だったわ。谷底にある地脈に傷がついていたようで、そこから夥しい量の元素が流れていたようね。逆にその傷さえ直してしまえば元素の流れは止められるわ」

 

 

パイモン「そういえば、なんでゼーレはここまでの元素の量を必要としていたんだ....?」

 

 

ナヒーダ「わたくしが考えるに、大量の元素を正機の神に流し込むことで強制的に動かしていたと思うの。そして、元素で終焉機のコアを刺激し、律者の世界樹との融合度を少しでも早めた....というのがわたくしの仮説かしら。聖鍵殿の底で見たアランナラの亡霊はまさにコアとアランナラが融合して出来上がった怪物...。そして、ここで終焉機と融合した彼女は怪物よりはるかに上回る力だった。あの短時間で融合するには大量の元素が必要だったのよ」

 

 

パイモン「なるほどなぁ...。それで、2つ目の理由ってなんなんだ?」

 

 

ナヒーダ「それは...そうね...。詳しい話は''この子''が話すわ」

 

 

パイモン「この子?」

 

 

ナヒーダは1歩左に避けると、地面から突然、茶色の葉っぱの小さな生物ーーーーアランラジャが杖持って姿を現した。

 

 

パイモン「アランラジャ!どうしてここに?」

 

 

アランラジャ「ほっほっ、白色のパイモンに金色のナラ。ご無事で何よりですぞ。我々アランナラ達も千樹の王クラクサナリデビに手を貸し、ここの後処理をしていた所存でございます」

 

 

アランラジャの頭に着いていた葉っぱが回転する。

 

 

パイモン「アランナラ達ということはアランラジャ以外にも居たのか?」

 

 

アランラジャ「その通りですぞ、白色のパイモン。ですが、前も言った通り現状、ほとんどのアランナラ達がアランラカラリを使い果たしています...。ですので、最後の一押しは千樹の王クラクサナリデビ、そしてアランラジャめの手によって完了させるのです。そして、大きな大鉄塊の討伐してくれたことをアランナラを代表して感謝申し上げます。本来なら我々アランナラがしなければ行けないことをあなた達金色のナラが成し遂げた...。マラーナの根絶に続いて2度助けてくれて....なんと申し上げたら良いか...」

 

 

空「気にしないで。俺はただ正しいことをしただけだと思ってるから」

 

 

アランラジャ「金色のナラの心の広さには感動を覚えますぞ...。では千樹の王よ、準備が出来ましたかな?」

 

 

アランラジャは、ナヒーダに向き直し、準備を問いかける。そういうナヒーダは胸に手を添え、何時でも行けるようだ。

 

 

ナヒーダ「ええ」

 

 

パイモン「何をするんだ?」

 

 

ナヒーダ「これから...コアを消去を行うの」

 

 

空「コアの消去........!?」

 

 

パイモン「そんなことできるのか!?」

 

 

2人とも共通して驚愕の表情を見せる。

 

 

ナヒーダ「彼女が世界樹と終焉機をリンクさせたおかげで解読が済んだの。わたくしの草神の権能とこの子のアランラカラリを使い、今度こそ終焉機の脅威をこのテイワット大陸から消去する」

 

 

そうしているうちにナヒーダとアランラジャの体が緑色の光を帯び始め、それと共鳴するかのように空中に赤色のコア以外の3つのコアが浮かび始めた。

 

 

それは次第に光を帯び始め、遂に旅人とパイモンは眩しさのあまり目も開けられなくなった。

 

 

緑色の光が勢いよく天空まで伸びていくと3つのコアは烈音を立てて爆散する。

 

 

空「うわ!」

 

 

パイモン「コアが爆発したぞ!?」

 

 

すると、大岩の表面やえぐれた地形から草や花が咲き誇り始め、以前のデーヴァーンタカ山と何ら遜色ない景色に変化した。

 

 

ナヒーダ「どうやら....成功したようね。終焉機のコアは無害な物体に変化し、そして自然の一部に還っていったわ......」

 

 

アランラジャ「ようやく終わりましたな...やっと......」

 

 

アランラジャからの言葉に何か哀愁に似たようなものを感じ取った。

 

 

パイモン「自然に還るなんてできるのか...」

 

 

アランラジャ「私めは時代の移り変わり、ナラの盛衰、アランナラ達の変化をずっと見続けてきました。当然その中に記憶に焼き付いて離れない素晴らしき出会い、思い出もあるわけです。ですが、たった今大きな大鉄塊を完全に消去したというこの記憶はかけがけないのですのじゃ。今でも目をつぶると聞こえてくるのです。初めて大きな大鉄塊に対峙した時、私めの仲間達が無惨にもやられていく声を....記憶を....。やっと胸を張って、散っていったアランナラ達も浮かばれると言える気がしますじゃよ」

 

 

パイモン「アランラジャ...」

 

 

爆散したコアから降り注ぐ、優しい緑色の粒をアランラジャは拾うと、それを大切にしまった。

 

 

アランラジャ「ほっほっほっ...。感傷に浸りすぎてしまいましたな。クラクサナリデビよ、もう他にやることないのですかな?」

 

 

ナヒーダ「ええ、これで全て終わったわ。お疲れ様。あなた達の力がなければと思うと頭が上がらない.......」

 

 

アランラジャ「いえいえ...。では私めはヴァナラーナに帰ることとしますのじゃ。金色のナラに白色のパイモンもたまにでもいいからヴァナラーナに顔を出してくだされ。あの子たちが喜びます...。では」

 

 

パイモン「おう!じゃーーなーー!」

 

 

アランラジャは短い腕を振ると地面に潜り、気配が完全に消えていった。

 

 

厄災の遺物に終止符が打たれたということに、心の奥底から湧き出てくるものがある。だが、そんな時ナヒーダが頭を抱え、フラフラし始める。立つこともままならないようだ。

 

 

ナヒーダ「うっ...」

 

 

空「ナヒーダ!」

 

 

パイモン「ナヒーダ、大丈夫か!?」

 

 

ナヒーダ「流石にわたくしでもここまでの力の消費は厳しいようね」

 

 

パイモン「おいおい...無理するなよ...」

 

 

ナヒーダ「本来ならこのまま旅人達と一緒にスラサナンタ聖処に戻って彼女について話し合うのに...」

 

 

空「ナヒーダ、無理しなくてもいいから休んで欲しい」

 

 

ナヒーダ「.....ではお言葉に甘えて。申し訳ないけれども、明日のお昼頃にスラサナンタ聖処に来てくれないかしら?その時、またお話をしましょう」

 

 

パイモン「わかった!」

 

 

ナヒーダ「今日はここで解散とするわ。では、また明日」

 

 

そういうとナヒーダは急斜面を歩き、デーヴァーンタカ山から姿を消した。

翌日の昼手前にコレイの手伝いをしてからガンダルヴァー村を出発し、そして、スラサナンタ聖処に到着した。

 

 

建物の中に入るといきなり2人の言い争う声が聞こえてくる。

 

 

1人は冷静に喋っていたが、もう片方の声がそれよりも大きい。

 

 

スカラマシュ「おい...クラクサナリデビ。いつまで続けるつもりなんだい?何時間ぶっ通しでその女の治療を続けている?」

 

 

ナヒーダ「そうカリカリしても何も結果は伴わないわよ?それに少しだけ息抜きを行ったから大丈夫だわ。あなたこそ、その損傷した体と服をいつ直すの?」

 

 

スカラマシュ「服に関しては下町の服屋で簡単に買えるだろ?体のパーツは君がまた言ってくれればいいじゃないか...」

 

 

ナヒーダ「あら、それは教令院の人達に言えば簡単に用意してくれるわよ?数日前の出来事を踏まえて予備が数個あるのだけど、あなた........もしかして恥ずかしくて自分で言えないのかしら」

 

 

スカラマシュ「っ!そんなわけないだろう!!バカも休み休みに言ってくれ!」

 

 

パイモン「なんだお前ら、また口喧嘩をしているの?」

 

 

スカラマシュ「口喧嘩?はっ!君はこれが口喧嘩に見えるのかい?頭の故障を君は起こしているんじゃないか?」

 

 

パイモン「むきーーーー!たった一言で人を怒らせるのはこいつが初めてだぞ!このキノコナラ野郎!」

 

 

スカラマシュ「ふん」

 

 

スカラマシュは腕を組みそっぽを向いてしまった。

 

 

ナヒーダ「あら、旅人にパイモン昨日ぶりね」

 

 

空「何しているの?」

 

 

ナヒーダ「見て通りよ。今、彼女の生命線を繋ぐ治療をしているの」

 

 

ゼーレは中央の台座の上で死んだかのように静かに寝ている。服が土で汚れ、ボロ雑巾のようになっていた。

 

 

そんなナヒーダはゼーレに向かって手をかざし、草元素の浄化で治療している。

 

 

空「生きて...いるんだよね?」

 

 

ナヒーダ「生きているわ...。一応だけども.....。ちゃんと脈もある」

 

 

空「傷が治ってる...?」

 

 

腹に空いた穴も、背中から飛び出している血が染み付いた岩の結晶も、そして胸に突き刺さった大剣の刺し傷も何もなかったかのように塞がっている。

 

 

ナヒーダ「わたくしも驚いたわ。岩の結晶はわたくしが取り除いたのだけれども数時間後には徐々に塞がっていたのよ」

 

 

空「意識がない状態でも、体が勝手に修復して行ってる...?」

 

 

ナヒーダ「おそらく....。彼女は今、死の淵をさ迷っている状態なのよ。少なくとも1年は律者の侵食によって体と精神面がボロボロなのに加え、終焉機とのリンクで力を使い果たし、生死の狭間にいる....」

 

 

ナヒーダはゆっくりとゼーレの肩に着いている甲冑のようなものを取り外し台座の横に置いた。

 

 

白い肌とは一変して切断された部分は黒く変色している。長い時間包帯で縛ってあったせいか、傷口周辺はさつまいものような紫色に鬱血し、傷口は血が止まっているものの膿などがまろびでていた。

 

 

パイモン「う、うぷ...。た、旅人...オイラダメだ。これ以上見てらんないぞ」

 

 

ナヒーダ「自分の体の1部を差し出してもやり遂げたかったことなのでしょうね...。わたくしには...理解できない...」

 

 

ナヒーダは手を傷口に近づけ、草元素の光を出したが、何も変化が起きなかった。

 

 

ナヒーダ「ダメね。もう手遅れよ」

 

 

空「律者の治癒能力でも...この傷はどうにもならないんだ....」

 

 

ナヒーダ「覆水盆に返らず....という言葉が有るように、1度失ったものは二度と帰って来ないと思うの」

 

 

空「.....」

 

 

ナヒーダ「この子、確かフォンテーヌに居た魔神と契約し、その代償として右腕を差し出したと言っていたわね....。狂ってる....。その言葉しか言えないわ....」

 

 

重苦しい空気がスラサナンタ聖処にのしかかっている。

 

 

その時、ゴロゴロと石のような硬いものが床に転がる音がした。

 

 

パイモン「あれ?なんの音だ?何かが落ちたぞ?」

 

 

ナヒーダ「あっ...これは...」

 

 

見ると台座のそばに缶詰知識が落ちていた。その缶詰知識は知識が入っているようで、黄緑色の光を放っている。

 

 

ナヒーダ「缶詰知識...。どうやら2個目の缶詰知識も彼女が持っていたようね」

 

 

パイモン「そういえば、あの時もゼーレが缶詰知識を持っていたよな...。なんでなんだ?」

 

 

ナヒーダ「あなた達には話していなかったのだけれども、つい数日前にこの子から教令院から空の缶詰知識が2個無くなっていたと聞かされていたの。曰く、つてで聴いた話だから確証はないのだと....」

 

 

パイモン「ええ?そうなのか...」

 

 

ナヒーダ「わたくし達はその時、彼女よりも先にコアを手に入れることで頭がいっぱいいっぱいだったから、この問題はアルハイゼンと大マハマトラに任せていたの。それで、犯人は...彼女だったと...」

 

 

空「ゼーレと初めて会ったのはアビディアの森だった。少なくとも1週間は砂漠を拠点にしている中で森林地域に寄っていたんだから、その時に盗んだのだと思う」

 

 

ナヒーダ「そうね。もし旅人の言うことが本当なら...わたくしもそう思うわ」

 

 

ナヒーダ「汚染しきった終焉機のデータは黒く淀んでいた...。わたくしもあれほど汚染された記憶をみたのは初めてよ。だけど2個目の缶詰知識は黄緑色の光を放っている。何かしら...」

 

 

ナヒーダが転がっている缶詰知識を拾おうと手を伸ばした瞬間、突然缶詰知識が光り始めた。

 

 

ナヒーダ「!」

 

 

パイモン「!?おわぁ!」

 

 

空「何この光.....!」

 

 

その光は目を開けてられない程眩しく、一瞬で建物内部全体を包み込んだ。

あの不思議な光に包まれた後、輝かしさは影を潜め、空は真っ黒な世界の中心にぽつんと浮かんでいた。

 

 

周囲はあまりにも暗く、目を閉じているかのような錯覚に陥るほどだった。

 

 

空「(目......開けているよね?)」

 

 

疑問に思った空がどれだけ目をこすっても、視界に変化はなかった。

 

 

さらに、空が今いるこの不思議な空間は、感覚が麻痺しているかのように何も感じさせなかった。冷たい冷気も、暖かい暖気も、皮膚に触れることはなく、ただ黒一色の世界が広がっている。そのため、平衡感覚にも不安が生じていた。今立っているのか座っているのかすら、確信を持てない状態だ。

 

 

だが、自分はこうした状況をここ数日で何度も経験している。そう、慌てることはない。

 

 

心が動揺し、考えを巡らせている時、空は突然床のような固いものに尻もちをついた。その感覚に痛みは伴わず、ただ衝撃だけが体を通じて振動していた。

 

 

パイモン「た、旅人!」

 

 

空「パイモン!」

 

 

とりあえず他の人を探すかと思った時、横からパイモンが自分の名前を叫びながら近づいてくる。

 

 

だが、パイモンは自分よりパニックなっているようだ。

 

 

パイモン「オ、オイラ達スラサナンタ聖処に居たよな!?どこなんだよここ!!」

 

 

空「落ち着いてパイモン」

 

 

ナヒーダ「あら、2人とも大丈夫かしら?」

 

 

気が動転しているパイモンを、肩を掴んで何とか落ち着かせていると、後ろの方からナヒーダとスカラマシュが続いてこちらに来た。

 

 

パイモン「ナヒーダ!スカラマシュ!お前達もここに来たのか!?」

 

 

ナヒーダ「ええ、わたくしも気づいたらここに居たの...」

 

 

スカラマシュ「チッ....クラクサナリデビ、ここはどこか分からないのかい?それとも君の差し金?」

 

 

ナヒーダ「どういう物を食べたらそんな思考になるの...。こんな不思議な体験は500年生きてきて初めてのことだわ。あの缶詰知識を触れたことであの眩しい光が出現し....そしてわたくし達はこの暗い世界に突如送り込まれた....という訳ね。このことから、あの缶詰知識に何か仕込まれていた...と考える方が良さそう」

 

 

空「俺の考えでは、ここがゼーレの精神世界なんだと思う」

 

 

ナヒーダ「彼女の精神世界...ですって?」

 

 

空「ナヒーダには言っていなかったけど、度々彼女の中に存在する世界樹に繋がったことがあって、こんなことが起きるんだ」

 

 

パイモン「それってモンド城に入る前に言ってたことか?」

 

 

空「うん」

 

 

ナヒーダ「......なるほど。これはあくまで仮説何だけれども、あの缶詰知識には精神世界を構築する要素が詰まっていて、そして世界樹の枝であるわたくしが触れてしまいこんなところに送られた....かしら」

 

 

ナヒーダは自分の顎に手を当て考え始めた。

 

 

だがその時、その静寂を切り裂くように突如クジラの鳴き声が全員の耳に届いた。

 

 

キュイイインーーーー。キュイイインーーー。

 

 

スカラマシュ「!」

 

 

パイモン「おわぁ!今度はなんだよ!?」

 

 

ナヒーダ「クジラの....鳴き声....!?」

 

 

その鳴き声は空間の上から響き渡り、悲しみと喜びを含んだ神秘的な鳴き声がただひたすらに、そして継続的に鳴り響いている。

 

 

だが、それも長くは続かなかった。5回くらいだろうか、鳴き声が響いた後今度は動物ではないはっきりとした人間の声が届いた。

 

 

ちっ....逃げられたか....ーーーー。

 

 

まさか、あの力にも意思があるとはなーーー。

 

 

外の星海に逃げてどうするつもりだ?ーーー。

 

 

そう焦る必要ない、同胞よーーー。

 

 

我々も時期を待とう。さすれば、我々にもあの力を手に入れることができるのだーーーー。

 

 

野太い2つ分の声。だが、その声には何か人の奥底に眠っている恐怖心を煽るような声色が存在した。

 

 

次に聞こえてきた声は女性の声だった。

 

 

スルトロッチが飼っていたペットの鯨め....見ないうちに何やら変なものを飲み込んでいたようだなーーーー。

 

 

星海とテイワットを隔離する壁の一部が破壊された時この不純物を飲み込んだようだーーーー。

 

 

これはテイワットにお返しするしかないようだなーーーー。

 

 

ナヒーダ「この声は....何?」

 

 

パイモン「た、旅人!床がどんどん崩れていってるぞ!?」

 

 

空「えっ!?」

 

 

声が聞こえなくなり、まるで世界が息を呑んだかのように静けさが訪れた同時に、黒い世界に亀裂が入る。それは、空達の足元の床にも広がり、安定を失った彼らは、深淵へと落ちていく感覚に襲われた。

 

 

しかし、その落下は突然の終わりを告げ、次の瞬間、彼らはとある建物の内部に尻もちをついていた。

 

 

そこは、金色の装飾が施されたドアノブが輝く豪華なドア、壁や柱には火が灯されていないロウソク立てが並び、廊下には真っ赤なウェディングカーペットが敷かれていた。本で溢れる棚が一定の間隔で配置され、その上には家紋のようなマークが刻まれた鋭利な片手剣が飾られている。それは、かつての栄光を今に伝えるかのような、荘厳な雰囲気を漂わせていた。

 

 

空「なんだ....ここ。屋敷....?」

 

 

パイモン「うぅ....突然真っ暗なところに閉じ込められて今度は明るい建物かよ....。本当にどうなってるんだここは.....」

 

 

ナヒーダ「どうやら旅人の言う通り屋敷のようね。立派な装飾もあるからそれっぽい....」

 

 

皆が立ち上がり、屋敷の内装を見て首を傾げていると、足音が廊下の奥からコツンコツンと聞こえてきた。足音と同時に何やら錆びた鉄が擦れる音も聞こえてくる。

 

 

その足音の人物は窓からの光が届いていない薄暗いところから来ているようで、とうとうその姿を現した。

 

 

空「....ゼーレ?」

 

 

ゼーレだった。だが、今の姿よりも背が低く、顔も幼い。

 

 

だが、服装に関しては立派な屋敷には似つかない。ボロボロの麻の服装で、靴は汚れた革靴とヨレヨレの不細工な紐。何日も洗っていない、人を根幹から不愉快にさせるような不潔感がそこにはあった。

 

 

右手には使い込まれたモップに、左手はボコボコの鉄製のバケツ。

 

 

それに加え、顔は生気がなく、瞳も光を失っている。だが、今とは違い、右目に刻まれた律者のマークもないし、右腕もちゃんと生えていた。

 

 

空「やあ、ゼーレ」

 

 

ゼーレ『.....』

 

 

空は今までの経験からすぐさま片手を上げて幼少期のゼーレに挨拶をした。だが、ゼーレはそんな空に目もくれずトボトボと過ぎ去っていく。

 

 

空「?(無視された.....?)」

 

 

まるで、空の存在に留まらず、その場にいる全員が最初から見えていなく、ここの空間にはゼーレと静かな内装だけしかないような感じだ。

 

 

ナヒーダ「旅人....今の反応で分かったわ。これは彼女の精神世界じゃない.....彼女の記憶の再現なんだわ。だから、彼女は旅人に反応しないし、当然わたくし達にも反応しない」

 

 

空「記憶....」

 

 

ナヒーダ「あの缶詰知識に合ったのは、彼女の幼少期の記憶のようね。そして、わたくしがそれに触れてしまって、ここにやってきた」

 

 

空「(そういう事か。自分の読みが外れてしまった.....。ここが彼女の精神世界じゃないなら無視をされても致し方ない)」

 

 

下を向くながらチビチビと歩いているゼーレは、全員の前を通り過ぎると廊下の端に水が入ったバケツを置いた。

 

 

そして、持っていたモップの先を濡らし、廊下を無言で掃除し始めた。命令を命じられ、自動で動くロボットかのように掃除している。

 

 

歩いてる時もそうだが、まるでその姿には全く生命力を感じられない。今にも倒れそうな勢いだった。

 

 

そうこうしている内にゼーレの近くのドアが勢いよく開き、2人の男性が出てきた。

 

 

何やら2人は言い争いをしているようだ。

 

 

『なあ、いいだろ?俺たち旧知の仲だし....』

 

 

『いい加減にしてくれ。君には恩はあるが、これは流石に助けることもできん。俺には俺の生活があるんだよ』

 

 

『だ、だが!』

 

 

『申し訳ないがもう俺に話しかけないでくれ。さらばだ』

 

 

もう片方の男性が足音に怒りを混ぜながら屋敷から出ていった。

 

 

そんな出ていった人物に対して、不衛生な髭を生やし、ヨレヨレの服を着ていた男性が舌打ちを立てた。追いかけようと足を1歩踏み出したと思ったら今度はその足を引いている。どうやら迷っているようだ。

 

 

しようもなくトボトボと部屋に戻ろうとしていると、そばに掃除しているゼーレに気がついた。

 

 

ゼーレは掃除している手を止め、二人の男性の一部始終を真顔で見ていたのだが、自分の存在に気づかれた途端、顔を引き攣らせ、恐怖の表情に変わった。

 

 

『あ?ゼーレ、お前居たのか?』

 

 

ゼーレ『う、うん....お、お父さん....』

 

 

『ちっ.....。腹が立ってきたな....。なぁゼーレ、今晩いいだろ?』

 

 

 

ゼーレ『え....そ、その....』

 

 

『あ?なんか文句あんのか?』

 

 

ゼーレ『お父さん....も、もうやめて....』

 

 

『お前.....父に向かって口答えすんのか?』

 

 

ゼーレ『そんなつもりじゃ....!』

 

 

彼女の父と思わしき人物がゼーレの髪の毛を鷲掴みにすると、黒ずんだ水が入ったバケツに顔ごと突っ込んだ。

 

 

ゼーレ『ーーーー!』

 

 

『生かせてやってんのに生意気だよなぁ!お前は!!』

 

 

幼少期のゼーレは口に入ってくる水に溺れ苦しみ、ひっきりなしにバケツの縁を掴んで、何とか抵抗しようとした。

 

 

父はゼーレを数秒間水責めをした後、そのまま廊下の壁に乱暴に投げ捨てた。

 

 

ゼーレ『ゲホッ!ゲホッ!ゲホッ!』

 

 

『次、生意気な事言ったら殺すぞ』

 

 

男性はペッと唾をゼーレに吐きかけると、自分の部屋に戻って行った。

 

 

廊下に1人寂しく残されたずぶ濡れのゼーレは、しばらく咳が続いてた。

 

 

そして、無言のまま立ち上がり、水嵩が減ったバケツを持ち上げ廊下の奥へ消えていった。また、水を補充するのだろう。

 

 

パイモン「な、なんだよあいつ!腹が立つぞ!」

 

 

ナヒーダ「かなり強烈な記憶をわたくし達は見てしまったようね....。どうやら彼女は父親に虐待を受けながら育ってきたというわけね」

 

 

空「.........」

 

 

ゼーレの姿が完全に見えなくなった時、記憶の空間が歪み始めた。

 

 

そして次に空達が立っていたのは外だった。

 

 

太陽が既に沈みかけており、オレンジ色の光が土を照らしていた。自分たちの隣には屋敷があるので、屋敷の中庭に立っているんだろう。

 

 

ゼーレは自分達より前に誰かと話している様子だった。だが、その話し相手は彼女とは対照的に華やかな衣装を纏い、いかにも貴族という印象だ。

 

 

『あーほーんと教育の時間が面倒くさいなー...』

 

 

『わかる。本当、ストレスしかたまんない』

 

 

『腹が立ってきたわ、あの教育係の顔。ちょうど使用人いるし憂さ晴らししちゃおうよ』

 

 

そうすると、貴族の女性はイタズラ心にゼーレの太ももにブーツを食い込ませ始めた。

 

 

『あはは!やっぱり人をいたぶるのは楽しいわね。ムカムカしてるのが嘘みたい!』

 

 

『ねぇ、あなたもやってみないエウルアちゃん?』

 

 

エウルア『えっ?えーと....』

 

 

二人から少し遠い所にエウルアが成り行きを見ていた。

 

 

そのエウルアも今よりも背が低くちょうど少女と名乗るには差支えがない。女性2人と同じように青を基調とした華やかな衣装を着ている。

 

 

 

エウルアは誘いに困惑を隠しきれないようだ。そんな様子をみて女性は苛立ちを現し始める。

 

 

『何?やれないの?あなた、こんな薄汚い使用人を庇うわけ?』

 

 

エウルア『そ、そんなつもりじゃ....』

 

 

『憂さ晴らししてみたくない?エウルアちゃんも』

 

 

『そーれーにー、ローレンス家の当主の娘さんが使用人を庇うなんて知れたら、お父さん怒っちゃうだろうなー....!』

 

 

エウルア『うっ....うぅ...』

 

 

エウルアは恐る恐る地面に落ちていた手のひらサイズの小岩を拾い上げ、ゼーレに向かって投げつけた。

 

 

小岩は彼女の額に当たると、鈍い音を響かせる。そしてゼーレはそのまま地面に倒れ込んだ。

 

 

『あはは!良いわねエウルアちゃん。さっ、こんな人なんてほっといて行きましょ?』

 

 

エウルア『......』

 

 

『エウルアちゃん?』

 

 

エウルア『い、いや!なんでもない!』

 

 

エウルアは倒れたゼーレに何か思うことがあってようで、この場を後にすることを躊躇っていたが、2人に半ば強制的にその場を後にされた。

 

 

3人の足音が完全に遠くに行くと、ゼーレがゆっくりと起き上がり、岩が当たった額を指で確認した。

 

 

ゼーレ『......』

 

 

額から微量ながらも血が滲み出ていたようで、指に血が着いていた。

 

 

服に着いた埃を払っていると、奥から駆け足でエウルアが戻ってきた。

 

 

エウルア『えっと....大丈夫?』

 

 

ゼーレ『....大丈夫』

 

 

エウルア『ごめんなさい....。私はそんなつもりじゃ...。私は使用人に汚い目を向けるわけじゃないし....』

 

 

白い布製に手袋を外すと、一緒にゼーレの服に着いた土を払い始める。

 

 

ゼーレ『別に....。それに些細なことだけどたった今私の人生に大きな意義が見つかった気がする』

 

 

エウルア『?えーっと、どういうこと?』

 

 

エウルアはゼーレの突然の言葉に困り顔で浮かべる。

 

 

対してのゼーレは真っ直ぐ、そして真剣な目でエウルアの顔を見つめている。

 

 

ゼーレ『信じても信じなくてもいい。私は親から妹がいることを聞かされていたけれど、それが誰なのか分からなかった。だけど、今見つけた。直観的にね』

 

 

エウルア『ん?え........?』

 

 

2人に明らかな間が空いてしまった。

 

 

エウルアの困り顔に疑問が追加され、収拾がつかなくなっている。

 

 

エウルア『つまり....あなたが私の.....姉?』

 

 

ゼーレ『うん』

 

 

エウルア『えっ...えっ?えっ!?確かに....顔も...雰囲気も....似てる気が....』

 

 

ゼーレ『でしょ?』

 

 

エウルア『....いや、そんなはずはないわ。私に姉なんているはずが....ない。そんなこと父親からも周りの人からも聞かされていないわ』

 

 

エウルア『今のは....聞かなかったことにする....。ごめんなさい、さようなら』

 

 

エウルアはハンカチをゼーレに押し付けると、その場から逃げ出すように駆け足で去っていった。

 

 

遠のいていくエウルアの姿をゼーレはただただ見ているだけだった。

 

 

ゼーレ『ん?』

 

 

ふと地面を見ると、金色の物体が落ちていることに気づく。

 

 

ゼーレ『これは.......ペンダント?』

 

 

ゼーレが地面に向かってしゃがみこむとそれは金色の箔に覆われていて、高級感溢れるペンダントだった。

 

 

パイモン「あ、あれって....」

 

 

空「エウルアがゼーレにあげたペンダントだね」

 

 

ゼーレ『あの子が落として行ったのね....届けないと....』

 

 

ゼーレは立ち上がり、金色のペンダントをポケットにしまうと、急ぎ足でエウルアの跡を追っていった。

ゼーレ『足跡はここまで続いてるけど....』

 

 

エウルアに落し物を届けるために走っていたゼーレはあの中庭から森の小道にやってきた。

 

 

手に金のペンダントを握りながら、道に刻まれている足跡を辿りながらエウルアを探している。

 

 

後ろを振り返ると屋敷の入口である立派な門があり、そこから続く小道の両隣には森林が茂っていた。

 

 

ゼーレ『足跡はここまで続いている.....。あの子こんなところまで来ているの....?』

 

 

足跡の軌跡に疑問を抱いている時、女性の悲鳴が聞こえてくる。

 

 

その金切り声はゼーレからそこまで遠くなく、森の方向から飛んできた。

 

 

ゼーレ『!』

 

 

ゼーレはそれが耳に届いた瞬間、すぐさま悲鳴が聞こえてきた方向に走り出して行った。

 

 

パイモン「な、なんの悲鳴なんだ...?旅人行ってみようぜ」

 

 

空達も彼女に続いて森深くに入っていった。

 

 

エウルア『きゃっ....ヒ、ヒルチャール....!?なんでここに....!?』

 

 

エウルアはちょうど森の中でヒルチャールに襲われている途中だった。

 

 

エウルアは完全に腰を抜かしているようで、棍棒を持ち目の前の獲物に威嚇しているヒルチャールに対して為す術はない。

 

 

だが、それでも尻もちをつきながら逃げる素振りを見せる。

 

 

ジリジリと追い詰められ、木の幹に体がぶつかった。それが合図かのように、1匹のヒルチャールが棍棒を振り上げ、エウルアを仕留めようとする。

 

 

『gyagyaba!』

 

 

エウルア『誰か助けーーー!』

 

 

ゼーレ『コラアアアアアア!!!!』

 

 

棍棒がエウルアの頭に直撃する寸前エウルアの背面から木の棒が飛んできて、襲ったヒルチャールの顔面に直撃した。その衝撃で地面にめり込む。

 

 

ゼーレが雑草の茂みから勢いよく飛び出し、エウルアの前に庇うように立ち塞がった。

 

 

先程まで優勢だったヒルチャールの群れだったが、予期せぬ乱入者のおかげで度肝を抜かし、今度はヒルチャール側がジリジリと後ろに下がっていく。

 

 

エウルア『!?あ、あなた!』

 

 

ゼーレ『なんで襲われてるの!?』

 

 

エウルア『あの2人を急いで追いかけてたらいつの間にかここに....』

 

 

ゼーレ『そ、そう!立てる!?』

 

 

エウルア『......無理そう!』

 

 

仲間がやられたヒルチャールは怒り狂い、2人に襲いかかってきた。

 

 

ゼーレが振りかぶる棍棒を寸前で避けると、ヒルチャールの首に腕を絡ませ、窒息させる。

 

 

気絶させたヒルチャールをそのまま群れに投げつけると、ドミノ倒しのように群れの陣形が崩壊した。

 

 

その時後ろから再び聞こえてくる悲鳴。

 

 

エウルア『ひっ!』

 

 

たった今、気絶させたヒルチャールよりも数倍体格の大きいヒルチャールが巨大な斧を手にエウルアの前に立ちはだかっている。

 

 

群れのリーダー的な立ち位置の魔物だろうか。

 

 

ゼーレ『いつの間に!』

 

 

ゼーレがすかさずヒルチャールのゴツゴツした背中に飛びつきしがみつく。気をこちらに向けることで斧を振るわれないようにしていた。

 

 

大きなヒルチャールは邪魔をされた怒りで咆哮を上げ、背中に張り付いた邪魔者をどかそうと乱暴に体を揺するが、それでも必死にしがみついた。

 

 

だが、ついに身長差で振りほどかれ、後方の木に投げ飛ばされる。

 

 

斧を持ったヒルチャールは、ターゲットをゼーレに切り替えたようで、荒い息を吐きながら彼女の前に立ち塞がった。

 

 

そして、斧を振り上げる。

 

 

エウルア『ど、どうしよう.....!』

 

 

このままだと助けに来たゼーレが先にやられてしまう。

 

 

この場を切り抜けるためにどうすべきか思考を巡らせているとすぐそこにヒルチャールの棍棒が落ちていることに気づく。

 

 

それを拾い上げると、ゼーレに向けて投げた。

 

 

それを察知したゼーレは自分に斧が直撃する寸前、回避するとエウルアから投げられたヒルチャールの棍棒を受け取る。

 

 

ゼーレ『せいっ!』

 

 

ゼーレが高々とジャンプすると、がら空きになった頭に思いっきり棍棒を叩きつけた。

 

 

『giuaaaa!』

 

 

男性の腕よりある分厚さの棍棒が粉々になり、破片が飛び散る程の威力を頭に食らったヒルチャールは気絶してしまい、そして轟音と共に地面を倒れ込んだ。

 

 

ゼーレ『はぁ...はぁ...はぁ...』

 

 

ゼーレ『大丈夫...?』

 

 

エウルア『あ、あなた後ろ!!!』

 

 

ドゴ!ーーー

 

 

鈍い音がゼーレの頭から鳴り響いた。

 

 

体勢を崩されたヒルチャールがゼーレの後ろに忍び寄り渾身の一撃を食らわしたようだ。

 

 

死角からの致命傷に、さすがに彼女は一瞬体勢を崩した。

 

 

....だが。

 

 

ゼーレ『痛った!!!この!!!』

 

 

ふらついた足をすぐ様、地面に踏み込み、襲ってきたヒルチャールの顔面に重い拳をめり込ませる。

 

 

エウルア『!?なっ......!』

 

 

仮面がひび割れたヒルチャールは森奥深くまで吹き飛ばされて行った。

 

 

パイモン「お、おい!なんで棍棒を頭に喰らってピンピンしてるんだよ!」

 

 

空「ゼーレの異常な硬さは子供の頃からだったのかもね」

 

 

ナヒーダ「わたくしは今までずっと彼女の異常な身体能力は律者の力から来るものだと考えていたの。だけど、この記憶を見る限り、彼女がおかしいだけだったようね」

 

 

ゼーレ『はぁ....今度こそ...大丈夫ね。あなた、怪我は?』

 

 

エウルア『な、ないけれど...あなたこそ大丈夫なの....?』

 

 

ゼーレは後頭部に手を回し、怪我をしていないか確認する。

 

 

ゼーレ『血がちょっと出てるけど...へっちゃらよ』

 

 

エウルア『え....』

 

 

ゼーレ『話はまた後で。ヒルチャールの群れがまた来るのかもしれないからとりあえず急いで屋敷に戻りましょう』

 

 

そのまま尻もちをついて木に寄りかかっているエウルアを抱き抱え、その場を走り去って行った。

 

 

 

 

次の記憶は、とある一室だった。

 

 

窓からの夕日の光が差し込み、その窓を前に背もたれが着いている椅子に座っているエウルアとそのエウルアの髪を、金属製のブラシでブラッシングしているゼーレが居た。

 

 

エウルア『あなたにこんな迷惑を掛けてしまって、どんなお礼をすればいいか....』

 

 

ゼーレ『いいのよ、気にしないで。あなたの落としたこのペンダントを返そうと後をつけたらあの場面に出くわして....』

 

 

エウルア『そう...なのね。』

 

 

明らかに気まずい雰囲気が部屋を満たした。

 

 

黙々とゼーレが髪をとく音だけが繰り返し鳴っている。

 

 

しかし、不意に彼女は口を開いた。

 

 

ゼーレ『あの、中庭で言った言葉は忘れて....』

 

 

エウルア『えっ...?』

 

 

ゼーレ『私は心の拠り所を作るのに必死だったみたい。ごめんなさい、急に言い出して...。困ったよね...』

 

 

エウルア『信じるわ』

 

 

髪をといていた手が急にピタりと止まる。

 

 

エウルア『あなたの言葉信じる。あなたが私の姉だということも。何か.....直観的に分かるの。それに、顔も、雰囲気も...似てるしね』

 

 

ゼーレ『本当に?』

 

 

エウルア『....本当。え、えーと....その....ね、姉さん』

 

 

ゼーレ『今、姉さんって言った!?』

 

 

エウルア『え?ええ』

 

 

ゼーレ『ふふ。やった!』

 

 

突然ゼーレがブラシを傍に投げ捨てるとエウルアの後ろから抱きついた。

 

 

エウルア『わっ...!突然どうしたの?』

 

 

ゼーレ『嬉しい!』

 

 

エウルア『そんなに喜ぶこと...?』

 

 

ゼーレ『今までの人生で今1番幸せかも!私、ゼーレ。ゼーレ・ローレンス。あなたの名前は?』

 

 

エウルア『エ、エウルア。エウルア・ローレンス。』

 

 

ゼーレ『エウルア....。いい名前ね!』

 

 

エウルア『そ、そう?そう...かな...』

 

 

ゼーレ『ふふ。大好き!エウルア!』

夕焼けの景色から遠ざかり、今度は屋敷の廊下の場面に切り替わった。

 

 

同じ木製のドアが一定の間隔で設置している長い廊下だが、とあるドアが半開きだった。

 

 

その部屋からはロウソクの光が漏れだし、ドアの入口周辺を照らしていた。

 

 

その半開きのドアからは、あの父親らしき渋い男性の声と初めて聞いた老人の声が聞こえてくる。

 

 

パイモン「同じ....廊下みたいだな。あ、誰か廊下を歩いてるぞ」

 

 

足音が聞こえてくる方向をパイモンが指さす。すると、暗闇からモップを持っているゼーレが姿を現した。

 

 

あの部屋で見た時より少し背が高くなっているので、あれから数年経ったことが分かる。だが、相も変わらずボロボロの服を着ているのは変わらないようだ。

 

 

半開きのドアに向かって歩いていると、部屋からの父親の声に気づいたゼーレは、顔を下に俯き、急ぎ足で通り過ぎ去ろうとした。

 

 

だが、会話の中に自分の話題が入っていることに気づくと自然とゼーレの歩く速度が落ちていき、ドア付近の壁で完全に立ち止まる。

 

 

『...旦那様。お言葉ですが、ローレンス家の全盛はとっくに過ぎております。財産も余裕がありません。浪費せず計画的にお使いください』

 

 

『ふん。ヒック。酒を嗜んでいる程度じゃないか。なんの問題がある。ヒック』

 

 

父親と思わしき男性はかなり酔っ払っているのか言葉の時々にしゃっくりを起こしているようで、老人の問いかけに苛立ちながらも、饒舌になっている。

 

 

『旦那様の酒量も年々増えてきています....。お体が壊れる前にやめた方がいいかと....。それに、ローレンス家の当主として示しが....』

 

 

老人はかなり恐る恐る父親に進言しているようだ。

 

 

だが、返ってくるのは苛立ちを含んだ声色と舌打ちだけだった。

 

 

『チッ。うるさい。だがな、俺もバカじゃない。当てがあるんだよ。一発逆転のな』

 

 

『....差し支え無ければ教えて頂けませんか。』

 

 

『エウルアだよ。あいつは才能もあるし、顔もいい。高く売り飛ばせるだろうよ。』

 

 

『なんと.......!』

 

 

老人は父親の信じられない言葉に絶句しているようで、返す言葉がないようだった。

 

 

それはゼーレも同じで、いつしか会話の内容を盗み聞きするために壁にもたれ掛かり、息を潜めていた。

 

 

『一時はあの出来損ないのゼーレを売りにしてやろうと思っていたさ。だけど無理だろうな。才能もない...。売った所でなんにもならんさ』

 

 

『旦那様、前々から疑問に思っていたのですが何故、あそこまでゼーレお嬢様を冷遇するのです?あの方は勤勉で、優しいお方です。何より旦那様のご息女ではありませんか』

 

 

『ご息女〜!?はっ!はっ!はっ!面白いことを言うなぁお前!俺とあの出来損ないが本当に血が繋がってると思ってんのか!?』

 

 

『.....と言いますと?』

 

 

『正確には半分しか繋がってないがな。当然エウルアとあいつも半分しか繋がってないのさ』

 

 

『えっ....』

 

 

パイモン「ど、どういうことだ?半分しか血が繋がってないって....。あいつら姉妹じゃないのかよ?」

 

 

空「...母親が違うってこと...かな...」

 

 

『不倫だよ。不倫。』

 

 

ゼーレ『.........!』

 

 

父親からポロッと出た言葉にゼーレは信じられないような表情を浮かべた。

 

 

『数年前無性にむしゃくしゃしてた時期があってな...。グンヒルド家の当主の女を口説いたら、逆にあっちが俺に夢中になりやがった。何度か肌を重ねたら、あの出来損ないが生まれたってわけ』

 

 

『なっ....。こんなことを知られたら一気にローレンス家の信用は底に落ちてしまいます....!』

 

 

『そう言葉を荒らげるな。このことがバレないように、渋々あいつを引き取って、今の妻と縁を結んでエウルアが生まれたって訳だ。あの女は、俺が女遊びの時に出会ったから俺があいつを引き取っても案外何も言われなかった....。あいつは俺の失敗の結晶になったもんなんだ。だから、あいつを見ていると無性に腹が立つ。なるべく惨めな思いをかけてるんだよ』

 

 

『.......』

 

 

廊下にいる全員が言葉を失っていた。

 

 

空がゼーレの様子を見ると、ゼーレの顔が驚愕の顔が真顔になると、次第に怒りに満ちた顔に変化した。額には微かに血管が浮かんでいる。

 

 

怒りながらも、何か覚悟した表情で廊下に飾ってあった鋭い短剣を持ち、半開きのドアを完全に開いた。

 

 

空「ま、まさか...」

 

 

酔っていた男は、ギギギッと木がきしむ音に気づき、ドアの方向を見た。

 

 

『!』

 

 

ゼーレ『お父さん、今の話は本当なの?』

 

 

『お、お前....聞いていたのか?』

 

 

ゼーレ『質問に答えて。今の話は本当なの?』

 

 

声色は冷静そのものだったが、言葉の語尾が震えており、そこから怒りを感じ取ることができた。

 

 

『盗み聞きをしていたなんてな。なんとも不気味なやつだ』

 

 

ゼーレ『私はあなたにどれだけ暴力を振るわれようと、我慢することができた。それはあの子が居たから....。私の拠り所にあの子が居たから!!あの子だけが生きがいなの!!!』

 

 

ゼーレの口調が段々冷静さをかけて荒々しくなっていく。呼吸も乱れまさに一瞬即発の状況だった。

 

 

そして、その怒りに父親は気圧されていた。

 

 

『...チッ。そうだよ!それがなんだ!出来損ないが偉そうに!!本来なら捨ててやってもいい所を家に居させてやってるんだよ!感謝してくれ!お前なんか生まれて来なければ良かったんだよ!』

 

 

ゼーレ『そう』

 

 

父親の言葉を聞いた途端ゼーレの返事に今までの口調に混ざっていた怒りが消えた気がした。

 

 

その代わりに何の感情を持ち合わせてない、ただ機械のように冷たく、話が通じない奇人を相手するかのような感じだった。

 

 

ゼーレの体全体を支配していた感情が、空気の入った袋に穴が空き、急速にしぼんでいくようだ。

 

 

代わりに今目の前にたっている男に向けるには侮蔑だけ。

 

 

ゼーレ『怪物....。あなたは怪物よ。私の心を壊す怪物...。エルを奪う怪物...。だったら殺さなくちゃ.....』

 

 

ゼーレが小言を呟くと、背後から銀色の光を放つ短剣を父親に構える。

 

 

それを見た途端、父親の真っ赤な顔が真っ青の顔に変化し、あたふたし始める。

 

 

鋭い短剣の刃先を向け、ゆっくりと、そして1歩ずつ迫る。

 

 

『お、おい!何をするつもりだ!やめろ!落ち着け!』

 

 

ゼーレ『さようなら』

 

 

一瞬だった。冷静に父親に別れを告げる言葉と共に、いつしか短剣は父親の体に突き刺さっていた。

 

 

今まで押し殺していた感情が爆発し、何度も何度も馬乗りで短剣を突き刺した。

 

 

刺したところから吹き出た血がゼーレの手と顔を赤く染める。

 

 

ゼーレ『あぁああああ!!!!!死ねっ!!死ねっ!!!死ねっ!!!!!お前はどれだけ私を踏みにじったら気が済むんだ!!!!!これ以上私から奪うな!!!!!!しねっっ!!!!』

 

 

父親は初めこそ抵抗をしていたがいつの間にかなされるがままだった。それでもゼーレはお構い無しに刺し続ける。

 

 

『ゼーレお嬢様!!!!』

 

 

ゼーレ『あっ...』

 

 

老人の静止でようやく血塗れの手がピタッと止まる。

 

 

『旦那様は....もう....』

 

 

服と手は大量の返り血を浴び、手にはもはや元の色が分からないほどの血に染まったナイフ。

 

 

そして、既に人形のように動かなくなった父。

 

 

ゼーレは剣を握ったまま、父の遺骸から離れそのまま立ち尽くした。

 

 

心臓は激しく脈は、ほかの人にも聞こえるのではないかと錯覚するほどの心音を放っている。

 

 

父を殺めた後悔などの色々な心情が混ざり合い、ゼーレは一見冷静だったが脳内は混乱を極めていた。

 

 

老人の全てを達観した顔と光を失った父の亡骸を交互に見ることしか出来なかった。

 

 

空とパイモンは言葉を失いただただその光景を見ることしかできなかった。ナヒーダも今までは冷静沈着な表情をしていたが、この光景だけは苦悩を示すしかなかったようだ。

 

 

エウルア『大きな音が聞こえたけど....なんの音....?それに姉さんの声も...』

 

 

その時、エウルアの声がこちらにやってくる足音と共に聞こえてきた。

 

 

そして、部屋を覗いてしまう。

 

 

エウルア『ひっ...!お、お父さん...!?それに....姉さん....何してるの!?』

 

 

部屋の惨状を目の当たりにしたエウルアは尻もちを突き、口をパクパクしながら呆然としていた。

 

 

エウルアの姿を見たゼーレは、ナイフをそっとしまいこんだ。

 

 

顔は青ざめて、息が荒い。目も虚ろで目の焦点があっていない状態だが、そのままフラフラとエウルアの方に近づく。

 

 

そして、なるべく血が付かないようにギュッと抱きしめた。

 

 

ゼーレ『ごめんね....。お姉ちゃん、我慢できなかった....。こんな事が起きた以上もう私達は今のままじゃいられない....。だけど、もう大丈夫だから。化け物はもう殺したから...。』

 

 

ゼーレ『これから私たちは離れ離れになるけど、いつどこにいても私はあなたの味方だから....。あなたは私の大切な妹よ』

 

 

何が起きたのか理解していないエウルアをもう一度強く抱きしめると、その場からはなれようとした。

 

 

『ど、どこへ行くつもりなのですゼーレお嬢様』

 

 

部屋から出て行こうとするゼーレに老人が思わず呼び止めた。

 

 

ゼーレ『モンド城の....騎士団のところに行かないと.....。罪は償わければ.....後のことは頼むわ』

 

 

部屋を出て、家の玄関を超える。そして、屋敷の門を歩いていると、急に後ろが騒がしくなった。

 

 

エウルア『姉さん!!!!待って!!!!!待ってよ!!!!』

 

 

エウルアが老人に肩を抑えられながら自分の姉に静止を求めていた。

 

 

ゼーレは後ろを振り返り、エウルアに少しだけ笑顔を見せ、再び屋敷の外道を歩きはじめる。

 

 

エウルアの声が遠ざかる事にゼーレの目頭は熱くなっていき、屋敷が見えなくなった頃には大粒の涙が顔を覆い尽くしていた。

次の記憶は湿気が多い洞窟内だった。

 

 

目の前にいるのは現在の姿のゼーレで、その彼女が向ける視線の先には正機の神がいた。

 

 

ゼーレはもうすぐで来る自分達よりも前に正機の神への改造を終わらせていて、無言のまま鉄の巨人を見つめていたが、ふと、ポケットから缶詰知識を取り出す。

 

 

黄緑色の光を放つ缶詰知識に何か思うことがあるようで、今度はそれを凝視していたが、次第に悲哀に満ちた表情になった。

 

 

ゼーレ『何が正しいのか分からず、自分がやりたいようにつき進んだ結果がこれか....。あーあ....とっくにエルは私の事...幻滅してるんだろうな.....。不出来な姉で....不完全で....出来損ないで....何も成し遂げられない....未熟な人間.....』

 

 

ゼーレ『私だって.....本当はこんなことしたくないよ.....。あの日、決めたのに....。あの日、私の生きる役割を知ったのに....まだ私の心にはこれを疑問に思っている自分がいる。これに抗おうとする自分がいる。.....誰かに止めて欲しい自分が.....いる。だけど....やらなくちゃ....。道を突き進まなくちゃ....。自分がやらなきゃ...誰がするの?』

 

 

ゼーレ『こんな事をして.....力で体がボロボロになって....日が経つごとに私の心が押し殺されいく....。怖い....。怖い....怖いよ。誰か....助けて....』

 

 

今にも押し潰されそうな程、缶詰知識を力強く抱きしめ、弱音を吐露している途中で、洞窟の奥から複数の足音が聞こえてきた。

 

 

誰がきたのか察した彼女は自分に活を入れ、泣きそうな顔から覚悟を決めた表情に変化した。

 

 

ゼーレ『.....来たか』

パキッとガラスの割れる音が響き、4人は現実世界に戻ってきた。

 

 

記憶の世界にいる間、自分達は倒れていたようで、目が覚めると、頬が少し冷たかった。

 

 

慌てて起き上がると、そこには、いつも通りのスラサナンタ聖処の豪華絢爛な内装が広がっている。

 

 

空以外のパイモンやナヒーダも目を覚まし、重い体を起こしているところだった。

 

 

ナヒーダ「....どうやら、無事戻ってきたようね....」

 

 

パイモン「なぁ、ナヒーダ。結局さっきのはゼーレの記憶で間違えないのか...?」

 

 

ナヒーダ「....そうね。彼女の記憶で間違いないわ。まるで、現実のような、非常に精巧な世界ね........。これ程精度の高い記憶の世界はは律者の世界樹から齎される力だと予測しても良さそう.......。本来なら、世界樹に保管されている情報を抽出したものはノイズが入りやすくなるわ」

 

 

パイモン「うぅ...そうなんだな」

 

 

ナヒーダ「ねぇ、旅人。わたくしは彼女の記憶の一部を見てしまった今、非常に迷っているの。彼女を生かしていいのか、それとも、見捨てるのか...」

 

 

空「.....」

 

 

ナヒーダ「わたくしと彼女が初めて会ったここスラサナンタ聖処で、彼女は役割という言葉に異常なまでに固執していたの。誰しもが役割を持って生まれてくる、と。あの日見せた彼女の怒号には、心の底からの感情がこもっていたわ」

 

 

ナヒーダのその言葉に空はデーヴァーンタカ山の戦いの記憶がフラッシュバックした。

 

 

 

 

 

ーーー「私がやらなくて誰がやるの!!!」ーーー

 

 

 

 

空「あの執着は正直俺も恐怖すら覚えた」

 

 

ナヒーダ「彼女には役割という言葉に囚われそして執着している自分と、そしてそれに疑問を持ち、本当はしたくない自分がいた...。常に葛藤し、迷い続けてきたのが彼女のようね。苦しみ、悩んでいる彼女をこのまま見捨てることも救いだと考えるわ。だけど、生かすことも救いなの。彼女の役割の中身がある中で、果たして彼女が乗り越えた先にあるのはなんでしょう....。アビス教団が無くなり平和になったテイワット大陸?役割を果たして自己満足する彼女自身?いいえ....愛する妹の笑顔という小さな事だとわたくしは思うわ」

 

 

空「俺は....スメールに来るまでに色んな人に出会ったし、勿論他の七神とも会ってきた。人それぞれ違う、過去があって現在があって、そして未来へ行くんだ。そんな人達は何より心に1本筋が通った信念がある。俺は、そんな人達には報われて欲しいし、何より幸せになって欲しい」

 

 

ナヒーダ「.......」

 

 

空「ゼーレにも迷いつつも信念があったんだ。初めてアビディアの森で会った日....聖鍵殿の地下....そしてデーヴァーンタカ山でも。目には色んな感情が乗ってる....ゼーレの目には悲しみだってあったけれど、何より何か1つの結果を叶えるために突き進むという思いが乗ってたんだ。右腕を捨てて....血反吐を吐いて頑張っていたのにこの結果は見捨てることはできない。それは、ゼーレという人を数日という短い日数だけども見てきたから。生きた選択肢を取った後でも死ぬという選択肢はあるけど最初から死ぬっていう選択肢は最初からそれしかないから.....」

 

 

空の話を聞いていたナヒーダは少しだけ口角を上げ、そして頷き始める。

 

 

空「それに.....エウルアが悲しむからね」

 

 

ナヒーダ「ふふ、決まりね。早速行動を開始しましょう」

 

 

パイモン「助ける....としても具体的にどうするんだ?ひたすら看病してゼーレが起きるのを待つのか?」

 

 

ナヒーダ「最終的に彼女の体の強さを祈るしかないけれど、それまでにわたくし達でも出来ることがあるでしょう?今、彼女の体を蝕んでいるアビスの侵食を草元素の浄化で一旦取り除くの」

 

 

パイモン「取り除く?そんなことできるのか?」

 

 

ナヒーダ「厳密には取り除くという表現は間違っているのだけれども、浄化で侵食を相殺するということね。だけど、それだけじゃすぐに侵食が開始されて、いたちごっこだわ....」

 

 

パイモン「じゃあどうするんだ?」

 

 

ナヒーダ「効率よく行きましょう。手早く、高威力で、侵食の元を1点集中で浄化で相殺するの。律者の世界樹の汚染源に草元素を打ち込む.....後は彼女を信じるしかない」

 

 

パイモン「あー...なるほどな」

 

 

空「パイモン、本当に分かったの?」

 

 

パイモン「ちょ、ちょっとだけな!」

 

 

ナヒーダ「必要なのはなるべく多くの草元素だけよ」

 

 

パイモン「それはどうやって集めるんだ?」

 

 

ナヒーダ「そうね。申し訳ないのだけど、またデーヴァーンタカ山に行ってくれないかしら?」

 

 

パイモン「な、なんでだ?何かそこにあったのか?」

 

 

ナヒーダ「わたくしはコアを消滅させる上で大量の草元素を使った。その残穢がまだそこに残っているはずだわ。大量の草元素を吸い取った草なり花なりを取ってきて欲しいの。そこから抽出し、有効活用するわ」

 

 

パイモン「ナヒーダも何かすることがあるのか?」

 

 

ナヒーダ「ええ、勿論。わたくし達は旅人が草元素を集めた後のことを準備するのよ」

 

 

パイモン「達?」

 

 

ナヒーダ「達。ねっ?」

 

 

そう言うとナヒーダは、腕を組んでいるスカラマシュを見た。彼は、見つめられて何か察した顔になった。

 

 

スカラマシュ「ちっ....。結局こうなるんだな...」

 

 

ナヒーダ「後、彼女を目覚めさせた後の計画のお話しもしておきましょうか」

 

 

パイモン「こいつを....目覚めさせた.....後?」

 

 

ナヒーダ「ええ」

 

 

しばらく話し合った後、パイモンと空はナヒーダに別れを告げ、スラサナンタ聖処を出ていった。

 

 

スカラマシュ「....クラクサナリデビ、旅人を試したね。性格が悪いな本当」

 

 

ナヒーダ「ふふ、そうかしら。わたくしはただ旅人の今の素直な気持ちを聞きたかっただけよ?」

 

 

スカラマシュ「初めから....助けるつもりだったんだろう?この女を」

 

 

ナヒーダ「あら。それはなぜ?」

 

 

スカラマシュ「いや、単純に君の性格的にそうするかと思ったからさ」

 

 

ナヒーダ「察しがいいこと。さっ、わたくし達もやる事やりましょう」

 

 

スカラマシュ「...はぁ。ふん」

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