ワンパンマン:REY【完結】   作:びよんど

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キングと呼ばれる男は憂鬱になるって話です。

ボロス戦後のいざこざです。


怪人協会編
十一王目 王の憂鬱


 

 

やべぇ、ヒーロー辞められない……!

 

宇宙船、というかボロスの一件が終わってから怒涛の勢いで様々なことがあった。

 

まずは俺の処遇について。……結論から言うと、俺の怪人のような姿は変身能力としてヒーロー協会に認められ、改めて正式にプロヒーローに任命された。人権は剥奪されるどころか協会の名のもとに保障され、引き続きいつも通りの生活が送れる、とのこと。

 

……いつも通りと言うのは語弊だな。変わってしまったことのほうが多い。

 

まず一つ、巷で言われている〝煉獄無双爆熱波動砲〟によって宇宙船を月ごと破壊し、その後破壊した月に代わる新たな月を創造したことで、A市の人々から現人神の如く敬われる結果となってしまった。

 

 

『キング万歳!キング万歳!!』

 

『キング()こそ人類をお救いするために降臨なさった存在なのですね……!』

 

『月が元通りになってる!スゲー!!』

 

『A市や私達が無事なのもキングが一人で巨悪に立ち向かっていたからなのね!』

 

『アマイマスク様がお認めになったということはキングは紛れもないヒーローなのよ!』

 

『待つんだ皆!()()は俺達を騙して……』

 

『よく見たら変身したキングもメッチャカッコよかったよな!?』

 

『ありがとー!キング愛してるー!!』

 

『この街を守ってくれてありがとー!!!』

 

 

受け入れられないと思っていた。……だから今まで隠し通してきたんだ。怪人のような姿を。

 

どれだけ輝かしい功績を積もうが怪人となっただけで全てが無に帰すのがこの世界だ。俺もそうなるだろうと思っていただけに、ヒーローとして認められた時はひたすら驚いたんだよなぁ。

 

……後で聞いた話だが、S級以下の殆どのヒーローがキングをヒーローとして認めるべきという連名の嘆願書を協会に送りつけたのだという。

 

キングの手を借りることで更なる高みに至れた恩をここで返そうということになったらしい。改めてビュウト君やほかのヒーロー達に感謝だなぁ。

 

しかし、ヒーロー協会の名のもとに人権が保障される。これは言い方を変えればヒーロー協会の所属から外れた瞬間人扱いされなくなるということだ。

 

やべぇよぉ。もうヒーロー辞められないじゃん……。

 

そんなことを思いながら俺はイサム君のラボに急ぐ。新たなルーティーンとなりつつある作業のために。

 

 

<<< Y市 チャイルドエンペラーのラボ >>>

 

 

「やぁ、来たよイサム君」

 

「キングさん!いつもありがとうございます!早速あちらで始めていただけると……」

 

 

イサム君が満面の笑みで迎え入れてくれる。そこに含むところは何もない。……嬉しく思うけど、この後〝強化訓練〟があるから時間をかけてはいられないんだよなぁ。ごめんねぇ。

 

……俺がこれからやろうとしていること、これが一番問題視されたことだ。

 

月を創り終えた直後、協会本部に呼び出され幹部の皆さんの前で諸々の事情説明をすることとなった。

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

『キング、単刀直入に聞こう。……月をどのように元に戻したんだ?』

 

『シッチさん…俺は……元に…戻しては…いない』

 

『え……?』

 

『既存の…月に代わる…新たな…月を……創ったんだ』

 

『『『『 ええええええええええ!!? 』』』』

 

 

後から思ったよ。

 

元に戻したことにしておけば良かったと。

 

そこからは怒涛の質問責めだ。……どうやって月を創ったんだ、地球への影響は、キング自身の体調に問題はないのか、ほかにも何か創れるのか等々、色んな質問が矢継ぎ早に飛んできた。

 

嘘は許さない、そんな鬼気迫る雰囲気に押されて『気』や〝適応〟について話すことにした。

 

幹部の皆さんはそれはもう唖然としていたが、その中の一人……マッコイさんが、論より証拠ここで実演してもらったほうがいいと言って何か適当なモノを創るよう要求してきた。

 

俺を見つめる幹部の皆さん。視線に耐えきれない俺。

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

要求通り適当に創ってみた結果、どこか見覚えのある()()()()()()()()()()が出来上がった。……その球体を創った直後に突然メタルナイト(機械ボディ)が乱入してきたのだ。

 

 

『キング、ソノ球体ハコチラデ回収サセテ貰ウ』

 

 

どうやら全部盗み聞きしていたらしい。

 

幹部の皆さんはこの場に乱入し勝手なことを言うメタルナイトへ非難の言葉を浴びせていたが、当の本人はどこ吹く風だ。

 

 

『オ前ニトッテ悪イ話デハナイ。……俺ハキングヲヒーロート認メヨウ。後デ俺ノ名前デ嘆願書ヲ送ラセテ貰ウ』

 

『自分勝手で有名な()()メタルナイトが……?』ヒソヒソ

 

『キングとは殆ど面識はないはずなのに……?』ヒソヒソ

 

 

そんなどよめきが聞こえてきたが、俺としては誰であろうと味方に回ってくれるだけで有り難かったため、その球体はメタルナイトに譲り渡すことにした。

 

……やろうと思えばいくらでも創り出せるしねぇ。

 

 

『後デ見合ウダケノ謝礼モ送ラセテ貰ウ。……一ツ答エロ。コレハアノ巨大飛行物体ニアッタ物質デ間違イナイカ?』

 

『ん?……あぁ恐らくそうだ』

 

『……ソウカ。コレデ俺ハ失礼スル』

 

 

勝手に来て勝手に帰ってった。掴みどころがなさ過ぎるぜボフォイ博士ェ……。

 

……新たに浮上した全く別の問題で幹部の皆さんの頭を悩ませてしまったが、メタルナイトと入れ替わるように現れたチャイルドエンペラーことイサム君が助け舟を出してくれた。

 

 

『皆さん、ここは一つ僕に任せてもらえますか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いつ見ても壮観ですね、キングさん……!」

 

ハァ…ハァ……づがれ"だ……!

ん?……あぁ、我ながら凄い量だねぇ……」

 

 

マジで疲れたぁ!……この後強化訓練があるってマ?

 

ラボの一角……比較的広いこの場所に()()()()()()()()()()()()()()()()()()が積み重なっている。

 

一応断っておくが、宇宙船は残骸を回収する間もなく俺が跡形もなく蒸発させた。この鉱物の山は俺が『気』を物質に変換して創り出したものであり、オリジナルと何ら遜色ない完成度を誇る。

 

何でこんなことをしているのかって?……イサム君が提案してきたんだよ。その力を今いるヒーロー達と、これからヒーローになる人達のために使いましょうってね……。

 

要は宇宙船の未知の技術を取り込んでヒーロー達の戦力強化を図ろうって話だ。実際にいま試作段階の武器を一部のヒーローに配ってその性能を確かめているらしく、反応は上々らしい。

 

……これ完全にヒーローのやることじゃないよね!?

 

いやまぁ中々断りづらい立場になっちゃったからよほどのことがない限り協力するけども!

 

 

「今日の分は以上です!お疲れ様でした!」

 

「うん、どーもねぇ。んじゃ俺はこれで……」

 

「あの!キングさん。……本当に、ありがとうございました。これでヒーローの皆さんもますます活躍しやすくなると思います。……キングさんが繋いできた縁をより強固なものにできると思うと、僕も嬉しいです!」

 

「……イサム君、俺がヒーローの皆にしてあげたことはそう大したことじゃないよ。大体皆、俺のことを過大評価し過ぎなんだよぉ。自分の良さに気づけたタイミングがたまたま俺とぶつかり稽古をしている時だっただけなんだからさぁ

 

「っ、キングさん………!」

 

「っと、時間だ。俺はそろそろ行くよ、じゃあねぇ」パッ

 

「あ……行っちゃった。……凄いなぁ、キングさんの瞬間移動。僕も負けないように頑張らないと!

……あ!!大事なモノを渡しそびれちゃった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<<< M市 >>>

 

 

「(今日はタンクトッパーの面々が目立っていたなぁ。初日よりだいぶ人数は減っていたけど皆いい顔してたし、なんだかんだ言いつつ彼らもヒーローなんだよなぁ)」

 

 

昼の部の強化訓練が終了し、キングは現在M市街を散策(パトロール)していた。無論顔が判別されない程度に変装した上で。

 

キングの変身能力は瞬く間に噂として広まり、いつしかSSK(スーパースパーキングキング)モードと呼ばれるようになっていた。……良くも悪くも更に有名になってしまったために顔を隠さなければならなくなったワケだ。

 

 

「(……SSK、か。あながち間違っているとも言い切れないのが辛いところなんだよねぇ。……ん?アレって……)」

 

「ギュハハハハハハ!爬虫類を愛するあまり爬虫類に変異したシタノビール様の登場だぁあ!お前ら!俺の子を産めぇえ!」

 

 

災害レベル【狼】 シタノビール

 

 

「なんだコイツ!大の男5人がかりでも手に負えないぞ!」

 

「怪人だ!逃げろォ!!」

 

「わぁぁぁ!!」

 

「キャァァァ!!」

 

「ギャハハハハハハ!娘っこは一人も逃さないよぉお!ん〜レロレロレロ!!!」

 

 

キュルルルルルルッ

 

 

「イヤアアアアアア!」

 

「レロレドッドッドッドッドッドッ

 

「うわビックリした!!な、なんだぁてめぇはぁあ!?」

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

「(なんだ、この雰囲気は……!?)」

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

「(この顔……………!!)」

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

「(キ、キング………!!?)」

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

「(お、俺はなんてバカなことをしちまったんだ……!爬虫類が好きだからって、人様に迷惑をかけていい理由にはならないと分かってたのに………!)」

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

「(ご、ごめんなさい!ごめんなさい!!俺もう一度やり直したいです!!!怪人じゃない、人として……!)」

 

 

ドッドッドッ……

 

 

「へ……?お、俺は一体……?」

 

「お、おい……アイツなんかおかしくないか……?」

 

「人に、戻ったのか……?」

 

「ねぇ、それより……」

 

「あぁ、あの人、いや、あのヒーローは……!」

 

「「「「 キング!!!! 」」」」

 

「(……時々あるんだよな、キングエンジンを聴かせると怪人から人に戻っちゃうパターン……。まぁ分からなくもないよ?心次第で人が怪人になるのなら、同じように心次第で怪人が人に戻ることだって十分あり得る。……あぁ、だからなのか、たまに怪人すら救う優しすぎる男なんて呼ばれちゃうのは……)」

 

「うわぁぁぁスゲェェェ!!何もせずにキングさんが怪人を人に戻した!!」

 

「キングエンジンの選別を受けたんだ、当然の帰結だよ全く……!」

 

「キングさん、殺っちゃってください!!」

 

「レロレロほざきやがってこの変態が……!」

 

「キング万歳!」

 

「「「「 キング!キング! 」」」」

 

「ひぃぃ!?」

 

 

流石に目の前の元・シタノビールが可哀想に思えてきたキング。彼がやったことと言えば、大の男5人を引きずり回し、女の子に舌を伸ばした(未遂)程度だ。

 

キングは考える。……一度怪人になった以上、かなり際どいが更生の余地は与えるべきだろうと。自分が良くて彼がダメなんてことはないはずだ。

 

 

「……ヒーロー協会に…連絡する。協会関係者か…ヒーローが来たら…彼らの指示に……素直に従うんだ。……分かったか?」

 

「キ、キングさん。……お、俺いったいどうなっちゃうんですか……?」

 

「すぐ殺される……なんてことはないはず。……くれぐれも…逃げようなんて真似……するなよ?」

 

 

首がもげるんじゃね?ってくらい頭を縦に振る彼を横目に見ながら協会に一報を入れようと小型端末を取り出す。怖がらせすぎたことを内心謝りながら。

 

その時だった、見覚えのある反応が近付いてきていることに気が付くキング。

 

 

「師匠」

 

「……ジェノスか。ってことは……」

 

「はい、既に協会には連絡済みです。……お疲れ様でした師匠」

 

「ハハ……キングエンジン鳴り響かせていただけなんだけどね」

 

「……いつもこのようなことが?」

 

「?……あぁいやいや……。こういうのは本当に珍しいほうなんだよ。殆どが自滅しちゃうからさ……」チラッ

 

「お、おい……!」

 

「マジかよ……!」

 

「S級のジェノスだわ……!」

 

「嘘……!サイン貰えるかな……?」

 

「俺聞いたことある……!確かあの二人って師弟関係なんだよ……!」

 

「俺も!キングさんがジェノスをヒーローに勧誘したって……!」

 

「スゲー……!キングは見る目も最強かよ……!」

 

「ハァ…ここは落ち着かないな。場所を移そうかジェノス」

 

「はい、そうしまズシンッッ

 

 

ガシャッ……

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

『我が名はG4。〝組織〟によって作られた機神なり。〝最高〟のヒーローキングだな。貴様を抹殺する!!』

 

 

災害レベル【鬼】 機神G4

 

 

「きゃああああああ!怪人よぉぉぉぉ!!」

 

「うわーっ!」

 

「ぁあああ子供が危ない!」

 

「って、ここにキングとジェノスがいるじゃん!」

 

「じゃあ大丈夫じゃん!」

 

「キング〜!やっつけろ〜〜〜!」

 

 

わぁぁぁぁぁ!!!

 

 

「(……そういえばこういうの居たねぇ。……やっつけるにしてもここは人が多過ぎるし……)」

 

「師匠、ここは俺が……」

 

『これは我の戦闘AIの性能テストでもある!キング以外のヒーローを殺してもデータは得られぬ!全力で戦え!』

 

「……条件がある。……ここにいる人達は…見逃してもらう。……そうすれば…相手をしよう…」

 

『………よかろう』

 

「師匠、宜しいのですか?師匠であれば問題ないでしょうが、敵にみすみす情報を与えることになります……」

 

「なに、機械相手の対処の仕方は心得ているさ。……それより君には民間人の避難と……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉキング。……今日こそ狩るぜぇ……!」

 

「……()()()()()()()()()()()()()()ガロウ君の相手をお願いしたいんだ」

 

「っ!!!……了解しました……!おい貴様、いい加減しつこいぞ……!これで99回目になるが全く懲りていないようだな

 

「ハッ!金魚の糞に用はねぇ!俺の敵足りうる奴はキング唯一人……!!キングに勝つことで!俺は正真正銘の〝絶対悪〟となる!!」

 

「不可能だ。何故なら貴様はここで俺に焼却されるからだ……!」

 

「いや、焼却しちゃダメだからね?」

 

「やってみやがれガラクタサイボーグ!!」

 

「貴様を焼却する。そこを動くな……!!」

 

「(ダ〜メだこりゃ、人の話全く聞かねぇ)」

 

 

……地味にイヤな問題が一つ残っていたことを思い出し溜息をつくキング。

 

ボロス戦以降、どういうワケかガロウが強化訓練外でもキングに襲いかかるようになってしまったのだ。襲いかかられても適当にぶっ飛ばして放置を繰り返している内に気付けば映えある99回目。……もはや狂気を感じる。

 

前方の怪人(機神G4)、後方の人間怪人(ガロウ君)―――……

 

 

「(……アイコ先生の苦労が目に浮かぶなぁ。……はぁ、憂鬱だぁ……)」

 




ガロウ君は、ヒーロー狩りから()()()狩りへのジョブチェンジを果たしましたとさ。

次回、混迷を極めると思います。
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