異世界から追放された英雄は、【シン・日本】で平穏に暮らしたいけど強すぎて無理 作:秋津 幻
最近、ステラちゃんは何かご機嫌なようだった。
何やら、一つ必殺技につながる糸口を見つけたようでものにすべく日々頑張っているのだそうだ。
日々の努力を続けてもらっている所ありがたいが、何か俺もステラちゃんが手っ取り早く強くなれるための修行でも思いつければいいのだが……
「華維さん! なんかこう……いい感じに火力を上げたりするために使えるスキルとかありませんか!」
「バフスキルはなかなかいいのが見つかってなくてな……」
「そうではなくって、私がこれからスキルを自分で覚えたり、友情バトンで借りたりするときに使えるスキルがありませんかって、そういう話です!」
気持ちは分からんでもないのだが……火力を上げるという意味で防御無視に優るものが今の所見つからなくてなあ……。
というか、まず防御無視がないとステータス差がありすぎて戦いにもならないというのが現状。
正直、小鳥遊さんの連撃で何倍も火力を出せるのはかなり優秀というか、チートである。おそらく確かいい一応小鳥遊さんが転生者である故のチートスキル性は、あのあたりに出ている。
ステラちゃんが技を二連打出来たとして、単純に火力が二倍になるかと言われれば、そうではない。精々1.5倍だろう。
「でもなんかほら、他に良さそうなスキルとかあるかもしれないじゃないですか! 大量に持ってるスキルの中でほら……軽減貫通とかあったじゃないですか」
「軽減? あー最初使ったかもしれねえ。よくそんなの覚えてたな。この世界じゃあんまり軽減使わないんじゃね? ステラちゃんのエネミーガードの軽減どんくらいだっけ」
「大体5割くらいですかね?」
結構行くな……ダメージ半減は出来るじゃないか。ユニークと一応戦える所以はそこか。
「つまり大体50%だろ? 俺のは350%軽減貫通なんだけどそんなにいらないだろ?」
「え……余計な250%何に使うんですか」
「400%くらい軽減する敵に使う。50%を貫通にしても精々2倍だろ? この世界では、軽減を行うスキルを持っている敵はいないし……どちらかというと防御を盛ってダメージを下げる傾向みたいだしな。すると、防御無効は効くだろうが」
「軽減無効は、現状だとあんまり意味がないと」
「まず軽減って本来メジャーな耐性ではないからな……」
軽減とは文字通り、ダメージをどれだけ減らせるかというスキルになる。
50%軽減ならダメージは半分になる。
つまり、100%を越えた時点で、ダメージが全く入らず手も足も出なくなることになる。
そういう敵が出てくる時点で、その世界において軽減貫通の存在がなくてはならない。倒せない敵など、存在してはならない。
つまり、その世界では、軽減を軸に環境調整が行われている、そういうバランス取りをしていることになる。
まあ、このいたちごっこの果ては、軽減と軽減貫通の数値が青天井に盛られていくことになるのだが……
だが、シン日本では「軽減」というスキルは環境の根底に存在しない。
理不尽なスキルを持ってくるユニークモンスターなら、突然軽減スキルを持ってくることもあるかもしれないが、耐性など、ほかにいくらでもある。物理無効、無敵、特殊装甲、特殊回避……すべてに対策することなど、不可能だ。
そんな遭遇してから考えればいい状況に対しては、俺がスキルを貸してやればいいだけの話だ。だから、ステラちゃんが覚えるべきはシン日本の基本環境で必ず効果のあるスキルである。
「やっぱり友情バトンが1枠って言うのがキツイわな。俺は大量のスキルでステータスと耐性を担保するタイプだし、一つで劇的に変わるスキルはあんまりないな……ちょっと探してみるけどいいのがなかなか見つかんなくてな……」
「見つかんないってどういう状況なんです?」
「ほらこれ見てみ」
ステータス画面に、大量のスキルが並んでいる。
どれだけスクロールしても尽きることはない。
「……なんか検索とかないんですか」
「ない」
「ええ……」
「だから面倒なんだよな……一番探してるのが「あてみねうち」ってやつで眠り状態にすると同時に、倒すことなく敵の体力が1残るっていう超便利スキルなんだけど……みつかんねえ」
「まさに欲しいスキルじゃないですか!」
それがあれば、俺が削ってステラちゃんが最後だけ決めるという事が出来る。
だが、それはあまりにも楽すぎる。それは許されないという事だろう。
「ただこの量だとな……一個一個見てらんないし……正直見つかんねえと思う」
「そのくらい頑張ってくださいよー……私も手伝いますから!」
「……まあやってみっか。多分見つからねーと思うけどな……」
「似たようなスキルとか、すごいスキルとか見つかるかもしれませんし! これどうですか!」
カゲのシュンサツ : 一定確率で敵の攻撃を完全に回避する防御特性。
「この名前で防御スキルなんですか……?」
「随分とカッコいい名前してんなー」
「じゃあ次は攻撃っぽいので……」
あさめしまえショット : 手軽に敵を一掃する軽快な攻撃。
「……手軽ってどのくらいですかこれ」
「攻撃倍率そんな高くねーなこれ……普通の攻撃の5割くらい?」
「あー複数敵攻撃する代わりに火力が下がる奴……次行きましょう」
のれんにうでおしガード:相手の攻撃をやわらかいのれんで受け無効化する。
「……なんすかこれ」
「これ大分強くないか?」
――華維の、のれんにうでおしガード! のれんがでてきた
「ちょっと殴ってみて」
「えい」
――ステラの攻撃をのれんが受け止める……!
「……強くね?」
「こんな簡単に攻撃って無効化していいんですか!! 低確率のカゲのシュンサツくんが泣きますよ!」
「上位互換のスキルがあるってよくある事だもんな……」
「じゃあ他のスキルとかも試してみて……」
――ステラのファイヤアタック!
――のれんは燃え尽きた
「あっ」
「あー燃えたら無くなるんですね……」
「そのくらいのデメリットはあるか……まあでも悪くないな。覚えておこう」
「そこまでスキル説明に書いてくださいよ……」
「そう言う珍妙なスキルじゃなくてもっとカッコいいの選ばない? そこにあるアイスソードとか」
「いやアイスソード三つくらいあるじゃないですか!」
アイスソード:3つの氷の剣を飛ばすことが出来る。相手を低確率で凍傷状態にする。
アイス・ソード:不解氷龍の氷で創られた伝説の剣。切られたものは凍り付き動く事が出来なくなるだろう。その剣は不解氷龍の氷で創られている。
アイスソード:後衛連撃率が上がる
「全部効果違うじゃないですか!」
「まあメジャーな名前だしな……真ん中のアイスソードは割と使えそうだな。すぐ使えるところにスキルの順番並べ替えとこ」
「なんか真ん中の奴の説明が変ですが…一番下の連撃率って何ですか?」
「確率で連撃できるんじゃない? この世界には後衛とかそういうシステム無いから無理だけど」
「死にスキルってことですか……?」
「そうだよ」
スキル山のようにあるのだもの。死にスキルなんて大量にあるさ。
「ああもう、これはどうですか!」
かっぱのかみわざ : かっぱ巻きを使った謎の必殺技。効果は謎。
謎。
謎……?
「謎ってなんですか!!!!!!」
「俺も知らねえよ! こんなん使ったことねえよ!!!」
「自分のスキルくらい把握してくださいよ!!!」
「把握出来たら困ってねえわ」
「「あははは」」
二人で笑い始めた。
――華維はかっぱのかみわざを使った。
――かっぱまきが出て来た。
「……」
「……食べる?」
「いただきます」
とてもおいしかった。
***
次の日。なんだか体の調子が良かった。
もしかして、昨日食べたかっぱ巻きのお陰かもしれない。なんかそんな気がする。
昨日上げた動画を見てみたら、結構伸びていた。
「もしもし華維さーん、先日の華維さんとのスキルトーク動画ですが結構バズリましてー、もしかしたらあのかっぱ巻きのおかげかなって………」
『ああ……うん……』
「なんか調子悪そうですけどどうしたんですか?」
『ヤバイ……おなか壊した……』
「……かっぱまきで……?」
『多分……』