キングと呼ばれる男は覚悟を決めるって話です。
……大変お待たせしました。挿絵あります。
十王目 王の覚悟 ①
<<< Z市 とある道場内 >>>
道場の中心にて、音を置き去りにした静謐にして熾烈な戦いが繰り広げられていた。……ジェノスほか
拳を交えるは二人の超雄。
〝流水岩砕拳〟のバング
……またの名をS級3位 シルバーファング
〝地上最強〟の男レイタロウ
……またの名をS級6位 キング
流水の如き動きで相手を翻弄し、激流の如き一撃をもって巨岩をも粉砕する柔拳でもって〝最高〟のヒーローが放つ必滅の打撃を受け流し続けている。
素人目ではどちらが優位に立っているか分からず、バングの
やがて両者はピタリと止まる。
「……ふむ、こんなもんでええじゃろ」
「……ありがとうございます。バングさん」
気付けばその場にいた誰もが両者の健闘を称えていた。それほどまでに素晴らしい戦いだったのだ。
ジェノスが
「お疲れ様です師匠。……お見事でした」
「……あんがとジェノス。……結局掠りもしなかったけどねぇ」
「スゴイじゃ〜んレイタロウ氏〜!分かっちゃいたけどスゴく強いね!」
「ありがとねサキ氏。わざわざ来てもらって……」
「良いよ〜、最近はジェノス氏が家事全般を引き受けてくれてるから結構暇だしね」
「……
「「「「 ……え? 」」」」
途端に周囲がざわつく。
「……どういうことじゃキング?子供がどうとか……まさか
「……ここにいる面子になら言っていいかな。彼女はサキ。俺の妻だよ。……もうじき三人家族になる予定さ」
「改めまして、夫がお世話になっております」
「「「「 えぇえぇぇえ!?!? 」」」」
「ど、道理で見知らぬ美女がいると思ったら……キングの奥さん!?しかも子供もォォォォォォ!?」
「そんな……狙ってたのにぃ……(泣)」
「キングに女がいたなんて……!〝親衛隊〟の連中が知ったら荒れるぞ……!」
「おい!今からこの「よさんかバカ者ども!!!」
バングの一喝が響き渡る。途端に周囲が静まり返る。
「ワシらを信じて秘密を打ち明けてくれたキングの信頼を裏切るつもりか!!」
「えっ、秘密ってほどじゃ……」
「バ、バング先生……すみません……」
「良い。……ただ、冷静さを欠いて先走るような真似だけはするでないぞ……」
「「「「 はい!バング先生!! 」」」」
「「「「 すみませんでしたキングさん!! 」」」」
バングさんのお弟子さん達が気持ちの良い返事をする。……なんか解決しちゃったねぇ。
結婚してることをひけらかす気はないけど、隠すつもりもないよ俺……?
そうだ、俺がいま何をしているか説明しないとなぁ……。
自分が
しかし無情かな、悩む俺を置き去りにして時間の針は刻一刻と進んでいく。……その折だった。
『レイタロウ氏……私妊娠したかも』
全身で喜びを表現した。ヒャッハー!!
待ち望んでいた子供が生まれてくるんだから嬉しくないなんて言ったら嘘になるよぉ!……話の流れ的にボロス襲来の時が近づいて来ている最中での朗報だった。
閑話休題。
俺達の元に来てくれた新しい命を守るため、必ずやボロスを打ち倒さなければならなくなった。
そのためにシルバーファング、いやバングさんの肩を借りる形で道場で稽古に励んでいるんだ。かつて俺の弟子入りを断ったバングさんもニ度目の説得に根負けしてくれたようで、模擬戦程度なら構わないとOKを出してくれた。
そして、現在に至る。
「しかし、なるほどのぉ……。キングほどの男がワシなんぞにニ度も頭を下げるなどどういう事情があるのかと邪推しておったが、愛ゆえであったか……」
「そんな大したことじゃないさ。……人並みに幸せになりたいだけだよぉ」
……それにしても、バングさんのお弟子さん達ってこんな個性豊かだったっけ?
頭に鈴付けた娘とか、ベンパッツな人とか、体から電気垂れ流している人とか、俺と同じモヒカンヘアな人とか、ボクサーっぽい人とか、スゲェガタイの良い人とか、おデブな人とか、神経質そうな人とか、全てを見下してそうな人とか、トウガラシの臭いがキツい人とか、気弱なプロレスラーな人とか、老け顔短足な人とか、明らかに噛ませっぽい人とか、自分の力に溺れてそうな人とか、見るからにちゃらんぽらんな人とか―――……バリエーション豊富にもほどがある。
てかあのちゃらんぽらんってスイリューだよね?……何でこんなとこにいるんだよ……。一応本来のお弟子さんっぽい人もいるにはいるが、この個性の塊な人達と比べると人数が少ない。
「バングさん。彼らは……?」
「おぉそうじゃった!実を言うとワシの弟子じゃない者もそこそこ居てのぉ……」
バングさん、これはそこそことは言わねぇ。……見るからにヤベェのがこっちを睨んできてるしぃ!
一応見学しに来ているらしいが、どう考えても狙いは俺だよねたぶん。
……どうやらチャランコ君が
「……そういえばガロウ君は?」
「ガロウは今A市の学校に通っておる。……確か、高校二年生じゃったかのぉ……?」
へー、原作ではバイトしてたけど……あぁそういやまだ〝ヒーロー狩り〟してなかったなたぶん。
彼とは強化訓練で互いにぶつかり合う関係だ。今は何とか負けずにいるが、いずれは俺を超えるだろう気迫・凄味がある。……かつて怖く感じていたその成長性も今は頼もしく思うばかりだ。
願わくば俺の敵に回らないことを祈るのみ。
「シ、シルバーファング様!キング様!ジェノス様!お忙しいところ失礼いたします!ヒーロー協会の者です!」
うぇ?いつの間にいたのぉ?……そういや外にずっと気配を感じてたな。大方俺達の戦いの間に入れなかったってところかな?
「この度S級ヒーローに非常招集がかけられました!協会本部まで御足労願います!」
……………いよいよか…………。
「やれやれ……。チャランコ留守を頼むぞ」
「お気を付けて!」
「……サキ氏も協会本部に来なよぉ」
「えっ、良いの?」
「……むしろ来て欲しいんだ」
「……うん、良いよ」
「ジェノス、行こうか……!」
「っ!……はい!」
……………ボロスを相手に出し惜しみなんてしない。
……………本気で打ち倒してやる………!
……………だがそれは…………………………俺の〝死〟を意味するものだ。
……………それでも俺は……………。
<<< A市 ヒーロー協会本部 >>>
「おお!シルバーファング!お前は来ると思っていたぞ。
あとは期待の超大型ルーキージェノスと……」
「ふっ、キング……。もう
「悪い…冗談……だ。……アトミック侍……」
S級4位 アトミック侍
原子をも寸断し、その破壊力は戦術核にも匹敵するとされる無数の斬撃〝アトミック斬〟の使い手であるハイパーミラクル剣士。……そして、俺が苦手とする連中の一人でもある。
何かとつるんできては俺と戦えなんて言ってくるからコッチとしては本当に大迷惑なんだよぉ。その斬撃で俺を切り刻んでくるのか!?……な〜んて考えてたらマジで悪夢で出てきたくらい苦手なんだぁ……。
シルバーファングに諌められているが当人はキングから仕掛けてくる分には問題ないだろ?と言ってあっけらかんとしている。俺から仕掛けるワケないじゃんバカなのぉ?
「キ・ン・グ・ちゃ〜ん♡」
「げっ……!」
妖怪・エンジェル☆男、参☆上……じゃなかった。
S級17位 ぷりぷりプリズナー
原作でも十分人間離れしていたが、翼が生えたことでほぼ人間を辞めた強面オカマがこっちに寄ってきた。
俺の傍に近寄るなぁぁ!!
「あ!キングさーん!アナタも来てくださったんですね!キングさんが居てくれればもう怖いものなしです!」
S級5位 チャイルドエンペラー
ヒーローネームの件で協力し合った、いわば同志である。
あれから協会のほうでも色々あったらしく、以前とは比較にもならないぐらいに組織風土が良くなった。二人で抗議しに行った甲斐があったというもんだ。
それ以降ちょくちょく待ち合わせをしては甘いものを御馳走するぐらいに仲の良い関係を築けている。
……ハハ、俺も自分の子供を可愛がってやりたかったな。
「完璧なタンクトップの着こなしだ……!正にタンクトップキング………!」
S級15位 タンクトップマスター
この人は―――……良く分かんないや。確かにタンクトップは着ているけど、この人と真の意味で分かりあえはしないと思ってる。……良い人なんだけどねぇ。
「キングさん!今日も素晴らしい筋肉だ!!オレも負けないよう精進しなければ!!!」
S級11位 超合金クロビカリ
今日も筋肉が黒く輝いているねぇ……!こういう努力している人は結構好きだよ俺。筋肉は裏切らないからね絶対。クロビカリさんの意見を参考に特別メニューをこなすくらいには尊敬してるよマジで。
「よぉキング。
「……ありがとうございますゾンビマンさん。おかげさまでうちは至って平和ですよ」
S級8位 ゾンビマン
「ちょっとキング!!私には何もないワケ!?」
S級2位 戦慄のタツマキ
超自然的な攻撃で怪人を倒すアルティメット・エスパーであり、俺が一番苦手なヒーローだ……。
彼女の戦いぶりは神々の戦いに例えることができるほど凄まじく、たぶん俺と同等レベルに強いかもしれない異次元の実力者だ。……なんだけど、どういうワケか会うたびに滅茶苦茶メンドーな絡み方をしてくるため、アトミック侍以上に苦手意識を抱いているってワケ……。
「ちょっとキング!今スゴく失礼なこと考えてたでしょ!私には何でもお見通しなんだから洗いざらい白状なさい!それともちょっと捻じられたほうが良いかしら?」
「……そろそろ…席に…着こう。……時間…だ」
「あ……ちょっと!まだ話は終わってないわよ!」
「これこれタツマキ……オヌシもヒーローなら今回の非常招集のほうに意識を向けんか……」
「っ、フンッ!とっとと終わらせるから!」
「……ジェノス」
「……分かっています師匠。……ご武運を」
<<< S級ヒーロー集結 >>>
軍の一個師団に匹敵する戦力を有する最強の個人17名(S級1位とS級7位は欠席している)が一同に会するこの場はある種異様な雰囲気に包まれていた。
S級17位 ぷりぷりプリズナー
「(ジェノスちゃん……なんてイケメンなんだ!……っ、いけないいけない!俺には
S級16位 金属バット
「【鬼】でも【竜】でも俺はいけるぜぇ!」
S級15位 タンクトップマスター
「(タンクトップキングに負けぬよう、俺も更なるタンクトップの着こなしを追求せねば……!)」
S級14位 ジェノス
「(よほどの一大事なのか……殆どが出席している。
……師匠)」
S級13位 閃光のフラッシュ
「………………」
S級12位 番犬マン
「(誰か屁こいたな)」
S級11位 超合金クロビカリ
「(皆がオレの肉体を見ている!?オレがこの中で一番輝いている!?)」
S級10位 豚神
「」バク バク くっちゃ くっちゃ
S級9位 駆動騎士
「…………」ジ―――――――――……
S級8位 ゾンビマン
「(こいつら協調性なさそうだな。
……
S級7位 メタルナイト
<<< 欠席 >>>
S級6位 キング
<<< 欠席 >>>
S級5位 チャイルドエンペラー
「(あれ、キングさんさっきまで居たのに……?)」
S級4位 アトミック侍
「(キングの身のこなしに武の片鱗が垣間見えた。……さてはシルバーファングの仕業だな……)」
S級3位 シルバーファング
「んで、今回は何の集まりなんじゃ?」
S級2位 戦慄のタツマキ
「知らないわよ!こっちは二時間も待たされてるのにまだ何の説明もなしよ!……あとなんでキングがいないのよ!?」
S級1位 ブラスト
<<< 欠席 >>>
ジェノスが立ち上がり告げる。
「今さっきキング師匠から言伝を預かった。〝気になることがある。自分抜きで話を進めてもらって構わない〟…とのことだ」
「そ、そうか。了解した……。では始めるとしよう。
私は今回の説明役を任されたシッチという者だ。……早速本題に入らせていただこう」
<<< ヒーロー協会本部 屋上 >>>
「うん、君にしか頼めないんだ。よろしく頼むよぉ」ピッ
彼なら上手くやってくれるだろう。ようやく目の前の問題に集中できるとキングは不敵に笑う。
「始めるか―――……〝変身〟」
その瞬間、キングの肉体に劇的な変化が起こる。
骨が、筋肉が、皮膚が、急速に変質していく。
人という虚弱生命からの脱却、及び上位生命体への存在の書き換えが行われてゆく。
全身から蒸気が吹き上がる。
やがてその変化は見た目にも表れてきた。
全身の皮膚が黒く変色し鱗のように変化した。
背鰭のようなモヒカンは本物の背鰭のように鋭く硬質化し、
モヒカンだけではなく、体の節々からも眩いばかりの白銀の光が漏れ出る。
ズボンの上から尻尾が生成されてゆく。
……やがて変身は完了した。その姿はまるで―――……
「……◯ジラみたいだよな。やっぱ……」
『気』を回す。巷で言われてるキングエンジンを鳴り響かせる。
「……適当で良い、か。……壊すべきもの、壊してはいけないもの、それさえ選び抜ければ今はいい……」
「大丈夫、明確なイメージはジェノスが教えてくれた。巨大隕石破壊の時にね……」
「出来のいい弟子から学ぶことは多いねぇ……」
『気』が千切れんばかりに体内で加速する。……
「うふわわははははは!!我が名は天空王!!地上は我らのものだぁ!!!」
全身が白く発光する。……
「この天空王についてド
A市は白く染まった。
絶望に立ち向かう戦いの狼煙が上げられた瞬間である。
誰にとっての絶望ですかねぇ(ニチャァ……!)
今回もなるべく端的に纏めたいと思います。