間章3幕『苦海にもがく黒氷』   作:せっせこパパイヤ

38 / 38
以下の要素を含みます↓
台本書き
駄文
オリキャラ(複数人)
独自設定


エピローグ

アビス教団との戦いが終わり、早2週間。街に目をやると、昼間には大工達が忙しく城の復旧作業に取り掛かっている。倒壊した家も徐々に立っていき、存在していなかった城壁も後1週間もすれば出来上がるだろう。

 

 

か細かった物資も他国からの援助で今のところ困っていない。騎士団の重傷者は全員意識を取り戻し、軽傷者は全員復帰を果たしたとジンから聞いた。

 

 

ここ数日、暗い気持ちで城の復旧を手伝っていたが、だいぶ余裕が出来てきた。間違いない。モンドは徐々に立ち直ってきている。

とある日の昼過ぎ、ふと城門前の通りを空とパイモンが通るとワーグナーの鍛冶屋の近くにエウルアが立っていた。

 

 

パイモン「あっ!あれって、エウルアじゃないか?」

 

 

エウルア「ん?あら、旅人にパイモンじゃない。君達の姿を最近見かけてなかったのだけど、まだモンドに滞在していたのね」

 

 

エウルアは自分達に背を向けていたが、名前を呼ぶ声に振り返った。

 

 

空「まあね。まだまだモンドも復旧に時間がかかりそうだし、俺達も名誉騎士として手伝っているよ」

 

 

パイモン「今日も瓦礫の撤去とか物資の運搬とかやって、体が疲れたぞ...。エウルアは、ここ最近何をしていたんだ?」

 

 

エウルア「私?一応、体を休めていたわ。そして、今日がいよいよ私の復帰日よ。当然、騎士団のね」と、少し誇らしげにそう答える。

 

 

パイモン「そうなんだな。エウルアも復帰かぁ...。ん?待てよ...。じゃあ、なんでこんな所にいるんだ?もしかして、遊撃隊も復旧作業に加わっているのか?」

 

 

エウルア「今日と言っても、復帰は午後からよ。私はそれまでに少しやりたいことがある」

 

 

パイモン「やりたいこと?」

 

 

パイモンは首を傾げる。

 

 

エウルア「ええ。すぐに分かるわ」

 

 

エウルアはそう呟くと、忙しく手を動かしているワーグナーに向き直った。

 

 

エウルア「あなたに渡した素材で同じ武器を作れる?」

 

 

ワーグナー「ああ」

 

 

素っ気ない返事だ。ワーグナーは今、高温になったオレンジ色の鉄を叩いている。普段口数が少ない彼が、作業中となればぶっきらぼうになったとしても違和感はないだろう。

 

 

空「もしかして、武器を作ってもらってるの?」

 

 

エウルア「そうよ。まさか、遊撃隊の隊長とあろう人物が訓練用の大剣を使っているとは思わないでしょう?陰でまた、ローレンス家の人間は一流の武器さえも用意できないほど落ちぶれたのか...って馬鹿にされるに違いないわ。見てなさい、私が飛びっきりの復讐をしてあげる」

 

 

彼女は腰に手を当てて、胸を張った。空はいつも通りのエウルアが見れて、なんだか心がホッとなったような気がした。

 

 

パイモン「そっか...。エウルアのあのお気に入りの武器はデーヴァーンタカ山で粉々になったんだよな...。同じ武器を作ってるって言ってたけど、可能なのか?」

 

 

エウルア「同じ材料を運んでくれば...の話ね。あの大剣の刃には魔晶が使われているの。しかも、とびきり純度が高いの物ね...。私が代わりに材料を持ってきて、優先的に武器を作ってもらう事にしたのよ」

 

 

パイモン「なるほどなぁ...。でも、武器なんてそんな1日でできるものなのか?」

 

 

エウルア「それって後、何日すれば作れるの?」

 

 

徐々に広がっていく鉄の棒に目線を落としながら、ワーグナーに聞いた。

 

 

ワーグナー「さぁな...。でも、明日には完成してるぞ」

 

 

ワーグナーがぶっきらぼうに答える。

 

 

エウルア「だ...そうよ。仕方ないわね。今日は訓練用の大剣を使うことにしましょうか」

 

 

ワーグナー「あ、騎士さんよ。これ」

 

 

するとワーグナーが棒に叩きつける手を止めないまま、エウルアに紙切れを渡した。

 

 

エウルア「これは?」

 

 

ワーグナー「支払い料金だ。素材を持ってきてくれたのと、あんたが毎日頑張ってることを鑑みて割引してる」

 

 

エウルア「ふぅん...ありがとう」

 

 

エウルアは納得したようでそれを受け取る。すぐ様、ワーグナーは武器を作るのに集中し始めた。

 

 

そんな時、空はゼーレが街角から姿を現したことに気づく。隣にはアンバーも居た。2人は遠目から見ても分かるほど、楽しく会話している。

 

 

そんなアンバーもエウルアに気づくと、ゼーレを置いてこちらに駆け寄ってきた。

 

 

アンバー「エウルアー!」

 

 

エウルアの名を叫びながら、押し倒す勢いで彼女を抱きしめる。

 

 

エウルア「アンバー...!ちょ、ちょっと!暑苦しいわよ...」

 

 

アンバー「えへへ!ごめんごめん!」

 

 

まるで反省していないかのような口調でエウルアから離れた。続いて、ゼーレもこちらに近づいてきた。彼女は物が入っている紙袋を握っている。

 

 

エウルア「あら、姉さん。随分早かったのね」

 

 

ゼーレ「ええ。はい、これ。頼んでた物よ」

 

 

エウルア「ありがとう」

 

 

紙袋を引き渡すと、すぐにエウルアは中身を確認する。品定めするかのように数秒間見つめると、すぐに封を閉めた。

 

 

パイモン「その紙袋...中身はなんなんだ?」

 

 

エウルア「ん?...えーと、色々よ」

 

 

エウルアははぐらかし、明確には答えない。

 

 

パイモン「なんだよそれ...」

 

 

空「というか、なんでアンバーとゼーレが一緒に居るの?」

 

 

ゼーレ「たまたま、そこで会ったのよ。突然この子が話しかけてきて、そこから話が弾んだの」

 

 

アンバー「偶然、エウルアのお姉さんと会ってね。ついつい、話しかけちゃったんだ!」

 

 

ゼーレ「エル、この子と親友ですってね」

 

 

エウルア「そ...そうよ!」と、頬を赤らめる。

 

 

ゼーレ「あらあら、恥ずかしがっちゃって」

 

 

エウルア「コホン...。それで、姉さん。これが武器代よ。本当に姉さんが買ってくれるの?」

 

 

ゼーレ「ええ。私が折ったのだから、私が弁済するべきだわ」

 

 

エウルアから渡された紙を貰い、ペラりと紙をめくる。その瞬間、ゼーレは目玉が飛び出る勢いで目を見開いた。

 

 

ゼーレ「さ...3...8...万...モラ!?!?!?」

 

 

思わず、2度見する。だが、数字が変化することがなかった。

 

 

エウルア以外の全員が驚いた。

 

 

パイモンがゼーレの後ろに回り込み、紙を覗くと彼女と同じ反応になる。

 

 

エウルア「だから姉さんが買う必要性はないって言ったのに...。私、騎士団の給料を結構貰ってるから新しい武器を買うぐらいどうってこともないのに」

 

 

ゼーレ「は、初めて見る額だわ...」

 

 

紙を地面に落とし、背骨を抜かれたかのようにへなへなと近くの階段に座り込む。

 

 

ゼーレ「よ、良くて2万ぐらいだと...。ど、どんな素材でつくってるの!?あの大剣に!」

 

 

パイモン「確か、最上級の鉱石だったよな?」

 

 

パイモンはエウルアを見る。エウルアは小さく頷いた。

 

 

エウルア「もういいわよ、姉さん。モラなんて持ってないんでしょう?」

 

 

ゼーレ「い、いや...。わ、私に二言はないわ!絶対に私が稼いでくるわよ!」

 

 

エウルア「...どうやって?手に職つけてないのに?」

 

 

ゼーレ「ど、どうにかするわよ!」

 

 

エウルア「どうやら...」

 

 

エウルアは目を閉じて、やれやれと言わんばかりの様子だ。その時、自分達の後ろで少女の声が聞こえてくる。

 

 

「あ、あのー...」

 

 

振り返るとそこにはフローラが立っていた。

 

 

ゼーレ「あなた、確か...」

 

 

エウルア「あら、フローラじゃない。どうしたの?」

 

 

フローラ「あ!青髪のお姉ちゃん!久しぶりに見た!」

 

 

フローラはエウルアの存在に気づくと、笑顔になる。

 

 

フローラ「どうしたの?最近、お花を買いに来ないから寂しかったんだよ」

 

 

エウルア「ごめんなさい。ちょっと...ね。それに、もう花を買う必要が無くなったの」

 

 

フローラ「え...。そんな...」

 

 

フローラの顔は悲哀に満ちた。

 

 

ゼーレ「その離れ離れの姉が見つかったからよ」

 

 

その時、ゼーレが2人の間に割り込む。

 

 

エウルア「えっ...?姉さん、知ってたの?」

 

 

ゼーレ「ええ。偶然、フローラの花屋に来てて、その時に知ったわ。あなたが私のために定期的に花を買ってくれたことに...」

 

 

フローラ「この前、買いに来たあなたがエウルアお姉ちゃんのお姉ちゃんだったんだね...!」

 

 

ゼーレ「うん。この前は素敵な花をありがとう。質の良い花だったわ。手入れも行き届いてる」

 

 

フローラ「ふふ、フローラはお花だったら、誰にも負けないよ」

 

 

ゼーレ「エルがお花を買う必要は無くなったけれど、せっかくこんな素敵な花屋に出会ったのに勿体ないから、私がこれからも通い続けるわ。安心して」

 

 

フローラ「ありがとう...!」

 

 

ゼーレは自然と口角が緩んだ。フローラと同じ目線までしゃがみ、少女の頭に左手を置く。

 

 

ゼーレ「そう言えば、なんでここに来たの?私の姿が見えたから?」

 

 

フローラ「そうだよ。フローラを助けてくれたことにお礼を言おうと思って」

 

 

ゼーレ「お礼...?あぁ、あの時のことね」

 

 

パイモン「あの時のこと?どういうことだ?」

 

 

パイモンがすぐに聞き正す。

 

 

ゼーレ「私があの魔物と戦っている時、この子を助けてたの」

 

 

フローラ「そうだよ。お姉ちゃんが助けてくれたおかげだよ。ありがとう!青髪のお姉ちゃん!」

 

 

フローラは少女特有の天真爛漫な笑顔をゼーレに見せる。

 

 

ゼーレ「...!」

 

 

フローラ「じゃあ、もういくね!じゃあね!」

 

 

フローラは自分達に手を振りながら、瓦礫がまだのし上がっている場所に消えていった。姿が消えるまで、空とパイモンも手を振り返した。

 

 

エウルア「姉さん...?」

 

 

肝心のゼーレはしゃがみ込んだ状態のまま、フローラが消えていった方向をずっと見つめていた。

 

 

ゼーレ「.....」

 

 

パイモン「ゼーレ?固まってどうしたんだ?」

 

 

ゼーレがゆっくりと立ち上がる。だが、決して視線を変えないままだった。

 

 

ゼーレ「エル。私、たった今決めたわ。今から騎士団本部に行ってくる」

 

 

エウルア「な、なんで...?というか、決めたって何を...?」

 

 

そして、ゼーレが振り返って、エウルアを見る。彼女の目には確固たる意思が映っていた。

 

 

ゼーレ「私......騎士になるわ」

 

 

エウルア「え...?」

 

 

パイモン「えぇ!?!?」

 

 

空「と、唐突だね...」

 

 

ゼーレの急な言葉によって一同、騒然とした。

 

 

ゼーレ「今、フローラのありがとうを聞いて、私の心に響くものがあった。心地よいもので...何より温かい...。何かこう...上手く言葉に言い表せないけれど...」

 

 

エウルア「......」

 

 

唐突な志にエウルアは内心驚きながらも、ゼーレの心変わりに納得したのか、黙って聞いていた。

 

 

ゼーレ「旅人とパイモンには喋っていなかったけれど、実はジンと話した時に騎士団に入らないかって誘われたの。私は怖くて、その場では断ったけれど...。いつでも歓迎するって言われたから、私...行ってくるわ」

 

 

エウルア「そう...なのね。私も姉さんが騎士になりたいって言うなら、全力で応援するわ」

 

 

パイモン「びっくりしたけど、そうだったんだな。オイラも全然いいと思うぞ。旅人もそう思うよな?」

 

 

空「うん。いいと思う」

 

 

「エウルア隊長ー!」

 

 

その時、遠くからエウルアの名を呼ぶ声が聞こえる。見ると、路地から数人の団員がやってきた。

 

 

エウルア「あなた達...!」

 

 

空「この人達は?」

 

 

エウルア「私の部下よ」

 

 

「エウルア隊長。今日がいよいよ、遊撃隊の復帰日ですね。ジン団長からそう言われて、隊長を探したんですよ」

 

 

エウルア「そうだったのね。私が居ない間、よく頑張ってくれてありがとう。迷惑かけたわね」

 

 

「いえいえ!とんでもない!もう、任務に行きますか?」

 

 

エウルア「そうね、任務開始は午後からだけど、あなた達のためにもう今から始めましょうか」

 

 

「はい!」

 

 

団員達が元気よく、言葉を発する。

 

 

エウルア「ごめんなさい、姉さん。少し早いけれど仕事に行くわ。また、後で...」

 

 

ゼーレ「ええ、また後で」

 

 

そうして、エウルアは城の外へ、アンバーは復旧作業をしている団員達の中へ行く。その場に残されたのは、空とパイモン、そしてゼーレだけだった。

 

 

ゼーレ「ふぅ...。さて、私は今から騎士団本部に行くわ。少し、あなた達と話したいことがある。着いてきて」

 

 

空「わかった」

 

 

そうして3人は騎士団本部を目指す。かつて噴水があった所であろう場所を通り過ぎ、まだまだ整備が整っていない階段を上る。ゼーレはずっと城壁の向こうにあるシールド湖を見ていた。城壁はまだまだ完成しておらず、木の枠組みの向こうにある青い湖を眺めている。

 

 

ゼーレ「とりあえず、一件落着...と言ったところね」

 

 

突然、彼女がそう呟いた。

 

 

パイモン「そう...だな」

 

 

ゼーレ「だけど、これで決着が着いたわけじゃない。まだまだアビス教団は力を蓄えてる。これからもテイワットとアビスの対立は続いていくわ」

 

 

空「結局はこの戦いはアビス教団の黄金の意思っていう一派閥でしかないからね。それはそうとして、お疲れ様」

 

 

ゼーレ「ふぅ...モンドの滅亡っていう最悪のシナリオを回避出来たのはいい事ね。いまいち、達成感が湧いてこないというか...。これからも続いていく憂鬱というか...」

 

 

パイモン「黄金の意思ってどこかに聞いたことがあると思ったら、あのことか!オイラ、あの穴に入った訳じゃないからな...。良かったら、あそこで何が起きたのか教えてくれよ。まだ、あの怪物の正体が何なのかいまいちわかってないんだ」

 

 

ゼーレ「そう言えば...パイモンはあの場にはいなかったわね。いいわよ。黄金の意思とか、全部言いくるめて説明するわ」

 

 

ゼーレは若干足の回転を緩めて、説明し始める。

 

 

ゼーレ「500年の厄災が起きる前の前...カーンルイアには、レインドットという天才的な錬金術師が居た。彼のおかげでカーンルイアの技術が発展していき...そして、周りの人間は彼に魅了されて行った...。その熱狂的な信者で構成されたのが黄金の意思よ」

 

 

パイモン「そうだったんだな...。それが巨大な派閥となって、モンドの殲滅を企んでいた...ってことだな?」

 

 

ゼーレ「ええ。奴らの目的の1つにレインドットの作り出したものを、再び現世に復活させるというものがある。だけど、奴らはどれだけ力を注いだ所で彼には到底届かない...。そして、気づいたのよ。律者の力が鍵ということに」

 

 

パイモン「鍵...?どういうことだ?」と、思わず聞き返す。

 

 

ゼーレ「彼が生み出した同等の生物...あるいはそれ以上の力を生み出せる鍵...ね。レインドットの最後の作品を奴らは最高傑作と呼んでいるらしいわ。その最高傑作の肉体と律者の魂を組み合わせた時に、テイワットの法則から外れ、人智を超えた者になれると...。そして、あの穴から出現した魔物のこそが律者の力3つとヒルチャールの肉体によって作り出された最高傑作らしいわよ」

 

 

パイモン「えっ!?あいつがか!?律者の力が3つ入ってるって...そんなこと有り得るのか?ゼーレの中にある律者の力は封印されてるじゃなかったのか!?」

 

 

ゼーレ「奴らがどうやって律者の力を探し出して、封印を解いたのか、未だに分かっていないわ。ここら辺も調べる必要があるわね」

 

 

パイモン「そうなんだな...。でも、アビス教団の野望も消えたのなら、とりあえずは安心だな。あっ...でも待ってくれ。じゃあ、戦いの前に出現したあの巨大なヒルチャールはなんだったんだ?それもその派閥の奴らの仕業なのか?」

 

 

2度出現した、あの人間の言語を話す巨大なヒルチャール。結局、何も分からずしまいだった。

 

 

ゼーレ「そう言えば、そうだったわね。これに関しては憶測の域を出ないわ。証拠品が私達の記憶とこの謎の残骸だけだものね」

 

 

ゼーレはそう言うと、ポケットから何かを包んである白色の布を取り出す。紐を解くと、中から黒い砂が出てきた。あの巨大な魔物の残骸だ。時間がたった今でも、ススは漆黒を纏っている。

 

 

ゼーレ「私が聞いた奴らの会話を考えるに...あの黒色の球は最高傑作の力を抽出したものよ。そして、この砂はその力のカス」

 

 

パイモン「もしかして、その力を飲み込んだからヒルチャールは強くなったし、人間の言語を話すようなったのか?」

 

 

ゼーレ「その通りよ。だけど、あんな邪悪な力をたかがヒルチャールに耐えられるわけが無い...。''中途半端な進化''によって、奴らは仲間を傷つけたのよ...」

 

 

パイモン「......。酷い奴らだな...。そこまでしてやることなのかよ...」

 

 

ゼーレ「それがアビスよ、パイモン。意思と思考が人間だけのただの怪物」

 

 

パイモン「それで...その残骸をどうするんだ?それって力の名残だけど、僅かにはあるんだろ?それを捨てる訳には行けないよな」

 

 

ゼーレ「そうね...」

 

 

ゼーレは黙った。黒いススを見つめ、これをどう処理するか迷っているようだ。もし、これを悪用しようとする輩も現れるかもしれない。そして、数秒経った時、突如ゼーレがそれを口に入れた。

 

 

パイモン「えっ!?!?」

 

 

空「ゼーレ!?何しているの!?」

 

 

力の残骸が全て口の中に入ると、味をあじわうようにゆっくりって咀嚼する。噛む事にじゃりじゃりという音が響いた。

 

 

ゼーレ「あら...。意外と味は悪くないわね...。ビーフジャーキーみたいな味がするわ」

 

 

ゴクンーーー。

 

 

そして、砂は完全にゼーレの体内に取り込まれた。その間、空とパイモンは呆気に取られている。

 

 

パイモン「えっ...?へっ...?んっ...?」

 

 

パイモンは何が起きたのか分からないのか、現実を受け止めれてないのか、口をパクパクとしている。

 

 

空「食べるだなんて...。よく、口に入れられるね...」

 

 

ゼーレ「そこら辺に捨てるわけにはいかないでしょ?これが最適解。それに僅かに力が残ってるから、私の強化パーツとなっていただくわ」

 

 

空「でもさ、ゼーレ。どうするつもりなの?」

 

 

ゼーレ「ん?なんのこと?」

 

 

空「あの魔物には3つの律者の力があったんでしょ?魔物が死んだ今、3つの律者の力がまだ別の人の所に寄生し始めるかもしれない」

 

 

律者の力を宿してる者が死亡すると、また別の者に寄生するのが律者の力だ。空はそのことを心配していた。

 

 

空「しかも、今の今まで平和だったのってゼーレ以外の律者の力が封印されていたおかげなんでしょ?封印される前に魔物が死んだせいで、またどこかで律者が暴れるかも...」

 

 

ゼーレ「それは安心してちょうだい、旅人。残り3つの律者も''ここ''にあるから」

 

 

ゼーレはそう言うと自分の心臓部分に指をトントンとする。

 

 

パイモン「え...。それってもしかして...!」

 

 

ゼーレ「そ...。今、私の魂に全ての律者の力がくっついているわ」

 

 

空「ど、どういうこと?」

 

 

ゼーレ「私も詳しいことは分からない。魔物を倒して、3つの力が弱ったおかげで、自動的にくっついてきた...ってのが私の推測かしら」

 

 

パイモン「律者の力が増えた分、汚染も早く進むんじゃないのか...?」

 

 

ゼーレ「力が増えた...とは言っても、微々たる物よ。これっぽちも期待してない。元々、戦いによってボロボロに破壊されたおかげで、もはや残留レベルにまでに弱体化したからよ」

 

 

パイモン「そう...なのか...」

 

 

そしてとうとう、3人は騎士団本部に到着する。外に置いてあった療養テントは、既に撤去されていた。

 

 

ゼーレ「...。あなた達、これからどうするの?」

 

 

空「もう少しだけモンドに留まって、フォンテーヌに行こうかなって思ってる」

 

 

ゼーレ「そう...」

 

 

ゼーレは3段しかない階段を上り、鉄の扉の前に立つ。2人は彼女が入っていく様子を見届けようと思っていたが、いつまでたってもゼーレが入ろうとしない。

 

 

パイモン「ゼーレ?どうしたんだ?」

 

 

空「...迷ってるの?」

 

 

空は彼女が入るのを躊躇っていると思っていた。だが、それは杞憂だったようだ。

 

 

ゼーレ「違うわ。今、必死に言葉を考えているの」

 

 

パイモン「言葉を...?」

 

 

ゼーレ「はぁ...ふぅ...」

 

 

ゼーレは深い深呼吸をすると、こちらを振り返る。

 

 

ゼーレ「ねぇ、旅人。私達が初めて出会った時の事...覚えてる?」

 

 

空「出会いは少し苦かったけどね...」

 

 

ゼーレ「...そうね。それで、あなたは確かオアシスで妹の情報を聞き出そうとしていたわよね?それの返事がまだしてないなって思って...」

 

 

 

空「いや...やっぱり大丈夫だよ」

 

 

ゼーレ「えっ......」

 

 

空「蛍と再び巡り会うためには、やっぱりこのテイワットの謎を解き明かさないといけない。それは自分とパイモン、2人でやりたいんだ。2人の目で真実を知りたいんだ。だから...大丈夫だよ」

 

 

ゼーレ「......」

 

 

ゼーレはそれを聞いて、絶妙に悲しい顔になった。

 

 

ゼーレ「分かった。...あなたがそう望むのなら。だけど、一つだけ言わせて。どうか...甘さで自分自身の命を捨てるような真似だけはしないで」

 

 

空「......」

 

 

ゼーレ「私が言える立場じゃないことはわかってる...!だけど、あなたは私の大切な人だから...そんな風にはなって欲しくない...だけよ...」

 

 

空は返す言葉を考えていた。そして、納得したかのように頷く。

 

 

空「わかった。その忠告、しかと胸に刻んでおくよ」

 

 

すると、安心したのかゼーレは胸を撫で下ろした。

 

 

ゼーレ「ふぅ...。あなた達にはここ数週間、お世話になったわ。多分、この恩は死んでも返せない。2人が居なかったら、私自身を見つけることもできなかった。在り来りな言葉でしか言い表せないけれど...ありがとう」

 

 

そして、ゼーレは左拳を作ると、2人の前に出す。続いて、空とパイモンも握り拳を作ると拳同士をくっつけた。

 

 

ゼーレ「もし、困ったことがあったら私に教えて。すぐにすっ飛ばして駆けつけるわ。私はあなた達をいつでも見守っている」

 

 

パイモン「おう!約束だぞ!」

 

 

空「うん」

 

 

ゼーレ「旅人とパイモンの旅が、これからも上手く行きますように」

 

 

そして、ゼーレが自分達に踵を返し、騎士団の扉を開く。その動作に一切の迷いなんて感じられなかった。

 

 

ついに扉が締まった。遠くから聞こえてくるのは工事の音だけだった。

 

 

パイモン「ふぅ...ようやくって感じだな」

 

 

空「そうだね」

 

 

パイモン「へへ。なぁ、旅人。オイラ、1ついい事を思いついたんだ。フォンテーヌに行く前に写真機で今まで訪れた国の景色を撮っておかないか?いい思い出になると思うぞ?」

 

 

空「いいね。賛成」

 

 

パイモン「善は急げって言うしな!」

 

 

パイモンは嬉しくなったのか、空の周りを飛び回る。そして、空に向き直って手を差し出した。

 

 

パイモン「行こうぜ!旅人!」

 

 

空は何も喋ることなく、パイモンの横に立った。これからも、パイモンとの旅は続いていく。

 

 

2人とも、最初はどこに行こうか、次はどこのスポットに行こうかと楽しい会話をしながら城を降りていった。

 

 

今日のモンドの空は快晴。雲ひとつない。その時、優しい風が吹き、モンドの民を癒す。城の風車が回り、そこに止まっていた2匹の青い鳥が自由な空へ羽ばたいた。

【完結】

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。