上手く書けたと思いたいです……。
キング流気功術奥義炸裂の瞬間……!
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「(……この星の代表か。……測り知れないエネルギーを感じる。しかしまさか俺の名を知っていたとはな……。)まさか短時間でここまで来ようとは、ようこそ我が船へ……」
黒き侵入者、もとい〝最高〟のヒーローキングは、単眼の宇宙人ボロスを静かに見据えていた。
僅かな殺意も完全に隠蔽し、いつ仕掛けてくるかボロスの眼をもってしても判断しかねていた。
「(
どれだけ望んでも手に入れられなかった人生初の〝
生まれて初めて、ボロスは歓喜に打ち震えていた。
やはり予言などアテにならない。自分と対等どころか遥か上を征く圧倒的実力者を目の当たりにし、込み上げてくるのは〝絶望〟ではなく〝狂喜〟
「まさかこの辺境の星にまで俺の名が届いていたとはな。……戦う前に名を聞いておこう」
「俺は―――……レイタロウ。君を殺す者だ」
「……レイタロウ……!さぁ、俺の生に刺激を与えてくドゴッ
一瞬であった。レイタロウの左ストレートがボロスの胸部に炸裂する。
柱に激突し吐血するボロス。……想定以上の威力と痛みによろめきそうになる。
「(ここまで、ここまでとは……!)……強大すぎる俺のパワーを封印する役目を持つ鎧がいま砕かれた……!」
「…………そうか」
ボロスに急激な変化が訪れる。
体色が濃くなり、何よりその身から湧き上がるエネルギーの質と量が先程までとは比較にならないほどに高まっている。
だがしかし、雑魚では跡形もなく消し飛ぶであろう怒涛のエネルギーの奔流の中にいてもなお、レイタロウの身に何の変化ももたらせてはいなかった。
「(薄々分かってはいたが、直接叩かねばならないだろう……!!)」
ズズズズズ…
「ヌ…ゥゥウウウウ!!!!ゆくぞぉぉぉぉ!!!!」
ボロスは駆ける。
ここに、絶望に立ち向かう戦いが始まった。
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「……これで粗方片付いたか。……師匠」
ジェノスほかS級ヒーロー達や近場にいたA級以下のヒーロー達は総力を挙げて巨大飛行物体から落ちてくる怪人達の対処に当たっていた。
どういうワケかパラシュートもなしに生身で落下してくるためその殆どが落下死するワケだが、無数の怪人が落下してくるだけでも民間人にとっては脅威である。ゆえに地上に落下される前に無力化する必要があった。
ヒーロー達の活躍もあり、現在巨大飛行物体から落ちてくる怪人の数は明らかに目減りしていた。……全滅したか、あるいは恐れをなして留まっているのか。ジェノスは後者であると予想していた。
既に幾人かのS級は帰ってしまっている。……その時、駆動騎士にメタルナイトはお前の敵だと言われたのはあくまで余談だ。
それより気掛かりなことがある。
「(……師匠が〝変身〟せざるを得ないほどの脅威を地上に来させるワケにはいかない。……それは分かるが)」
現在、協会本部内では巨大飛行物体よりもキングが本当は怪人だったのかということが問題視されている。
ただでさえ人間離れした強さを誇るキングがヒーローを騙っていたとなればヒーロー協会全体を揺るがす大スキャンダルだ。巨大飛行物体を半壊に追い込んだ謎の衝撃波も含め、上層部はキングへの対応に大変頭を悩ませている。
「(師匠が怪人ならば、とっくの昔に人類は滅ぼされていただろうに。……協会の連中は師匠のヒーローとしての功績全てを否定するつもりか?……もしそうならば!)」
「ジェノスさん、少し良いかな?」
気付けばそこには同じS級のチャイルドエンペラー、アトミック侍、シルバーファング、戦慄のタツマキ、ぷりぷりプリズナー、タンクトップマスター、超合金クロビカリ、ゾンビマン等の主要なヒーロー達が勢揃いしていた。
「っ、チャイルドエンペラーか。……何の用だ」
「……ジェノスさんも僕達と同じことを考えているんじゃないかと思ってね」
「僕達……?まさか……!」
「っ!!これは……巨大飛行物体から!?」
凄まじい高エネルギーが上空で発生している。……比喩や誇張抜きに巨大飛行物体が悲鳴を上げているのだ。
見ればアトミック侍がその凄まじいほどの力の奔流を感じ取り冷や汗を流している。
「……道理で半壊
「あの巨大飛行物体……宇宙船の中で決着を着けるためにワザとあんな半端な状態に留めておいたってことか」
「……フンッ、なによ。結局全部私に任せても良かったことじゃない!」
「……ワシらがサポートに徹しているからこそ、キングは安心して強大な敵と戦うことができておるのじゃろう。キングにはキングなりの考えがある。……そうじゃろジェノス君?」
一斉に視線をジェノスに向ける一同。
「……当然だ。師匠はその強大な敵を倒した後、巨大飛行物体を根こそぎ消し飛ばすつもりでいる。……お前達も技名だけは聞いたことがあるはずだ」
「「「「 っっっ〜〜〜!!? 」」」」
まさか、そんな……死に瀕するほどの経験と恐怖にほぼ縁のないS級ヒーロー達に大きな動揺が広がる。
ジェノスのあまりに堂々とした態度で全てを察した。キングは噂のアレを放とうとしているのだ。
「俺達がすべきことはただ一つ、師匠の足を引っ張らないことだけだ」
これには流石のタツマキも押し黙るしかなかった。
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「オ"ォ"オォオオォォ!!!」ブ
「………」アッ
王の間にて死の嵐が吹き荒れる。
全宇宙の覇者が力の限り吼え、〝最高〟のヒーローがそれを受け流す。
動と静。……対照的である両者だが、その両者の間には埋め難い大きな壁が存在していた。
「オォオォオゴスッ……ガハッ!」
ボロスの神速の連打の僅かな隙間を縫うように叩き込まれるレイタロウの打撃。確実に急所へ叩き込まれるその打撃が、ボロスを着実に消耗させていた。
ボロス側の攻撃は尽く避けられるか受け流され、逆に防御は容易く突破され回避することは極めて困難。……長期戦は不利であると悟ったボロスの判断は早かった。
「オ"ォ!!」
「っ!」ドッ バァン
ボロスの力任せの殴打は容易く防がれる。……だが、ボロスはそのまま大きく腕を振りかぶり防御ごとレイタロウを遥か上へ吹き飛ばす。間髪入れずに飛び蹴りを叩き込み更に上……外を目指す。
「楽しい!楽しいぞレイタロウ!ここまで楽しい戦いは生まれて初めてだ!」
「……俺は全く楽しくない……」
む?と不思議に思うボロス。
「何故だ?それほどの力があるということはお前も俺と同じように退屈に苛まれていたはずだ。戦いのピンチや緊張感、高揚感に飢えていた俺達にとってこの瞬間こそが人生最良の瞬間なのだか―――……っ!!」
「俺は、人並みに幸せになりたかっただけだ」
ゾワッ「っ!?(空気が、変わった!?)」
「朝ご飯食べて筋トレして、好きな人と散歩して暇を潰して、夜お風呂入ってご飯食べて寝る。そんなどうでもよくて、かけがえのない一日を積み重ねていければ、俺はそれで良かったんだ」
レイタロウの纏うエネルギーの質が変わった。
ボロスの体が震えている。
「ふざけるなよなぁ……!君ら怪人が毎度毎度厄介事を起こすから、そんな何気ない一日を送れた覚えがねぇんだよぉ……!」
ボロスの体の震えが大きくなっていく。
「そんな時に君達が来た。……地球を滅ぼしに……!」
「ウオおォぉオおオォおオオォォォォォォレイタロウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」
恐怖。……ボロスは生まれて初めて誰かを恐れたのだ。
躊躇なく
「なら俺だって殺ってやるぅ……!もうとっくに死ぬ覚悟は出来てるんだよぉ……!」
「っっ〜〜〜、オ"オ"ッッ!!」
肉骨粉と化す自らの肉体をムリヤリ繋ぎ合わせ、続けざまに全エネルギーを集束させていく。
レイタロウを滅ぼすために、もはや出し惜しみはしない。
「認めてやるレイタロウ……!俺をここまで恐れさせた男はお前が初めてだ!!ゆえに!!このボロスの命すら度外視した〝必殺〟によってこの星もろとも消し飛ばしてくれる!!!」
ボロスの命を対価とした滅びの極光が、レイタロウを飲み込んでいき―――……
「恐怖を抱いていたのが自分だけだと思っていたのか?君の対策は〝適応〟で既に完了しているんだよ……!」
逆に、極光を
「(………………は?)」
ボロスは崩星咆哮砲を放ちながら呆然としていた。
自慢の必殺技が吸収されていくばかりか、自分のエネルギーを取り込んでいくごとにレイタロウのエネルギー総量がネズミ算式に増えていくのを肌で感じる。
……やがて、極光が途切れた。
「(…………クソッ…………)」
もはや笑うしかない。
そこには―――……
「〝神〟って奴がいるのなら……」
「……そういやいたな」
「ソイツに言っといてくれ……」
「放っとけってなぁ!!」
激怒する王が自身に正義の鉄槌を振るう姿があった。
そこでボロスの意識は永遠に途絶えることとなる。
<<< ??? >>>
『ここは……?』
「……ここはいわば精神が交わる場。俺は便宜上〝夢空間〟って呼んでる。」
『っ!……レイタロウ?』
「……招いたワケでもないのに来られたなんて、やっぱり君は凄いよ……ボロス」
『……そうか、俺は……』
「……相手が俺で悪かったねぇ……」
『まさか、不満などあるはずがない。……だが、お前には申し訳なく思っている』
「………」
『俺は全力を出して戦えたが、
「……買い被り過ぎだよぉ。俺だって全力を尽くしたさぁ。……そういう意味では君は紛れもなく
『っ』
「誇れ、君は強い」
『っ……何だ、コレは……』
「……さあね」
まさかジェノス以外に誰かがここに入ってくるなんてね。
ボロスは完全に殺した。ボロス
この状況に持っていくために相当苦労したよ。
バングさんとの稽古で必死になって流水岩砕拳を見て盗んだり、夢空間の中でジェノスと二人三脚で『気』の精密操作を編み出したり、ボロスに先制攻撃を浴びせ俺の『気』も一緒に流し込んでボロスのエネルギーへの〝適応〟*1を進めたり、ボロスに崩星咆哮砲を使わせるためにどうにかこうにか立ち回ったりと、も〜大変だった。
ボロスだけはこの手で直接殺さねば安心できなかったためにこんな回りくどい方法を選んだが、結果オーライって奴だな。っと、どうやら宇宙船が落っこちているようだ。
多分動力球が壊れちゃったんだろう。ボロスにトドメを刺す際、衝撃を全てボロスのみに集中させていたから、たぶんそれ以前の戦闘の余波を受けてのことだと思う。
それはさておきヒーローとしての最後の大仕事だ!
即座に瞬間移動する。目的地は宇宙船の真下だ。
<<< A市 >>>
「落ちてくる……!!」
巨大飛行物体の上でとんでもない衝撃波が起こって間もなく、突如として力をなくしたように巨大飛行物体が落下し始めた。
A市には大勢の民間人がいる。事態は解決したものとばかり思い込み、避難し損ねた者が殆どだ。……このまま落ちてくれば民間人はおろか、A市が壊滅してしまうだろう。
「皆、早く逃げるんだ!!」
声のするほうを見れば、さきのJ市の海人族騒動を解決させたヒーローである無免ライダーが必死になって避難誘導を行っていた。
J市の英雄と呼ばれる彼でもこればかりはどうしようもないと周囲に諦めの感情が伝播する。
「ハジメ君……私が守るから……!」
「カオリさん……」
クラスメイトにして〝二大女神〟と呼ばれる少女が手を掴みそう宣言する。……その手は汗で濡れていた。
女の子にこんなことを言わせるなんて僕はそれでも男か!と少年は奮い立ち、何とか励まそうと声をかける。
「カオリさん、まだ諦めちゃ―――……!!?」
突如響き渡る爆裂音。聞き覚えがある。ありすぎる。
少し前、A市を襲った
〝最高〟のヒーローが駆けつけた合図だ。
「っ!!キングさ、ん……?」
言葉が、続かなかった。……群衆の中心に立つソレは、キングによく似た人型の怪獣……みたいな存在だった。
黒い体が白く発光する。
長い尻尾の先端から光の靄が発される。
これから起こる何かのカウントダウンだと確信する。
「っ、正義の自転車乗り、無免ライダー参上!
怪人!お前の好きには、させ、ない………?」
この極限状況下でふと気付いたことがある。
あの怪人、
地上よりも上空、巨大飛行物体のみに意識を向けているようだった。
「なんとか間に合ったようだ!お前達、あのヒーローは
気付けばS級のジェノスが駆け付け、そんなことを口走った。ほかの名だたるS級ヒーローも後から続々と来た。
皆大急ぎで駆け付けてくれたようだ。
「皆すぐに伏せるんだ!急げ!!」
「っ、ハジメ君!!」
「う、うん!」
どうしても目を離すことができなかった。
キングが何をしようとしているのか思い至ったから。
それは〝キング流気功術奥義〟
「(煉獄無双爆熱波動砲……!!)」
A市の地上から上空に向けて一筋の光の柱が立った。
光の柱は巨大飛行物体を飲み込み
絶望に立ち向かう戦いの
やっと出ました煉獄無双爆熱波動砲。
……巷でそう呼ばれているだけで本人は特に名前なんかは決めていないそうですよ?
次回で十王目は終わりです。