異世界から追放された英雄は、【シン・日本】で平穏に暮らしたいけど強すぎて無理   作:秋津 幻

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第25話 決着

「桜何とかしろ」

『きゅおん(いやまあ、出来るけど……)』

『出来るんだ……』

『きゅおん(なんかいい感じの精神空間を作り出すだけだけどね)』

「時間が、足りなかったのかもしれん。じっくり、考えてきなさいな」

 

 まあこの緊張状態で決断しても、心の準備までできていないのは仕方がないか。

 

 「華維さん! いましたわ、ここに……!」

 

 息を切らせた小鳥遊さんが、俺のいたビルの屋上までやってきた。

 

「今現在、どういう状況で……!」

 

「もうすぐ、何とかなる所だ……ステラちゃんが、【エネミーガード】を捨てることでな」

「……!」

 

 かくかくしかじか。状況を話す。

 

「今、電話をかけている。一言だけ話してやってくれ」

 

 ☆☆☆

 

「エネミーガードを捨ててきます」

『……ステラさん』

 

 小鳥遊さんの、心配そうな声が聞こえてきます。

 

「まだ、どうやるかは分からないけど、サクちゃんが何とかしてくれるみたいです」

 

『でも、そしたら……』

 

「多分、弱くなると思います。S級予備役からも外されるかも? でも……」

 

 これしか、ないのなら。

 これで、どうにかなるのなら。

 母親に、会えるなら。

 

「いりません。ない方が、いいんだと思います」

 

「……そうですか」

 

 小鳥遊さんは、しばらく黙った後、頷いて。

 

「……ステラさん、あなたがどんな決断をしようとも。ギルドは、わたくしは。あなたを肯定します。支え続けますわ」

 

 と言ってくれた。

 

「あなたの選択に、幸あらんことを」

 

 ……よし。

 それでは、行きましょうか。

 

 頭にしがみついたサクちゃんが、ささやきます。

 

 「すぐに終わるから……じっとしててね?」

 

 一瞬、意識が途絶えました。

 

 ☆☆☆

 

 昔を、思い出す。

 

 私の家族は多分、普通です。

 普通にご飯を食べさせてくれて、普通に日々を過ごし、別に虐待とかある訳でもなく。

 勉強でいい成績を取れたら普通に褒めてくれて。

 

 でも、冒険者とか配信とか、普通じゃないことは余りいい顔をしなかった。

 私の好きなことを、肯定してくれなかった。

 

 学業で限られる時間。足りない配信設備、冒険者の装備。

 やりたいことが色々あったのに、理解のないお母さん。危ないから、普通の人がやる仕事じゃないから、と言って。

 

 じゃあ普通じゃなくなればいいんでしょ、なんて。

 

 奇しくも家から出て、『親がいないんです』と言ってダンジョンで冒険者をやる事で、足りない環境は整えられました。

 

 才能があったから住む場所も装備もギルドが支援してくれたし。配信をやりたいと言ったらひと悶着あった後やらせてくれたし。

 

 それでいいと思いました。

 むしろ今までは私の才能を腐らせてくれたな、なんて。思ってしまいました。

 

 ダンジョン配信なんて、危険だ、止めろ、人気出ない、という(アンチ)もいました。

 無視しました。

 

 嫌なことは無視しましょう。

 私は、私のやりたい事をやりましょう。

 他人のいう事など、知るものか。

 

 だって私は、こんなにも成功してるんだもの。

 

 そうしてここまで歩いてきたら、ダンジョン配信者として有名になった。

 

「これが、ダメだったのかな」

 

 酷い道筋だ。他人をないがしろにしすぎている。

 

「別に、良いんじゃないの?」

 

 サクちゃんがそこにいる。精神世界とか言ってたからこうなるのか。

 

 「知らん人のいう事なんて、どうでもいいじゃない。親のいう事なんて、どうでもいいじゃない?」

 

 でも、どうでもいいからって、遠ざけてきた結果、両親まで……

 

「わたしは、親なんてどうでもいいし。華維くんの家に入り浸っては門限破って怒られてるし」

「……それはダメじゃない?」

「いいのよ、怒られる程度に済ませてるんだから。間違っても絶縁はされないわよ」

「……」

 

 私は、何も言えなかった。

 

「しいて言うなら、やりすぎんなってだけよ。流石に現実を歪めるほどのスキルになり果てるなんて。昔はそのおかげで色々出来たかもしれないけど、今はただ邪魔なだけでしょう?」

「……うん」

「過去やっちゃったものはしょうがないんだから今どうにかする手を……じゃあ、何を迷ってるの?」

「……捨てるやり方が、わかんなくて」

「本来ねーステりゅんが本気でいらないと思ってるなら、すでにもうスキルは消えているはずなんだけどねえ。呪いでもあるまいし、精神的なものに関連したスキルみたいだし」

「そうなの?」

「多分、何か引っかかりがあるんじゃないかしら?」

 

 引っかかり。

 不安。そう簡単に飲み込めないもの。

 

 少し、昔を思い出して分かったことがある。

 

 

 私やっぱり、お母さんの事好きじゃないんだ。

 

 

 反対してくる親の言葉にいら立ちを覚えたのは事実だ。

 でも、いなくなったら寂しくてまた会いたいと言い始める。なんと贅沢なことか。

 一人暮らしで大変なこと。家族と一緒に居る同年代の子を見て感じる憧れ。

 

 失ったのは、自分のせいなのに。

 

 否定する言葉は嫌いだけど、親にはいて欲しいという屈折した感情。なんと面倒なことか。

 

 そんな私らしさを反映したスキル。

 それが、エネミーガード。

 

 「じゃあ、捨てなくていいんじゃない? エネミーガードとは、うるさい「敵」を遠ざけるスキル。今はそこまでする必要ないんだから、その在り方をすこし、変えるだけでいいのよ」

 

 

 エネミーガードの耐久のお陰で、才能があるともてはやされた過去がある。

 でも、ステータスも上がったりして今は大丈夫。

 

 配信でやってくるアンチとかもわかなくな……これはいっか。

 別に今更、誰が何を言おうと知ったことではないし。

 

 そっか。別に昔は耐えられなかったかもしれないけど。

 今なら、別に、大したことではないんだ。

 

 魔物からの攻撃も。

 お母さんの言葉も。

 

 敵を、遠ざけるのではなく……

 今ならきっと、受け入れられると思う。

 

「あり方を変えるのも一つの手段。「敵」の言葉なんて、心を乱される価値すらないわ。「敵」から何を言われようと、耳をふさぐのではなく、「しらねーよバカ」と無視して我が道を行く。それも、強さよ」

 

 そうだね。私は、強くなりました。

 昔は必要だったものも、今は不要になりました。

 

「自分の親のいう事くらい聞き流してしらねーよと言えるようになりなさいな。多少そりが合わない部分があっても、一緒に生きられるのが家族ってものよ」

 

 受け入れましょう。

 酷い言葉も。私の否定も。

 辛い苦難も。

 もっと、強くなるために。

 あの人みたいになるために。

 

 きっとあの人は、私より大変な苦難を進んできたはずです。

 

 別に誰に何を言われても私の道を突き進むこと何で、昔から出来てたわけですから。

 それを少しだけ、拡張するだけです。

 聞かないで無視するのではなく、聞いたうえで無視する方向で。

 

 じゃあね、弱い私を守ってくれた【エネミーガード】。

 私は強くなったから。何もかもまで守られなくても前に進めますから。

 

 どんな『敵』だって。苦難だって乗り越えますから。

 

 だから、わたしをお母さんに会わせてください。

 

 お願いします。

 

 ☆☆☆

 

 目を、開く。

 現実の時間は、一瞬たりとも経っていなかった。

 

 そして。

 

 空に、ぴきぴきとひびが入っていきます。

 

 ――おや? エネミーガードの様子が……

 

 そしてその瞬間。

 

 ユニークの拳が振り下ろされます。

 

 大丈夫。

 このくらいもう、平気だから。

 

 ――ステラに、 228414ダメージ!!!

 

 ***

 

「ちぃっ!」

 

 エネミーガードが無くなったのを確認した。

 今なら、介入できる。

 

 頼む、ステラちゃん、少し痛い目に合うかもしれないけど、心だけは耐えてくれ。

 

 召喚した虚神の、胸にある砲台を解き放つ。

 

 ――華維の、【必中】【防御無視】【♢輪廻する命】【♦摩耗した魂】【999回攻撃】【上乗せ】アルティメットレーザー!

 

 一筋の光が、ユニークモンスターを焼き尽くす。

 

 ――試作超装甲無敵鋼機兵に2502254241ダメージ!!!

 

 しかし。

 

 ――試作超装甲無敵鋼機兵の、装甲が破壊された!!!

 

「……はっ」

 

巨人が纏っていた、装甲だけが崩れ落ちていく。

生身の、巨人がそこに立っている。

 

ゲージ式。残機式。死んでも一度だけ、蘇る。

そんなスキル載ってなかっただろ。

 

もう、苦笑いするしかなかった。

 

呆けてる暇はない。もう一度攻撃を――

 

「……いや、もうその必要はなさそうだな」

 

 配信画面の向こう。

 

 ステラちゃんが、立ち上がっていた。

 

 ☆☆☆

 

 ――ステラの、気合のミサンガが発動した!

 ――ステラは、1こらえた!

 

 ありがとう華維さん。前に貰ったミサンガのお陰で、耐えられました。

 

 装甲が剥がれた巨人がそこにはいます。

 

 なんかまた理不尽な感じで倒しきれてませんけど。

 

 あとは、私に任せてください。

 

 

 

 ――【エネミーガード】が、【エネミーアクセプト】に変化した!!!

 

 

 エネミーアクセプト:致死級のダメージを受けた時、稀に相手の攻撃を1耐える。敵意のある相手から受けたダメージが大きいほど攻撃が上がる。

 

 さて。

 

 面倒な葛藤はもうおしまい。

 それでは。

 

「逆転の時間だあああああああああああああ!!!!」

 

***

 

 >ステラちゃん北!

 >復活! 復活!

 >でも何かKさん相手倒しきれてないよ!

 >エネミーガードなくなっちゃったけど大丈夫……?

 >でもなんか新しいスキル生えてきてるよ!

 

 やっと、コメント欄を見れる余裕が出てきました。

 ちょっと、情けない所も見せたけど。

 私を、応援してくれる人が、ちゃんといました。

 

「大丈夫、大丈夫です! 私が、やります!!!」

「きゅおん(全身血まみれだけど大丈夫?)」

「マジで?」

 

 体を見ると、確かに血が出てました。

 潰されたときの奴かなあ……華維さんのミサンガのお陰で助かりましたけど。

 

 >これスプラッタ映像じゃないかなあ……

 >このまま続けていいの?

 K>最後はまかせた

 >!?

 >Kさん!?

 

 お墨付きもいただきましたし、このままやってしまいましょう。

 

 華維さんがちょっと前。私にエネミーガードは向いてないと言っていました。

 今なら少し、その意味が分かる気がします。

  

 私逆境に直面した方が、アガるんだ。

 

 ――ステラは、【逆境】を習得した!

 

 逆境:戦闘終盤、体力の割合が相手より少ないとき、全ステータスが上がる。

 

 >なんかスキル生えて来た

 >今役に立ちそうなスキルですね!

 K>ステラちゃん他に何かスキルかそっか?

 

「いただきましょう!」

 

 ――Kは、ステラに【底力】を託した!

 ――ベストマッチ!!! ステラは【底力】を習得した!

 

「!!!」

 

 これは……貸してもらったスキルが私に非常にあってとき、ごくたまに出来るベストマッチ!!!

 そのまま習得できるという便利なものなのです。

 

 >なんかものすごいスキル覚えてるんだけどw

 >エネミーガード無くなったけど大丈夫そうじゃない?

 >なんか、吹っ切れた感じ?

 K>耐久減ってるけどな

 >当たらなければどうという事はない

 

「きゅおん(あの、治療……)」

「底力の効果が減るから大丈夫です!!!」

「きゅおん(……精神操作で痛みは減らしておくからね)」

 

 サクちゃんのやさしさが身に沁みます。 

 

「華維さん、私大丈夫みたいです……それじゃあ、皆見てて!」

 

 その時、巨人が、腕を振り下ろします。

 

 「私やります……やって見せます! 皆さんは、私に応援を下さい!!!」

 

 そして、私は、攻撃を回避するために、高く飛び上がった。

 

「ってちょっと飛びすぎいいい!!!!」

 

 K>上がったステータスに体が追い付いてないんだ……!

 >そんなんある?

 >なっとるやろがい

 

 でもこのまま、かっこ悪い姿見せられるもんですか。

 

 空中で、くるりと回転し。

 落下速度を体に乗せて。

 

 放つ、

 私の必殺技。

 

 >頑張れ!!!

 >ステラちゃんいけえええ!!!

 >見せてくれ! 新しい力を!!!

 

「うおおおおお!!!」

 

 ――友情バトンが、皆の応援を力に変える……!

 

 >なんか知らん表記出て来た!

 

 

「これは……」

 

 力がわき出てくる。

 私を見てくれる全人類(すべてのひとたち)が。私の無限の力になる。

 

 お母さん。お父さん。私の妹。見てくれますか。

 

 強くなった、私の力を。

 

 配信の向こうから、ネットの外から、画面の向こうから、見てくれる皆の力(フォロー)が。

 願い(ほし)が。

 

「私の――力になるッッッッッッッッ!!!!」

 

 必殺。

 

「スーーーーーパーーーーーー!!!! シューティングうううううううう!!!!」

 

 全落下速度を、足に込めた、究極の技。

 それは、流星のように。

 

「ステラキィィィィィィィック!!!!!」

 

 蹴りが、巨人を貫きました。

 

 

 ――ステラの、【エネミーブレイク】【エネミーアクセプト】【逆境】【底力】【ガードブレイク】夢幻想流星蹴(スーパーシューティングステラキック)!!!!

 

 

 ――248倍撃!!!!

 

 

 ――25505390ダメージ!!!!

 

 華維さん以外では、見たことのないダメージが出ました。

 

『グオオオオオオオォォォォォォ……!!!』

 

 そして、巨人が、崩れ去っていきます。

 

 私の――勝ちです。

 

 >やったー!!!

 >勝った! やった!

 >ステラちゃん落ちてるけど大丈夫?

 

 

 

「って落ちるうううう!!??」

 

 そのまま、自由落下していきます。

 

 敵もいなくなったし――死因落下!?

 

 なんとか、着地だけはしないと――

 

 と、思ったその時、体を受け止められます。

 

「――よくやった」

 

 華維さんでした。

 

 あの一瞬でここまで!? って華維さんなら出来るか。

 

 あの時みたいに、ピンク髪の、それでもやっぱり、カッコいいヒーローの、華維さんが。

 

 私を受け止めてくれました。

 そしてそのまま地面に到着し。

 

「――大丈夫か?」

 

 優しく体を抱き、私を地面に立たせてくれました。

 

「華維さん……」

 

 

 

 

「……配信してますけど、鎧着なくていいんですか?」

「あっ」

 

 

 なんというか。華維さんもやっぱ、抜けてるところありますよね。

 

 

 まあこのくらい、今更どうにでもなるでしょう。

 

「というか私限界でーす……きゅぅ……」

「ステラちゃーん!?」

 

 ほっとしたのか、急に体の痛みと、疲労感が、全身にあふれて。

 そのまま、気を失ってしまいました。

 

 その後、どうなったのかは分かりませんが。

 

 もちろん、この配信がバズったのは、いうまでもありません。

 

 

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