星達のオーケストラ+IF 流星のコンチェルト 作:再来アーク
大変お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。
ぜひお楽しみ下さいませ。
きな子がスクールアイドル部の一員となってはや数日。初日に部室の紹介や日々の活動内容等を改めて説明し終わった後、きな子は午後から早速「Liella!」の練習に加わる事となった。千砂都と音羽の計らいでまずは筋トレと簡単なステップの練習から始める事となり、先輩達と早速練習を開始したのだが……。
「ワン、ツー……きな子ちゃん、そこでストップ!」
「おわぁぁ〜っ!」
「次はターン! ピタッと止まるのを意識して!」
「ひょえぇぇ~!!」
「きなちゃん、コースを逸れないようにねー!」
「は、はひぃぃ……」
その結果は、あまりにも散々なものであった。
体幹トレーニングで転びそうになり、軽くステップを舞えば千鳥足、ポーズを取ればガニ股になり、ランニング1セットでもう息も絶え絶えと、レッスンどころか基礎的な身体能力から壊滅的という有様であった。きな子自身から事前に運動が苦手だと伝えられていた『Liella!』一同であったが、実際にその惨状を目の当たりにして、目が点になっていた。
「これは、予想以上ね……」
「初日とはいえ、色々と課題山積みってとこかな?」
「コラすみれ、千砂都! そんなコトを言っては行けマセン! きなきなはまだ練習初日なのデスから!」
「それくらい私も分かってるわよ。ただ、ちょっと心配ってだけ」
「ごめんごめん。でも、練習メニューは少し見直さなきゃかもね……」
練習初日にして、きな子はある意味強烈(?)なインパクトを、先輩達に見せつけたのであった。
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「やっぱり……ダメっす……」
「まだまだ練習初日だし、仕方ないよ」
「そうです! 没关系 没关系!」
「分からない事があったら何でも教えるから、一緒に頑張ろう?」
「すみませんっす、初日からこんな……」
致命的な失敗の連続ですっかり気が沈み、屋上の隅で丸くなってしまったきな子に、『Liella!』メンバーは練習初日だからと口々に励ましの言葉をかける。しかし、優しい言葉をかけられたきな子は自分の失敗で先輩達に気を使わせてしまったと思ってしまい、更に気を落として丸くなってしまった。
「昔から運動は苦手で、いつも皆に置いていかれてたっす……」
きな子の脳裏に過ぎるのは、幼き日の苦い記憶。彼女は運動が苦手故にクラスメイトとの追いかけっこで先を走る皆に中々追いつく事が出来ず、頑張って速度を上げようとしてもその場で転けたり、道端に降り積った雪にダイブしたりと散々な結果に終わっていた。今では体型の変化と共に運動神経も多少マシにはなっていたものの、いざこうしてスクールアイドル部の練習に加わると、周りとの差を嫌でも痛感してしまうというのが現実であった。
「きなきな、心配するコト無いデス! 誰もが最初カラ完璧にできるワケでは無いのデスから!」
「そうなんですか……?」
「そうそう。可可なんて入部したばっかりの時は腹筋1回も出来てなかったんだから!」
「それはモウ過去の事! ククも必死で……」
「あの子を安心させる為でしょ! 話合わせなさい!」
「む……」
過去の自分を引き合いにしてきな子を励ます可可に続けて、すみれは少しからかい混じりに言葉を続けた。それが気に触ったのかムッとした表情で突っかかる可可であったが、すみれに素早く耳打ちされ、その意図を明かされると瞬時に切り変え、少し引っかかったような表情のきな子に笑顔で話しかけた。
「ソウデス! 昔のククより、イマのきなきなの方がずっと凄いデスよ!」
「そうっすか……?」
「ハイ! トッテモ!」
可可の元気な返答を受けて納得がいったのか、きな子は顔を明るくさせる。それを見やった音羽が、きな子に手を差し出した。
「きな子ちゃん、前向きに行こう!」
「かのん先輩……」
「きなちゃんが笑顔で頑張れるように、僕達が支えるから!」
「音羽先輩……! はいっす!」
「よし、そうと決まれば……ん?」
音羽とかのんの励ましで少しずつ気力を取り戻し、ようやく立ち上がれたきな子。練習を再開しようとしたその時、千砂都は屋上の入口付近に妙な気配を感じ振り返るも、いつも通りに微動だにしないそれを見て気の所為かと思い、皆の方へ視線を戻した。
「千砂都、ドウカしマシタか?」
「んー、なんか扉の方に人の気配がしたんだけど……気の所為だったみたい」
「まさか、この前の新入生が仕返しに来たとかじゃないでしょうね?」
「えっ……」
「校内の警備は万全だと伺っておりますが、もしそうなのであれば……叩き出すのみです」
「ちょっと恋、冗談だからその物騒な構え止めなさいってば」
入口の不審な気配が昨日音羽を脅した新入生(今は元だが)ではないかとすみれが疑いをかけた途端、恋の声のトーンが一気に下がり、表情を険しくすると同時に腰を低くした物騒な構えを取り始めてしまう。その余りの気迫にすみれは思わず軽い冗談だと弁明するも、恋は顔を顰めたまま音羽の傍を離れようとしない。
「音羽くんは私が守ります!」
「恋ちゃん……!」
「恋先輩、かっこいいっす……!」
「そこの2人はメロつかないの。ほら、練習再開するわよ!」
「みんなー、戻っておいでー!」
「何かグダグダになってきちゃった……」
「イツモの事では無いデスか?」
「そうだけどっ、そうだけどさぁ。はぁ……」
やけに様になる台詞を言い放つ恋と、そんな彼女に目を輝かせる音羽ときな子を諌めるすみれ。その少し後ろで、平常運転の千砂都と可可とは対照的に、新入生を迎えての最初の練習が何だか妙な雰囲気になってしまったことを嘆くかのんなのであった……。
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「や、やっばぁ。もう少しで気づかれる所だったよぉ……」
一方先程のドアの裏側では、愛美がドアの隙間から練習をするスクールアイドル部一同をチラチラと覗きつつ、時折壁に張り付いて息を殺していた。自分が練習を覗きに来ている事を部員達に見つかったらまずいという訳でも無いのだが、面と向かってライバル宣言をした以上は大手を振って会いに行く事は出来ないと考えた故であった。
「敵情視察がてら心配で見に来たけど、あれはなかなか苦労しそうだねぇ……」
持ってきていた黄金糖を口の中で転がしながら、練習中のきな子の姿を思い出して苦笑いを浮かべる愛美。運動はからっきしだとは本人からは聞いていたが、まさかあれほど酷いとは予想しておらず、背中を押した立場としてはスクールアイドル部で彼女がやって行けるか些か心配になってきていた。
「いっその事私が特訓を……なんて、流石にお節介すぎるかなぁ」
だが、いくらきな子が心配とはいえまだまだ練習初日。これからの努力で彼女が驚異的な成長を見せるかもしれないと愛美は考えていた。それに加え、千砂都や音羽を始めとした頼れる先輩がいる以上、自分から余計な手出しは無用とも思っていた愛美は、頭に一瞬よぎった考えをすぐに消し去った。
「頑張ってね、きな子ちゃん。陰ながら応援してるよぉ」
ひぃひぃと息を上げるきな子を横目に、愛美は静かにその場を去るのであった。
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「それでは先輩方、お先に失礼するっす!」
「頑張るのデスよきなきな!」
「でも無理はしないでねー!」
「はいっす!」
新入生を加えての練習初日という事もあり、少し早めに一日のメニューを終えた『Liella!』一同。暫しのクールダウンの後、ミーティングの為にもう少しだけ残る1期生達から先に帰って良いとの許可を受けたきな子は、先輩たちの邪魔をしまいと足早に部室を去っていった。音羽と可可に見送られ、元気な足音が階段の奥に消えていったのを確認したかのんがゆっくりと戸を締め、カバンを背負って皆に振り返る。
「ふーっ……ひとまず、無事に練習終われて良かったね!」
「そうだね。きな子ちゃんの課題もあらかた分かったし、明日からのメニューも組み直さないと!」
「まだ練習も始まったばかりなんだし、私達も根気良く鍛えてあげないとね」
「心配ありまセン! 今のきなきなには、クク秘伝のトレーニングメニューがあるのデスから! でも、今日ノきなきなは、少し寂しソウに見えマシた……」
「今日のきなちゃん、声から少し暗い色が見えてた。やっぱりまだ不安なのかな……」
今日の練習風景を振り返りながら、それぞれの意見を交わす『Liella!』メンバー。その中でも特に話題に上がったのは、きな子の様子であった。練習初日で緊張している点を加味しても、今日の彼女は時折何処か所在無さげな、不安が滲んだ表情を見せており、音羽と可可はそんな彼女をずっと気にかけていた。そんな2人の言葉を受け、残りのメンバーも自分の意見を述べ始める。
「新入部員がきな子さん1人というのも問題だと思います。私達がいくらきな子さんに寄り添おうとも、先輩と後輩というのはどうしても距離が出てしまうものですから」
「1人だけだと、自分だけ遅れてるって感じちゃいやすいよね……」
「だからこそ、同じ立場の子がいると違うかなって思う。私もスクールアイドルを始めた時、可可ちゃんが傍に居てくれて、本当に心強かったから!」
「かのん……!」
「あの時の2人も中々凄かったからねぇ。特に可可ちゃん……」
「ソ、ソレは過去のコトデス千砂都! 今は腹筋100回出来マス!」
「あはは、分かってるって!」
可可と千砂都がいつも通りにじゃれ合う中で、音羽は1人手帳と向き合い、今日の練習で感じた事を猛烈な勢いで書き記していた。
先程恋とかのんが話していた、きな子が何処か寂しそうに見えた理由。スクールアイドル活動を誰かと共に始めることが出来た自分達1期生とは違い、きな子はまだ右も左も分からないまま1人でスクールアイドルの世界に飛び込んだのである。その胸の内に秘めた不安と心細さは、きっと計り知れないものだろうと音羽は考えていた。過去の出来事から1人でいる事の辛さを何よりも知る彼は、きな子にこれ以上寂しい思いをさせまいとこの時決意し、彼女と共に歩んでくれる新入部員をどう増やせるかの案を次から次へと書き出し始めていた。思考が徐々に加速し頭の片隅が痛み出したその時、首筋に軽い衝撃が走った。
「こら」
「あいてっ……すみれ、ちゃん?」
「音羽、焦りすぎ。何書いてたか知らないけど、また過集中になってたわよ?」
「ごめん。きなちゃんの事を考えてたら、居ても立ってもいられなくて……」
「なるほどね。ま、サポーターとしてあの子の事を考えるのは良い事だけど、私達の事も頼りなさいったら頼りなさい。きな子はもう『Liella!』の一員なんだから、あの子の問題は私達全員で解決していくのが筋ってもんでしょ?」
「そっか…….うん、そうだよね。ありがとう、すみれちゃん!」
すみれの言葉で、音羽の加速した思考が徐々に沈静化していく。自分だけでなく、皆できな子と向き合う。自分はもう一人じゃないという事実を改めて実感し、音羽の胸の奥がじんわりと熱くなっていった。
「という訳でこれは没収。あんたは外で頭でも冷やしてきなさい」
「えっ、ちょっ……!?」
感傷に浸っていた音羽の頭上からすみれの白い手が伸び、手帳をあっという間に引ったくってしまう。戸惑う音羽を横目にすみれは他のメンバーを手招きし、1番先にやって来た千砂都に手帳を渡した。
「おとくん、ちょっと覗かせて貰うね……って、ものすごい文字量だねこれは」
「コレをたった数分デ……流石音羽デス!」
「音羽くんのアイデアを横取りしているようで些か心苦しいですが、すみません。今は有効活用させて頂きます……!」
「おとちゃん、ここから先は私達に任せて、お散歩でもして来てよ!」
「で、でも……僕だけサボっちゃうみたいで、良いのかな……?」
「あんたは普段から生徒会とサポーターで働き詰めなんだから、今休み過ぎるぐらいがちょうど良いのよ。ほら、行った行った!」
自分だけが休憩を取る事に罪悪感を覚える音羽であったが、皆は任せろと言わんばかりに頷き、終いにはすみれからみかん味のラムネを投げ渡されてしまった為、ここは素直に皆の好意に甘んじる事にしたのだった。
「わっ、と……うん、分かった。ごめんね、少しだけお願い出来るかな?」
「まっかせてよ!」
かのんの嬉しそうなサムズアップに笑顔で返すと、音羽はラムネの袋を両手で包んだままゆっくりと部室を出ていった。その足音が止んだのを確認した千砂都が戸をゆっくりと閉め、皆の所に戻って行く。
「さてと、おとくんがお散歩から帰ってくる前に、ちゃちゃっと新入生勧誘プロジェクトを進めちゃおっか!」
「少々強引な手ではありましたが、ああでもしないと考えすぎで音羽くんの頭が沸騰してしまいますからね……」
「最近のおとちゃん、前より思い詰める事が多くなって来てるし、気づいたらさりげなく休んでもらうようにしないとね」
「まったく、手のかかる子なんだから」
「すみれ程じゃないデスよ」
「しれっとディスんじゃないわよ!」
すみれと可可がいつもの漫才を繰り広げる中、かのんは先程の音羽の様子を思い出していた。手帳と睨めっこをしながら真剣に書き記すその横顔が、かのんの琴線を揺らしていたのだ。音羽が無理をするのは彼女としても不本意であるため、本来ならばもっと心配すべきであると分かってはいるのだが、抱いてしまったものはもう仕方がないのである。
「さっきのおとちゃん、カッコ良かったな
ぁ……」
少しだけ熱を帯びたかのんの独り言は、部室の喧騒に掻き消されていくのであった。
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「お散歩といっても、今から廊下を歩き回るのは流石に変な人扱いされちゃうよね……」
部室を出て一先ずお散歩に出かけた音羽であったが、いきなり何をしたものかと少々戸惑っていた。だが、このまま廊下を歩いていては他の部活生に怪しまれると考えた音羽は、校内で適度に休めそうな場所を脳内でリストアップしていく。
「……とりあえず、中庭行こうかな?」
結ヶ丘高等学校の中庭。緑溢れるレトロチックなその空間は、生徒の憩いの場として人気があり、音羽も時折昼休みにやって来ては読書や昼寝をする程気に入っている場所であった。あそこであれば然程不審に思われないと考えた音羽が、中庭へ続く渡り廊下へ足を踏み出したちょうどその時であった。
「何だろう。曲、かな……?」
音羽の耳に、軽快な音楽が飛び込んで来た。やけに壮大でノリの良いそれは耳を澄ませば中庭から聞こえているらしく、音羽はその音に導かれるまま駆け足で中庭へと向かい、耳に届く音の強弱で位置を把握しながら音源を探していく。
「えっと、確かこの辺から聞こえて来たから……あっ! 見つけ、た……」
しばらくして、音源らしきポータブルプレーヤーを探り当てた音羽は、一先ず様子を伺おうとゆっくり近づこうとし、数歩歩いた所でその足が不自然に止まった。まるで、そこに居た何かに釘付けになったかのように。
「~♪」
それは、まるで暴風のようであった。大木の前で舞い踊る1人の女子生徒。ポニーテールで結んだ髪はまるで意思があるかの如くうねり、手指の先からつま先まで全身を余すことなくダイナミックに、かつ軽やかに舞い踊るその姿は、まるで重力が彼女の周りだけだけ消失してしまったかのような独特の躍動感を生み出している。さらに、これだけ激しく身体を動かしているにも関わらず体幹は一切ブレることが無く、常に安定かつ大胆な身体の動きを維持し続けていたのだ。
目の前の舞踏に息をするのも忘れ、すっかり見入ってしまう音羽。『Liella!』や『Sunny Passion』等の現役スクールアイドル達に勝るとも劣らないその圧巻のパフォーマンスに、彼の身体は1歩も動けないまま釘付けにされていた。しばらくして、プレーヤーの音と共に彼女の動きも止まり、中庭に静寂が訪れる。音羽が思わず賞賛の拍手を送る中、やりきったと言わんばかりに大きく伸びをした彼女は軽く振り向くと、柔らかい声を上擦らせながら大層驚いた様子で音羽に話しかけてきた。
「ふぅ……あれっ。お、音羽先輩!?」
「やっぱり、愛美ちゃんだったんだね。さっきのダンス凄かったよ……! 思わず見惚れちゃった!」
「い、いつからご覧になられてましたぁ……?」
「うーんと……曲のBメロくらいからかな?」
「う、うぁ~っ! ほぼ全部見られてるぅ~っ!!」
「あはは……お散歩してたら、中庭から音楽が聞こえてきて、気になって来てみたら愛美ちゃんが踊ってた……みたいな。覗きみたいなことしちゃって、ごめんね?」
「いえいえそんな、お気になさらず。音羽先輩でしたら何時でも大歓迎ですよ!」
舞い踊っていたのは、なんと愛美であった。音羽に見られていた事に気づいて頬を抑えながら恥ずかしそうに跳ね回る彼女に、音羽は覗き見の様になってしまった事も含めて、少し申し訳なく思いながら会話を続ける。
「ふふっ、ありがとう。それで、愛美ちゃんはなんで中庭でダンスを?」
「学校終わって帰ろうと思ったら中庭の雰囲気が中々良かったので、ダンス教室の自主練がてら一曲踊っちゃおうかなと」
「なるほど……」
納得したと言わんばかりに頷く音羽を見ながら、愛美は先程から彼に対して思っていた事を素直に告げる事にする。
「音羽先輩、もしかして……何かお悩み中だったりしますか?」
「えっ……な、何で分かったの?」
「眉間に少し皺が寄ってましたよぉ。それと、何となーく、思い詰めてる人の顔してるなって」
「あはは……そんなに分かりやすく顔に出ちゃってたんだ。ちょっと、部活の事で色々考えててね。でも大丈夫、そんなに深刻なことじゃないから心配しないで!」
少し困り眉になりながらも、心配無用と笑ってみせる音羽。そんな彼に、愛美はある提案を持ち掛ける事にした。
「音羽先輩。もし私で良ければ……お話、聞かせて貰っても良いですか?」
「えっ……良いの? 迷惑じゃ、ないかな……?」
「迷惑だなんてそんな。ここで出会ったのも何かの縁ですし、せめて聞き手ぐらいにはなれるかと思いまして。ささ、こちらに」
少々広めのベンチに腰掛けた愛美は、空いたスペースに音羽を誘うように、座面をとんとんと叩く。最初は戸惑っていた音羽も恐る恐るといった様子で隣に座り、ふぅと息を吐いて腰を落ち着けた。
「愛美ちゃん、あのね……」
音羽が、少し小さな声で愛美に語りかける。
夕焼けで空が紅く染まる中、秘密のお悩み相談が幕を開けた。
先輩として、出来る事は何だろう。