台本書き
駄文
オリキャラ(複数人)
独自設定
エウルア「......?」
エウルアは今、奇妙な出来事の連続で困惑している。自分の目の前には、腕を掴まれ、驚いているゼーレと腕を掴んでいる灰色の巨大な魔物。それらがそのポーズのまま急に動かなくなったのだ。死んでいるわけでもなく、その2人だけが時が止まっているように思えた。
エウルア「何が起きたのか分からないけど......。私に出来ることをやらなくちゃ...!」
自分は一度にならず二度までも助けられた......。魔物が動かないのなら、私にだって...!ーーー
思えば、なぜ今自分の姉がここにいるのかがわからない。意識を失う前は互いに剣を向かえていたのに...。
そう思いながら、エウルアは地面に落ちていた大剣を拾い上げ、武器に氷元素を纏う。そして、魔物の背後から心臓目掛けて突き刺す。すると、突如それが合図かのように1人と1匹が動き始めた。
「グオアアアア!!!!」
動き始めるな否や魔物が自分が貫いている大剣の刀身を掴みながら、痛みで叫ぶ。それは痛みの悲鳴にも聞こえるが、何故か憎しみの怨嗟も感じた。
ゼーレは現実世界に魂を呼び戻した次には、魔物の心臓から飛び出した刀身を鷲掴み、そのまま、大剣を横にスライドして、体を斬った。鋭い刃が右肺と肋骨と筋肉を切り裂き、体から飛び出す。それをゼーレは大剣のグリップを掴み直した。
「貴様ぁ!!!」
貫いた傷も、たった今、付けた傷も治っていない。本当に超再生の力が消えていた。
ゼーレ「(再生しない!通る...!ダメージが...通る!!!)」
その時、ゼーレは灰色の怪物の心臓部分に氷が付着していることに気づく。エウルアが突き刺した時についたのだろう。すぐさま、自分の左拳に炎をつけると心臓の氷目掛けて、パンチを繰り広げる。
ズガァン!!!ーーーーと、そんな不思議な轟音が城に鳴り響く。魔物の体の右半分がえぐり取られたかのように消滅していた。
「!?(まさか...衝撃波か!!!)」
エウルアの氷とゼーレの莫大な炎元素が反応し、発生した衝撃波によって魔物の肉体を半壊させたのだ。そのまま、勢いに負けた魔物の体は城壁を貫通して、シールド湖に落ちていく。
衝撃波は怪物に留まらず、城内部にも伝播していく。操作を誤ったゼーレは間違えてモンド城の右半分の城壁を全て破壊してしまったのだ。勿論、城壁の周りにあった家も崩れ去った。
「キャッ!!!」
崩壊する音の中に、少女の悲鳴が混じっているのを2人は聞き逃さなかった。
ゼーレがその方向を振り向くと、まだ幼い幼女が落下していく瓦礫の中にいるのが見えた。
ゼーレ「(女の子...!?もしかして逃げ遅れた...!?)エーーー」
自分は湖に落ちた魔物を追わなければならない。ならば、落ちていく少女をエウルアに対応しなければならないため、妹の名を言いかけた時、エウルアは既に動き出していた。ゼーレの真横を通り過ぎ、落下中の瓦礫を足場に駆け上がり、少女を抱きしめる。
ゼーレ「...!エル...」
なるべく、幼女に衝撃が行かないよう、膝を曲げながらエウルアは着地した。
「あ、ありがとう...」
少女が涙目になりながらも、エウルアに感謝を述べる。そんな彼女は言葉を喋らず、その代わりに少女の顔を覗き込む形で口角を上げた。
ゼーレ「エル...ありがとう...。あなたもモンド城から避難してちょうだい」
エウルア「え...?」
ゼーレ「私はあいつにトドメを刺してくる。生半可な攻撃じゃだめ...。もしかしたらあなたを巻き込んでしまうかもしれない...」
エウルア「また...私の元から消えていくの......?」
ゼーレ「......」
ゼーレは黙っていた。だが、ふとエウルアの肩を掴む。
ゼーレ「大丈夫。お姉ちゃんはもう何処にも行かない」
エウルア「...。その言葉...信じるわ」
そうして、エウルアは踵を返して、少女と共に門へと向かった。それを確認したゼーレは瓦礫の中にある氷の破片を拾うと、シールド湖の岸へと移動する。
ゼーレ「はぁ......ふぅ......」
身体中の全ての酸素を交換する程の深呼吸を1回。そして、ゼーレは勢い良く、湖の中に飛び込んだ。
ひたすら、底を目指していく。すぐに魔物の姿が見つかった。
「(ゼーレ...ローレンス!!!貴様!!)」
魔物との距離が1mも満たない時、ゼーレの脳内に魔物の声が届いた。世界樹を通して、言葉を送っているようだ。
抵抗する腕も足もないため、簡単に魔物の懐に潜り込めた。そして、魔物の胸に勢いよく氷を突き刺す。
「(氷!?なんだ!?)」
すると、ゼーレの左腕が急激に赤く光る。再び、左腕に火を灯していた。水の中だろうと過剰な炎が熱さを周りに伝えている。
「(炎...!...ふっ。あの火柱でもこの私を殺しきれなかったことを忘れたのか?)」
ゼーレ「(バカね。今はあんな過剰な火力なんて必要ない。再生能力を使えない状態なら......尚更ね)」
「(...!!こいつ...!まさか、炎で俺の心臓を消し飛ばすつもりか!)」
魔物がゼーレの企みに気づく。ゼーレのニヤッとした悪魔のような笑顔を見せると、胸筋に炎の打撃を打ち込んだ。
●
ゼーレは再び魔物の石で出来た精神世界に立っていた。それが何故なのか分からない。魔物が最後の抵抗として引きずり込んでのか、はたまた...。
ただ、一回目とは違い、鎖で吊るされていた部屋の中ではなく、世界の中心に生えている不正形の世界樹のすぐそばに位置している。青白い光によって空間を照らしていた世界樹は巨大な炎に包まれて、燃えていた。樹だけじゃない。周りの地面にも燃え移っており、世界全体が火事現場と化している。
燃焼によって生じた燃えカスが天井に舞う中、ゼーレのすぐ足元には灰色の肉塊が石の地面に無造作に置いている。それは魔物の残骸だった。あの筋肉隆々の巨大な怪物の姿の見る影もなく、人間の吐瀉物かのように無惨な姿になっていた。衝撃波によってボロボロにされた体に打ち込まれた炎の左腕がトドメとなったのだ。心臓を消し飛ばされ、精神世界も崩壊していく。魔物の輪郭から肉塊から分離していくカスが浮かんでいる。この世から消滅するまでもう5分もない状況だった。
ゼーレはそれをただ見ている。何も喋らない。何もしない。ただただ、それを上から見ていた。
「...。終わりのようだな......」
ゼーレ「ええ、終わりよ」
短く、そう言う。
「最期に教えろ...。なぜ、貴様はあの時、私に手を差し伸べた......?」
ゼーレ「言ったでしょう?あなたは知らないだけだと。誰だって、運命っていう決められた道を歩むことに納得する人なんていない。あなたはそれを知らないだけ...いや、知りたくないだけなのよ」
「......。分からんな、お前のその言葉も...。人間というものも。所詮はこのテイワットの文明も砂の城...。滅びて、そして再び建つ。それだけの話...。人間もその1つの歯車に過ぎない。貴様とて、その1つだろうが...!!」
ゼーレ「やっぱり......ダメなのね」
ゼーレは小さくそう呟いた。その顔には悲哀が込められている。
「いや...。知ったところでの話だろう。可能性とか...道を掴むとか...。そんな言葉を知ったところで...アビス教団も所詮そのひとつだと知ったとて...変わらない」
そんな時、ゼーレは地面に片膝を着き、手で、かつて魔物だった肉塊を拾い上げる。そして、立ち上がった。
「なんの真似だ......」
ゼーレ「私だって最初はそうだった...。だけど、そうじゃないってみんなが教えてくれた...。誰だって最初は完璧なんかじゃない。心の拠り所をエルが教えてくれて...役割という言葉をブローニャとイポスルが教えてくれて...そして、こんな私に向き合ってくれたブエル...旅人...パイモンが居たから私がここにいる。こんな安っぽい言葉でしか表せないけど......私は確かに人間の心があって...暖かい」
「なんだ...?これは...。これから死にゆくのに...恐怖は感じない。むしろ......温もりを感じる...?そうか...これが......」
魔物の体にはもう感覚器は残っていない。だが、何故か肉体の内側からじわじわと温かさを感じている。それは、暖炉の傍にいるようだった。
「ふ...ふふ...。貴様の言う通りだな...。私は今際の際で知らなかった。知ろうともしなかった。だが...それを今知った...。この暖かさが人を強くし、前へと進ませているのだな...。もっと、これを早く知っていたら...」
魔物の体はもう数秒もすれば崩壊する。そして、ゼーレにしか聞こえない声量で最期の言葉を言い放つ。
「もし......生まれ変わりというものがある......のならば......今度は......貴様の......ように......」
完全に塵となった。燃えカスのようにただひたすら上へと舞っていく。ゼーレは左拳を強く握り、天井を見上げた。主を失った世界が崩壊するまで、かつて魔物だった塵を見届けていた。
●
ガイア「ふっ...!よいしょっと......」
ガイアは意識を取り戻すと、自分を覆っていた土の塊を押しのけて立ち上がった。
ガイア「...!なんだ......これは...。何が...起きたんだ...」
自分の目の前に広がっている光景は際限なく広がる茶色の世界だった。草が生い茂っていた草原は衝撃波によって全てひっくり返され、数十本の小さな亀裂が東から西へと横断している。
ガイア「これも全部...あの魔物のせいなのか?」
ガイア以外にも土の山から意識を取り戻した団員が次々と立ち上がってくる。そんな時、自分から数メートル先にジンが座り込んでいることに気づいた。彼女は地面に片手剣を突き刺し、それを支えにしながら、腹に手を当てていた。
ガイア「お、おいおい...。な、何があったんだ...?」
普段、掴めない性格でフワフワしているガイアでもこの光景に絶句している。
ジン「あ、ああ...。ガ、ガイアか...。無事だったのか......?」
ガイア「俺は背中を強打した以外なんともない...。それよりも...腹が痛むのか?」
ジン「そ、そうだが...大丈夫だ。意識を失うほどでもない」
ガイア「そうか...。それならいいんだが...。あの魔物はどうした?姿が見えないが...。もしかして、俺が意識を失ってる間に追い払ったのか?」
ジン「め、名誉騎士が...討伐してくれた...」
ジンが震える指で前方向を指さす。その先を見ると、血まみれの空が地面に倒れていた。
ガイア「...生きてるか?」
空「ふぅ......なんとか...」
空が草原に大の字に倒れている。血まみれの顔面のまま、ため息を吐きながら、曇天を仰いでいた。
ガイア「それなら良かったな...。そんな出血して生きてる方が珍しい...。流石はモンドを救った英雄と言ったところだな。俺のポケットに余った包帯があるから巻くぞ?」
空「いや、それは...別に......いいや。傷はもうとっくに治ってる...。単純に、反動で......力が出ないんだ....」
ガイア「傷が.....治った?おいおい、冗談はよーーー」
ガイアの言葉は突然、鳴り響いた轟音によって遮られた。それは、石が粉々になり、地面に下落する音だった。そんな音がモンド城から聞こえてくる。草原にいた、気絶していない人間全員がそっちを向く。
ここから見て、分かる程、城の右半分全ての城壁がクッキーのように簡単に崩れ去る光景が目に飛んでくる。城壁が崩壊したことによって、見えた城の内部は衝撃波によって城の半分が更地になった姿だ。
空「なっ...!」
ジン「城が...!!」
ありえない光景を目にした空は、動かない体を無理やり動かして、上半身を起こす。
空「(もしかしてさっきの斬撃が効かなかった...!?)」
そんな不安がよぎる。
「お、おい...城が...!!」
「ど、ど、どうするんだよ...!!」
阿鼻叫喚の光景にパニックになった団員は頭を抱え、次々と焦り始める。
だが、そんな時、空は湖に落ちていく城壁の瓦礫の中に灰色の物体が混ざっていることに気づく。すぐにそれは魔物だと分かった。そして7秒後に、続いてゼーレと思われる女性が湖に飛び込んでいくのが見えた。
「お、おい!誰かこっちに走ってくるぞ!」
空が呆気にとられていると、とある1人の団員が、橋の方向を指さして、高々に声を上げた。その方向を見ると、確かに1人がこちらに迫り来ていた。空が目を凝らす。
よく見ると、1人ではなく、背中に小さな女の子がいる。おんぶをしている人を見ると、それがエウルアだと気づいた。
空「...エウルア!?」
そう、エウルアだった。エウルアは少女を抱えながら、ボロボロになった石橋をパルクールのようにジャンプして、こちらに到着する。
ジン「エウ...ルア...!?目覚めたのか!?」
「エウルア隊長!?」
誰しもがエウルアの登場にざわついている。そんなエウルアは息を切らしながら、少女を降ろし、ジンに目を合わせる。
エウルア「はぁ...はぁ...い、今の...状況は......?」
ジン「...!アビス教団から送られた魔物の軍勢は私達で殲滅した。残るは...あの謎の強力な魔物だけだ...」
エウルア「そう...。あの魔物は今...私の姉さんが...戦ってる...。今からトドーーー」
ドボォォォォン!!!!ーーーー
そんな時、シールド湖の水面から巨大な水柱が上がった。その水柱から打ち上げられた水滴が雨となって、モンドの自然に降り注ぐ。当然、空達のいる全員にも降り、ずぶ濡れになった。
空「な、なに......?」
エウルア「姉さんが...やった......の...?」
水柱はいずれ威力を失い、いつも通りの湖に収まった。
もし、この衝撃の原因がゼーレによるもので、もうすぐでトドメをさせる所まで来ているものなら、きっとこれで勝負が着いたはずだ。もうすぐでゼーレの姿が水面に見つかるはず....。だが、いつまで立っても見つかることはなかった。
空「ゼーレが...上がってこない...!!」
ジン「一体...」
エウルア「っ......!!」
すると、エウルアが自分の靴を脱ぎ、裸足のまま、湖の方向に走り始める。
空「エウルア!?どこに行くの!?」
空がすかさずエウルアを呼び止めた。だが、聞こえてないのか、無視しているのか、彼女が止まることなく、シールド湖の中に飛び込んだ。
エウルア「(熱...!)」
エウルアが湖に入水した瞬間、熱さが肌に伝わってきた。普段、冷たい水だが、今この瞬間は温泉のように熱い。きっと、ゼーレが発した炎が湖全体を暖めたのだろう。だが、耐えれない程でも無い。この時のエウルアはそれを対して気にしないほど、切羽詰まっている。
どんどんと湖の底に潜っていく。潜って行く事に水柱によって打ち上げられた城壁の残骸が底に沈んでいく地帯に突入した。それを素手で押しのけ、薄暗い闇を潜航していた時、エウルアの視界の隅に鉄の塊が通り過ぎた。それを、思わず掴む。
エウルア「(これって...姉さんの...!)」
エウルアはすぐにそれが何なのか理解した。ドロドロに溶けた細長い鉄の塊、それはゼーレの右腕にはめていた鉄の腕カバーだ。
エウルア「(近くにいる...!)」
きっと、炎で溶かされて、衝撃で浮上したのだろう。この手がかりがあるということは目的地は近くということだ。
エウルアはすぐに真下に向かって、全力で足と手で水をかき分ける。そして、ゼーレを見つけた。
エウルア「(....!!)」
ずっと、夢を見ていた。姉さんの過去を見てきた。嫌という程...。何回も。そして、知ったんだ。姉さんが私を庇って、人生の十数年を潰した事と、最悪な未来を実現させないために、右腕を犠牲にした事を。私は、そんなことを知りもせずに剣を向けてしまった。必死過ぎたんだ...。だから、話したい。私達はまだ引き返せる...!!
私の......姉さんに対する復讐はまだ終わってはいないーーー!
あの魔物も死んだ...。きっと、魔物の軍勢の戦いも終わっただろう。そう...全部が終わったんだ...。後は、旅人と...エルの元に行くだけ...。だけど、体が動かない。何故か、心地いい...。このまま眠ってしまいたい...。エルに、絶対に帰ってくるって言ったのに...!また....私は...。...私は!いや...違う。これは間違ってる。また、私はあの子を置いていくの...?違う...!
意識が薄れ、体が底に落ちていく体。それに喝を入れ、目を見開き、あの銀色の波を打つ水面に向かって上がっていく。その時、こちらに近づいてくるエウルアに気づいた。
ゼーレ「(エル...!)」
お互いの存在に気づいた時には、2人の口角は自然に上がっていた。ゼーレが左手を伸ばす。そして、2人の手が触れ合う。そのまま、エウルアがゼーレの体をつかみ、水面に向かった。
エウルア、ゼーレ「「ぷはぁ!!」」
暗く、生ぬるい水の世界から戦場に戻る。2人は口を大きくあげて、体内に酸素を供給した。そして、ゼーレをバックストラップキャリーで岸まで上げ、肩に手を回し、みんなの元へ近づく。
空「エウルア...!それにゼーレ...!」
空は足を引きずりながら、ジンは腹に手を当てながら、2人に接近する。
ゼーレ「ジ...ジン...。こっちは...決着が着いた...わよ。そ...そっちは...」
ジン「大丈夫だ。こちらも魔物の群れを無事、撃退した」
ゼーレ「そ...そう...。それは......良か......った」
ゼーレはそう呟くと、バタンと音を立てながら、地面に倒れ込んだ。
エウルア「姉さん...?姉さん...!!」
空「気絶...してるね」
ジン「騎士団!私達はアビス教団に勝利した!救護班を呼んでくれ!負傷者を城に運ぶ!」
この日、モンドで勃発したアビス教団との戦い。この戦争の勝利の戦績は数百年続くモンドの歴史に大きく刻むことになった。
5-13[完]