異世界から追放された英雄は、【シン・日本】で平穏に暮らしたいけど強すぎて無理 作:秋津 幻
しーん。
小鳥遊さんの死体がそこに転がっている。
>たかなしさん死んでるー!
>どーすんのこの企画
「まずいですよ! このままじゃリスポーンしちゃうから……蘇生しなきゃ!」
「あーはいはいちょっと待って」
奥の方で引っ込んでるのをやめて、カメラの前に出てくる。ここらで目立たないとか言ってる場合じゃない。
幸いにも死体は綺麗なので、蘇生は可能そうだ。
――Kの時間巻き戻し!
――小鳥遊は蘇生された!
「死、死、死……あれここは?」
「……一回死んだよ」
「えっ……いつの間に!?」
即死技の謎を探るべく、その絶対殺すゾーンの奥の方を見る。
そこには、一台の砲台がある――生足のついた、砲台が。
「何なんですかあの見た目……」
「ユニークそんなんばっかですわね」
名前:デスタイホーン
レベル:125
体力 502782
攻撃 ???
防御 588458
魔力 2955
「体力と防御がたっかいな……攻撃が低いが即死技一択だしな」
「防御無視使いますか?」
「体力が削り切れんだろ……前のナメクジ……イカと違って低HPじゃないんだぞ」
と、その時。
「!!! みな、気を付けろ! 来るぞ!」
「えっそんなこと言われても……!?」
かと思うと、砲台の口に光が溜まり始め――発射された。
――デスタイホーンの絶対死ぬビーム!
――ステラには当たらなかった
――小鳥遊には当たらなかった
――Kは即死無効だ
「あ、当たらなかった……」
「ちょっと、どうするんですかこれー!」
「幸いにも命中はそんな高くないっぽいな……3割……それ以下か?」
「ああも連射されたら当たるじゃないですかー!」
「とりあえずステラちゃんこれ持っとけ!」
――Kはステラに即死無効を託した
「あっはい……また無法なものを」
「……わたくしは?」
「……小鳥遊さんは死んどいてもいいぞ、後で回収するから」
「酷いですわー! わたくしも皆さまの役に立ちたいのにー!」
>ナシさんがおいてかれる環境ヤバくない?
>料理だけかその腕は
>いや即死がヤバない?
「即死攻撃はたまに飛んでくるからなー対処方必要よ必要」
>どうやって対処すればいいんだこんなの!!!
>避けるしかなくない?
>すると即死無効の方もすごいのでは……
「即死にしか対処できないからなー、合って損はないけど汎用性はないから強みにはならない」
「今この状況ではあって得しかないと思いますが……」
「ああもう仕方がありません、ありもので何とか致しますわ!」
「ナシさん次が来ますよ!」
そうこうしているうちにまた雑な名前のビームをチャージしてくる。
――デスタイホーンの絶対死ぬビーム!
――ステラは即死無効だ
――Kは即死無効だ
「ああもうここで一か八かやりますわよ!」
――小鳥遊のクロックアップ! 相手の行動に割り込んだ
――小鳥遊の警戒! 回避率が上がった!
――小鳥遊は回避した!
「! クロックアップ! 時間停止系の能力か」
「そんなたいそうなものじゃありませんわ。1行動割り込ませるだけの能力ですけどわ……」
「なんとか避けられそうではありますけど……で結局どうするんですかアレ!」
「体力と防御が高いのがなー小鳥遊さんもこのままだと大変そうだし……」
俺が適当に殴っちゃってもいいんだけどなー。其れじゃ意味ねえし。
「そうだな……ここで異世界上位勢からのセオリーを一つ! 即死には即死だ!」
「……なぜ?」
「速攻でやられるからこっちも速攻でやらんとマズい。速度で放たれる即死は無敵だからな」
小鳥遊さんにも無理をさせているし、何とかさっさと決めなきゃならん。
そうすると、防御がどうのHPがどうのを計算するより、さっさと決めたいわけだ。
そういう訳で、ステラちゃんに使わせる即死技を探すために、ステータス画面を開いて、大量に並べてあるスキルを下に下にスクロールする。
スキル多いと管理できなくなってくるんだよな。
……
…………。
「……やっべ、みつかんね」
――デスタイホーンの絶対死ぬビーム!
――ステラは即死無効だ
――Kは即死無効だ
――小鳥遊のクロックアップ! 相手の行動に割り込んだ
――小鳥遊の警戒! 回避率が上がった!
――小鳥遊は回避した!
>スキル管理できないんかーい
>スキル多すぎるとこういうデメリットもあるんですね……
「即死技は強くなりすぎるから、俺でもなかなか即死技はもってないなーこれとかどう? 相手よりレベル高い場合のみ当たる奴とか」
>レベル格下なら即死技使わなくても倒せるじゃん……
>それ即死技の意味あります?
「相手に抱き着いたうえで自分が死ぬ代わりに相手も死ぬ奴とか」
>それ自爆って言いません?
「相手に抱き着くのが大変そうですわね……」
「あ、でもこれだと経験値はいらんわ」
「ダメじゃないですか!」
「ちょっと待って探せばいい感じの奴あるかもしれん……えっと……」
――デスタイホーンの絶対死ぬビーム!
――ステラは即死無効だ
――Kは即死無効だ
――小鳥遊のクロックアップ! 相手の行動に割り込んだ
――小鳥遊の警戒! 回避率が上がった!
――小鳥遊は回避した!
「ちょっとー! これいつまでやるんですの!?」
「あーもう駄目だ見つかんね……こっちも絶対死ぬビーム使えたらな……ステラちゃん相手の攻撃をコピーできたりしない?」
「え……まあ友情バトンでコピーできなくもないですけど」
「出来るんだ……」
>出来るんだ……
>出来るんだ……
>大昔に配信で一回やってましたね
「ただ条件があって……相手の攻撃を受けないとそれを友情バトン出来ないんですよ」
「出来るんだ……友情バトンっていうのそれ?」
「一度殴り合った敵も友達? みたいな」
「その解釈便利だな……」
ステラちゃんはこういう、拡大解釈が上手い。エネミーガードを魔物だけでなく、配信のアンチコメに対応させるなど、スキルの利用幅を広げることが出来ている。
スキルというのは最終的に、どれだけ拡大解釈できるかにかかってくる。どれだけ弱いスキルでも、出来ると信じれることは大抵の事は出来る。
大事なのはイメージだ。
「じゃあ即死無効があるから一回受け止めて、それで何とかコピーして何回か当たるまで繰り返せばいけますかね?」
「外した後に即死無効つけなおすまでに殺されないかだけ心配ですわね……」
「まあその時は生き返らせればよくね?」
「嫌ですよ! 嘘でも死にたくありません!」
「どうせ生き返る死とか怖さとか感じなくない?」
「やめてあげてください……怖いんですわよ死ぬのって! 意識がふっと消えて! もう二度と目覚めないんじゃないかと思って! というか、わたくしがロックオンかければ当たるようになるのでは?」
「それでいいか。すると、タイミングが重要になるな。……どうする、ステラちゃん?」
「……まあ、行けそうですね、やります! やってみせます!」
***
「じゃあ覚悟は出来たか―」
「チャージきますわよ!」
「それでは――行きます!」
――デスタイホーンの絶対死ぬビーム!
――小鳥遊は回避した
――Kは即死無効だ
――ステラは即死無効だ
――ステラの友情バトン! 絶対死ぬビームを自らの糧とした!
「よっしいけます!」
「じゃあこのまま相手が次の即死技打ってくる前に――ってまずい!」
その時だった――相手が突如として、再びチャージを始めたのは。
「は!?ふざけんな! 即死無効がない今このまま打たれたら死ぬぞ!」
「まずい、わたくしのスキル発動が間に合わない……!」
俺は前に出て、皆を守ろうとする――その時。
「――いや、このまま行きます!」
そういって、走り始めた。
一瞬でも早く、一瞬でも先に攻撃するために、前に出る。
死が怖いと言っていた割に、死を恐れぬその行動。
「ここで決めるたあいい度胸だ……それならいいものがある! 小鳥遊さんもやってくれ!」
――Kのレディーファースト!
――Kはステラと小鳥遊を優先させ、行動順を譲った!
女子を指定して、先に行動させるだけの謎スキル。これが役に立つときが来るとは……
「!!! ありがとうございます!」
「わたくしも……ステラさん! 速攻で決めますわよ!」
――小鳥遊のクロックアップ! 相手の行動に割り込んだ!
――小鳥遊はロックオンをかけた!
「ステラさんそのままぶち込んでくださいまし!」
「! はい! 行きますよおおおお!!!」
相手の攻撃が来る前にステラちゃんは拳を振りかぶる。
「絶対、死ぬビーム!」
その叫びと共に、拳からビームが放たれ――
――ステラの絶対死ぬビーム!!!
――デスタイホーンは焼却された!
相手は、消し炭になり消え去った。
「いえい、ブイ!」
>ステラのレベルが4上がった!
「やった、ユニーク退治2体目!」
「おおレベル上がりましたけど……前ほどじゃありませんわね?」
「そりゃあレベルも上がって必要経験値も上がってるだろうしな……しかし今回は俺があまり介入しなくても倒せたな。小鳥遊さんのサポートなかなか優秀でしたね」
「えへへ……そうですか?」
「私はどうでしたか!」
悪くはない。むしろいい。いいのだが……
強くなるためにレベルを上げる事だけに頼るには、難しくなってきたようだ。ユニークを倒してもこれだけしかレベルが上がらないなら、他の魔物ではもっと上がらない。
ユニークを倒すしかレベルを上げる方法はないのだが、結局他の人がいないと倒すことは難しい。
そろそろ……別に強くなる方法を探さなくては。