罪なき人々に怪人の魔の手が迫る!助けて無免ライダー!!って話です。
「竈門炭治郎の歌」を脳内再生しながら読んでみてね。
<<< J市 >>>
「正義の自転車乗り、無免ライダー参上!!!」
「……む、無免ライダーだ!」
「無免ライダーが来てくれた!」
「でも……」
「「「「 ……… 」」」」
誰の目から見ても、C級ヒーローである無免ライダーに勝ち目はなかった。
それは
『無免って、人一倍強化訓練に励んでいるよな』
『あぁ、ガロウに次いでよく吹っ飛ばされてるけど』
『C級の俺らにとって強化訓練なんてランキング引き上げのための足掛かりでしかないってのにな』
『強くなれるのはA級と……良くてB級か』
『C級なんて、真面目にやるだけバカを見るだけだぜ』
「とうっ!!」
シン海王目掛けて突進する無免ライダー。……内に抱える苦悩を振り払うように。
「おりゃっ!!ジャスティスパンパシッ
ドゴッ
「 」
見て、いられなかった。
無免ライダーの攻撃は尽く意味を成しておらず、ただただ一方的にシン海王に弄ばれるのみ。
「(何やってんだよ無免ライダー!お前が敵うワケねぇだろバカ野郎……!)」
同じC級のオールバックマンは無免ライダーの無謀とも言える戦いに思わず内心で毒づく。
「ヒッ……!!」
無免ライダーに
今度こそ終わ「ジャスティスタックル……!」
「「「「 !!? 」」」」
「あうううううう………っ!」
無免ライダーは必死になってシン海王にしがみつく。
「うう…期待されてないのは分かってるんだ……」
「っぷ!!」
「(何やってんだあのバカ野郎っっっ!!!逃げろよ!!俺達は所詮……)」
「C級ヒーローが大して役に立たないなんてこと、俺が一番良く分かってるんだ!」
「っっ!?」
「俺じゃB級で通用しない……自分が弱いってことは……ちゃんと分かってるんだ!」
「(む、無免……!)」
「俺がお前に勝てないなんてことは……俺が一番よく分かってるんだよぉ……!!」
血反吐に塗れ、瀕死の重症を負い、足元がふらつこうとも立ち上がり続けるヒーロー、無免ライダー。……
「それでも……やるしか……ないんだ……!」
一歩。シン海王に踏み出す。
「俺しかいないんだ……!」
一歩。
「勝てる勝てないじゃなく!!」
振り下ろされる
「ここで俺はお前に立ち向かわなくちゃいけないんだ!!!」
瞬間、無免ライダーは光を放った。
「……どうなった!?無免ライダーは!?」
突然無免ライダーから凄まじいほどの
視界が回復していくごとに、目の前の光景が鮮明に映し出される。
まさか、そんな、最悪の可能性を覚悟する。
振り下ろされたシン海王の巨拳。
そして―――……
……腕を交差し、防御する無免ライダー。
「「「「 ……………え? 」」」」
「ぅぉぉおおおおおおお!!!」
交差した腕を勢いよく突き上げ、シン海王の巨拳ごとその巨体を大きく吹き飛ばす。
間髪入れずにシン海王のガラ空きの胴体に渾身のチョップを叩き込む。黄金の軌跡を描きながら放たれたチョップは胴体に炸裂し、シン海王の強靭な肉体をバターのように容易く切り裂いた。
「■■■■■■■■■」
傷口から鮮血を撒き散らし声にならぬ絶叫を上げるシン海王。あまりの痛みにのたうち回っているようであった。
「す、スゲェェェェェ!!!」
「何で!?どうして!?」
「いきなり覚醒かよ!?」
「もったいぶりやがってコノヤロー!!」
「そのままぶっ倒せー!!」
絶望の只中に立たされていた者達が一斉に色めき立った。
無理もない。ヒーローとはいえ所詮C級でしかない無免ライダーが、あれだけ散々甚振られていた無免ライダーが、目の前の絶望を相手に善戦しているのだから。
「(た、確かにスゲェが……ならなんで最初から本気で戦わなかったんだ……?)」
オールバックマンはふとそんなことを考えてしまう。
光に包まれた後の無免ライダーは非常に凄かった。……異常と言い換えても良いかもしれない。
その黄金色の光は無免ライダーの全身に纏わりつくように漂い―――……急速に小さくなっていった。
「……っ、ハァ…ハァ……!」
「っ!?無免ライダー!!!」
思わず膝をつきそうになる無免ライダー。戦闘のダメージが深刻だったのか、それとも急激なパワーアップに体がついてこれなかったのか。……あるいはどちらもあり得るかもしれない。
今の無免ライダーは立っているのがやっとの非常に危険な状態にあるのだろう。
膝をつかないのはヒーローとしての責任感ゆえか。
「■■■■■■■■■」
シン海王は分かりやすいぐらいに激怒していた。
雑魚の分際で自分の肉体に傷を付けるなどあってはならない。そう言わんばかりだ。
乱杭状の背鰭に再び光が灯る。
誰もが確信した。あの光こそがシェルターの天井を破壊した原因なのだと。
……それが今度は自分達に向けられている。
連打を叩き込んだあの人間に
今度こそ皆殺しにする。
自分に傷を負わせた人間の元に、一人の人間が駆け寄る。
「ヒーローオールバックマン参上!……同じヒーローを見捨てることはできねぇ!」
その人間を皮切りに、ぞくぞくとヒーローを名乗る人間が現れ、自分に傷を負わせた人間を守るように立ちはだかった。
「ヒーロージェットナイスガイ!!ここは死んでも守る!!!」
「ヒーローブンブンマン!!これ以上お前の好きにはさせねぇ!!!」
「ヒーロー〝蛇咬拳〟のスネック……!これでもA級の端くれだ。……やってやる……!!」
「「「「 勝負だ!怪人!!! 」」」」
バカな人間どもめ、オマエ達は全員死―――……
「■■■■■■■■■!!?!!?」
一度放出した以上自分の意思で中断することはできない。エネルギーが尽きるまでひたすら無駄打ちし続けることになる。……強力極まる熱線の威力は、自分の肉体すら焼き切る諸刃の剣なのだ。
自分の必殺技に自分が蝕まれている。
マズイ……!
……やがて熱線は止まった。
「■■■■■■……」
シン海王は全身が焼け爛れ、見るも無惨な有り様だ。
「世の男子は、俺が守ドサッ
シン海王の背後にて熱線を逸らしてくれていた全裸の変態が崩れ落ちる。彼もまた全身に大火傷を負っていた。
「■■■■■■」
悍ましい絶叫が響く。が、最初の頃と比べその声は弱々しく痛々しい。
本日二度目の、間を置かずに放った熱線の代償はあまりに大きかった。焼けた肉片がボトボトと地面に零れ落ちる。
「■■■■■■■■■■■」
それでも脅威であることに変わりない。S級じゃない自分達では敵わないと悟らせるほどの気迫を放っている。
「(打つ手なしか……?)」
早くS級来いよ。……そんなことを諦め半分に思っていたその時だった。
「ハァ…ハァ……俺が、戦う。
……皆、下がっていてくれ……!」
いた。S級並に強いかもしれない
「(満身創痍なのに無茶言いやがる……!)やめとけって無免ライダー!もうお前戦える状態じゃないだろ!!」
「そうだぜ無免ライダー!これ以上戦ったらマジで死んじまうよ!」
「………やれるんだな?」
「「「 !!? 」」」
A級のスネックが問いかける。
無免ライダーは黙って頷いた。
「……俺達が盾になる。今度こそ奴を倒せ……!」
「マジで言ってんのかアンタ!?これ以上無免ライダーを戦わせるなんて……!」
「議論の余地はないっっっ!!!」
「「「 っっっ!!? 」」」
「悔しいが……今この場で奴に対抗できるのは無免ライダーをおいてほかにいない……!無免ライダーが最後の切り札なんだ……!」
憤怒と憎悪で象られた悍ましい表情で睨みつけてくるシン海王が、殺意を撒き散らしながらこちらに突進してきた。……瞬間、巨拳が目前に迫る。
「蛇っっ!!!」
「行けっっっ!!!」
「っ、恩に着る!!」
駆ける無免ライダー。目指すはシン海王の命。
限界などとうに迎えている。……この機を逃せば、二度と勝機は訪れないだろう。
「ぐは……っ!?」
スネックが宙を舞う。
無免ライダーはすまない、と心の中で謝る。
「く……そ……」
ジェットナイスガイが上下真っ二つになる。
無免ライダーは俺が弱いせいで、と自分を責める。
「が…ぁ……」
ブンブンマンがぶっ飛ばされた。
無免ライダーは自分の無力を呪った。
「(……っ、今っっっ!!!)」
襲い来る攻撃の中で僅かに見えた隙。全身全霊を懸けて懐に潜り込む。もう少し、もう少しで―――……
「無免ライダーあぁああぁあ!!!」
真横から迫りくる巨拳。それに気付かぬ無免ライダー。
そして―――……自分を身代わりに無免ライダーを巨拳から庇ったオールバックマン。
「ごふ……っ!」
凄まじい量の血を吐き出すオールバックマン。
巨拳の生み出す威力まで殺しきれなかったのか、二人仲良く遠くへぶっ飛ばされてしまった。
『―――本日はゲストとして、イケメン仮面アマイマスク氏に来ていただきました』
『よろしくお願いします』
『早速ですが、今回の海人族襲来は災害レベル【竜】の事態となってしまいましたが、イケメン仮面さんとしてはヒーローの立場から見てどのように捉えていますか?……失礼ですが、A級はおろかS級すら負けたとの情報が入っていますが……』
『彼らは負けていませんよ』
『え?』
『今も戦い続けています。……僕の直感ですがね』
『は、はぁ……』
『確かにヒーローたる者、常にタフで力強くそして美しく、速やかにそして鮮やかに悪を排除できる存在でなくてはなりません……ですが』
『ですが?』
『自分の弱さや醜さに何度打ちのめされようと、その度に立ち上がり続け悪に立ちはだかる。……そんな泥臭い在り方を貫ける存在もまた、ヒーローであると僕は思います』
『そ、そのぉ……。そろそろ新曲のお話を……』
『最後に一つだけ……これまでも、そしてこれからも、人々のために戦い続けるヒーロー達の勝利を信じています』
地に倒れ伏すヒーロー達。もはや立ち上がることすらままならない。
シン海王がゆっくりと迫ってくる。
「ハ…ァ…ハ…ァ……。
オ、オールバックマン……な…ぜ……?」
「………へっ、こんなことに、なるなら、お前みてぇに、バカ真面目に、訓練しときゃ、良かったなぁ……」
「そんな、君だって一生懸命、頑張ってたじゃないか……!」
「頑張ってた
「………」
「……でもなぁ。……お前だけは、絶対、諦めなかった……」
「……っ!」
「テメェが、弱いことを、分かった上でだ……。そんなお前が、ただただ、羨ましかったんだ……」
「……オールバックマン……!!」
「……今日も、諦めねぇんだろ……?」
「っ、俺は……」
「なんてたって、無免ライダー、なんだからな……!」
オールバックマンは沈黙した。……ドクドクと大量の血を垂れ流して。
「……俺は…………!」
その時だった。
「………俺は…………!!!」
その時、不思議なことが起こった。
「無免ライダーだ……!!!!」
消えかけていた無免ライダーの光が急激に輝きを増した。
何だ。
何だというんだ。
何なんだ、アレは。
……シン海王は、目の前の光景に目を奪われていた。
今さっき殴り飛ばした二人の内の一人、自分に傷を負わせた人間が突然、全身から眩いばかりの黄金色の輝きを放ち、立ち上がったのだ。
アレは危険だ。
殺さねば。……殺さねば!!
「■■■■■■■■■■■■■■」
気付けば行動していた。
声にならぬ絶叫は憎悪ゆえか、恐れゆえか―――……
その巨拳を振り下ろす。
「■■■■■■■■■■!!?!!?」
右の巨拳が蹴り一発で木っ端微塵に弾け飛んだ。……ワケが分からない。分かりたくない。
こうなればアレを使うしかない。
肉体が悲鳴を上げる。だが構うものか。
あの人間を殺せればそれで良い。
「!!?」
目の前の人間が何かに驚いて硬直した。
いまさら命乞いなどしてももう遅い―――……
「■■?」
体の中から無数の
問題ない。例え動けなくともこの人間を殺せればいい。
「ぷりぷりィィィィィィ」
「プリズナーァァァァァァぁぁあ」
突如背後から
無数に突き出た緑の矢を気にするでもなく、翼は触手のように両腕に絡みつき、手足で胴体をガッチリ羽交い締めにしてのけた。
「かァァァらァァァのォォォ―――……
エンジェル☆バックハグ!!!」
「■■■■■■■■■■■■■!!?」
「世の男子は、俺が守る!!!!」
想像を絶する激痛とともに固く締め上げてくる。……もはや、熱線を吐くこともままならない。
……マズイ、マズイマズイマズイマズイマズイ!!!
「無免ライダーちゃァァァん!!!俺ごとブチ抜けェェェエエェェエェェェエェエエェ!!!!」
「っ、ありがとうぷりぷりプリズナー!!」
早く拘束を解かねば!体が動かせない!
熱線を吐かねば!吐けないィィィ!
あぁ、あぁ、あぁ、嘘、嘘よ……!
「(ありがとう。……何度でもそう思うよ。皆の繋いでくれたこの勝機、決して無駄にしない……!)」
黄金色の光が右の拳に集まっていく。正義の心を燃料に、限界以上の力が引き出され一点に集束していく。
狙うは心臓―――……否、その奥深くにある
「ジャスティス―――……」
一撃。
無免ライダーのパンチによって竹は消し飛び、背後にてシン海王を羽交い締めにしていたぷりぷりプリズナーをもぶっ飛ばした。
そして―――……
<<< キングside >>>
「無免ライダー……!(アレは……深海王か?あんなにキモかったっけ?周りで倒れているのは……ヒーローの皆さんかぁ?……あ、ぷりぷりプリズナーがいる。……背中から翼みたいなの生やしてるんだけどぉ。……いやいや早く助けないと!!!)」
シェルターにいる民間人はどうやら怪我らしい怪我は負ってないらしい。血の匂いはしない。
それより問題なのは倒れているヒーロー達だ。幸い誰も死んではいないが危険な状態であることに変わりない。早く治癒しなければ助けられないだろう。
……倒れているヒーロー達の中心にてそびえ立つ深海王っぽい怪物を見据えるキング。
「(多分……弱ってるんだよなぁ?
「ハァ…ハァ……お前は、本当に、凄い奴だ……海人族……!ハァ…ハァ……」
「!?」
膝から崩れ落ちていた無免ライダーが息を切らしながら言葉を紡ぐ。
「ハァ…ハァ……俺なんかより、よっぽど強くて、怖かった……!本当に、大した奴だよ、お前は……!」
その時とんでもないことが起こる。
深海王の肉体がみるみる内に萎んでいき、やがて塩か灰の如く砂状になっていったのだ。
「(オイオイオイ……待ってくれよん……!?)」
「ハァ…ハァ……我慢比べでは、お前の、勝ちだ……だが!」
やがて全身が塩の柱のようになった深海王は、いともアッサリ崩れ去り塵に還っていってしまった。
立ち往生である。
「(マジかよぉ……!無免、君って奴は……!)」
「この戦い、
限界を迎えた体に喝を入れ、無免ライダーは力の限り声を張り上げ勝鬨を上げる。
「決着ゥゥゥ―――――――――!!」
民間人の歓声が沸き起こる。
怪人が負け、ヒーローが勝つ。……ごく当たり前の光景がそこには広がっていた。
「(どうやら俺は間に合わなかったみたいだなぁ。……ヒーローの勝利の瞬間に……)」
その瞬間を見れなかったことに、キングは僅かばかりの悔しさと敗北感を感じていた。
綺麗な夕焼け空がヒーロー達を優しく包み込む。
人類の未来もきっと明るい。
無免ライダー覚醒回。……無事決着しました。
……書いてて思いましたけど、ぷりぷりプリズナー活躍しすぎじゃね?三度も戦線復帰するなんて人間じゃねぇ。
MVPはぷりぷりプリズナー。異論は認めます。