間章3幕『苦海にもがく黒氷』   作:せっせこパパイヤ

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第2幕『塵名に埋もれし常磐の陽炎』①

歩くという行為に不快感を覚えたのはこれが最初だ。身体中が痛みで悲鳴を上げているからだ。特に顎と腹から強烈な痛覚信号が発せられている。足を1歩ずつ進む度に振動で痛みが刺激された。

 

 

歩き始めて、早3時間。視線を地面に落としていたが、ふと顔を上げると周りが天高くそびえ立つ巨木の茂森であることに気づいた。砂漠からパイモンを担ぎ、作業のように足を動かし、いつしかスメールの森林地域であるアパーム叢林に戻ってきたのだ。

 

 

空「(もうすぐで.......スメールシティに着く......!もう少しの辛抱だ.....!)」

 

 

このままひたすら北東へ向かえば人の住んでいる区域にたどり着く。その事を考えると自然と力が湧いてくる.......と思っていたのは空の精神面だけの話だった。

 

 

5m程歩くと突然、全身の力が抜け、体勢が崩れ、地面に倒れ込んだ。

 

 

空「(体が言うことを聞いてくれない.....!)」

 

 

既に体は警鐘を鳴らしている。必ずしも精神面の強さと肉体の疲労は比例しないのだ。

 

 

アパーム叢林は特にキノコンが蔓延っている。今こうしている内にもキノコンが自分達に目をつけてくるかもしれない。

 

 

それにこんなところで倒れるつもりはない。せめてパイモンだけでも.......。

 

 

空「あと.....もうちょっと.......あっ!」

 

 

突然背中から衝撃が伝わり、前方に飛ばされてしまう。一瞬何が起きたか分からなかったが、急いで後ろを確認すると草キノコンが目をギラつかせて飛んでいた。

 

 

空「キ、キノコン.....!」

 

 

野生の世界は弱者から襲われていく。魔物でも変わらない。地に倒れ込むほど弱っていた空はキノコンにとって格好の的だった。

 

 

キノコンが咆哮を上げると体に草元素をまとい、こちらに突っ込んでくる。

 

 

空は迎撃するため急いで剣を取り出したが、短い刀身を見て、ゼーレに折られたことを思い出した。

 

 

空「そ、そうだ......」

 

 

足が動かないため、避けることもできない。万事休すとはこのことだ。「目を閉じて時間が流れるのを待とう」と思い、パイモンの上に被さろうとした。

 

 

だがその時、パシュンと後方から弓矢が飛んでくる音が聞こえる。目にも止まらぬ速度で空を通り過ぎた矢は見事にキノコンの眉間に命中し、地面に崩れ落ちた。

 

 

矢が飛んできた方向を向くと、弓矢を放った人物が木の後ろから弓を構えたまま姿を現れた。

 

 

空はその人物に見覚えがあった。

 

 

茂みのあるしっぽと大きな耳。そして腰に草元素の神の目をつけている。

 

 

ティナリ「旅人.....?」

 

 

空「ティ、ティナリ.........!」

 

 

ティナリ「こんなぼろぼろな姿で......!いったい何が?」

 

 

空「ちょ、ちょっとね........」

 

 

ティナリ「ちょっとって.........」

 

 

ティナリは安全を確認した後、一目散にこちらに向かってきて、空の肩に腕を回した。自分の体が持ち上げられた時、尋常では無い程の痛みが腹や足などに響き渡り、思わず呻いてしまう。

 

 

空「うっ!いたた.......」

 

 

ティナリ「!怪我してるの?」

 

 

空「お腹が痛い......」

 

 

ティナリ「とりあえずガンダルヴァー村まで送るから頑張って!」

 

 

空「た、頼んだ........」

 

 

視界が徐々に暗くなり始め、周りの環境音も聞こえなくなった。また、気絶するのかとぼんやりしている頭で思っていると、ティナリの元へ駆けつけた他のレンジャー達がパイモンを担ぎ上げている光景を見て安心し、意識は深く落ちていった。

空「(ここは......?)」

 

 

重い瞼をゆっくりと開けると、目の前には銀色の波が靡く水面の景色が目に入る。

 

 

空「(確か、ティナリに助けて貰って......)」

 

 

頭の中で気絶する前の記憶が蘇ると同時に意識が段々と濃くなっていく。すると、空は今自分が薄暗い深海にいることに気づいた。

 

 

空「(溺れる.....!!)」

 

 

極限環境に置かれていることを自覚すると急いで水面に戻ろうと手足でもがいた。だがふと冷静になると水の中に居るという感覚がなく、普通に呼吸も出来ることに気づく。

 

 

空「(息ができる......。とりあえず溺れる心配はなさそうだね......。だけどそれよりここはどこなんだろう.....。さっきはアパーム叢林にいたのに.....)」

 

 

辺りを見回してみると、真上の水面、下は底が見えない深海で、他に魚など1匹も存在していない。

 

 

とりあえずどうしようか迷っていると突然水面が大きく、そしてはっきりと乱れ始め、こちらに押し寄せてきた。

 

 

空「!?」

 

 

つかの間、海流らしきものが自分の体にぶつかると空を飲み込んだ。強力な力を持つ海流は脱出できない空を乗せ、どんどんと下へ潜っていく。いつしか、下から光と思われるものが目に入ってきた。

 

 

空「(なんだあれ.......。水面.........?)」

 

 

考える暇なく水面と思われるものに体が接触した瞬間、自分の体は地面にたたきつけられていた。水中と同様、叩き付けられても痛みもなく衝撃だけが空の体を駆け回る。

 

 

回っていない頭のまま立ち上がると今自分が白一色の不思議な空間に居ることに気づく。果てしなく広く、地平線すら見えない異質な空間。

 

 

空「(さっきまで海の中にいたのに今度はなんなんだ......。何も無い....)」

 

 

殺風景の空間を見渡していると15m先のオブジェクトがあることに気づく。それは背の高い木で、分厚い根が地面に潜り込むようにそびえたっている。枝には葉っぱ1枚すら付いておらず、最早生気を感じることはない。

 

 

白い空間に生えている木という情報に頭が追いつかないでいると、突然足が動いて自分の体がオブジェクト方向に近づいていく。

 

 

空「......!」

 

 

自分の意思に反し、何かに手をとられているように一歩ずつ木に近づいていく。

 

 

手前まで来ると、今度は突如青髪の女性が姿を現した。

 

 

空「(.......!人!?いつの間にここに立ってたんだ.......?自分がこの木を視認した時はまだ人の気配なんてしなかったのに.......)」

 

 

まるで元々ここにいたかのよう、彼女は木を眺めている。だが、空の存在に気づいたのかこちらを振り返った。

 

 

空「(ゼ、ゼーレ......?)」

 

 

青髪の女性の正体はゼーレだったのだ。

 

 

キョトンとした表情を浮かべながら空の顔をまじまじと見つめており、何故自分以外の人間がここにいるのか疑問に思っている。

 

 

ゼーレ「.......君は?」

 

 

空「知らないの?」

 

 

ドキッとした。口すらも勝手に開けてしまう。問いかけに即答するロボットかのようにスラスラと言葉が出てきた。

 

 

幸いこういう不思議な体験は今までの旅で何回も経験してきた。初めはびっくりするも整理に必要な時間もすくない。こういった時はただただ時間が過ぎるのを待って意識を観客席に置いておけばいい。

 

 

ゼーレ「知らないわよ。初対面でしょ?」

 

 

空「本気で言ってる?君のせいで大変なことになってるんだけど」

 

 

ゼーレ「...?」

 

 

完全にぽかんとしている。果たしてしらを切っているのか本当に知らないのか。様子を見るに後者のように思えるが、まあいい。

 

 

空「まぁ.......いいよ」

 

 

ゼーレ「そう..........話変わるけど.........ずっと前から疑問に思ってたことがあるの」

 

 

空「.......何?」

 

 

腹の痛みのせいで若干目の前の人物にイラつきを覚えてきた。半ば冷たい態度で聞き返す。

 

 

ゼーレ「人の心ってなんだと思う?」

 

 

空「え.....」

 

 

予想外の質問に一瞬狼狽えてしまった。哲学的な質疑をなんで今この場で?

 

 

自分も特に考えてきたこともないので返答に困っていると、ゼーレが俯いた。

 

 

ゼーレ「やっぱりそうだよね。考えていない人もいるし、どうでもいいと考えてる人もいるし、ちゃんとした信念を持ってる人もいる........そこに具体的な答えなんてない」

 

 

空「...........なんで急にこの質問を?」

 

 

ゼーレ「さあね。............だけどこれだけは言える。人はいろいろなパーツがあって初めて感情を持つ。五体満足の人はなんにも感じないけど、何かが欠けた人はそれを血が滲むほど欲しがってしまうの。当たり前という領域から何かが出た時に初めて、そのなにかに初めてありがたみがわかる」

 

 

空「つまり君は心を求めてるってこと?」

 

 

ゼーレ「多分ね」

 

 

空「なんで?」

 

 

ゼーレ「それは.......昔...........に.....」

 

 

ゼーレの姿と声にノイズが走る。それと同時に世界が暗転し、空はそこから弾き飛ばされた。

刺激臭が自分の鼻を刺激したおかげで、目をぱっちり開ける。今度こそ深海ではなくガンダルヴァー村のふかふかしたベッドの上で意識を取り戻すことができた。

 

 

 

骨がミシミシと軋む音を鳴らしながら体をゆっくりと起こし、そして部屋を見渡す。

 

 

部屋の隅には茶色の陶磁器が置かれており、そこから出てくる煙から慣れない匂いがするので、これが原因のようだ。

 

 

だが、鼻に入った時は刺激臭となるが、次第に細胞に馴染み始め、逆に心地よい雰囲気に包まれる。

 

 

ベッドの横に緑髪の少女が椅子に座りながら何かを必死に書いていたのだが、骨が鳴った音によって起きた空に気づいた。

 

 

コレイ「うお....!お、おはよう。た、旅人.....」

 

 

空「え、あ......おはよう......」

 

 

コレイ「ちゃんと起きれたんだな.....あ、安心したぞ.......」

 

 

空「なんでコレイの家に.......」

 

 

コレイ「ティナリ師匠に頼まれたんだ。今ガンダルヴァー村に安静にできる場所がないからあたしの家にって......」

 

 

空「そうなんだ。ありがとう」

 

 

コレイ「お、お礼とか大丈夫だ!ティナリ師匠も村にいるから呼んでくる......」

 

 

そういうとコレイが駆け足で、葉っぱの扉の先へ行った。

 

 

遠くから鈴虫の鳴く音が聞こえたので、窓を覗くとすっかり夜だと言うことに気づいた。

 

 

砂漠を超えて森林地域に来た時は昼ぐらいだから........かれこれ数時間は気絶していたことになる。

 

 

体は未だにズキズキしていて重いものを担ぎ上げているかのような感覚だが前よりかは幾分マシだ。今ならキノコンやヒルチャールに奇襲されても抵抗ぐらいはできそうだなと考えているといきなり葉っぱの扉が勢いよく開き、パイモンが半泣きで入ってきた。

 

 

パイモン「旅人ーーー!!!」

 

 

名前を叫びながらベッドに飛びつき、自分の体に抱きついた。その勢いでベッドに押したされ、赤ん坊のように手足をジタバタし始める。

 

 

空「痛.......パイモン?」

 

 

パイモン「心配したぞ!起きたら旅人がボロボロだったから......!」

 

 

空「あはは……ごめんね」

 

 

パイモン「どれだけハラハラしたか.....」

 

 

ティナリ「こらパイモン。病人なんだから安静にしないと......」

 

 

続いてティナリとコレイが部屋に入ってくる。

 

 

ティナリは何故か耳としっぽに水しぶきが着いていて、右耳がピクピク小刻みに動いていた。

 

 

ティナリ「旅人、体の調子はどう?」

 

 

空「まあまあ」

 

 

ティナリ「それは良かった。あ......コレイすり鉢が欲しい」

 

 

コレイ「あ、はい....」

 

 

コレイが自分の机の中から白石で出来たすり鉢をティナリに渡すと、床の上で2種類の花を潰し初めた。

 

 

パイモン「ん?スメールローズにパティサラ?」

 

 

ティナリ「うん。この花には薬の効果があるんだ。スメールローズとパティサラ....そして水を6:3:1の割合で.......すり潰すと.....」

 

 

すり鉢にすりこぎがカタカタと当たる音が部屋に数分間響き渡ると、手を止めて器ごと空に渡してきた。

 

 

ティナリ「できたよ。どうぞ」

 

 

お世辞にも見た目がよくない。スメールローズの紫の花弁とパティサラの銀色の花弁が混ざりあってなんとも言い難いものが目の前にある。かと言って拒否するするのもあれだし......と脂汗を出しながらすり鉢を口当たりに持っていく。

 

 

ティナリ「えーと........良薬口に苦しって言うだろ?」

 

 

空「.........」

 

 

唾を飲み込んで心を落ち着かせる。ええいままよと目をつぶって口の中に放り込むと空の舌にドロっとした物が触れた。

 

 

その瞬間、ぶわっと苦味が広がり、刺激臭が鼻に入ったかと思うと嗚咽してしまう。だが、ここで休憩を入れると二度と飲めないと思うので飲み干した。

 

 

空「(ダメだクラクラする.........)」

 

 

しかし次第に正常な視界に戻り、先程より体が軽くなった気がした。

 

 

空「おお....調子が戻った......今ならなんでも出来る気が.....」

 

 

ティナリ「ダメだよ。少なくとも1晩は安静にしてもらう」

 

 

空「冗談だよ.....ちょっとだけここにお世話になろうかな」

 

 

パイモン「ふー.....旅人も復活したしとりあえず安心だな!.........それよりティナリはなんでそんなに濡れてるんだ?」

 

 

ティナリ「えっ?」

 

 

尻尾にたっぷりと含まれていた水分が尻尾の先から床に滴り落ちていて、そこに大きなしみができあがっていた。

 

 

パイモンの質問にティナリは見て分かる通り動揺し、目を斜めの方向に背ける。

 

 

ティナリ「えーと、アビディアの森は年中湿気がすごいから.......それで湿気た尻尾がこんなことになったんだろ?」

 

 

コレイ「え.....ティナリ師匠さっき......」

 

 

ティナリ「コレイ!」

 

 

コレイが何か喋ろうとしたがあわててティナリが止める。そして、ジト目で彼女を見た。

 

 

パイモン「?そんな慌ててどうしたんだ?」

 

 

コレイ「ティナリ師匠が岩肌にあった花を取ろうとしたら滑り落ちて、水溜まりに尻餅をついたんだ.......」

 

 

パイモン「ぷっ....ぷぷ。ぷーっはっはっはっ!」

 

 

ティナリ「コ、コレイ!言わなくてもい、いい、いだろ!」

 

 

コレイ「ひ、ひえ........」

 

 

そうしてそこからみんなは時間を忘れて談笑していた。そしていよいよ真夜中になると、睡眠のためティナリとコレイが部屋から出て行った。

 

 

コレイの寝床はどうするのだろうか......。ティナリが用意してくれるだろうと信じることにしてみる。

 

 

パイモン「旅人これからどうするんだ?」

 

 

空「とりあえず明日スメールシティに行ってナヒーダに会わないと........」

 

 

パイモン「正機の神のことか?オイラもびっくりしたぞ........」

 

 

空「うん。あんな危険なものをナヒーダが受け渡すこともないだろうし.......」

 

 

パイモン「だな。神の目もない空の台座をどうするつもり........ふぁ.....旅人、オイラ今日いろいろありすぎて疲れちゃったぞ......おやすみ」

 

 

空「おやすみ」

翌日の昼にガンダルヴァー村をティナリと一緒に出発した。どうやらティナリもスメールシティ方向に用事があるらしい。

 

 

道中、彼が定期的に心配そうな表情を浮かべながらこちらを見てくる。

 

 

ティナリ「本当に大丈夫?腹痛は?足は痛まない?フラフラしない?」

 

 

アビディアの森のレンジャー長なのもあって他人を心配することが人一倍多い。逆にここまで心配されるとこっちが申し訳なく感じるが、よく言えばちゃんと人のことを見れている優秀な人物と捉え空は返答していた。

 

 

空「大丈夫だよ。あの少量でもこんなに効くから逆に驚いてる。本当にありがとう。恩に着る」

 

 

ティナリ「そう?よかった.......実はあの薬水は最も簡単にできるものなんだ。効果をもっと充実させたいなら薬水の量をもっと増やすか、パティサラの割合を増やして逆にスメールローズの割合を減らせばいい。だけどこの割合の増減は人によっては副作用をもたらしちゃうんだよ。あの花は一歩間違えば体に毒になるからね.........」

 

 

パイモン「ええ?そんな危険なものなのか?」

 

 

ティナリ「なにごとも適量ってことだよパイモン。これに関しては教令院の文献を探せば見つかる。えーと確か........34番の棚の花関連の.......」

 

 

ティナリはすっかり熱が入り、早足にスタスタと歩き始めた。普段冷静沈着な彼だが、植物の話になるとこうなってしまう。

 

 

パイモン「おいおい、あいつしゃべるのに夢中だぞ.......」

 

 

空「それほど詳しくてすごいって話でしょ?普通に勉強になるから.......」

 

 

パイモン「......だな」

 

 

ティナリの話のおかげで、道中暇せずいつの間にかスメールシティに近づいていた。

 

 

知恵で発展してきた国といわれるほどで、それを学ばんと他国から人が押し寄せてきている影響かそこじゅうに教令院の制服着ている少年少女たちがいる。それに加え砂漠へ赴く学者や商売人、エルマイト旅団の服装の人たちの雑踏が出来上がっている。

 

 

そして遠いところからでも存在感を放つ巨大樹には知識の本殿である教令院そしてスラサナンタ聖処が聳え立ち、スメール最大の都市という威厳を保っているのだ。

 

 

スメールシティの南側の入口から入ると、ティナリがこちらを振り返った。

 

 

ティナリ「はい到着したよ。お疲れ様........。僕はこれで」

 

 

パイモン「確か用事があるとか言ってたよな?」

 

 

ティナリ「そう。セノと一緒に食事するんだ........あとはわかるだろ?」

 

 

空「ああ........」

 

 

パイモン「............察するぞ」

 

 

ティナリ「そう、察しの通り……。じゃ、またね二人とも。はぁ.........今日はどんぐらいダジャレを言われるんだか」

 

 

空「ありがとう」

 

 

パイモン「おう!ありがとうな!」

 

 

ティナリの姿が見えなくなるまで見届けたあと、2人はシティの中へ進みスラサナンタ聖処に向かう。

スラサナンタ聖処は巨大樹に無理やりこじ開けられた急傾斜の道を上がった先に建てられているので道なりは厳しい。数分もしたらすっかり息も上がってしまう。「(病み上がりなんだけどな......)」と心で吐露し、パイモンに励まされながらなんとか最後の坂の途中までやってきた。

 

 

パイモン「ふー......やっとついたな。来るだけでも一苦労だぞ......」

 

 

空「パイモンは飛んでるでしょ?」

 

 

パイモン「飛んでるだけでもエネ........いいや。しかし、この高さに建物を建てたやつはどんな考えをしてたんだろうな.........」

 

 

空「高いところがすきだったんじゃない?」

 

 

パイモン「愚か者と煙は高いところが好きってやつか?」

 

 

空「パイモンもそうでしょ?」

 

 

パイモン「そうかもな.......っておい!」

 

 

空「冗談だよ」

 

 

ぷんすかしているパイモンを横目にようやく最後の坂を上ると踊り場に出た。だが、こんな高いところに登ろうとする人は中々いないので静寂そのものだ。

 

 

パイモン「きれいだな.......」

 

 

パイモンが踊り場に設置してある柵に寄りかかり、下を覗き込んだ。

 

 

さすがはここまできたのだから絶景は確保されている。人頭が砂粒並みに小ささでうごめき、立派な木々がそこには広く聳え立つ。そしてその先には橙色のさびしい光景もあるのだが、それも絶景のパーツとなり緑色のオンパレードを陰ながら引き立たせている。

 

 

こんな光景を何時間見ていても申し分ないのだが、今回はそれを見に来たわけではないので頬をたたきながらスラサナンタ聖処の重い扉を開けた。

 

 

白い塗装が施されている神殿の内装は神秘的で、優しい黄緑色の光が満ちており、来訪者をそれに釘つけにさせる。ドアの先はすぐに中央に続く通路があり、中央にはガラスのオブジェクトと台座がある。そこに二人分の人影が見えたのだが、自分は誰なのかすぐにわかった。

 

 

スカラマシュ(※)「ちっ.......まったく教令院は機械のパーツをつくるのに数日も必要なのかい?知恵の国の割にはしょぼいんだね」

(※)便宜上、スカラマシュとします

 

 

ナヒーダ「そう怒らないで頂戴。あなたの体のパーツは神の目に耐えるように設計されてる........簡単にはいかないわ」

 

 

スカラマシュ「ふん.......!腕も故障しているし足の調子も悪い.....。あの女......」

 

 

青髪の少年はどうやらご立腹のようだ。

 

 

そのすぐそばに白い服を来た幼女が少年の肩を弄っているせいで来客者の存在に気づいていない。

 

 

空「何してるの?」

 

 

空が中央の台座まで近づいて話しかけると集中していた2人は突然の声にぎくりと驚いた。

 

 

一瞬だけだが、少年の肩が破損した状態であるのが見えた。

 

 

空達がきたと分かるな否や急いで見えないように隠し、そして笠被る。

 

 

ナヒーダ「驚いたわ.......。いらっしゃい。旅人にパイモン」

 

 

パイモン「おう!ちょっと失礼するぞ!」

 

 

スカラマシュ「何しに来たんだい?いきなり押しかけて来て.....。少しは驚いたよ」

 

 

スカラマシュは腕を組みながら背を向けて喋りかけていた。

 

 

空「ちょっと聞きたいことがあって.....」

 

 

ナヒーダ「聞きたいこと?」

 

 

空はナヒーダに昨日の砂漠での出来事を話した...........。

 

 

彼女が砂漠の洞窟で正機の神があったことを口に出すとナヒーダは一瞬驚いた表情を浮かべたが、何かを納得したかのようにいつもの顔に戻る。

 

 

ナヒーダ「.........なるほど。とりあえず災難だったわねご苦労さま。それと情報提供感謝するわ」

 

 

パイモン「情報提供?」

 

 

ナヒーダ「ええ。まず正機の神のことだけど、ほぼ100%の確率でそれは本物よ」

 

 

パイモン「ん?どうしてそう断言出来るんだ?」

 

 

ナヒーダは口を紡ぎ、言葉を詰まらせた。そんな出し渋るナヒーダの様子に見かねたのかスカラマシュが催促する。

 

 

スカラマシュ「......別に旅人になら言ってもいいんじゃないか?僕は気にしないよ」

 

 

ナヒーダ「.......そうね。結論から言うと正機の神は........強奪されたの」

 

 

パイモン「ええ!?」

 

 

空「強奪...!」

ナヒーダ『あら......驚いた』

 

 

幼女は突然来訪した青髪の女性に対して冷静を取り繕っていたが、内心では心臓がバグバグと脈打ち、脳からの危険信号が流れてきていた。

 

 

やっと平穏を取り戻したスメールに数百年現れなかった脅威が突然目の前に現れたからだ。

 

 

青髪の女性は悪意こそないが、掴みどころがない態度でスラサナンタ聖処の内装を見渡しながらナヒーダと会話している。

 

 

ゼーレ『へぇ...本当に居た。俗世の七執政は千差万別だけど草神ブエルはご立派な神殿をお持ちのようね』

 

 

ナヒーダ『わたくしが指示して建てられたわけじゃないの。過去の偉人達が神を崇める気持ちで作られた輝かしい功績よ』

 

 

ゼーレ『ふーん.......』

 

 

しばらく周りを見渡すと視線を目の前のナヒーダに移した。その目から興味があるものが映っているのに加え、右目の灰色の瞳孔の奥からは俯瞰しているものがみえる。

 

 

ゼーレ『ああそうか。あなたが生まれてからまだ500年しか経ってないからこんなに小さいのね』

 

 

ナヒーダ『それはあなたの''記憶''から見てきたの?』

 

 

ゼーレ『へぇ、分かっているじゃない。ええそうよ。世界樹はまだまだ健在しているわ。力は時代と共に失えど記憶が廃れることはない。そうでしょ?』

 

 

ナヒーダ『.......』

 

 

ゼーレ『それよりも最年少の神様でも律者の存在はわかってるのね。驚いた。』

 

 

ナヒーダ『......もちろんよ。あなたの中にある黒い物は世界樹から始まった...。そのことを知識の神であるわたくしが忘れるものですか.......』

 

 

ナヒーダ『それでなにか御用?知識をお求めならここの坂を下って教令院に行けばいいわよ。......だけどあなたならその必要は無いのかしら』

 

 

ゼーレ『あら、随分と焦っているじゃない。知識の神を称する割には聡明じゃないわね。数百年現れなかったから?それとも....』

 

 

ナヒーダ『正直.....あなたの言う通りよ......』

 

 

ゼーレ『そう。.....ねぇ、ブエル。知恵の神であるあなたにひとつ聞きたいことがある。この世に不必要な人間がいると思う?』

 

 

この唐突な質問にナヒーダは一瞬狼狽えてしまった。

 

 

だが、すぐに気を取り直す。

 

 

ナヒーダ『.....その不必要の定義によって話は変わってくるわ』

 

 

ゼーレ『そうね...。例えば、テイワット大陸に貢献しなかったり神から与えられた''役割''を自覚せずに死んでいく者のこととか?』

 

 

ナヒーダ『あなたの例え話に基づいて話すのなら、わたくしはそうは思わないわ。そもそもテイワット大陸に貢献しないは話が大きすぎると思うの。衆人には家族そして未来のパートナーが居て、その人達と共に愛を育むことも一種の貢献よ』

 

 

ゼーレ『へぇ......?』

 

 

ナヒーダ『そして......スメールの民を守り、そして導くのがわたくし草神としての役割』

 

 

ゼーレ『誰しもが役割を持っている。天命を受けずに世に堕とされることは無い...。私はなんでしょうね。ここ最近までそれがわからなかった........だけど見つけたの』

 

 

ナヒーダ『.....そう』

 

 

ゼーレ『私は目的のためならなんでも出来るタイプなの........だからごめんなさい』

 

 

ナヒーダ『!』

 

 

嫌な予感がよぎったナヒーダが咄嗟に後ろに下がったが予想とは違い、ゼーレは通路を飛び越え、底なしの穴に落ちて言った。

 

 

ナヒーダ『!?』

 

 

ナヒーダが急いで底を確認しても既にゼーレの姿はなかった。

 

 

ナヒーダ『ここから下は何も.......!正機の神だけしか.......!......!まさかそれを.....!?』

 

 

ナヒーダが急いで正機の神がある空間までやってくる。時すでに遅しで、スカラマシュが地面に突っ伏して肩を抑えている。体のパーツにヒビが走り状態はあまり良くなかった。

ナヒーダ『スカラマシュ!』

 

 

スカラマシュ『お、遅い......!』

 

 

ゼーレ『英雄は遅れてやってくるってやつかしら。今回は本当に遅れただけど』

 

 

ナヒーダ『くっ.......』

 

 

ゼーレは既に正機の神に辿り着いていた。

 

 

ゼーレ『虫みたいにビュンビュン飛ばれたから予想以上に時間かかっちゃったな.....』

 

 

スカラマシュ『ふっ、そんなガラクタを手に入れてどうするつもりだい?もうそれにはなんの価値はないよ』

 

 

ゼーレ『私は器が手に入ればなんでもいいのよ。この機械の機能なんざには興味が無いわ。たまたま目をつけたところに行ってあなたたちが被害をあっただけ』

 

 

スカラマシュ『(器......?)』

 

 

ゼーレは正機の神の状態を確認し始めた。2度の戦闘でかなりボロボロになっていたが、まだまだ使用出来るとわかると自然に笑みがこぼれる。

 

 

ゼーレ『ふぅ....良かった。これで使えなかったらあなたの右肩を完全に粉砕させてたかもね』

 

 

スカラマシュ『.......やれるものならやって見てみなよ』

 

 

ゼーレ『鏡でその体の状態を見てから言いなさい木偶の坊』

 

 

スカラマシュ『ちっ......』

 

 

ゼーレ『とりあえず目的のものは手に入ったしこれでとんずらこくとするわ。じゃあね』

 

 

スカラマシュ『待て!』

 

 

スカラマシュが風元素で距離を詰めて足止めをしようとしたが、ナヒーダに服を引っ張られた。

 

 

スカラマシュ『!?離してくれ!逃げられるぞ!』

 

 

ナヒーダ『.........深追いはよくないわ』

 

 

ゼーレ『冷静な判断ね。大丈夫。悪いように使わないから』

 

 

紫色の光を発すると同時に正機の神とゼーレの姿がその場から消えていった........。

ナヒーダ「こんな感じなんだけれども......突発的な出来事だったから対応ができなかった.....ごめんなさい」

 

 

スカラマシュ「君が止めてなかったら粘って追い返すことができただろうに.......なんでなんだ?」

 

 

ナヒーダ「この前も言ったでしょ。私とあなたが全力を出しても敵わない。それにあなたがあれ以上戦っていても結果は目に見えているわ」

 

 

スカラマシュ「それはやってみないと分からないだろう!」

 

 

ナヒーダ「いいえ。これだけは断言出来る。あなたのことを思っての判断よ」

 

 

スカラマシュ「だが.....!」

 

 

空「これはナヒーダの言う通りだと思う」

 

 

スカラマシュ「なっ!旅人も僕を否定するのかい?」

 

 

空「俺も実際に彼女と対峙して手も足も出なかった」

 

 

スカラマシュ「チッ......!ふん.....君がそこまで言うのなら納得するさ」

 

 

口ではそう言っているが、顔の表情からしてまだまだ納得していないことはわかった。

 

 

そしてさらにそっぽ向いてしまった。その背中からどことなくやるせなさと怒りが感じとれる。

 

 

パイモン「ん〜話を聞いてかなりの脅威だと言うことはわかるけどそれでもにわかには信じらないぞ........実際ナヒーダや旅人が相対してそんな悲惨なことになるのか?」

 

 

空「パイモンは初めにやられたから知ってないだろうけど為す術なくやられた」

 

 

ナヒーダ「わたくしはそもそも非力だから.......。それに相手も悪かったわ。律者に遭遇してしまった.....」

 

 

パイモン「リツ.....シャ......?うーん?あー!どこかで聞いたことあるかと思ったらあの事か!」

 

 

ナヒーダ「ええ。教令院の暴走を食い止めることに成功した後、あなたにこれからの旅の事を喋ってる時に少しだけ....ね」

 

 

あの日、次の国フォンテーヌについての情報を貰った時、律者についての話を聞いた。ナヒーダの口から律者という存在が大昔に存在していたこと。そして、その律者には菱形のマークが刻まれていること。その情報を聞いたおかげであの時ゼーレが律者ということに気づけたのだ。

 

 

空「......ナヒーダ。この際そのことについて知ってることがあれば話して欲しい」

 

 

パイモン「そうだぞ!オイラも気になるぞ!」

 

 

ナヒーダ「.........わかったわ。ここ数百年現れなかった凶物だったから少しだけしかあなたに話さなかったの。だけど、今遭遇してしまったからには、もうこの際私が知ってることを話すわね」

 

 

空「そもそも律者って.......何?」

 

 

ナヒーダ「カーンルイアの厄災が起きた時に生まれた副産物だと思ってくれればいいわ」

 

 

パイモン「副産物?どういうことだ?」

 

 

ナヒーダ「カーンルイアの滅亡の際妖力に満ちた魔物達が他国に牙向いた......。それはスメールも例外ではなく、まさに惨状......阿鼻叫喚の事態よ。魔物の手はついに世界樹まで届き、その結果汚染されてしまったのだけども何らかの力が働いて汚染されたもの事浄化に成功した。この力に関してはわたくも良く分からない........」

 

 

パイモン「浄化に成功したのならいいんじゃないのか?」

 

 

ナヒーダ「問題はそこからよ。妖力に満ちた魔物だと言っても個体差があるの。当然なことだけど弱い魔物もいたし、力が持っている魔物もいた......。妖力の弱い汚染は不思議な力で浄化できたのだけれど、後者はそうはいかなかった.......。より深く傷を世界樹につけたものにどうやって浄化させたと思う?」

 

 

パイモン「うーん........。そこの部分を切った......とか?」

 

 

ナヒーダ「惜しい。浄化で全てを消し去ることは出来なかった。そこで、強い汚染ごと世界樹から追い出すことにしたの。........。こんな芸当は難しいから力を使った人はかなりの手練ね」

 

 

空「(マハールッカデヴァタはこの深い傷を追い出すことに死力を尽くしてエネルギーを使い果たしのだろうか)」

 

 

ナヒーダ「その深い傷の負のエネルギーが律者の前駆体だとわたくしは考えているの。世界樹から追い出された傷は逃げるように深淵.....つまりアビスの中へ消えていき、そこで生き物に進化するかのように成長し、意思を持った結果大きな力を持つようになった」

 

 

パイモン「その力を持ったものが律者ってことか?」

 

 

ナヒーダ「その通りよ。だけど、その者達のほとんどが望んだ訳じゃない.....急激に成長し突如アビスの中で力が4つに分割されてアビスから飛び出し、ランダムな人に寄生するかのように取り付いた。それが律者」

 

 

空「それだとゼーレが何百年も生きてる人間だと言うことになるけど......」

 

 

ナヒーダ「勿論彼女は数十年しか生きていない人間よ。律者の厄介な所は強大な力を持っているのに加え、前代が死亡してもまた、ランダムな人に取り憑くの。世界樹から分化した存在はたとえ媒体が無くなっても地脈に入り込んで次の人を探し始める.......。それが七神を苦しめてきた原因で、目の前の問題を解決してもどんどんと湧いてくる.....キリがないわ」

 

 

パイモン「ふええ.......けど、4つに分割されていて、勝手に湧いてくるなら今ごろテイワット大陸はめちゃくちゃになっているんじゃないのか?オイラ、スメールに来てから初めて律者っていう単語知ったぞ....」

 

 

ナヒーダ「幸い4つの内3つの律者は既にカーンルイアの厄災直後に神達が尽力を尽くして封印ができた。肝心の1つが今......あの彼女の中にあるってところね.....彼女の中にある律者の力は璃月の底で発生してモラクスによって葬り去られたと思ったのだけれど、彼はしくじったようね。あともうひとつ救いようがあるのが力が引き継がれる事に段々弱まっているところよ。これが無ければ今の七神じゃ太刀打ちはできない」

 

 

パイモン「おい旅人....オイラ達とんでもないものに出くわしちゃったみたいだな....旅人が勝てないのも納得だぞ....」

 

 

空「次は絶対勝つ」

 

 

ナヒーダ「.........これが私が知っている全ての情報よ。ごめんなさい私はまだ生まれて500年だからこれぐらいしか無くて.....」

 

 

パイモン「いやいや!オイラ達としてはすごくありがたいぞ!なっ旅人!」

 

 

空「うん。そもそもあの時に話して貰えなかったら砂漠でゼーレが律者が知らなかったし、今こうして情報交換ができてるわけだし.....」

 

 

ナヒーダ「そうね、ありがとう。ところで何故彼女が律者だってことに気づいたの?」

 

 

空「マークが一瞬目に見えた。その時にナヒーダの話を思い出して.....」

 

 

ナヒーダ「目に.....」

 

 

パイモン「ひし形のマークのことか?それって何を意味をするんだ?」

 

 

ナヒーダ「律者を表す印........。同時にそれが神の目のような機能を持つの。今までの律者もそうだった......。だけど目に刻まれたのは初耳ね」

 

 

パイモン「それもランダムなのか?」

 

 

ナヒーダ「厳密にはそうだけど、神の目が人の心の関連しているように、マークもその人が思いありがあるところに発現する......というわたくしの前知よ」

 

 

パイモン「これに関してはエウルアに直接聞いた方が良さそうだな.....」

 

 

空「そうだね」

 

 

ナヒーダ「ん?誰かしら......」

 

 

パイモン「あーいや!こっちの話だ!」

 

 

ナヒーダ「そう.....そういえばあなた達が彼女と出会って砂漠で何やら探し物をしてたって先程聞いたけれど良ければ教えて欲しいわ」

 

 

パイモン「あいつは終焉機のコアを揃えようとしていたんだ!

 

 

ナヒーダ「終.....焉....機.....?」

 

 

パイモンの言葉にナヒーダは考え込んだが、特に答えが出なかったようだ。

 

 

ナヒーダ「それは....何かしら?」

 

 

パイモン「キングデシェレトの王国を滅ぼした悪いやつらしい.........今はもう居ないらしいけど、そいつの動力源だけは今も残ってるらしいぞ」

 

 

ナヒーダ「ちょっと記憶にないわね........。後で調べておくわ。それを使って彼女はなにかしようとしているってことね?」

 

 

パイモン「そういうことだぞ.....全部でえーーと.....」

 

 

空「4つ」

 

 

パイモン「あーそうそう!全部で4つあるんだけどそのうちゼーレが3つ手に入れてたんだ.....」

 

 

ナヒーダ「......!残り1つ.......!」

 

 

パイモン「そろうと何かあるのか?」

 

 

ナヒーダ「正直どんな悪影響が出るのかわたくしにも予想できない。だけど、ろくなことが起きない。これだけは言える.......神の勘ってやつね」

 

 

スカラマシュ「あの女が言っていたことを思い出した方がいいんじゃないかクラクサナリデビ」

 

 

背を向けていたスカラマシュが突然話しかけてきた。

 

 

ナヒーダ「と....いうと?」

 

 

スカラマシュ「あの機械体のことは僕が1番知っている。神の瞳の器であるあのガラクタのこと.....王国を滅亡に追いやった魔神の残骸は少なくともそんじょそこらと同じではないんじゃないか?」

 

 

ナヒーダ「.......」

 

 

パイモン「お、おいどうするんだ......?」

 

 

ナヒーダ「もちろんこのまま見過ごすこともできないわ......。悠長なことも言っていられないし、すぐにコアを彼女より先に奪取するなり何とかしないと」

 

 

空「手伝うよ」

 

 

ナヒーダ「本当にいいの?」

 

 

パイモン「おう!大丈夫だぞ」

 

 

ナヒーダ「感謝するわありがとう。だけどその前にこの子の肩の修理だけしないと......。ほら、見せてちょうだい」

 

 

スカラマシュ「い、いい!あとは自分でやる!」

 

 

ナヒーダ「あら遠慮しなくてもいいのに」

 

 

2人がそんな会話をしているのを眺めている中パイモンに肩をつつかれた

 

 

パイモン「ナヒーダ達もやることあるらしいし、オイラ達もやれること探してみようぜ...」

 

 

空「そうだね」

 

 

2人の作業を片目にスラサナンタ聖処を出ることにした。再び目の前には変わりない絶景が広がっていたがここまで落ち着かないのは初めてだ。

 

 

パイモン「ナヒーダの話聞いて思ったけど、世界樹から分化して出来た存在なら、ゼーレがあんなに歴史を知っていたのも納得だよな.....」

 

 

空「うん」

 

 

パイモン「自分でやれることをやろうぜって行ったけど具体的に何すればいいか分からないぞ......とりあえずエウルアの所にいくか?」

 

 

空「そうしよう。説得できる可能性あるかもね」




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