異世界から追放された英雄は、【シン・日本】で平穏に暮らしたいけど強すぎて無理 作:秋津 幻
名前:試作超装甲無敵鋼機兵(ユニーク)
スキル:【ガードコピー】【ガードブースト】【即死無効】【精神無効】
レベル:200
体力 15220000
攻撃 301206
防御 1004020
魔力 37701
ガードコピー:「敵」のガード能力をコピーする
ガードブースト:周囲のガード能力の効果・範囲を拡大する
「は?」
巨人がそこにいる。
装甲を纏った、巨大な、巨大な、巨人が、地面から現れ、そして私のお家をえぐった。
スキルを、見る。信じられないものがそこにあった。
【ガードコピー】。
これって、私のスキルが、このユニークに利用されてたって、コト?
その結果、ユニークが。ダンジョンから出て来て。
そんな、事。
目と目が、合う。
機械のまなざしが、私を見つめる。
かとおもうと、その瞬間。
拳が、私の前に振り下ろされた。
そのそばには、サクちゃんもいる――
「危ない!」
サクちゃんは、レベルが低い。この一撃をくらったらやられてしまう。
いや、ここは、ダンジョンの外だ。
死んだら、死んでしまう。
リスポーンすることなく。
私は、その拳を、受け止め――
――ステラに、1ダメージ!
「……え?」
その攻撃は、効かなかった。
なんで、エネミーガードのお陰――?
相手の、ガードブーストが、私にも作用しているのか。
でも、これなら。
私は咄嗟に、この拳を殴りつける。
――試作超装甲無敵鋼機兵に、1ダメージ!
「――」
当然のように。
攻撃は、効かなかった。
相手にも、エネミーガードが、ある。
つまりは、そういう事だ。
すると、目の前の巨人は、ダメージが効かない事を確認すると、そっぽを向く。
そして、両手を天に掲げた。
――試作超装甲無敵鋼機兵の、エネミーガード!
『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!』
それは、衝撃波であった。
「サクちゃん!」
「ステりゅん……!」
私は、一生懸命サクちゃんの盾になる。
体に、強烈な圧が降りかかった。
「くぅうううう!!!!」
吹き飛ばされそうになるだけで、ダメージはない。
周りの物が、吹き飛ばされていく。
壁が剥がれ、天井が吹き飛び、そして――外の景色が見える。
そして。その時私は、信じられないものを見た。
家が、木々が、道が。
人が。
全てが、吹き飛ばされていく。
私だけを取り残して。
***
俺は、とあるビルの屋上に立ち、現れたユニークモンスターを見ていた。
巨人から、衝撃波が発せられる。
その衝撃で――町が、ひっくり返っていた。
建物が、衝撃波を受け吹き飛んでいく――
当然、その中には、人がいるはずだ。
「誰一人として、死なせてたまるかよおおおおお!!!!」
俺は、叫ぶ。
そして、今できる事をやった。
――華家の虚神召喚!
――華維は、虚神 グレートダイモーンを召喚した!
それは、巨大なロボットだった。
俺の、奥の手を、出す。
出してもいい、奥の手を。
黒々とした装甲を持ち、巨体を支えるには頼りない足と、空を飛ぶフライトユニットを背に背負い、
「ダイモーン、皆を受け止めろ……!!!」
――ダイモーンの、腕展開!
腕をパージし、見えない壁の外まで飛んできた人を受け止める。
幸いにも――飛んでくる建物、人は、全て壁の外まで飛んできている。
俺の、手の届く範囲にいる。
そういう、スキルなのだろう。領域内の物を、全て壁の外に押し出す。
おそらく、このエネミーガードはあのユニークの物だ……!
「間に合うか――障壁展開!」
――華維は、地面から壁を展開した!
見えない壁に沿って、巨大な柔らかい壁を召喚する。町一つを覆うほどの、巨大でたくさんの壁をだ。人々はこれで受け止める。
空高く飛んだ受け止め漏らしは、虚神の手が受け止める。
これで、漏らしはない。
「ふざけるなよ、ふざけるなよ、ふざけるなよ……!!! 俺に奴をやっつけさせろ!!! 俺に無双させろ!!! どうして邪魔をするんだ!!!」
何に、文句を言っているのか。
あのユニークに。理不尽に。世界の流れに。
こんなことを、ステラちゃん1人に背負わせてたまるものか。
「クソがあああああ!!!!」
その時、ポッケのスマホから、音が鳴る。
電話だった。
急いで、出る。
「もしもし!」
『わたしよ、わたし』
桜の、声であった。
彼女は、ステラちゃんのすぐそばにいたはずだが、まさか――
「桜! 大丈夫か!? 外に飛ばされたんじゃ、それとも――」
『わたしは、ステラちゃんの隣にいるわよ』
「――弾かれなかったのか」
『レベルが低かったからじゃない? この辺、冒険者の居住区でレベル高い人ばかりだから――それとも、ステりゅんが壁になってくれたお陰かもしれないけど』
「状況は、どうだ」
『そろそろ、配信が始まるんじゃない? そしたらわたしは魔物体に代わるから。じゃ、ステりゅんに代わるわよ』
「ちょっと待て――」
『――華維さん』
ステラちゃんの、泣きそうな声が聞こえる。
『どうしましょう――』
***
配信画面が映る。
ステラちゃんと、ユニークが戦ってる。桜ちゃんは魔物体でステラちゃんにしがみついている。
ステラちゃんが、ユニークの巨人の攻撃を受け止めている。ダメージは、1。
ユニークの巨人が、ステラちゃんの攻撃を受け止めている。ダメージは、1。
>が、がんばれー!
>でもどうするのこれ……
>ステラちゃんがやられもしないけど、倒せもしない!!!
ユニークの、ステータスを見る。
【ガードコピー】。
アカン。
これで、エネミーガードをコピーしているのだろう。
そのせいで、この見えない壁を作り出している。
他の冒険者にも手出しが出来ない。
俺にさえも。
……エネミーガードってこんな強力なスキルじゃなかっただろ。
それを助長しているのが、【ガードブースト】、か。
「……これ、俺が行くと面倒なことになるな」
俺も、ガードスキルの10や100持っている。
近くに居たら、もっと強化される事だろう。
互いにエネミーガードを持っているからこそ。
一つおかしい事があるとすれば、ステラちゃん側がダメージを受けていないことだ。
エネミーガードはそこまで軽減率の高いスキルではない。
相手の【ガードブースト】とやらで強化された結果なのか。
それとも、スキルが異常に強くなっているのか。
分からない、分からないが。
ただ、現状はどうしようもない。
塩試合。硬直状態。どうにもならない。このまま殴り続けたら、ステラちゃんが負ける。
いや、友情バトンで適当な回復スキルを持たせれば、完全な硬直状態に陥るだろう。
負けもしないが勝ちもしない。何も、進みはしない。
そして、俺にすら通れない見えない壁のせいで、外部の人間にもどうすることもできない。
まさに、詰み。
「はぁ、クソだな」
理不尽。どうしようもない。
『……どうしたら』
「一つしかないだろう」
ステラちゃんが、自分を乗り越えるために用意された、この状況。
俺は敵を倒すことはできても、一人の人間の問題だけは、解決することはできない。
「ステラちゃんが、エネミーガードを捨てる。それ以外にない」
***
『――私がスキルを捨てる、ですか』
いや、正確には方法が他にもいくつかある。
俺が、ステラちゃんを
電話がつながってるならば、遠隔で殺す手段はあるだろう。
対象が存在し無くなれば、あのユニークのガードも解除されるはずだ。
だけど、それは
『きゅおーん(あとは、わたしがステりゅんを眠らせるとか?)』
「確実ではないな……」
眠り状態のまま倒れた後、エネミーガードを持つ存在はそのままだ。コピー対象が残ったままならこの状況は続くだろう。
それを言ったら、殺した所でガードが消えない保証もない、か。
どちらにせよ、エネミーガードを持つ存在が消えなくてはならない。
参照元のスキルが無くなったら、流石に消えるだろう。
『きゅおん(ステラちゃんがこのままあの巨人にやられるとか)』
「めんどい」
互いに1ダメージしか入らない状況だ。あまり意味はない。
『やです』
ステラちゃんが強硬に拒否する。
そして、ステラちゃんがやられるのは俺が殺すのと大して変わらない。
『きゅおん(ステラちゃんを外にワープさせるとかは?)』
「あー……でも多分無理だな」
『……逃げるとか、できないです。私が逃げたら……誰があのユニークを止めるんですか?』
「……」
覚悟は、立派だが。
――華維の、強制転移!
――残念、ボスからは逃げられない!
『ダメ、ですか』
「あークソマジでクソうんちゴミ」
手段を選ばないモードに入って色々策を練ったが、無駄なようだ。
結局のところ、選択肢は一つしかない。
それ以外の流れを、状況が許さない。
これは、ステラちゃん自身が解決しなければいけない問題だ。
誰にも倒せない敵は存在してはならないが、何かしらの手段で勝つ方法があるのなら、特定個人が何とか出来るならば、それ以外の存在は倒せなくても構わない。
イベントボスの様なものである。そういうのは、見たことある。
『なんで、こんな、ことに……』
「そう言う流れだったからだ」
なぜ、ステラちゃんが今この瞬間たった一人(桜もいるけど)でユニークと退治させられ、それ以外の人間は弾かれているのか。
そういう流れだからだ。
ステラちゃんという存在の成長のために、他の人間、助けは不要だからだ。
似たような事例が最近あった。
なぜ、俺がかつて異世界から追放されたか。
あの世界で何か大きな敵を、新しい物語を展開するにあたって、俺というあまりにも協力な存在は不要だったからだ。
邪魔だったからだ。
あの時、追放令を無視して居座る事も出来た。その場合。
もっと強力なスキルや、手段や、出来事によって俺を排除する流れが生まれていたはずだ。
別の選択肢を選んだら、別の物語が展開されていただけだ。
その時に、周りに与える被害も尋常じゃなかっただろう。
だから俺は物分かりよく、引いた。
結局はシン日本という新たな物語の流れに巻き込まれてしまったわけだが……まあ、これはこれで良い。
桜とも再会できたしな。
今回も、別の選択肢はあるだろう。何らかの手段で尻尾を巻いてステラちゃんが逃げ出せば、このままでいいやと決断を後回しにする手もある。
それはそれで、別の物語が待っている。……面白いかは置いといて。
このスキルを捨てさせるために、誰が策を練っているのか。それともスキル自身がこの展開を作り上げたのか。
分からないが。
ほかに、方法はあるかもしれないが。
「でも俺は、それが一番、良い方法だと思う」
違うな。世界の流れがどうこうではない。
俺が、ステラちゃんにその道を選んで欲しいからだ。
彼女が親と、再会するためにも。
「……スキルを捨てた場合の、デメリットは分かってるな?」
デメリットはある。ユニークから攻撃を守るための大事なスキルが失われ、弱い敵が近づかないという強力な敵避けの効果が無くなる。
あとネットでステラちゃんのアンチが活動できるようになり……これはどうでもいいか。
『はい、私の弱い時期を支えてくれたスキルですから。その強さは私が一番よく知ってます』
「どうする?」
『捨てます』
彼女は、即答した。
「それで、沢山の人が救えるなら、そうします」
配信のコメント欄が騒がしくなる。
だが、それを見ている余裕など、なかった。
『でも、エネミーガードを捨てたら、その後どうするんです?』
「俺が倒す」
この壁が無くなったら、遠距離で倒す方法はいくらでもあるだろう。
だが、それまでに一瞬のスキがある。
「多分、倒すまでにステラちゃんはやられると思うけどな」
「……そう、ですか」
「……だが、一撃は耐えられるだろう」
前に、ステラちゃんにあげたものがある。
☆☆☆
腕を、掲げる。
そこには、ミサンガがある。
「きゅおん(ステりゅん……)」
「……サクちゃん」
私の体にしがみついた、魔物体のサクちゃんが耳元でささやく。
「きゅおーん(本当に、いいの? 怖くない?)」
「でも、逃げるのはやだ」
エネミーガードは、私を支えてくれたスキルでした。
弱いころ。敵の攻撃を受け止め無理やり強い敵を倒すことが出来たのは、エネミーガードのお陰でした。
今でも、ユニークからの攻撃を受け止める大事なスキルになっています。
「華維さん」
『なんだ』
「私がエネミーガードを捨てて弱くなっても、私を守ってくれますか?」
『大丈夫だって、ユニーク相手に多少耐久が脆くなっても対して変わらん』
確かに。
「それはまあ、そうなんですが」
『【底力】ってスキルがあってな……ダメージが残り少なければ少ないほど火力が上がるスキルなんだが……これ使えないかなーと思ってたんだが、思ったより硬くてうまく調整できなくてなあ』
「……もしかして、前々からエネミーガード邪魔でした?」
『邪魔とは言わんけど。向いてないとは。雑魚敵相手にスキルの練習もできないしな』
向いてない、かー。
まあ、大分昔に手に入れたスキルだし。そういう事もあるか。
『多分、そのスキルがはじいているのは、都合のいいものばかりではない。直面するべき敵も、苦難も、向き合わなければいけない欠点も、はじいてしまってるんだと思う――』
「成長を、阻害していると?」
『かもしれないってだけだ。苦難も、避ければいいってもんじゃない。その先に、輝くものもある』
華維さんは、さぞかし今まで、大変な道をたどってきたことでしょう。
これから私が成長するための、一歩になるかもしれない。
『まあ、スキルがないならないなりに、やりようはあるって事だよ。もしかしたらスキルを捨てたらもっと強力なスキルが生えてくるかもしれないしな』
「そんなことあります?」
『あるよ。俺の経験上。世界は、そうやってバランスを取るように出来てる』
華維さんが、そう断言します。
……そういうなら、そうなのかもしれません。
そうなると、いいな。
せめて、前向きになりましょう。
『結局俺たちは、スキルの上に。流れの上に生きるしかない。ある程度、選択肢が誘導されるように出来ている。だから、大事なのは――』
華維さんが、言います。
『自分が、何をやりたいかだ』
強くなりたい。
弱くなりたくない。
でも、両親には、会いたい。
まあ、後先の事は考えずに。
今何とか出来る方法を考えましょう。
巨大な敵を前にして。
このまま逃げられるものですか。
大事な所は華維さんに任せますけど。
せめて、かっこ悪い所、見せられるものですか。
だって私は。みんなを守るヒーローだから。
「でも、どうやってスキルって捨てるんです?」
『……あーうん』
「きゅおん(締まらないわねー)」
『桜どうにかしろ、精神系は得意だろ』
「きゅおん!?(わたしぃ!?)」