異世界から追放された英雄は、【シン・日本】で平穏に暮らしたいけど強すぎて無理   作:秋津 幻

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第20話 必殺技に必要なもの

「華維さん、必殺技に必要なものって何ですか!?」

 

 ステラちゃんに、そう聞かれる。

 俺の家で。

 

「もうすぐお昼できますわよー」

「上手くできてるかなあ……」

 

 キッチンでは、小鳥遊さんと桜が料理を作ってる。

 魚介類の美味しそうな匂いが漂ってくる。

 

「今日は牡蠣ラーメンですわよー」

「わあい」

「食べます食べます!」

 

 なんで俺に作ってくれた料理なのにステラちゃんまで……

 

「……なんで、俺の家に3人もいるの?」

「え? 今更聞きます?」

「だってさあ……」

 

 小鳥遊さんは俺に料理を作りに来てるのだから分かる。

 桜はかつての相棒だし、出来るだけ俺と一緒に居たいなら分かる。

 ステラちゃんは俺の弟子だからまあ……分かるか。

 

「……皆分かるか」

「じゃあいいじゃないですか」

「いやでもさあ……なんでいつの間に3人のたまり場に……」

「あら、華維くんはわたしの料理食べたくない?」

「いや分かるけどさあ……」

 

 まあ、いいか。

 

 ***

 

「それで、必殺技ですが……」

「日々の努力」

 

 身も蓋もない答えをした。

 

「いやそれはそうなんですけど、それは今までもやってる訳で……覚えるぞーってなったんだからこう秘密特訓みたいなのを……」

「まあ、それは考え中だ。用意するから待ってくれ」

「わあい」

「だがな……必殺技とはすなわち、一人の技の、人生の、集大成だと思っていい。それをある日ポンと誰かから与えられるなんて、嫌だろう?」

「それはそうなんですが……小鳥遊さんは、どうやってあの技覚えたんです?」

「あれは正直……遊びみたいなものですわよ? 割り込みできるから、何回も出来るかなーって試してみて、出来たり、出来なかったりして長く努力してようやくあそこまでタイミングを合わせて重ねられるようになったんですから」

「やはり、努力ですか……」

「まあ、その辺もあって小鳥遊さんはすんなりS級になれたんだろうな」

 

 ステラちゃんは予備役だったが、小鳥遊さんはS級昇格寸前の66から上がったこともあって、あっさりと認められた。

 ステラちゃんと小鳥遊さんの差。それは、やはり経験の長さ、経験、スキルの習熟度。

 

「私らしいスキル……友情バトン?」

「人から借りるスキルを伸ばしたところで限界がなあ……」

 

 一枠が二枠に増えたところで、自由度が増す結果にしかならない。相方に大きく影響されてしまう。

 

「エネミーガードとかエネミーブレイク?」

「正直既にそっちは十分習熟されてるんだよなあ……」

 

 敵の攻撃を弾くだけでなく、人からのコメント、弱い敵の遭遇率低下。すでに強力なスキルだ。

 

「どちらかというと、今のメインスキルとは別の、サブスキルを伸ばしていくといいと思う。自力を鍛えて、それを友情バトンやエネミー系のスキルと合わせて、必殺技にしていくと良い」

「自力、ですか……何か覚えるのにいいスキルはあるかな?」

「じっくり探して、自分に合うのを選ぶといい。まあ、じきに来るさ。ステラちゃんが必殺技と言えるようなものに目覚めるような、そんなイベントがな」

 

 ☆☆☆

 

「はいワンツー!」

 

 後日。私、ステラはギルドの建物の中にあるジムに来ていました。

 

 色んな冒険者が、ここで体を鍛えています。奥の方では、S級冒険者でプロレス技の使い手である、マッスルカズマさんが、自分の体格より大きなダンベルを上げ下げしていました。

 私にも、あれだけの体格と、力のステータスがあれば。

 そう思いながら、ジムコーチのミットに向けて、私は拳を繰り出します。

 

「もっと速度を上げて! 力を込めて! 速さと威力を両立させるんだ!」

 

 集中して、一心不乱に、拳を繰り出す。

 あと少し、少しでも早く。少しでも強く。繰り返し体に覚えこませるように。

 

「せいがでるわね」

「あっわたちゃん!」

「その呼び方まったく……まあ、いいけれども別に」

 

 副ギルド長の、わたちゃんこと久遠渡さんが来ました。

 

「あの……ちょっと相談に乗ってもらってもいいですか?」

「いいわよ。有望な後輩の相談位、どんどん乗ってあげるわ」

 

 ☆☆☆

 

「強くなるために良い感じのスキルはないかって?」

 

 久遠渡さんにそう聞きます。

 

「はい、攻撃の火力不足って言われたので……」

「そんなこと言ってもねえ……ステラちゃんは十分に強くなってると思うわ。レベルも、スキルも。同じくらいの経験年数で比類する相手はいないわよ?」

「そうじゃなくて……もっと格上の相手にも、ユニークとかにも戦えるように……」

 

 全く、とあきれた様子でため息をつく。

 

「まあ、最近ユニーク騒ぎで物騒だから気持ちは分かるけども……それはあの、異世界から来た上位勢のあの人に言われて、強くなりたいと?」

「はい、華維さんに追いつきたいと」

「無茶よねえ……すぐには思いつかないけど、何かアテは付けてないの?」

「ちょっとこういうのを覚えたんですけど……」

 

 ガードブレイク:相手の防御を少し減衰させる

 

「なかなか優秀ね……ってもう覚えたの? 流石じゃない」

「でも、防御無視には程遠くて……」

「いやそういう無視系のスキルって達人の域よ? こう才能に恵まれた人間が一生かけて辿り着くような……それこそ、ステラちゃんがそれだけに心血を注いでもいいくらいの」

「そうなんですか」

「そうなのよ。それだけの価値もある。……それで、あの紗城さんって言うのに使わせてもらって、覚えたいと」

「はい……」

 

 なんだか、華維さんがポンポン使うから感覚がマヒしていたようです。

 

「そう言うのすら再現できるんだから本当にすごいわよね、ステラちゃんのスキルは。あの上位勢が君に夢中になるのも分かるわ。……でもね、その期待に応えようと思って焦っちゃいけないと思うわよ」

「焦ってますか、私」

「ええ。私も昔異世界にいたから分かるわ。あれが、どれだけ常軌を逸した経験をしたうえで、あのスキルを手に入れたか――それに、一朝一夕で追いつこうなんて、無理よ。止めなさい」

「……はい」

 

 すこし、しょんぼりします。

 

「もちろん、チートや下法で手っ取り早く強くなる方法も、ある日突然覚醒する事だってある。でもね、日々地の足のついた努力と比べてどれを優先すべきかって言ったらどれもやるべき(・・・・・・・)だと思うわ」

「あっ別に手っ取り早く強くなってもいいんですね」

 

 下法を推奨しないまでも否定しないのっていいのかな?

 

「今ステラちゃんは、強い人のサポートをつけてレベル上げをしているでしょう。それは、手っ取り早い方法の一つよ。それは否定しないわ」

「……確かに、そうですね」

「そしていつか、急に強くなるような覚醒は、多分きっとそのうちステラさんにもあると思うわ。でもそれは明日かもしれないし、来年かもしれないし、死の間際かもしれない。しかるべき時が、必ずあちらからやってくる」

「……来るんですかね、そんなの」

 

 未来の事なんで、分からない。確実に来るか分からないものを、期待してもしようがない。

 必ず来るって言ってるけど、本当に来るのだろうか。

 何の根拠もない自分の自信を持ってここまで駆けあがってきたから、有名配信者になれたわけですが。

 今までの実感では、成功とは積み重ねで、今までの努力の延長戦のような気がする。

 

 必要なイベントが、覚醒が、いつか来ると言っても信じられない。

 

「そうね。分からないことに期待したって仕方がないのよ。でも日々の努力も、いつかきっと花開く。努力がもしかしたらそのまま覚醒のトリガーになるかもしれないし。どれか一つだけでも強くなれるが、三つやれば相乗効果でもっと強くなる」

「つまり、その日々の努力の方向性が何かないかなーって、探してる訳なんですよ」

「そうね、わたしも何かないか探してみるわ。そういう意味では、防御無視とまで行かなくても、相手の防御を減衰させる方向で火力を上げるのもいいと思う。古代武術の当りにそういうのがあったはずね、調べてあげるわ」

「本当ですか! ありがとうございます!」

「やるべきは色々やる事。そのうえで会ったものをひたすらにやる。そうすれば、いつかは……そういうのをサポートするのが、私たち、上で導くものの仕事よ」

 

 と、その時でした。そばでずっとトレーニングをしていたマッスルカズマさんが、ベンチプレスをごんと落とし、こちらにやってくる。

 

「……オレのプロレスの技にも、相手のガードの上から攻撃するすべというのがあった。少し、教えてやろう」

「本当ですか! でも、なぜ……」

「人に教えるというのはこちらにもプラスがあるからな。昔の技を思い出す手段にもなるし、経験値になる。かわいい後輩を手伝うくらいやってやるさ」

「かわいいってそんな……」

「……まあいい。やるぞ」

「はい!」

 

 ☆☆☆

 

 トレーニングルームに入る。

 特殊な設定で、ダメージは受けないようになっている。これでステータス差があっても自由に技を受けられると言う物だ。

 

「防御を撃ち抜く、というのは非常に難しい。普通なら、盾で受けるところをそれをぶち抜き、その体にまで浸透させるという高度なことをやらなければいけない」

「なるほど、それで今から何を……?」

 

 わたしは、マッスルカズマさんに、立ったまま動けないように関節技で腕足を固定されていた。

 

「これだけ固定されると何か関節技でこのまま締め上げるんですか? って感じなんですが……」

「安心しろ、これはこれからやる動きから抜けられないよう固定するためのものだ」

「えっ何するんです?」

「やるぞ!」

「わっぐえっ!」

 

 かと思うと、体を蹴りだされ――その勢いで空中に浮上させられていた。

 

「わっわっナニコレ!?」

 

 しかも、動けない。抵抗できない。

 

「通常の攻撃に加え、加算される重力のパワー! そして回転を加えることでさらに追加で火力を増す! そして地面にたたきつけ、防御をぶち抜くことで……おおよそ、12倍のパワーを追加する!」

「なんだかよく分からないがすごい理論だ!」

 

 落下する際、速度は増していく。

 体を固定されたまま、マッスルカズマさんの体重が加えられたまま――地面に落下した。

 

「秘技! マッスル天井落とし!」

「グワーッ!!!!」

 

 地面に落とされた、それだけなのに体のダメージは相当なものだった。

 

「どうだ? 使えそうか?」

「いやでも魔物とかって組み伏せてこうやって空中に飛び上がって地面に落とすとかできないですよね?」

「オレは出来るぞ」

「出来るんだ……」

 

 まあ、スキルってそういうものですし、S級になれる方のプロレススキルならそれくらい……

 

「でも、私はプロレススキルも、体重もありませんし同じことは出来な……ん?」

 

 普段、私は振りかぶって殴りをすることで攻撃をするわけですが。

 勢いを足したり、重力を足したり、そういう事は取り入れる事は可能なのではないでしょうか。

 

 例えば……空中に飛ぶとか。

 例えば蹴りにしてみるとか。

 

「……なるほど、色々やってみたいことが出来ました!!!」

 

「そうか……ならいい。大事なのは、普段とは違う、何かを足せると思い込むことだ。実際には効果がないものでも、信じ込むことで、火力は上がる。それが、スキルと言う物だからな」

「はい、やってみます!!!」

 

 少しだけ、活路が開けた気がしました。

 

 

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