異世界から追放された英雄は、【シン・日本】で平穏に暮らしたいけど強すぎて無理   作:秋津 幻

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第13話 お久しぶり。

「お久しぶりーステりゅん!」

「サクちゃんおひさっ!」

 

 子供の時からの幼馴染の末祓 桜(まつはらさくら)ちゃんと、休みに久しぶりに会う事になりました。

 ミディアムの茶髪で、目はパッチリと大きく開いているかわいらしい小さな顔。子供の頃からの印象そのまま大きくなった印象です。

 懐かしくて、安心します。ここ最近バズったり偉い人に会ったりすごい人に会ったり、忙しくてオフが取れなかったので、心が休まるのはいい機会です。

 

 お洒落なカフェに入り、二人で近況を話し合う。

 

「ステりゅん配信者としてすごい立派になっちゃってー」

「立派じゃないよ、まだまだ未熟なことばかりだし」

「そんな事ないじゃない! 中学生時代から親から反対されても、配信で稼ぎたいって色々頑張ってたよね! 歌うたったり踊ったりしてそれを配信してさー。変わらないね」

「結局色々やったけどダンジョン配信が一番伸びたんだよね。才能あったのかなー? いや、偶然だと思うけど」

 

 そうは言いながらも、私の頬は緩んでいます。友達でも褒められればうれしい。

 

「そで、冒険者としてもS級になるんだって?」

「S級じゃなくて予備役だよ。それに人の助けがあっただけだし」

「あのピンク色の髪の人でしょ! すごいなーカッコいいなー、知り合いなんでしょ、会えたりしないかな?」

「いや、それは……」

 

 華維さんは、なんかこういう野次馬みたいな人を嫌いそうだと思う。

 めんどくさがりで、興味のない人にはまるっきり興味がなくって。

 

「今、忙しそうだし会えないかなって……」

「そっか、残念ー」

 

 あっさり引いてくれたから良かったけど、結構こういう人は多かったりする。

 一回バズったら、有名人だからって会おうとして。

 大体はギルドや事務所の方でブロックするけれど、知人の方から言われるとどうしようもない。

 

「そんでさー、冒険者って最近流行ってるんでしょ? わたしもちょっと小遣い稼ぎにやってみてる訳なんだけど」

「うーん?」

 

 なんか流行りで初めて危険なことやるのもどうかと思うけど。

 でも、私が言えたことでもないか。

 

「ちょっと、いろいろやってるからアドバイスとかしてくれないかなって……忙しいならいいんだけど」

 

 どうだろう、それなら初心者向けに色々装備とか、スキルとか教えてあげるとかアリなのかも……

 私も人に教えてもらってる身です。逆に人に教える経験とかしてもいいのかも。

 

「いいよっ、サクちゃんの頼みだしやってあげる!」

「ほんと! ありがとう!」

 

 あっオフなのにダンジョンに潜ることになっちゃった。

 まあいっか。友達と一緒に潜るだけでも気持ちは違うのです。

 

 ***

 

 そんなわけで、初心者ダンジョンに来ました。

 

「それじゃちょっと、サクちゃんのステータス見せてくれる?」

「はーい」

 

 名前:末祓 桜

 性別;女

 LV:7

 体力 146

 攻撃 132

 防御 155

 魔力 433

 スキル

 【☆永い眠りへの誘い】【精神誘導(マインドリード)

 【魔法 LV1】【マジックミサイル】

 【言いくるめ】【直感】

 

「うん、うーん? なるほど?」

「なんと言うかね、火力が足りない気がするの。どうにかして火力を伸ばせないかなーと思ってるんだけど」 

「この永い眠りへの誘いってのは?」

「ちょっと優秀な催眠というか、眠らせる効果だと思って」

 

 星ついてるスキルなんだから、優秀なスキルなんでしょうに。

 

「えっと……普段はどういう戦い方してるの?」

「そりゃあ、相手を眠らせたり、敵の精神をいじってターゲットを別の所に移し替えたりして……」

「足りないのは?」

「火力?」

「……」

 

 方向性が違くない? このスキルは攻める構成じゃないというか……

 

「サクちゃん、なんと言うかその……人は一人じゃ何にもできないんだよ」

「そうね、普段は友達とかとパーティ組んだりしてるんだけれどもなかなか続かなくって……それでソロでもある程度やれるようにしたいから、火力を」

 

 なぜか、パワーにこだわりがあるようです。

 明らかに、デバフのサポートに特化したスキル構成だというのに。

 そう指摘してあげることは簡単ですが……頭のいいサクちゃんもある程度わかっている事でしょう。

 それなら、まずやるべきことは!

 

「とりあえず……何とかできないか案を探してみよう!」

「う、うん!」

 

 ***

 

「とりあえずこれ装備してみてくれる?」

「これは……」

 

 それは、私が普段装備している戦闘用装甲鎧。の予備です。

 

「これを? わたしに? ちょっとかわいいカッコいいが過ぎるというか、露出が多いというか、地味なあたしには似合わないというか……」

「露出は下にタイツ履けば大丈夫だから」

「えー……ちょっと、うわっ!」

 

 足と腕に青い鋼鉄をまとい、へそが少し出た私の鎧を、サクちゃんが纏っています。

 

「どう? 私の衣装?」

「なんというか胸がちょっときつ……」

 

 胸の大きさの差ァ!

 私も小さくはないんですよ! でもサクちゃんもなんというか……まあ胸が大きいというか。

 

「それで、なんでこの装備を着せたの? あまり殴り合いはやったことないんだけど……」

「でしょ? やったことのない事をやると、意外な適性が見つかるんじゃないかって!」

「うーん? でもまあとりあえず……やってみるわ」

「それじゃあ行こう!」

 

 ***

 

「たっ、たー!」

「へっぴり腰になってる! もっと前でて!」

「そんなこと言われても……うわっと!」

 

 おおきなオークの攻撃を、受け止めます。

 

「うーん、防御は上手いんだけど攻撃のほうはやっぱりそんなにでも……」

「そんなこと言ってないでちょっと助け……あーもう!」

 

 よこからやってきたゴブリンを、サクちゃんはじっと、見つめます。

 

「ああもうめんどくさい! 寝てしまいなさい!」

 

 ――桜の、 永い眠りへの誘い!

 

 モンスターたちが眠っている間に、周りにいる敵を殴りつけていきます。

 一匹ずつ、一匹ずつ。

 

「効率悪いなあ……」

「これが一番安定してるからしょうがないじゃない……」

 

 ***

 

「なんかしっくりこないねえ……」

「やっぱ攻撃役があってないんじゃない?」

「それは……そうなんだけど……」

 

 と、しばらく歩いていると。

 

 グオオオン、と魔物の声が聞こえてきました。

 

「この声は……ちょっと様子見てこないと!」

「ちょ、ちょっと待って!」

 

 困惑するサクさんを他所に声の方へ進むと、一匹のでかいモンスターが新人冒険者たちを襲っていました。

 

「グオオオ!!!」

「うわあああ!! なんでこんなところに!」

「ここは私に任せて!」

「ステラちゃんだ! お、お願いします!」

 

 あっという間に襲われてた冒険者たちは安全な所に逃げていく。よきよき。

 

「ちょっと、ステりゅんオフなのにいいのそんな事して!」 

「困った人を見捨てられるもんですかっと!」

「またユニークとかじゃないでしょうね!?」

「ああ、まさかそんな……」

 

 名前:ミノタウロス(ボス)

 LV:55

 

「良かった!!!! ユニークじゃない!!!」

「ユニークじゃないくらいで喜んでどうするの……普通に初心者向けダンジョンに出るレベルじゃないんだけど……」

「これなら私も倒せます! サポートよろしく!」

「あーもう……やってみる! タゲ移すよ!」

 

 ――桜の精神誘導! ターゲットがステラに移った!

 

「グオオ!!」

 

 ミノタウロスの攻撃が、私に降りかかります。

 それを私は両手で、受け止める。

 

「マジックミサイル!」

「グオオ!!」

 

 サクちゃんの魔法攻撃が後ろからやってきて、一瞬敵が怯みます。

 

「OK! 一気に決めちゃうよ! 魔撃融合(ダブル)リアクション!!!」

 

 ――ミノタウルスを倒した!

 

「うーんレベルも上がったからこのくらい余裕だね! サクちゃんサポートありがとう! やりやすかったよ!」

「良かった、ステりゅんをサポート出来て」

 

 ほっと胸をなでおろすサクちゃん。

 やっぱ天職はサポートなのでは?

 

「それにしても、なんでこんなところにレベル50台の敵が……」

 

 と、その時でした。

 ダダダ、ダダダ、とものすごい巨大なモンスターの足音が聞こえたのは。

 

「……この雰囲気、まさか」

「なんか嫌な予感がするんだけど?」

 

 そして、ダンジョンの壁を突き破って現れたのは。

 

 三つの馬頭の首を持つ、巨大なモンスター。

 

「ゴゴゴゴゴゴオオオオオオオオ!!!!!」

 

 名前:トライホース(ユニーク)

 レベル:120

 

「はい」

「……えー」

「どうしようっか!」

「二人じゃ無理だって! 逃げる!」

 

 ***

 

 全力ダッシュ。無理です。

 配信もしてない。華維さんもいない。無理です。

 なるほど、あのボスがこんな所に現れたのは、ユニークモンスターに追われてたから……

 

「うー折角レベル上がったのにやっぱ無理じゃん!!!」

「そんなこと言ってる場合じゃない! 少しでも止めないと……精神誘導!」

 

 桜ちゃんが馬頭にスキルを書けると、一瞬向きを変え、壁にぶつかります。

 だが、すぐにこちらを向いて、追いかけてきます。

 

「デバフは通らない訳じゃないわね……ステりゅん! 一回受け止められない!?」

「一度くらいなら! でもどうするの!」

「眠らせる!」

 

 あれこれ言ってる場合じゃありません。サクちゃんの案に賭けます。

 

 ――トライホースのとっしん!

 ――ステラに4024のダメージ!

 

「受け止めたよ!」

「行くわよ……眠りなさい!」

 

 サクちゃんがじっと目を見つめ、一秒。

 

――桜の永い眠りへの誘い!

 

 トライホースがゆっくりと倒れ、ばたり、と地面に落ちる。

 そして、ぐっすりと眠り始めました。

 

 永い眠りへの誘い:発生に1秒かかる。耐性を無視して【超睡眠】状態にする。この【超睡眠】は次に攻撃するまで解けない。

 

「ちょっと眠らせるのに時間はいるけどね……」

「1秒で眠らせられるなら強くない? まあ、ともかく折角眠らせたのだから倒す方法を……」

「じゃ! 逃げるわよ!!!!」

「えー……動けない状態なら……」

「一撃で倒せないでしょ! 倒すのは他の人に任せて報告して逃げるの!」

 

 ***

 

 とりあえず一件落着。ギルドの人にユニークが出たことを知らせて、とりあえず眠らせてることを連絡しました。

 なんとか行動不能の状態にして安全も確保した、という事でお褒めの言葉が入りました。

 

「すごいじゃんサクちゃん! あんなことできるなんて」

「緊急事態だったからねー……」

 

 サポートとして一流。年以上の経験がある? そういう場面がかいまみれました。

 

「なんで初心者ダンジョンでユニークに遭遇しなきゃならないの???」

「私の体質みたいなもんだから……」

「難儀な体質ねー全く」

 

 それにしても、サクちゃんのサポート性能はすごいものでした。隣にいてくれて、やりやすかったというか。

 ナシさんは何時もいてくれるわけではありません。華維さんにいつまでも頼る訳にもいきません。

 

 でも、代わりに他の人が、隣にいてくれたら、私の足りないスキルもカバーできるんじゃないかって、思いました。

 

 昔、サクちゃんには配信に付き合ってもらったことがあります。途中から恥ずかしいって止めてしまったけど、今なら、もしかしたら。

 

 それに、親友だったし。また、一緒に隣に居たい。

 

 「ねえサクちゃん、一つ提案なんだけど……」

 

 と、提案をしようとした、その時でした。

 

 人込みの中に、華維さんの姿が見えました。

 

 

「ったく、まさかコンビニ帰りにちょっとダンジョン寄ろうとしたらユニークを倒して下さいなんて頼まれるとは……おっとそこにいるのはステラちゃん、おーい」

 

「あれは……華維さん!」

 

 

 華維さんがこちらを見た、その瞬間。

 

 

 

 

 いや、隣にいた、サクちゃんを見たその瞬間。

 

 

 

 

 華維さんは、一気に表情を変えました。

 

 

 

 

「――桜?」

 

 

 

 唖然として、口をぽかんと開け。

 

 

 手に持っていたレジ袋を取り落とし。

 

 

 見たこともないくらい目を見開き、ぱち、ぱちと目を瞬きさせ。

 

 

 じっくりと、サクちゃんと目をあった、その瞬間に。

 

 

 足の力が抜け、がくり、とひざを落としました。

 

 

 

「――桜、桜なのか?」

 

 

 サクちゃんは、ゆっくりと笑いかけました。

 

 

()()()()()。ケイくん。あれから、何回転生した?」

 

 

 

 そういうサクちゃんは。

 

 

 眼を細くし、見たこともないくらい優しく、朗らかに、母性すら垣間見えるように、生き生きと、からかうように、うっとりと、恍惚とした表情で。

 

 

 さらに、ほほを緩ませて、いっそう強く笑いかけました。

 

 

 

 

「待ってたわよ――100年くらい。わたしも、何度か転生して、ね」

 

 

 

「はは、ははは――」

 

 

 ただただ、華維さんは笑い続けます。

 

 

 地面にひざをつけ、サクちゃんを見つめたまま。

 

 

 ほっぺたに、涙を伝わせながら。

 

 

「俺は、俺は――お前()の事を――()()()は、待ったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 私は、その流れに一切ついて行けませんでした。

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