間章3幕『苦海にもがく黒氷』   作:せっせこパパイヤ

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第1幕『忘らるる怨恨の砂』③

ピラミッドから無事出たころにはもう夕日が沈みかけていたので、先程のオアシスで1晩過ごすことにした。本来ならもっと規模が大きいオアシスも探せばあるのだが、夜になると砂漠は極寒と化すのでリスクが高い。それに、休憩したとはいえ足がもう限界だ。ピラミッドで戦闘も起きたので、もう今日は夜ご飯を食べておしまいにしよう。

 

 

幸い調理器具などは放棄されたテントの中に揃っていたので、あとは具材を揃えるだけ。そこで、空とパイモンが火をつけるために枝を拾う役割。メルビレイが食材を探してくる役に分かれた。パイモンとちょうど話したいことがあり都合が良かったので快諾した。

 

 

荒廃した砂漠で木なんて見つかるのかと心配していたが木陰や崖の近くでは、太い幹を誇る大木が数本立ち並んでいて、風もある程度吹いてるせいかタンブルウィードも転がっているので必要なものが簡単に揃った。

 

 

テントでいろいろといじっているメルビレイの姿が完全に見えないところまで来ると、2人が話を始める。

 

 

パイモン「うぅ...寒いな...ハクション!」

 

 

空「昼間はあんな暑かったのに夜は寒すぎる........」

 

 

パイモン「どうなってるんだここの寒暖差は.....。枝も重いし......疲れたし......。旅人!オイラはもう限界だぞ!」

 

 

空「パイモンまだ1、2本ぐらいしか集めてないじゃん。俺はもう15本ぐらい集めたよ?」

 

 

パイモン「う、うるさい!オイラは旅人と比べて小さいんだぞ!」

 

 

空「そんなの知らないよ....。もう3本ぐらい乗るんじゃない?ほら......」

 

 

空が持っていた枝をパイモンの腕に乗せると、キャパシティを超えて、枝が地面に散らばった。

 

 

パイモン「旅人!酷いぞ!」

 

 

空「あはは、ごめんごめん」

 

 

空が笑いながら地面にしゃがみこみ、散らばったものを集める。だが、周りの様子を伺うようにキョロキョロし始めた。

 

 

パイモン「そんな周りを警戒してどうしたんだ旅人?野生動物がいないか見ているのか?」

 

 

空「ねぇ......パイモン。彼女がスメールの歴史について喋ったことに何か引っかからない?」

 

 

パイモン「あいつがか?うーん....オイラは特に何も思わなかったけどなぁ....」

 

 

空「やけに詳しすぎるとは思わない?」

 

 

パイモン「あいつが学者か何かっていう可能性も考えられるぞ?それに文献を読んだって言っていたし.....」

 

 

空「砂漠に初めて来た時ジェイドとティルザード達と一緒にピラミッド一緒に探索した時思い出して。長年探求していたティルザードでさえ、あの時の探索でようやく真実を掴んだことが出来たのに、ただの若い女性があそこまで詳しいのは何か違和感がある」

 

 

パイモン「うーん、言われてみれば確かに。そう考えるとおかしいよな!砂漠に住んでるヤツも知りえなかったことをあいつは知ってるから絶対に何かあるぞ」

 

 

空「それに俺のことも蛍のことも知ってる」

 

 

パイモン「えぇ!?いや確かにアビディアの森で旅人の妹の名前出してたけど......」

 

 

空「オアシスで休憩してる時そのこと言ったんだけどはっきり第4降臨者の片割れって言われた」

 

 

パイモン「本当か?聞き間違いとかではないんだな?」

 

 

空「本当だよ。嘘はついてない」

 

 

パイモン「オイラ旅人の言葉信じるけど.........そうなるとあいつ結構やばいやつなんじゃ....!?」

 

 

空「降臨者とか七神や眷属ぐらいしか知らない情報なのに......もしかしたら天理側とかアビス側とかかも......」

 

 

パイモン「おいおいアビスと一悶着あったんだろ?それはありえないだろ......」

 

 

空「あっそっか..........」

 

 

パイモン「勘弁してくれよ......へっ....ヘクション!うぅ......もう戻ろう旅人.......。このままだと凍ちゃうぞ」

 

 

空「そうだね。このぐらいあれば1晩火つけっぱでも問題ない」

 

 

そうして、焚き火用の木を持って元のところ戻ろうとした。ここの岩を超えるとオアシスなのだが、姿を出そうとする前にパイモンに呼び止められた。

 

 

 

空「?」

 

 

パイモン「なぁ旅人。どうするんだ?そんな時間は残されてないぞ.......」

 

 

空「何が?」

 

 

パイモン「エウルアのことだぞ!旅人もしかして忘れてたのか!?」

 

 

空「あ.......」

 

 

すっかり忘れていた。蛍のことや降臨者のことで頭がいっぱいになっている。そもそも、これの目的は彼女の正体を探ること。本末転倒になってしまうところだった。

 

 

空「忘れてたよ」

 

 

パイモン「おいおい........それで?どうするんだ?」

 

 

空「コアが全部で4つでもそのうち3つを見つけたから、もう明日で全て見つかっちゃう可能性もあるし......」

 

 

パイモン「だったらもう今日聞く?」

 

 

空「そうだね。それしかない。人違いだったらパイモンなんとかしてね」

 

 

パイモン「おいっ!オイラに責任押し付けるなよっ!」

 

 

空「大丈夫だよ。もし人違いだったらちゃんと謝るから」

 

 

メルビレイは既にテントに戻っていて食材を加工しているところだった。ラクラク駄獣とコサックギツネの肉塊、そしてどこから持ってきたか分からない人参とキャベツが置いてある。

 

 

空「おまたせ」

 

 

メルビレイ「遅かったじゃない.......ゲホッ...」

 

 

パイモン「うん?なんでここに野菜が?」

 

 

メルビレイ「お肉だけじゃ物足りないでしょ?だから野菜もちょっとね........」

 

 

パイモン「.........どこから?」

 

 

メルビレイ「ファデュイのテントから拝借した。途中で住人が帰ってきたけどね」

 

 

パイモン「えっ......」

 

 

空「.........」

 

 

メルビレイ「それで木は?」

 

 

パイモン「おう!これでいいか?」

 

 

2人はボトボトと地面に木を落とした。量を見た彼女はどうやらご満悦の様子だ。

 

 

メルビレイ「十分すぎる量ね。今作るからちょっとまってて」

 

 

持ってきた木を賽の目に配置、そこに火を点火する。徐々に火の勢いが強まっていく所に鍋を置くと、彼女は肉塊をそのまま鍋に入れようとした。だが、大きすぎたのか、ちゃんとしたナイフで切ろうとせず、落ちていたガラスの破片を拾う。切れ味が絶望的だったのか地面に投げ捨て片手剣で切ろうとし始めた。

 

 

パイモン「お、おい!ちょ、ちょっと!」

 

 

メルビレイ「ん?」

 

 

パイモン「ナイフ持ってるから!旅人、貸してやってくれないか?」

 

 

空「はい」

 

 

空がバッグから小さく、銀色に輝くナイフを取り出した。

 

 

メルビレイ「親切にどうも」

 

 

小さいサイズに切ると鍋に野菜と一緒に放り込んだ。既に水が貼ってあるので、煮込んでスープにするんだろうか。

 

 

メルビレイ「ん?あれ.......」

 

 

パイモン「どうしたんだ?」

 

 

メルビレイ「あれ .......。さっき置いたナイフが消えた.......」

 

 

パイモン「......?そこにあるだろ?」

 

 

パイモンが言う通りメルビレイのすぐ右側に置いてある。だが、彼女はそれに気づかない様子だ。

 

 

パイモン「右!」

 

 

メルビレイ「ん?あー.....あった」

 

 

空「大丈夫?」

 

 

パイモン「お前......目が悪いのか?」

 

 

メルビレイ「いや......そうでも無いけど......」

 

 

メルビレイは言葉を濁しながらナイフを水で洗って空に返した。

 

 

革袋からスープの元となるものを包んだ葉っぱを取り出して、鍋の中に入れると、たちまち赤色に変わる。それ同時に酸味ある、食欲を唆る匂いが立ち込めた。

 

 

メルビレイ「はい......どうぞ」

 

 

パイモン「うわぁ....美味しそうだぞ!」

 

 

空「俺の分も残しておいてね」

 

 

パイモン「分かってるって!あ.....旅人......」

 

 

空が肉を食べた時にパイモンに脇腹をつつかれた。口から飛び出しそうになった肉を抑えてパイモンの方に顔を向ける。

 

 

パイモン「ん.....」

 

 

メルビレイに目配せしている。どうやら早めに言っておけよということだろう。

 

 

空は肉を飲み込んでから話しかけた。

 

 

空「ねぇ、食事中申し訳ないけど、モンドって知ってる?」

 

 

メルビレイ「それぐらい知ってるわよ。それがなにか?」

 

 

空「そこに西風騎士団っていう組織があるんだけど、エウルア・ローレンスっていう騎士のことは知ってる?」

 

 

その人物名を聞いた途端、彼女の手が止まる。

 

 

パイモン「(ぶっこむなぁ......)」

 

 

メルビレイ「知ら.......いや、知ってる」

 

 

空「.....!」

 

 

もう一気に聞いてしまおう。ここで燻ってても意味が無い。

 

 

空「その人にはお姉さんがいたんだけど、君はエウルアとそっくりなんだ。君はエウルアの血縁者なの?」

 

 

正直、否定が飛んでくると思っていた。忽然と姿を消したのだから何か言えない事情がある。だが返ってきた言葉は........

 

 

メルビレイ「ええ、そうよ」

 

 

空「えっ.......」

 

 

予想外の返答の速さに言葉が詰まる。パイモンも目をまん丸にして手が止まっていた。

 

 

ゼーレ「ごめんなさい、今まで偽名使ってたの。本当の名前はゼーレ・ローレンス。正真正銘、エウルアの姉よ」

 

 

空「そう.......なんだ......。エウルアは君のこと心配してたよ」

 

 

ゼーレ「あらそうなの。あの子には私のことを忘れてくれって教えたのにね」

 

 

空「.......」

 

 

ゼーレ「エル(エウルア)にとっとと私なんて気にせず騎士としての仕事を頑張りなさいって伝えておいて」

 

 

空「君も一緒に戻ろうよ。きっとエウルアも喜ぶから」

 

 

ゼーレ「........考えておく。はい、これでこの話は終わり」

 

 

そう言って、彼女は再び鍋の中身を食べ始めた。

 

 

これ以上喋る気は微塵もないらしい。

 

 

予見したものとは程遠く、そしてあっけない。もう少し誤魔化されるなりなんなりされるのかと思っていた。なんだか肩透かしを食らった気分だ。

 

 

そうして鍋の中身はどんどん減っていき、20分もすると底を尽きる。

 

 

パイモン「ふー。美味しかった.....ありがとうなメ.....ゼーレ!」

 

 

ゼーレ「どう......致しまして.......ゲホッ!」

 

 

パイモン「おい大丈夫か?顔色も悪いし....咳もさっきよりひどくなってるじゃないか....」

 

 

ゼーレ「大....丈夫。ゲホッ!ゲホッ!悪いけど鍋洗っといてくれない?」

 

 

パイモン「お、おう.....わかったぞ」

 

 

さすがにテント周辺で洗う訳には行かないので近くにあった小岩の裏で2人で鍋を洗うことにした。

 

 

パイモン「おいおい.....あいつ大丈夫なのかよ......咳とかどんどんひどくなってるぞ......」

 

 

空「どうしたんだろうね」

 

 

パイモン「....まさかあのキューブのせいじゃないだろうな?」

 

 

空「いや.....それは無いと思う。キューブで体が蝕まれるならとっくに俺たちも体調が悪くなってるわけだし.....」

 

 

パイモン「うーん.......」

 

 

空「生まれつき虚弱なのかもね......」

 

 

パイモン「そうだな.......よしこんなもんでいいだろ!」

 

 

鍋がピカピカに仕上がったのでテントに戻る。しかし、そこにゼーレの姿がそこにはなかった。

 

 

パイモン「ゼーレ?おーーい......」

 

 

空「あれ?さっきまでそこにいたのに......」

 

 

休憩しているのだと思い、テントの中を確認しても、もぬけの殻だ。

 

 

パイモン「どこいったんだ?」

 

 

空「見て、パイモン。何か引きずった跡がある」

 

 

ゼーレが座っていた場所から、砂に跡があった。それは10m先の岩まで続いている。

 

 

パイモン「ゼーレかもしれない。行ってみよう」

 

 

空「うん」

 

 

跡を追って岩にいくと、予想通りゼーレがそこには居た。だが、一目で分かるぐらいに尋常では光景が広がっていて、荒い息をしながらうずくまっている。

 

 

ゼーレ「......!何しに.......来たのよ......!」

 

 

ゼーレは自分の胸に手を当て必死に呼吸を整えている途中だ。よく見ると砂の地面に血痕があった。

 

 

パイモン「お前......血が....!」

 

 

ゼーレ「ゲホッ!!!!!ゲホッ!!!!!ガッ!!!!」

 

 

鮮血を吐血し、地面が赤く染まる。

 

 

ゼーレはポケットを手探りで探すと、そこから緑色の液体が入った注射器を取り出し自身の太ももに刺し込んだ。内容物が体に入っていくと共に、呼吸のペースも落ち着いていく。

 

 

ゼーレ「はぁ........はぁ......はぁ.......」

 

 

パイモン「何が起きたんだよ......っておい!」

 

 

ゼーレは空になった注射器を持ったままテントに戻ろうとするが、すかさずパイモンを止める。

 

 

ゼーレ「ど、どいて.....」

 

 

パイモン「動こうとするなよ!」

 

 

ゼーレ「もう大丈夫……だから。心配かけたわね」

 

 

パイモン「お、おい!旅人支えてやれよ......」

 

 

足を引きずりながら、体を岩で支えながら歩こうとしていたので、腕を組んでテントまで移動させることにする。

 

 

テントの中の布の上で彼女を寝かせると、数回咳をしたかと思ったら、そのままスースーと音を立て始めた。

 

 

パイモン「........寝たのか?」

 

 

空「ほぼ気絶に近いでしょこれ」

 

 

パイモン「あんな苦しんでいたもんな.....」

 

 

空「体調が悪い所の話じゃない。......もうこんな時間だからパイモン横についててよ」

 

 

月も空達の真上を照らし、まだまだ夜はこれから。

 

 

パイモン「いいけど.....旅人はどうするんだ?」

 

 

空「焚き火の横で見張っておくよ。焚き火もまだこれだけあるし.....」

 

 

パイモン「わかった......じゃあ旅人おやすみ」

はっと目が覚めると、日が登り砂は徐々に熱を取り戻すところだった。

 

 

とっくに焚き火の火が消え、薪は灰色に変化している。

 

 

体を起こし、周囲を見渡すと目の前にはゼーレが小さなノートに何かを書いていた。

 

 

目が覚めたことに気づいた彼女は、それをしまう。

 

 

ゼーレ「あら、どうもおはよう」

 

 

空「......おはよう」

 

 

昨夜、もがき苦しんでいたとは思えないほど今の彼女はいつもの調子を取り戻していた。

 

 

空「えっと........」

 

 

ゼーレ「昨日のは忘れてちょうだい。ただの......発作よ」

 

 

空「.........わかった」

 

 

追及するのは可能だったが、やめておいた。彼女自身が話したがらない雰囲気だったし、返答も期待できないだろう。

 

 

まだ残っている昨日の疲労を背負いながら立ち上がって伸びをしているとパイモンがいないことに気づいた。

 

 

空「あれパイモンは?」

 

 

ゼーレ「ん」

 

 

ゼーレがテントに指さす。まさかと思って入口をめくるとパイモンが指を咥えながら寝言を言っていた。

 

 

パイモン「うぅ......そのプリンは.....オイラのもんだぞ.....」

 

 

空「パイモン起きて」

 

 

肩を揺すると鼻ちょうちんが割れて、パイモンが勢いよく飛び上がった。

 

 

パイモン「!?プリンが逃げて!」

 

 

空「なにいってるの......。出るよ」

 

 

パイモン「あぁもうそんな時間か......」

 

 

半ば空いていない目を擦りながら池の水で顔を洗うと、目がぱっちり開いた。

 

 

パイモン「ふー.......それで今日はどうするんだ?4つめのコアを探しにいくのか?」

 

 

ゼーレ「それもありだけど1回拠点に戻りたい」

 

 

パイモン「拠点?」

 

 

ゼーレ「数日前から砂漠にいたの。今回みたいにテントが置いてあるとは限らないし......」

 

 

パイモン「ああそういえば言ってたな......それってどこにあるんだ?」

 

 

ゼーレ「すぐ近くよ。まだ完全に日は登ってないし涼しいうちにいきましょ?」

 

 

パイモン「おう!じゃあしゅっぱーつ!」

パイモン「おい!すぐ近くって言ったじゃないか!!!」

 

 

ゼーレ「?たかが1時間半しか歩いてないじゃない」

 

 

パイモン「おっ、お前......」

 

 

空「パイモンは浮いているからいいでしょ?」

 

 

パイモン「浮くのもエネルギーが必要なんだぞ!」

 

 

パイモンが空中で地団駄を踏む。そんな光景を見て、自分は空笑いをした。

 

 

テントから歩いて1時間半。灼熱の大地から逆転して風が絶え間なく吹き荒れる砂漠へやってきた。暴風のおかげか、かなり涼しいので空はこっちの方が好きだ。ただ砂粒が皮膚に当たって少々痛いのを除いてだが....。

 

 

そうすると、3人はとある洞窟の入口へやってきた。

 

 

空「洞窟?もしかして拠点がこの先にあるの?随分変わってるね」

 

 

ゼーレ「ここなら魔物の数も少ないし........木を隠すなら森の中って言うでしょ?」

 

 

そういうと3人は洞窟の中へ入っていった。

 

 

洞窟の内部はひんやりとしていて薄暗い。本来なら真っ暗でもおかしくはないのだが、天井から生えている紫色の光を発する不思議な花のおかげでなんとか光源はあるという現状だ。鉄鉱石などが壁際に生えてあるのだが、サソリや蛇がそれに興味を示していた。自分たちの足音で1回こっちを振り向いたが、興味が無いのかすぐにそっぽを向いてしまう。どうやら敵意はないようだが、逆にそれが不気味すぎる。

 

 

パイモン「うう.......ひんやりしてて心地いいけど、怖すぎるぞ.......」

 

 

空「幽霊が出たらパイモンがかばってね」

 

 

パイモン「おい!そこは旅人が何とかしてくれよ!」

 

 

ゼーレ「2人とも」

 

 

空とパイモンの会話に突然横切った。

 

 

パイモン「ん?どうしたんだ?」

 

 

ゼーレ「本当にここまで来たけどいいの?」

 

 

空「?お礼だよ。最後まで手伝うよ」

 

 

パイモン「そうだぞ!オイラ達の囁かなお礼だからな!」

 

 

ゼーレ「...........そう。旅人、バッグから昨日取ったキューブ取り出しておいて」

 

 

空「わかった」

 

 

何に使うかは全く予想がつかないが、言う通りバッグの中に手を入れ、それを取り出した。

 

 

相変わらずキューブは青白い光を発し、不思議な存在を示している。

 

 

パイモン「ここか?」

 

 

ゼーレ「ええ」

 

 

洞窟の奥深くへ進みと、砂の扉の前についた。ドアノブも突起もない目の前の謎の構築物は旧時代の技術である。

 

 

パイモン「またこの扉か.......嫌という程見てきたぞ.......」

 

 

空「けど塵歌壺にちょっと欲しくない?」

 

 

パイモン「確かに.......家の入口に置きたいな.......ってあれ?」

 

 

パイモンが扉の周りをキョロキョロし始める。

 

 

パイモン「認証する機械は?」

 

 

空「確かにないね.....」

 

 

この扉には認証する機械もセットで置いてあるのだが、それがいくら探してもない。

 

 

ゼーレ「ないわよそんなもの。一方通行の扉なのよ」

 

 

パイモン「えぇ?一方通行?」

 

 

ゼーレ「ちょっと下がってて」

 

 

そういうと彼女は扉の前にしゃがみこんで、左腕をドア下に入れると、そのままドアごと持ち上げた。

 

 

隙間に砂が入っているのか、ギャリギャリと音を立てながら人が入れるほどの隙間が出来る。

 

 

ゼーレが左腕で先に入れというジャスチャーをしたのを見て、2人はそそくさと扉の先へ入っていく。

 

 

当然と言えば当然なのだが、そこから先は暗闇だ。だが、今回は光源があるのでさほど苦痛では無い。1段ずつ気をつけながらしっかりと階段を降りていく。

 

 

パイモン「こんな湿気臭いところに拠点なんて......お前は大丈夫なのかよ」

 

 

ゼーレ「別に.......。陽の当たるところが1番だけど、どこでもいいわ」

 

 

パイモン「そっか........」

 

 

急に石の上を歩く音がしなくなったのでどうやら階段を降りきったようだ。いつもならそこから先も真っ暗なのだが、少し先に赤色と紫色の光がある。

 

 

パイモン「なんだあれ......」

 

 

空「光.....?」

 

 

光と来たら、ひとつしかない。

 

 

空「あれがほかのコア?」

 

 

ゼーレ「ええ。4つのうちふたつのキューブよ。置いとく場所もないから地面に置いといたの」

 

 

パイモン「管理が杜撰過ぎないか.......」

 

 

ゼーレ「仕方ないじゃない。えーとちょっとまってて。明かりつけるから......」

 

 

何回目なのかも分からない壁を蹴る音が聞こえ、その部屋は光を取り戻した。

 

 

思った以上に大きな部屋だ。少なくとも壁画や青白いキューブがあった部屋よりも何倍も。

 

 

目が光に順応する。

 

 

部屋の光景を見渡し、ふと、目の前の巨大な物体が気に止まった。

 

 

思わず2人が目を見張る。

 

 

空「は......?」

 

 

パイモン「えっ.......」

 

 

スメールの創神計画の負の遺産....。正機の神がそこにはあったーーーーー。

 

 

4本ある腕のうち2本が既にスクラップと化し、それ以外の腕も何とか機能を保っているが、いつ潰れてもおかしくない状態だった。顔の真下にある神の心を入れるスペースにはヒビが入っており、中の導線が露出していた。

 

 

パイモン「えっ!?えっ!?な、な、な、な んでこいつがここにいるんだよ!?」

 

 

空「どういう.....こと?」

 

 

ゼーレ「えーと......ああよかった。壊れてなくて。案外脆いのよね」

 

 

絶句している2人を無視して、ゼーレは目の前の禍々しい機械の状態を見て、胸を下ろしている。

 

 

パイモン「どういうことだよ!」

 

 

ゼーレ「んー....どうしよう......」

 

 

空「ゼーレ!!!」

 

 

ゼーレ「一気にコア入れちゃうと本体が耐えられなくても壊れる可能性もあるし.....本当にどうしようかな.......。そもそもどこに収めるかも決まってない.....」

 

 

依然、2人の問いかけには答えず、機械を弄る。そして、空は段々とヒートアップしてしまい、思わず声を荒らげた。

 

 

空「答えて!!!」

 

 

ゼーレ「旅人、とりあえずそのコアを渡して?」

 

 

空「先に答えて!」

 

 

ゼーレ「.....いいから渡しなさい!」

 

 

空「っ!答えるまで渡さない!」

 

 

物品の讓渡を拒否されたゼーレは思わず怒りの歯を見せつけ、食いしばった。だが、突然諦めたのか真顔に戻る。

 

 

ゼーレ「はぁ.......あの森であなた達と会ったのが運の尽きね........。申し訳ないけど渡さないつもりなら.......無理やりにでも奪う」

 

 

ゼーレが右腰に付けていた鞘から片手剣を取り出し、明らかな殺気を目から威圧する。それを感じ取った空が剣を取り出して、ゼーレに向かって片手剣を構えた。

 

だが、瞬きをした瞬間、ゼーレは既に目の前から消えていた。

 

 

空「(消えっ.....!?)」

 

 

パイモン「うお!?たっ.....」

 

 

後ろからパイモンの叫び声が聞こえる。

 

 

急いで振り向いたが遅かった。

 

 

ゼーレはパイモンの首に剣のガードをぶつけ、そして気絶させたのだ。

 

 

空「パイモン!!!!」

 

 

ゼーレ「さあ、これで私が本気ということが分かったでしょう。今ならあなたまで痛めつけないであげるから大人しくそれを渡しなさい」

 

 

空ににじり寄りながら、鋭い刃先を顔に向ける。

 

 

このまま貫かれてしまいそう恐怖を味わってしまい、思わず唾を飲んだ。

 

 

空「そこまでして......。パイモンに手をかけるほど重要なの.......?」

 

 

ゼーレ「えぇ......とーっても大切なもの。私の命に変えてもね」

 

 

空「.........俺の大切な人に手を出す人は絶対に許さない!」

 

 

恐怖を跳ね除け、パイモンに手を出したという怒りで体を鼓舞した。

 

 

空が勢いよく走り出し、彼女を斬り付ける気概で接近する。そして両者、鍔迫り合いになった。

 

 

こちらは両手、そしてあちらは左腕1本。押し合う力は彼女が数段上だ。徐々にこっちが押されるので一旦引いて数回剣を振るう。だが、当たることはなく、軽くいなされた。

 

 

ゼーレ「........チャンバラごっこやりたいわけじゃないんだけど」

 

 

1歩ずつ彼女が自分に向かってくる。背水の陣のような状況だが、こちらも黙っちゃいない。

 

 

低姿勢で飛び込んで、下から上へ剣を振り上げた。ゼーレが剣でそれを受け止めた時隠していた右手を前に出して風元素を飛ばす。なんの理由があるのか知らないが彼女は全くと言っていいほど右腕を使わず、左腕だけで全てをこなそうとしていたのだ。だからそこを突いた。

 

 

がら空きの右側に風元素を当てようとした時ゼーレの前髪がなびき、隠されていた右目と目が合う。

 

 

空「えっ......ぐぶっ!」

 

 

ゼーレが一瞬で空の作戦に気づき、受け止めていた腕を振り上げて、自分の顎にパンチを食らわした。

 

 

そのままの勢いで2m程後ろに吹き飛ぶ。

 

 

空「(まずい.....!良いのを貰ってしまった.....!!!油断するとそのままダウンしてしまいそうだ!だけど......それよりあの右目........まさか.....!)」

 

 

一瞬見えたあの右目......。空は身に覚えがあったのだ。

 

 

空「まさか......その目.....」

 

 

ゼーレ「見えちゃった?さすがにあなたは知ってそうね」

 

 

ゼーレが前髪をまくし立てると右目の全貌が見える。左目がエウルアと同じ藍色と黒色が点在しているなのに対し、右目は灰色1色だった。さらに瞳の中心にひし形のマークが刻み込まれている。

 

 

空「っ......!」

 

 

ゼーレ「どこでこれのこと知ったのか分からないけど........それにしても髪下ろした程度でもバレないものね。それともただ単に運が良かっただけか......」

 

 

空「こんなところで......」

 

 

ゼーレ「絶望してるみたいね。まさかこんなところで''律者''に出くわすなんて....顔してる」

 

 

空「(ぐっ.....相手が悪すぎる.......このままだと負けてしまう。さて....どうするか.........)」

 

 

パイモンを回収して、とっとと逃げるしか道はない。少しでもいいから目の前にいる怪物をひるませてその隙に.....。

 

 

ゼーレ「隙を作ってパイモンを回収し.....その後逃走でしょ?」

 

 

空「!?」

 

 

ゼーレ「図星ね。弱ってる人の思考なんて単純化されてしまうの。スメールの創神計画を阻止した英雄もこの通りにね」

 

 

空「やるしか......ない.......!」

 

 

覚悟は決めた。最悪パイモンさえ何とか外に出せばそれでいい。

 

 

そう思いフラフラしながらも体を起こして剣を構える。だが、信じられない光景が目の前に広がっていた。

 

 

空「え......は?」

 

 

剣の刀身が真っ二つに折れていた。最初からそこからなかったかのように、8割程の刃が無くなったいたのだ。

 

 

空「(いつ......折られたんだ!?)」

 

 

ゼーレ「はい、あげる」

 

 

ゼーレが投げる動作をすると、自分の目の前に折れた刀身が無造作に地面に突き刺さった。

 

 

空「いつ.....!?」

 

 

ゼーレ「あなたが吹き飛ばしたその時よ」

 

 

空「嘘でしょ......?そんな.......」

 

 

ゼーレ「がら空きになったその凶器を真っ二つに斬っただけ。ただただそれだけの話」

 

 

空「(斬っただって.......?)」

 

 

いろいろなことが続けざまに起きて、顎にパンチを食らったのもあり、空の頭が上手く働かない。

 

 

ゼーレ「じゃあね」

 

 

その言葉と同時に自分の腹に大きな衝撃が加わった。

 

 

何が起きたのか分からず、次の瞬間には地面に突っ伏していた。どうやら腹に打撃を食らったらしい。

 

 

空「うが.......がっ.......」

 

 

さっきの拳とは段違いだ。けかすっただけでも頭がフラフラするのに、これは話が違う。

痛みより先に視界が黒く染まり意識が遠のいていく。精神の輪郭が完全に消える寸前に彼女のごめんなさいという言葉が小さく聞こえ、世界が真っ暗になった。

本日二度目の起床だ。だが、1回目とは違い頭もふらつくし、お腹がまだズキズキする。

ヒュオーという音が耳の鼓膜に乱反射し、周りを見渡すと地上に戻ってきたようだ。

 

 

洞穴の中、簡易的な屋根の下でパイモンと空は気を失っていた。

 

 

空「....!パイモンは!?」

 

パイモンのことを思い出し、キョロキョロ見渡すとすぐ横でパイモンが指を咥えながら寝ていた。

 

 

空「ね、寝てる.......?」

 

 

気絶してそのまま寝たのかだろうか。とりあえず無事なことを確認できて安堵の息を下ろした。

 

 

聞きたいことは山積みだ。ゼーレのこと、あのコアのこと、そしてあそこにあった正機の神。スラサナンタ聖処の奥底に眠っているはずなのだが、何故か今はあの地下に移動していた。

 

 

空「まずは砂漠を抜けて......ナヒーダのところに行かないと......」

 

 

空はまだ眠っているパイモンを拾い上げて、暴風の砂丘の中へ消えていった........。

第1幕[完]




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