台本書き
駄文
オリキャラ(複数人)
独自設定
キャラ崩壊
まだ朝日が完全に登りきらない翌日の朝、カゴメの鳴き声で起きた。早く目が覚めてしまった原因は緊張から来る物なのか、はたまた別の感情なのか分からなかった。
3つの遺跡と山を超えると、次第に地面の肌が青々しさがある草原から黄緑の大地に変化し、特徴的な岩が大地の皮膚を食い破っている場所にやってきた。
四角形の岩が無数に飛び出し、螺旋状の鉱山を形成している。そして、遠くから見てもわかるほど、その中心には巨大な黒い穴があった。
ゼーレ「(ここが層岩巨淵...。なるほど噂通り壮観な光景ね...。こんな所に人間が鉱山として立ち入っているのだからすごいわ...)」
ゼーレが層岩巨淵の壮大かつ美しい景色に見蕩れながら、入口に近づいた。
入口の両端には高台があり、昨日の夜に着けたであろう松明が飾ってあった。その近くに見張りの千岩軍が欠伸をしながら立っている。
こちらに向かってくる人間に気がついたらしく、姿勢を急いで正し、槍で入口をガードした。
「その3人方待て。もしかすると、この層岩巨淵に入ろうとしているのか?」
1人の髭を生やした兵士が、渋い声でゼーレに問う。
ゼーレ「ええ、入らせてちょうだいよ」
「すまないが...現在、層岩巨淵は関係者以外立ち入り禁止となっている。帰るこったな」
もう1人の若い兵士が追い払うかのように、喋った。
ゼーレ「それって地下鉱区だけじゃないの?」
「地下鉱区は璃月七星公認の探検隊だけだ。地上の鉱山も鉱夫しか入れん!」
ゼーレ「(あれ?てっきり地上の鉱区は一般人も入れるのかと思っていたけど違うのね...。どうしよう...。あの甘雨っていう人が来るまで待とうか...)えーと...。私、璃月七星の甘雨っていう人が私達を通れるように手配してくれたの。だから入れさせてくれない?」
「はぁ?だったら、甘雨様が手配したという証拠を見せろ。俺達は何も指示を受けていない」
ゼーレ「証拠かぁ...。うーん...」
ゼーレは困った。どうやってこの場を切り抜けようか、頭を回転させる。
甘雨とは契約書で契約した訳でもなく、口頭で約束しただけだ。確固たる証拠なんてあるわけがなかった。
「ないのだな?だったら、ここは通せん」
言葉が詰まったゼーレを見た兵士は、少し後気を強める。
その時、入口の向こう側から声が聞こえてきた。
甘雨「お待ちください」
その場にいる全員が声の方向を見る。そこには甘雨が立っていた。兵士2人は腰を抜かす勢いで驚く。
「か、甘雨様!?いらっしゃったのですか!?」
甘雨「その方が言っていることが本当です...。私がこの層岩巨淵に立ち入ることを許可しています。だから、入口を解放していただけませんか」
「そ、そうだったのですね!疑って済まない。通ってよし!」
慌てて兵士が3人に道を開ける。
甘雨「すみません、地上の鉱区を通るための許可証の事が頭から抜けていました...」
ゼーレ「...そう」
空「(俺達が群玉閣に招待された時も同じ事が起きたなぁ...)」
甘雨は少し気が抜けている。それは変わっていなかった。
3人が木製の門をくぐると、その先のテントで甘雨から璃月七星の判子が押された短冊を人数分渡される。
甘雨「これが地下鉱区に入るための許可証です。あの穴に入った後、すぐに探検隊に見せてください。後...あなたは初めての層岩巨淵だと思うので、地図もついでに用意しました。地下鉱区の見取り図です。これを見ながら層岩巨淵の最深部を目指すといいですよ」
ゼーレ「ここまで...。痒い所に手が届くみたいね。ありがとう」
甘雨「いえいえ...。では、くれぐれもお気をつけて」
ゼーレ、旅人とパイモンが配られた紙を各々のポケットにしまい、黒い穴を目指して、石ころの道へと動き出したが、不意にゼーレの歩く足が止まった。
パイモン「ゼーレ?どうしたんだ?」
ゼーレ「思い出したわ...。甘雨」
ゼーレはポケットの上から左手を置きながら喋る。
甘雨「はい...?」
ゼーレ「これをあなたに返しておこうと思って」
甘雨「...?なんでしょうか?」
ゼーレはポケットから、手のひらに収まるサイズの物体を取り出すと、少し先にいる甘雨に優しく投げる。物体が綺麗な放物線を描く途中、太陽の光がキラリと反射する様子を2人が見ていた。ゼーレが投げた物は石だ。夜泊石のように青白い光を放つ石だった。
甘雨はそれを、慌てて両手でキャッチする。
甘雨「これは...」
甘雨が目を凝らし、じっくりと石を観察するが、検討もつかないようだ。
甘雨「何...でしょうか...。石のようですね...」
石を上方向に持ち上げ、太陽光にかざす。青白い光がパイモンと空の目を刺激した。
ゼーレ「ただの石じゃないわ。分かるはずよ。魔神戦争を共にしてきたあなたなら」
甘雨「...?」
甘雨が再び、石をじっくりと観察する。すると、正体を理解したのか、驚きの表情を顔に浮かべた。
甘雨「この石...!魔神の気配を微かに感じます...!神の残骸...ですね?」
パイモン「神の...残骸?」
ゼーレ「正解よ。魔神が全ての力を使い果たして、ただの残骸となった姿が石のように見えるわ。そして、その石は岩神と共に戦い、民と神を導いた魔神...イポスル・バルスよ」
パイモン「イポスル...バルス?だ、誰だ?」
ゼーレ「確か、この名前は別名だったかしら...。過去...現在...未来...。全ての時間を見通せる力を持ち、その力で璃月の民と神を導いた魔神よ。石になる直前、あなた達の元に帰りたいと言っていたから、とりあえずあなたに渡しておくわね」
甘雨「で、ですが、この魔神は魔神戦争で命を落としました。本来ならば、亡骸と共に私達が石を持っているはずです...。なぜ、あなたの手に...?」
ゼーレ「会ったからよ。1、2年前に」
甘雨「...!?なっ...!供養のために璃月の川に亡骸を流したのですよ...?」
ゼーレ「イポスルは魔神戦争で命を落としたと思われていた。それは実際合っていた。だけど、璃月からフォンテーヌへ流れる間に命を取り戻した...と本人の口から説明されたわ。どうやら、フォンテーヌの水は生命力に富んでいるかららしい。それでも、水は万能じゃない。イポスルは完全に力を失っていて、魔神戦争終結から今の今まで、フォンテーヌの水の底で孤独に時を消費していたの」
甘雨「...。にわかには信じがたいですね」
まだ、整理が追いついていないのか、口を半開きのまま、甘雨がそう呟いた。
空「水の生命力だけで生き返るだなんて...。不思議だね」
ゼーレ「そんな奇天烈が、テイワットの常よ」
パイモン「事情は納得したけどよ...。そのイポスルって奴はフォンテーヌの海底に居たんだよな?という事は、ゼーレはわざわざ会いに行ったことになる...。なんでなんだ?」
パイモンは気になった事を口走る。ゼーレも疑問を解消するためか、パイモンの方向を振り向いた。
ゼーレ「最初はただ単純に、興味が湧いただけだった。だけど、最終的にそのイポスルの自死と私の右腕の犠牲で成り立つ契約に至った」
パイモン「えっ...」
空「もしかして、君が契約したフォンテーヌの魔物って...」
ゼーレは喋らずに、静かにゆっくりと首を縦に振る。
ゼーレ「私がイポスルの残骸を持っている理由はそれよ。契約が発動した瞬間、イポスルの命はこの世から消え失せ...残ったのは、その青白い石だけだった。さっきも言った通り、イポスルは皆の元に帰りたがっていたから、とりあえずあなたに渡しておくわね」
甘雨「経緯は分かりました。これをどうするかは熟考します。では、私はこれで...」
甘雨は大きく頭を下げると、自分たちに踵を返し、層岩巨淵の出口を目指す。
対しての自分達もドーナツの穴のような地下の入口に向かって歩き始めた。
●
巨大な穴に降りていくと、灰色の岩と茶色の木がひしめき合う無機物な世界へ変化した。至る所に鉄鉱石やクリスタルなどの鉱石が露出していて、洞窟の天井からは大きな水晶が魔性の光を出している。
当然なのだが殆ど明かりが存在しておらず、桟道に巻き付けてある松明だけが進むための道標なのだ。
初めこそ、ゼーレが地下鉱区の見取り図を見ながら進んでいたのだが、途中でそれをしまい、ズカズカと最深部に進んでいく。
空「ゼーレって層岩巨淵始めてきたんでしょ?地図見なくてもいいの?」
ゼーレ「地図?あー...いや覚えたからいいかなって」
パイモン「え?今ので記憶したのか?」
今まで不気味な雰囲気に怖がっていたパイモンが一転、前のめりになる。
ゼーレ「ええ。思ったより、そこまで迷路じゃなくて助かったわ」
パイモン「オイラも半分しか覚えてないって言うのに...」
ゼーレ「複雑そうに見えるけど、頭が勝手にそれを簡略化してしまうの。ここから最短で最深部に辿り着く道を想像したら後はそこに行くだけよ」
目を閉じ、人差し指をクルクルと回しながら、そう答えた。
そうして、いくつもの桟道を超えていると、いつしかそれが途切れた。そこからはまだ鉱夫が入ったことがなく、未知の恐怖がそこにあることを暗に示されている。
●
ゼーレ「何これ...。天井に建物がくっついてる...!?」
道中、紫色のモヤが充満している広い空間に出た時、ゼーレは思わず足を止めた。
そこは暗い天井に巨大な逆さまの建造物があった。なんとも言い難い、恐怖感を醸し出している。だが、その大半がもはや原型を留めておらず、破壊されてしまい、生物の気配すら感じられない古の遺物だろう。
ゼーレ「都市のようなものが逆さまになってる...」
パイモン「ああ...オイラも初めて見た時、ゼーレと一緒の反応をしてしまったぞ...。なんとも不思議だよなぁ...都市がこんなことになってるなんて」
ゼーレ「都市...ということは、元々層岩巨淵の地下には栄えていた文明があったってこと?」
パイモン「そうだぞ。カーンルイアができる前の文明だそうだ。今はもう見る影もないけどな...」
ゼーレ「なんだか、似てるわね...」
ゼーレが聞こえるか聞こえないかの声量で呟く。
パイモン「ん?何が?」
ゼーレ「どの滅びた文明も、ある程度類似した建築様式があるのは何故なのかって考えたことがあるの。白夜国...つまり、常世の国として知られる淵下宮もよく見たら、この逆さまの都市とほとんど一緒だわ」
薄い灰色の壁材に、飾り気の無い柱。それは淵下宮も層岩巨淵も一緒だった。空は考えたこともなかった。
パイモン「淵下宮は当時、崇められていたオロバシがいたからあれだけど、少なくともこの層岩巨淵の文明はカーンルイアと関係がしているんじゃないか?」
ゼーレ「あら...カーンルイアと?それはどうして?」
パイモン「実はオイラ達、この逆さまの都市に入ったことがあるんだけど、内部に池があったんだ」
ゼーレ「...池?別に、建物の中に池があること自体不思議ではないわ。それがどうしたの?」
パイモン「ただの池じゃないぞ?その周りにいるだけで、カーンルイアの呪いが弱まるんだ。不思議だろ?」
ゼーレ「呪いが弱まるですって...?ふぅん...。確かに不思議な池ね。カーンルイアより遥かに古い文明なのにカーンルイアと関係がある...。興味深いわ」
ゼーレは顎に手を当てて、天井を見つめながら答えた。
パイモン「このことはダインスレイヴと一緒に来た時に知ったんだ。呪いによって姿を変えられた元カーンルイア人がその池に近づくだけで浄化されたんだぞ?」
ゼーレ「ダインスレイヴ...。どこかで聞いた名前ね。あ、あー...あの時の...」
パイモン「アビディアの森の時だな」
脳内で彼の姿が思い浮かび上がり、それが喉につっかえていると、パイモンが助け舟を出した。
パイモン「なぁ、ゼーレ。お前って記憶を見れるんだろ?良かったらカーンルイアについて何か教えてくれないか?旅人も知りたがーーー」
空「パイモン」
パイモン「...ん?」
パイモンが言い終わる途中、空が遮った。視線を移すと、彼の顔は真剣だった。
空「俺もカーンルイアについて知りたい。だけど、それは俺自身の目で見たいんだ」
パイモン「え...あ...そ、そうなんだな。わ、分かったぞ、旅人」
ゼーレ「...って言ってるけど?」
パイモン「あ...。じゃあ...いいや...」
ゼーレ「これは何...?泥のように見えるけど...」
逆さまの都市の中心部に近づいて、しばらくそこら中を見ていたが、地面に落ちている物に興味を示した。
黒い泥のようなものが嵩を積んである。有害なオーラを放っているのが、遠目から見ても分かった。周辺を見渡すと、似たような物が沢山落ちている。
パイモン「あっ、触っちゃダメだぞ?汚染されているからな」
ゼーレ「ゲホッ!ゲホッ!ゴホッ!!」
ゼーレは自分の指先に泥が付着するより先に大きな咳をした。
パイモン「だ、大丈夫か?」
ゼーレ「ど、どれほど汚染されてるのよ...。近づいただけで咳が出てくるわ」
ゼーレは命の危機を感じたのか、すぐに口を覆い、距離を取った。
空「...離れた方がいいよ」
そんな様子を見ていたが、空は内心ドキッとしていた。勿論、心配の意味である。
層岩巨淵の泥は極限に汚染されているが、近づいただけで咳き込む程では無い。空とパイモンもそんな事は起きていなかった。だが、現にゼーレは咳き込んでしまったという事は、それほど彼女の体は侵食されているということだ。刻一刻と終わりが近づいてきている。
ゼーレ「そうね...。...ん?」
そんな時、ゼーレは何かに気づいたようだ。顔を上げ、少し遠い一点を見つめている。
パイモン「ゼーレ、どうしたんだ?」
ゼーレ「ねぇ、ここにもヒルチャールがいるの?」
ゼーレが、自分が見つめていた先を指さす。
向くと棍棒を持ったヒルチャール数匹が列を為し、どこかに行く様子が見えた。
パイモン「地下鉱区にヒルチャールは普通にいるぞ?」
空「近くに群れがあって、そこに帰るところとかじゃないの?」
そこの情景だけを切り取っても、特に変な事はない。むしろ、こんな暗い世界の中でヒルチャールが居て、安心する程だ。
だが、ゼーレは疑問が払拭できないようでポケットから地図を取り出し、ヒルチャールの進行方向と地図の2つと睨めっこしている。
ゼーレ「今、地図を見てみたら、ちょうどヒルチャールが行く先々と被っているわ」
見せつけられた地図を見ると、自分達が居る場所が広い縦楕円形の場所だ。そして、そこから先へ行くには一本道しかない。ヒルチャールもその道を目指すべく、歩いているのだ。
ゼーレ「何故か、あのヒルチャールが気になって仕方がないわ。後ろをついてみましょう?もしかしたら、何か知れるかもしれない。何もなくても別に回り道じゃない」
パイモン「それだと全然いいけど...。旅人もそれでいいよな?」
空「全然いいよ」
ゼーレ「ありがとう。ごめんなさい、色々と注文が多くて...」
●
空「かれこれ10分ぐらい後をつけてるけど、今の所変わりないね...」
ゼーレ「そうね...」
2人がヒルチャールに聞こえないようにボソボソと喋る。肝心のヒルチャールは、鼻歌を歌いながら1列に並んで歩いていた。
青白い虫が、不思議な植物の周りを飛んでいる異様な薄暗い通路を、3人は音を立てないように忍足で通っていた。
完全な洞窟という訳ではなく、所々に建造物らしき物の残骸が落ちていた。どれも先程見た逆さまの都市の建築様式と酷似しているから、ここもかつて何かの文明があったんだろう。
パイモン「んー...オイラはやっぱり、なんの変わりないヒルチャールだと思うぞ?こんな光景なんて嫌という程見てきたんだし」
ゼーレ「別に道草を食ってる訳じゃないんだしいいじゃない。どの道、ここを通らないと最深部にたどりつけないのよ」
パイモン「それもそうだけど...」
ゼーレ「それに、何故か頭があれについて行けと言ってる気がするの」と、神妙な顔で答える。
パイモン「お前の勘ってやつか?」
ゼーレ「いや...そんなものじゃない...。実を言うと、ここにやってきた理由も曖昧なの。不安定な動機だけれどもこれを避けていては前に進めないって思う...」
空「ゼーレの勘ってだいたい当たるからね。仮にこれで何も無かったとしても逆に安心だと考えられる」
パイモン「確かに...そうかも」
ゼーレ「あなた達には、昔自分とは違う他の誰かの声が聞こえたって言う話をしたと思うの。実は黙っていたのだけど理由は明白に分かっているわ」
空「理由?」
ゼーレ「...私の精神には、もう1つの魂が存在している」
パイモン「もうひとつの...魂?」
空「......」
空は黙った。恐らく、デーヴァーンタカ山で見たあの少女のことだろう。ゼーレがそれを知っているかどうかはわからない。だけど、今こうして話しているという事は知らないのだろう。
ゼーレ「既存の精神世界にもう1つ誰かの精神世界が強引にくっつけられている状態を想像して欲しい。片方の魂が死ぬことがなく私の魂と共存しているということなの。だから、片方の魂が私の現実世界に干渉できるというわけ」
パイモン「ゼーレにもうひとつの魂がある事が驚きだな...。何か心当たりはないのか?この時に魂が入り込んだ...とか」
ゼーレ「いいえ全く...。だけど、船で言った通り、律者の力が発芽した際に声が聞こえてきた。つまりは律者にもう1つの魂が吸着していて、私が力を手に入れたのと同時に魂に精神世界が強制的にくっついた...って感じかしら?」
空「それは君の仮説?」
ゼーレ「ええ。断定はできないけどね」
空「...!2人ともストップ」
話しながら暗い通路を通っていた3人だが、空が前方のヒルチャールのことで何かに気づいたようで呼び止める。パイモンに関しては空に服の襟を掴まれていた。
パイモン「うおわっ...なんだよ旅人」
空「前見て。ねぇ、ゼーレあれって...」
ゼーレ「...どうやら私の勘は当たっていたようね」
【終】