異世界から追放された英雄は、【シン・日本】で平穏に暮らしたいけど強すぎて無理   作:秋津 幻

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【閑話】絶不調

「めっちゃ調子悪い」

 

 朝から俺は、体調不良で布団の中に横たわって寝込んでいた。

 

「どうした? なんかあったの?」

「かっぱまきに当たった……」

「はぁ……?」

「やばい、絶不調……」

「まあ、ゆっくりなさいな。こっちに来て色々立て込んで疲れたのもあったでしょう」

「詳細をしゃべる気にも……ぐおっ」

 

 ごほごほとせき込む音がする。

 

「本当に珍しいわね……ほんとしょうがないわね。今日はつきっきりで見てあげるわよ」

「頼む……」

 

 ***

 

 

 ピンポーンとチャイムが鳴る。

  

「あの……大丈夫ですか?」

「お見舞いに来ましたわ~」

 

 ステラちゃんと小鳥遊さんもやってきたのだった。

 

「ご飯ちゃんと食べてさせてますの? 高級おかゆでも作ってあげますわよ?」

「残念。あたしがもう作って食べさせちゃったわ」

「むむ……ならばお昼はわたくしが……」

 

 情けない限りだが、こればっかりは仕方がない。

 無理なもんは無理だ。もはやまともに思考も出来ない。

 

「あの……なんかこうスキルとかでサクっと直せないんですか?」

「治せな……ごほっ」

「なんだか、回復スキルで治せない系の状態異常見たいなのよ」

「そんな危険なものをどこでもらってきたんですか!? かっぱまきでそんなに!?」

「自分の……」

「自分のスキルのデメリットなんだって」

「自分!?」

 

 強力なスキルにはデメリットが不可欠である。攻撃力が大きく上昇する代わりに、自分に毒状態を追加する、とか言うのも存在する。毒無効のスキルで相殺しているが。

 

「ええ……普段はそんな様子無かったですよね? なんでそんなのが今になって?」

「打消せな……」

「普段は状態異常のデバフを減らすスキルで打ち消してるんだけど、調子システム……ってのがあってそれが最悪の絶不調なんだって。絶不調の時はパッシブスキルのメリット効果が効かないらしくて……悪いほうだけが働いてるって訳」

 

 そして現状、デメリットのみが作用している。毒無効が作用せず、毒状態のみが作用する。

 現状は体に毒と麻痺と眠りと風邪状態とやけどとエトセトラエトセトラ……。無限の状態異常だけが体に作用しているという訳だ。

 

「なんですのそのシステム!? 完全に無防備になりますわよ!? そんなんどこのシステムですの!?」

「たまたまそういうシステムのある世界に行っちゃったんでしょ……基本は世界から出たらなくなっちゃうんだけど、たまにこう……特徴的なスキルとかに付属して残っちゃうことがあるらしいのよね……って言ってる」

「随分と曖昧な…というか誰が言ってるんです?」

「俺……」

「体は動かせないけど脳はちょっとくらい動かせるからテレパシーでやってるんだって。無理しなさんな」

「そう……する……」

 

 そういって、ごろりと転がって他所を向いた。

 

「はいはいおでこの氷を入れ替えましょうね。なになに? 今度は肌寒くなってきた? はいはい毛布を増やしましょうね」

「エリクサーを……HPが……」

「はいはい」

 

 かいがいしく世話をする桜に、されるがままになる。

 

「しかしこれは……こういう時に何かあると困りますね」

「こういう時にダンジョンバーストや悪い奴の襲撃があるったら大変なことになりそうね……。誰かしらがここで見てて華維くんを守らないと」

「普段は頼ってばかりですからね。こういうときこそわたくしたちが助けてあげないといけませんわね」

 

「しかし、調子が悪い……絶不調なわけですけど、よくする方法はないんですか? 別の世界でのシステムなら変動させる方法がないってこたないでしょうし」

「基本的に日割りでランダムで決まるらしいわ。そんで調子を上げる飲み物はあるらしいけど……1日に1回しか効かないんだって」

「あるんじゃないですか!」

「すてらちゃ……」

 

 叫び声が体に響く。あかん。マジであかん。これはアカン。寝るしかない。

 

「あっすいません」

「1日1回というのが厄介なの。これ、逆に言えば一回使わせればその日はもう上げられないって事でしょ?」

「つまり、使った後のタイミングで調子を下げられたらマズいと?」

「曰く、下げるための方法は結構豊富なんだって。このシステムを知っている奴がいるとしたら、確実にそのタイミングを狙うわね」

「緊急事態に対応するために、手段は残しておくと」

「華維君が持ってるストックの中にも量も限りがあるし、特に何もない日なら温存しておくのがいい。って訳でこうやって看病してる訳」

「限りがある……なら何とかして量産する手段が欲しいですわね。ちょっとそのアメの作り方とか分かりませんか?」

「……むっ」

 

 その言葉を聞いて、桜がちょっと眉をひそめる。

 

「どうしましたか?」

「……わたしも手伝うわ」

「桜さん? どうしましたの?」

「華維くん曰く、作る手段があるらしいから……でも、わたしの技量だと、多分実力が足りないから……小鳥遊さんに、手伝ってもらいたいと思いまして」

「あら。技術を認めてくださったのなら嬉しいですわね。ええ、ともに作りましょう? 華維さんのために、二人で料理腕、振るうと致しましょう!」

「は、はい!」

 

 ☆☆☆

 

「それで、これが材料ですか……」

 

 華維さんが用意してくれたリストを見ます。

 

 ・ハピネス草

 ・ボーボー鳥の煮汁

 ・ハチャメッチャヌカハニー(在庫なし。多分めっちゃつよい女王蜂系のモンスターのはちみつで代用可能)

 ets…

 

「知ってるものがないですわー!」

「流石に知らん食材を調理するのはあたしじゃ無理だし。どう? 何とかなる?」

「いやまあ……手順もありますし……料理スキルがあればある程度はやり方も」

「料理スキルずるー」

「まあそれはいいとしまして。一番大変なのは……」

「あの……この代用可能なはちみつなんですけど……」

 

 おずおずと、私は口をはさもうとします。

 

「ステりゅん」

「はい」

「頼み事があります」

「……はい」

「代用できそうな材料、買うなり狩るなりして持ってきて♡」

「……えー」

「とりあえずすぐ入手できそうなものは調達済みですわ。ステラさんには容易に入手できなそうなものを……」

「無茶言いますね!? やりますけど!?」

 

 どこから持ってくるべきか……ギルドの人たちに相談しないと。

 

「さてとそれでは……」

「一番大変なのは、代用可能な奴から総当たりでドリンク作って効能が出る奴を探す作業ですわね……」

「これが人手がいる奴」

 

「がんばー……」

 

 華維さんのか細い声が聞こえてくる。

 

「……」

「……」

 

 二人は顔を見合わせ、お互いに頷き合った。

 

「やろう」

「やりましょう」

 

 そういう事になった。

 

 ***

 

「とりあえず、試作品が出来ましたわよ……!」

 

 その前にも何作が作るたび「これは違う」「これはマズい」とか言ってたのだが、大丈夫だろうか。

 

 調子スープ:調子を一段階上げる。一日に何度でも使用可能。

 

 そのスープを口にたれ流される。

 

「にげっ……」

「ああ、なんという事を、私とあろうものがおいしくない飲み物を紗城さんに飲ませてしまうとは……!」

 

 だが、効果はありそうな苦み、健康に良さそうな味だ。

 

「――ふう、」

 

 体を起こす。味はともかく、何とか起き上がれるほどまでには戻ってきたようだ。

 

「ありがとう、小鳥遊さん、桜、ステラちゃん、皆のお陰で調子を戻せたようだ」

「……成功したみたいね」

「良かったです!」

 

 やれやれ、ちょっとおなかを壊しただけでこんなになるとは、これからは気を付け……

 

「いえ、まだですわ! このスープはまだ、改良できる余地がある! 最高のスープを作れるようにまで試行錯誤を重ねますわ!!!」

「ええ、そうね。やるだけやってみましょう!!!」

 

 ……。えー。

 

 ***

 数日後。

 

「出来た……」

「出来ましたわ……!」

「お、おめでとうございます!」

「おめっとさん」

 

 スーパー絶好調スープ

 効果:調子を絶好調にする。この状態は一日中持続し、絶好調から下がらない。

 

「上手く行きましたわね……!」

「ええ、やはり最高級のクイーンビッグハニーのはちみつを使ったのが良かったのかもね……」

「それだけでなく、他の食材についても妥協を許さずよりよい食材を求め、滋養に良いスーパードラゴンの心臓を追加で入れたのが正解でしたわね!」

「いやまあ非常にありがたいんだけどさ……」

 

 二人の背後には、俺が特に問題なく立っている。

 

「どうしたの? 華維くん」

「俺もう絶不調から立ち直ってんだけど?」

「あら、次同じようなことがあった時のための対策との事でしたが」

「いや初日にはすでに一日に何度も調子あげられる奴が出来てただろ……やりすぎだって……」

「いい事を教えてあげますわ。料理人には妥協しないことが大切ですわ」

「いやまあいいんだけどもんだいはさあ……最後まで代替品が見つからなかったメイン食材であるハピネス草がなくなりそうなんだけど」

「「え?」」

 

 二人のアホみたいな声が響いた。

 

「……貴重品を申し訳ありませんわー」

「……チートとかで無限に増やせるもんだと思ってた」

「まあ種はあるから増やせばいいんだが……」

「分かりましたわ、それなら……!」

 

 その日から、家の庭を利用して家庭菜園をやる事にしたのだった。

 

「さすがに自分らで面倒見てくれ」

「「はーい」」

 

 二人でローテーションで面倒を見ることになったのだった。

 

「別の薬草も植えてみません?」

「いいですわね! 華維さんに頼めば面白そうなものが何か……」

「危険なものもあるから却下」 

「「えー」」

 

 口をとがらせ不満を言いながらも、「なら最近はやってるあのハーブを……」「ちょうど育てたいものがありましたのよ!」とか言っている。

 

「二人も最初の修羅場と比べて大分仲良くなりましたねー」

「そうかな……そうかも……」

 

 

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