台本書き
駄文
オリキャラ(複数人)
独自設定
空「よいしょっと....」
穴に飛び降りた後、深く暗い底まで風の翼を展開していた。すると、足が地面に着いた。
翼を折りながら、ふと、上を見上げると、穴に差し込む光が点だった。それ程、ここは深い所なのだと実感した。
ゼーレ「深いわねここ......。本当にどうなっているの....」と、空と同じように上を覗きながらそう呟く。
ゼーレは空よりも一足先に穴の一番下まで到達していた。
穴にはいる前、彼女は風の翼は持っていないので、どう降りるのかと疑問に思っていたのだが、それはすぐに解消された。否応無しにそのまま穴に飛び込んで行ったのだ。
穴から地面までざっと200mぐらいだろうか。聖鍵殿の穴よりも深いことは確かだ。
空「えーと、風の翼なしにジャンプして行ったけど大丈夫....?」
多分大丈夫だと思いながらも、一応心配する。
ゼーレ「ん?大丈夫よ。このぐらい高さなら平気平気」
見ても分かる通り、へっちゃらのようだ。
ゼーレは自分の黒色のロングスカートを僅かに上げて生足を強調する。毛1つ生えていない女性の足。運動家のように筋肉が発達しているわけでもなく、極々普通の女性の足だ。
空「そう.....それならいいんだけど......。ここから大体.....200mぐらいだね.....。そのぐらいでも平気ならどのぐらいまでなら大丈夫なの?」
ゼーレ「そうね」
空の問いにすぐに答えることは出来なかった。
ゼーレ「怪我なしなら......2000mぐらいなら平気なんじゃない?実際にやってみないと分からないけど.......」
空「そう.....なんだ......」
想像もできない数字が出てきて、空は生返事をする。
今まで嫌という程ゼーレの肉体の頑丈さを見てきた空はもっと距離が伸びても大丈夫なのではないか?ーーーそう思っていた。
そんなことを考えながら今の暗い場所を冷静に見る。
亀裂が入ったかのような底は左右にうねりながら、大地の層を切り裂いていて、それは先まで続いていた。
空「何かしら衝撃で亀裂が入ったかのような形状だね.......」
空は地面の断面に手を触れながらそう言う。
ゼーレ「そうね......。とりあえず、先に行ってみましょう。何かあるかもしれないわ」
空は軽く頷くと、周りを警戒しながらゼーレと共に亀裂の先を行く。
そうして数十分、ただひたすらに暗い世界を突き進んでいく。この間に魔物が襲ってくるわけでもなかった。なので、巨大な地割れの中をゼーレと当たり障りない会話をしていた。
そうしていると突然、前にいたゼーレが立ち止まる。空も続いて止まった。
空「どうしたの?」
ゼーレ「行き止まり......かも」
空「え?」
ゼーレ「ん?いやちょっと待って.......。行き止まり.....なんだけど、材質が全然違う.......」
空「材質が違う......?どういうこと?」
そうすると、暗闇の中でペタペタという音が聞こえてくる。恐らく、ゼーレは行き止まりであろう目の前の壁を触っているのだろう。
ゼーレ「亀裂の断面はゴツゴツした石の感触がするけど.....。目の前の壁は明らかに人の手が加わった石の感触......。研磨されているわ」
空「.......おかしいね」
ゼーレ「おかしすぎるわ.......。もしかして.......私達のこの先に何かあるのかしら......」
空「行ってみる?」
ゼーレ「そうね......。下がってて、今からこの壁をぶち抜く」
ジャリジャリと靴に小さな石が当たる音が聞こえる。ゼーレが壊そうと構えていると感じた空はぶつからないように二三歩後ろに下がる。
それと同時に衝突音と岩が粉々になる音が亀裂中に響き渡る。暗くて見えないが、音から想像するに壁が破壊されたのだろう。
ゼーレ「よし......通れるようになったわよ」
そう告げた後、小さな着地音が耳に届いた。ゼーレが破壊した壁を通り抜けて、その先にあるであろう空間に着地したのだ。そして、空も続いて慎重に穴に入って、そして、石の床に着地した。
空「ゼーレの勘が当たったみたいだね.....」
ゼーレ「そうね......。有り得ないのですもの......」
土と石が混ざった自然の空間から長方形に加工された石がびっしりと詰まっている廊下に出てきた。
亀裂よりか遥かにマシだが、相変わらずここも暗い。
ゼーレ「モンドの地下にこんな所があるなんて......」
空「俺も初めて見たよ.......苔も生えていないし、大昔から存在してる地下遺跡じゃないみたいだね.....」
ゼーレ「それに.....なんでここ荒れているの?」
廊下の所々にヒビが入っていて、天井から落ちてきたであろう大小さまざまな石が床に無造作に落ちていた。ここでまさに戦ったかのような様子だった。
空「ほんとだ.....。なんでだろう......。もしかしたら、さっき通ってきた亀裂みたいに、何かしらの衝撃がここにも走って、崩壊してる......だと思うよ」
ゼーレ「なるほど.....。それは一理あるわね......」
そうして、引き続き周りを警戒しながら廊下を抜け、いくつかの部屋を抜ける。
そんな時、空はふと疑問に思ったことをゼーレに投げかけた。
空「確か、ここに入る前、力は出ないって言ってたよね.......。それは確かなの?」
ゼーレ「ええ、何か私の体から力が段々と抜け落ちていっているような感覚がするの。それは今も続いている」
空「原因は?」
ゼーレ「いえ、全く.......。もし、私が力が出なかった時にはあなたを頼るわ」
空「........。君が力が出てても助けるよ」
そして、最後であろうと考えられる部屋は円筒状の空間だった。今まで見てきた部屋とは比べ物にならないほど広く、人が50人入っても余裕で動けるほどだ。天井も空間の広さに比例していて高い。それになぜかは分からないが、空間全体がほんのり赤い光で照らされている。
ゼーレ「これは......!」
空間に立ち入った瞬間、ゼーレは天井に張り付いている物に思わず声を漏らしてしまう。空も続けて見るとそこには信じられないものが吊るされていた。
なんと、黒色のミノムシのような不気味な生き物が天井にへばりついている。時々、ギギ.....ギギ.....と不気味な鳴き声を発しながら、心臓のように1秒ずつ体が脈打っていた。そして、巨体から三本の鋭い足が飛び出している。その体躯と壁の間にはロープのように太い糸がくっついていて、それを支えていた。
ゼーレ「なにあれ.....。虫.......!?」
明らかにこの世のものではない異質な生命がモンドの地下に存在している。あんな生物みたことがない。その事実に2人はその場から動くことができなかった。空いた口が塞がらない。
空「ゼーレ!アビスが倒れてる!」
ゼーレ「........!」
黒色の生物のインパクトに気を取られていたが、床を見ると、数多くの魔物が倒れていた。アビスの使徒に限らず、アビスの魔術師やヒルチャール等の色々が壁際で横倒しになっている。
よく見ると壁がへこんでいるので、直撃したのだろう。
ゼーレ「天井のあの謎の生物と......アビス共が倒れてる.......どうなっているのここは.......」
空「どうする........?」
ゼーレはもう一度天井を見る。気味の悪い魔物は自分たちがここにやって来た時からずっと同じ間隔で脈打っていた。
ゼーレ「........そうね。アビス教団の状態を見るだけでも何かわかるかもしれないわね......。少しでもやばいと感じたら......撤退しましょう。そして、この事実を早急に騎士団に知らせなくちゃね」
そうして、空とゼーレはお互いにあまり離れずに倒れている魔物を調べ始めた。
空「(.......死んでる?いや.....気絶してるだけ......?)」
空は大量の魔物からとあるアビスの使徒を選んだ。その魔物は全身から血を流し、倒れている。出血量は人間ならまず死んでいる程だ。血を辿っていくと壁にたどり着くので、この使徒は壁に直撃して血を流したのだろうな.......と心の奥底で思った。
すると、後ろから蹴る音が聞こえた。そちらを見ると、ゼーレがアビスを調べていた。相変わらずアビス教団への扱いが杜撰なもので、しゃがむことなく足で魔物の現状を確認していた。とあるアビスの使徒の顔を蹴ったり、とあるアビスの魔術師の腹に靴を踏んづけて、真顔で作業のようにそれを繰り返していた。
ゼーレ「多分全員死んでるわね......。ちっ.....何とか生き残りがいればそいつに何があったのか尋問できたのに.......」
軽い舌打ちをすると共に、あるアビスの使徒に重い蹴りを入れた。向こうの壁際まで吹き飛んでいく。
ゼーレ「さっき聞こえた悲鳴の後......暴風がこっちまで吹いてきた......。そして、ところどころにこの地下施設に亀裂が入ってる......。つまり、さっきの暴風はここにいたアビス教団連中全員吹き飛ばした.......。で、結果こうなった.....と考えられるわね」
空「なるほどね.....」
ゼーレ「うーん、それでも推測の域を超えないわね.......。だけど、モンドの地下には巨大な地下施設があった。そしてその内部には謎の魔物が生きていた。この2点を知っただけでも大きな収穫よ。旅人、そっちはもう調べ終わった?」
空「うん」
もうこれ以上探していても、情報は出てこないので諦めた。立ち上がり、ゼーレの元へ行こうとする。
だが、その時空間に声が響き渡った。
「不測の事態に嗅ぎ回るとは随分と面白いことをしてくれるじゃないか。ゼーレ・ローレンス.......!」
その声の後、ひとつのアビスの境界門が出現した。
空間が切り込まれたかのように1本の縦線の切り込みが入り、その線が左右に膨張すると、そこから一体のアビスの使徒が出てきた。
門の中には禍々しい深淵の力が詰め込まれている。
ゼーレ「............」
颯爽と出てきたアビスに対してゼーレは無言のまま冷ややかな目で見ていた。
空「アビス教団!」
急いでゼーレの元へ駆けつけた空は片手剣を構える。
「......!姫様の片割れもいるのか.......」
空「.....何しに来たの?」
「何しに来ただと......?それはこちらのセリフだ。急にここからの連絡が途絶えてな......。様子を見に来たらまさかゼーレ・ローレンスと片割れがいるではないか........。もしや、ここを嗅ぎつけた貴様らが同胞をやったのか?」
アビスの使徒は周りを見渡しながら独り言のように呟く。
「いや......そうでは無いか......。予想より早かった気がするが.....。まぁいい....。ククク......!」
壁際に散乱しているアビスの死体。そして、脈打っている天井の謎の物体に交互に視線を送り、ふとアビスの使徒は不気味に笑った。それはまるで2人を嘲笑っているかのようだった。
空「なんで笑ってるの......?」
思わずその反応に眉をしかめる。
「時期に分かる.......。だが、貴様達がここに来た以上に私たちは排除しなければならない。貴様達は障害物だ。邪魔をするならば.......消し飛ばす!」
空「1人でやる気?」
アビスの使徒は腕についている剣先をこちらに向ける。空も剣のグリップを更に強く握った。
「もちろん.......私一人ではない.......!」
すると、魔物の背後から次々と複数のアビスの境界門が出現し、アビス教団の増援が出現する。
そんな様子を見て、2人はお互いに目配せをした。
空「(ゼーレ.....どうする?)」
ゼーレ「(応援が駆けつけてきたのなら好都合だわ......。一匹だけ残してこれが何なのか聞き出すことにする)」
ゼーレの黒色の瞳がある左目と無機質な灰色の右目から確固たる意志を感じる。
空「(わかった......)」
魔物の群れに対する対処を決めると、ゼーレもいよいよと剣を取り出し、ゆっくりと敵に向かって歩み始めた。
「おい......!聞いているのか......?」
ゼーレ「本当お前達は学ばないわね」
「なんだと?」
ゼーレ「どこまで行っても傲慢で、成長性の欠片のない脳みそ空っぽの連中.....。言ったでしょ.....私を倒したいのなら魔物1万体を連れてきなさいと....!」
アビス教団はゼーレの言葉に気を取られていた。その瞬間、ゼーレの背後から空が飛び出す。
そして、剣を貫く体制のまま、先程まで喋っていたアビスの使徒に突入した。
「!?」
それを回避しようとしたが、遅かった。剣は正確に心臓を貫き、勢いのまま地面に倒れ込んだ。その上に空がのしかかる。
「なっ、何を!?」
アビスの使徒が立たぬように必死に上から押さえつけている。
空「っ!いいよ!」
空がゼーレに向かって叫ぶ。
その合図を受け取ったゼーレが1歩前に踏み出した瞬間、応援に来た魔物が一瞬で血飛沫をあげた。
空の体勢より上方向に四方八方に斬撃を放ち、魔物の体を切り刻んだのだ。目にも止まらない斬撃を魔物が対応するにはほぼ不可能だと言ってもいいだろう。
アビス教団を処理するのに十分すぎる攻撃性だったが、ゼーレ当人は何か違和感を感じていた。
ゼーレ「(やっぱり前と比べて斬撃の威力が落ちてる......。アビスの侵食で体がボロボロな訳でもないのに.......。それに、穴に入る前に感じた違和感がここに入った途端強まった......。やっぱりあの不気味なやつと関係が......?)」
ちらりと未だに天井に吊るされている黒色の物体を見た。そして、視線は壁に移る。壁には無数の斬撃の跡がある。ゼーレが対象をアビスだけに絞ったつもりが誤って壁にぶつけてしまったようだ。
ゼーレはとりあえずそれを頭の片隅におき、空が抑えていたアビスの使徒に近づく。
ゼーレ「あなたのお仲間とやらもやられちゃったけど?」
「ぐっ......」
まさに終わりだ。アビスの使徒は2人に対してたった今深い恨みを持ったかのような態度だったが、端々に諦めも入っているように見える。
ゼーレが魔物の横にしゃがみこむ。それを見た空は警戒しながらゆっくりとどいた。
どいたと分かるな否やゼーレの左手は真っ直ぐとアビスの使徒の頬を掴んだ。
「!?な、何をする......!!」
まさか、頬を掴まれるとは思ってもいなかったアビスは豆鉄砲を食らったかのように困惑している。
ゼーレ「1回あなた達に逃げられたからね.......。今度は絶対にお前の口から吐かせて貰うわ。.......さて、私達が聞きたいのは2つ......。まず、ここはどこなのか.....。そして、あの黒い物体は何なのか.......。さっさと答えなさい」
「.....断ると言ったら?」
アビスの挑発的な言葉に青筋立てることなく、冷静にアビスの使徒の右足の膝に指先を当てる。次の瞬間、右足が吹き飛んだ。
「ぐっ、ぐあああああああ!」
斬撃で細切れにされた痛みのあまり、悲鳴を上げて、その場にのたうち回った。
ゼーレ「こうなるわよ」
「脅しを本当に実行するバカがどこにいるんだ!!!」
ゼーレ「お前が拒否する度に自分の体のパーツが消えていく。ちなみに私がムカついたら殴る。綺麗に死んでいくか、苦しんで死んでいくか.....その違いだけよ」
「(む、無茶苦茶すぎる.....!!!)」
アビスの使徒から見てゼーレはまさに悪魔に見えた。
どの道死ぬ未来に心を折られた魔物は完全に諦めて喋り始めた。
「ここは.......我等黄金の意志に乗っ取って作られた、テイワットの統治をひっくり返すための地下施設だ.....!」
空「黄金の意志......!あの時の.......!」
空の脳内にあの日、デーヴァーンタカ山で死んでいく間際に放ったアビスの使徒の言葉がフラッシュバックした。
ゼーレ「お前たちが......!」
それはゼーレも一緒だった。
「アビス教団はそう単純に1括りできるものじゃない。様々な派閥がある.....!その中に黄金の意思に魅せられた者が集う派閥があるのだ.....」
空「そもそも黄金って何?」
「........。カーンルイアの五大罪人の一人......黄金の錬金術師レインドット様のことだ......」
ゼーレ「レインドット.....。確か人造人間とか魔獣ドゥリンを作り出した錬金術師だったわよね?」
「........その通りだ。レインドット様の錬金術は素晴らしいもので、カーンルイアの発展に大きく貢献されたのだ......。カーンルイア人が作り上げた錬金術『黒土の術』を極め、そして、自然法則を逸脱した人工生命を自在に作ることができた.......。そんな彼の周りには自然と慕う者が現れた.....。中には狂信者もいた......。そうして、漆黒の白菜が起こる寸前、レインドット様はとある生物が作りになられた.......。それはゼーレ・ローレンス.....貴様の中にある律者の前駆体だ......」
ゼーレ「........!?どういうこと.....!?」
「魔に満ちた魔物が世界樹を傷つけ、そのエネルギーが律者と呼ばれる.....。それは、まぁ正解だ......。その生物が誕生した時はカーンルイア中が歓喜した。当時は七国との軋轢が悪化していたからな.......。だが、漆黒の厄災の衝撃でその生物の魂と肉体は分離してしまった........。その魂はやがて世界樹を襲った魔物に乗り移り........そしてその魂から漏れ出たエネルギーが世界樹に影響を与えてしまって.......そして律者の力が誕生した.......!」
アビスの口から告げられる新事実に2人とも開いた口が塞がらない。
「我等黄金の意志に集う者はその律者のエネルギーを回収して、レインドット様が作り出した最高傑作を現世に復活させることが目的だった.....。ただ......その認識は間違っていたようだ.......」
空「間違ってた?どういうこと.....?」
「律者の力だけでは到底レインドット様には到底及ばない.....その事実を知ったのだ。それは何故か......?肉体と精神が1つになった時、それはテイワットの神さえも超える存在になるからだ。我らは精神ばかりを追いかけていたのだ....。間違っていることに気づけたよ......。そう......ゼーレ・ローレンス.....貴様のおかげでな........」
ゼーレ「私........?」
「なんだ気づいてなかったのか?自分がレインドット様がお創りになった生物と同じ物なのだと......。貴様は肉体.....そして魂である律者の魂が備わっているのだ」
ゼーレ「........は?魂云々はわかるけど肉体なんて見覚えないわ。そもそも私は人間だもの」
「肉体と言っても生身という意味合いでは無い。500年前にばらまかれた呪いのことだ。我らは不死の呪いをかけられた身......その呪いと律者が合わさった時、テイワットの律を為せるのだ......!お前にはモンドの貴族にある呪いを集約して生まれた忌み子なのだ.....!気づかなかったか?何故人間であるお前が当たり前に壊滅的な力を持っているか.....!まぁ、貴様が元々おかしいのもあるが.......」
「鍵だ......!まさに鍵なんだ......!そして、それは今まさに完成しようとしている.....」
先程まで冷静に喋っていたアビスの使徒だったが、段々とヒートアップしていく。何かに取り憑かれたかのように喋り始める。
「それに気づいた我らはひたすらに同胞に宿る呪いを回収した.......!そして、それをあの黒い生物に集約させた.......!」
ゼーレ「まさか.......!」
空「!」
「貴様達が慎重で助かったよ.......。聞こえないか!?滅亡の胎音が刻一刻と大きくなることに!!!!お前達の負けだぁぁぁ!!!!」
ゼーレ「ちっ!」
狂気の笑い声をあげるアビスの使徒の顔を掴むと、そのまま首を引きちぎる。そして、そのまま天井目掛けて全速力で投げた。
だが、遅かった。
首が衝突する寸前、パキンと糸が折れる音が聞こえるな否や、魔物は床に轟音を立てて落ちてきた。
ギチッ........ギチッ......ギチッ........。煙の中から歯ぎしりのような音が聞こえる。
そして、その煙の中から1本の針のようなものが出現し、それが地面に勢いよく突き刺さった。続いて、2本、3本と姿を表し、ついには完全におぞましい姿が土埃の中から現れた。
針だと思われたものは巨体を動かすための足だった。その針の根元には丸型の口があり、剣のように鋭い歯が無数に生えている。その口から無限にヨダレが流れ出ていて、滝のようになっていた。
そんなこの世の生物だとは思えない風貌に呆然としていたが、突然ゼーレがその魔物に向かって走り出した。
こちらに迫り来る人物を敵だと認識した魔物は恐ろしい口をめいいっぱいに広げ、甲高い叫び声を上げる。
「ギィィィヤァァァァァ!!!!!!!」
そして、3本の内1本の足を振り上げると、ゼーレに向かってそれを振り落とす。それをジャンプして回避すると、ゼーレは魔物の頭上まで跳躍した。
ゼーレ「一気に.......畳む.....!!!!」
指向性を定める斬撃で一瞬で塵にする。そんな気概で手を伸ばす。
そして、斬撃をーーーーー放てなかった。
元素を拳に集中したつもりなのに一向に斬撃を放つことが出来なかったのだ。
ゼーレ「(斬撃が.......!放てない.......!?)」
何も攻撃ができなかったゼーレは怪物の背後に着地した。
ゼーレ「(ちょっと盈月!?盈月!何が起きているの!?)」
すぐさま、もうひとつの魂に会話を試みる。
だが、数秒経っても返事が帰ってくることはなかった。
ゼーレ「(盈月!!!!!!!!返事しなさい!!)」
ゼーレは語尾を強めて、再度魂の名を叫んだ。
だが、1回目同様の結果になってしまう。ただただ無の時間が続いた。
ゼーレ「(会話が.......できない.......!?一体何が起きているの.......!?)」
斬撃の使用不可、そして、魂との会話ができないという不可解な現象にゼーレは焦っていた。
頭を高速回転してどうすればいいのかと魔物の様子を見ながら、考えていると、突如ゼーレに頭痛が襲いかかってくる。
ゼーレ「ぐっ.......!ぐああああ.......!!」
脳が直接掴まれ、強く揺すぶられているような感覚がする。
たってもいられないほどの鈍痛のせいで、頭を抱えながら、地面に膝をついてしまった。
空「ゼーレ!?大丈夫!?」
突然の出来事に空はゼーレの名を叫ぶしか無かった。すると、叫び声に気づいたのかすかさず怪物が空目掛けて襲いかかる。
降り掛かってくる爪を何とか片手剣の刃で受け止めた。
空「ぐっ.......!(な、なんて力.....!)」
その躯体に恥じぬ力でジリジリと空を圧倒していく。体勢を崩さぬように空は足に力を入れることしかできなかった。
必死に抑えている時に空はふと魔物の図体が膨れていることに気づく。
空「(か、体が.....膨らんでる.....!?)」
それは風船のようにとめどなく膨れ上がっていたのだ。そして、ある一定の大きさになると空気のような物が口から放出された。
一瞬のことだった。とてつもない巨大なエネルギーが空の体に触れたと思いきや、空は壁に向かって勢いよく衝突した。
そのエネルギーは空間全体に伝わり、壁が瞬間に亀裂が走る。
空「(い、息が.......!)」
前面からエネルギーをまともに受け、そして壁に衝突した勢いで空の肺は完全に押さえつけられていた。
空「ゲホッ!!!!ゲホッ!!!ゲホッ!!!!(一体......何をされて.....!!)」
説明がつかないエネルギーに混乱する頭のまま、空は地面に倒れ込んだ。
そんな動けない空にトドメをと、爪を再び振り上げる。
ゼーレ「(旅人が.......!助けなくちゃ.....!)」
空「(体が言うことを聞かない.......!!)」
そして、爪は無慈悲にも空に向かって振り下ろされた。
だが、直撃する寸前、ゼーレが割り込んだおかげでそれが当たることはなかった。
空「ゼ、ゼーレ.......!」
爪先から滴り落ちる血が空の頬に伝わる。ゼーレの腹には魔物の足が貫通していた。
ゼーレ「ゲフッ.......」
短い咳で口から血を吹き出した。
すると、怪物の足はゆっくりと動き、口の所まで運んでいく。
空「ま、まさか.......!」
そして、足を軽く揺すると鋭い足からゼーレの体が開放される。それと同時に魔物の口が大きく開いた。
バクンーーーー。
ゼーレが口の中に勢いよく入ると、それと同時に魔物の口が閉まる。
そして、ゴクンと絶望の音が空に襲いかかった。
空「.......ゼーレ?」
ゼーレが食われた。その事実をしばらくは受け入れられなかった。だが、やっと体がそれを信じ始めると、全身からさっーと血の気が引く感覚がした。血管が凍るかのような勢いだ。
そんな茫然自失している空が動けないと判断した怪物は休むことなく3度目の攻撃を仕掛ける。鋭い足先が空の体を貫く寸前、急速に空の服の胸にあった石が緑色から紫色に変化した。次の瞬間には迅雷の如く、怪物の足から胴体へと高速で移動し、魔物の上にやってくる。この間は1秒も満たなかった。その軌跡には塵と雷元素の残穢が舞っている。空は悲鳴をあげている体を雷元素で強化し、高速移動をしたのだ。
両手で片手剣のグリップを強く握ると、魔物の背中に剣を突き刺し、そのまま横一直線に斬った。切り傷から瞬く間に血飛沫が飛ぶと同時に、怪物が耳を劈くような悲鳴をあげる。
空「(いや.......絶望するにはまだ早い.....!思い出せ.....ゼーレはこんなことでやられる玉じゃない........!)」
怪物の攻撃が来る時には既に空の心のスイッチは絶望から希望に切り替わっていた。今までゼーレの異常性を見てきた空にとって、このぐらいなんたってないという、根拠はないが負の感情が吹っ切れていたのだ。逆に馬鹿馬鹿しいという感情さえ芽生えてきた。
背中からの鋭痛を感じた怪物がたっている空を振り落とさんと必死に体を揺らす。体勢を崩しそうになった空は距離をとるために遠いところに着地した。
着地音を聞いた魔物は空の方向を振り返り、すぐさまこちらに迫り来る。魔物に目は着いてはいないが目があればきっと血なまこになって空を殺しにかかってきているだろう。鋭い爪を石の床に突き刺しながら接近する姿からそう思えてきた。
空「(正直体は痛い......!だけど、雷元素で強化しながら行けば、こいつをいなせる.....!)」
動かない体が嘘かのように、空は足と足の間をするりとすり抜けて、その内の1本の爪の関節部分に片手剣の刃先を刺した。だが、深い所までは刺さらなかった。
空「(か、固い......!)」
まるで鉄の壁に突き刺したかのような感触が腕に伝わってくる。もうこれ以上力を込めてもうんともすんとも言わない。
空「(ならこのまま斬る......!)」
腕に全力を注ぎ込んで、片手剣を思いっきり横に振る。すると、刃が足の筋肉を切り裂いた。斬った先の爪がボトンという音を立てながら地面に落ちる。
「ギィィィィ!!!!」
欠損した痛みのせいで、金切り声を怪物があげた。
更に怒り狂った黒い怪物は、体の左右の側面から2本の細い糸を壁に引っつけると、その糸を使ってパチンコのように図体を後ろに下げる。糸からキリキリと金属のような音が響いた。そして、勢いよく空に向かって発射した。
空「っ!」
ミサイルのような速度だ。さすがにあの躯体で突っ込まれたら空でも為す術がない。10回程転がりながら、壁際まで追い詰められる。
急いで立ち上がり、剣を構えた時に見た怪物の姿にはっとしてしまう。
また、血のついている口を大きく開き、そして体が風船のように膨らませていた。
空「.......!また来る.......!!」
再び自分の身に降りかかった危機に背筋が凍りつく。
あの体内で何らかで生じたエネルギーを圧縮して打っていると考えた。恐らく、ゼーレが斬撃を圧縮して高速に放っているのと同じ理屈なんだろう.....。
この広い部屋の半分がエネルギーの衝撃波によって破壊されたことを考えると、今度こそ喰らえばお陀仏だ。そうならぬよう、片手剣をしっかりと構える。
そして、瞬きをした瞬間、黒い生物の体は一気に萎んだ。
空「(来る!)」
極大のエネルギーがこちらに迫り来ることを察知すると、空の元素は雷から岩に変化し、自分の体と剣に岩元素を纏った。それと同時に全身に説明できない圧力が襲いかかる。
岩元素を体に纏っているはずなのに、全身の骨が折れるかのような痛みを感じた。少しでも気を抜いたら意識と体がエネルギーに乗って壁に打ち付けられそうだ。
空「うっ......ぐっ........あああああ!!!」
思わず声を上げてしまう。痛みに対する本能の抵抗だ。
骨がへし折れぬよう、腕に力を集中させながら片手剣に魔物から放たれたエネルギーを集中させる。いよいよと限界と察した時、存分に腕を振った。
岩元素を体にまとうことで衝撃波に吹き飛ばされぬようにし、剣に纏った岩元素はカウンターとしてエネルギーを跳ね返す。これほどの破壊力は目の前にいる怪物にも効いたようだ。
エネルギーの全てが魔物に衝突した瞬間、肉体の半分が消し飛び、後方の壁に亀裂が走る。
「ギギャアアアアアアアアアアア!!!!」
これまで聞いたことがない悲鳴が円形の空間に響き渡る。多大なる隙が生じた怪物に空が接近し、喉に片手剣を突き刺す。
体の全体から湧き出す力を中央に集中させると、力が指先から解き放たれ、それは刃物に伝わった。
そして、刃先から染み出た力は一瞬で攻撃性を孕んだものへと変化する。剣の一振のような攻撃の波が筋肉、臓器、骨を駆け巡り、そして、表皮を突き破る。数十本の細かな斬撃が魔物に大ダメージを負わせている。胴体を消した時よりも鼓膜を突き破るかのような悲鳴をあげた。
この瞬間、空はゼーレと同様、律者の斬撃を発生させたのだ。
5-6[完]