キングと呼ばれる男が
<<< M市 中央公園付近 >>>
「(思わぬ邪魔が入っちまったが、これはこれで好都合だ!)……S級ジェノス!予定にはなかったがテメェを狩るぜ……!」
「(民間人はいまだ避難しきれていない。派手に暴れるワケにはいかないな……。)……ガロウ、オイタがすぎたな。俺は師匠のように容赦はしない……!」
両雄は睨み合う。互いの僅かな隙も見逃さぬように。
凄まじい集中力、停止した世界、ギリギリの均衡を崩したのは……ガロウであった。
「シィィィ!」
目にも止まらぬスピードで一気にジェノスの懐に潜り込むと、勢いそのままに強烈な掌底を叩き込む。が、
「っ、ヤバ……!!」
勢いそのままに突進したことで思わぬ隙を晒したガロウ。たまらず後方に下がるが、それを許すジェノスではない。
「(っ、野郎ォここでぶっ放すつもりか!……っ!?まずい!
「焼却」
「クソッ!流水岩―――……」
自分の真後ろにいる民間人を
ジェノスの情報については、クラスメイトのオタクの青年が持つヒーロー名鑑である程度把握している。
あの構えは焼却砲。当たれば致命傷は免れない。ゆえに当たらないよう立ち回るか、そもそも撃たせないか。
永遠に感じられる一瞬の思考の中でガロウは後者を選択し、即座に技を切り替える。
「旋風鉄斬「マシンガンブロー!!」
その無慈悲なる連打に反応できたのは奇跡に等しかった。咄嗟に流水岩砕拳を展開して必死に受け流していくが、いくつかマトモに食らい、思わず悶絶する。
致命の隙を晒すガロウにジェノスの雷を纏った拳が迫る。
「終わりだ。ハイボルテージフィスト」
「絡み渦巻……テメェがなッ!」
ジェノスの右ストレートに合わせるように左腕を絡みつかせる。そこからの全身を使っての右腕を破壊する一連の流れはまさしく流水の如く淀みがなかった。
「昔から精密機械の扱いは得意なんだよ!
主にぶっ壊すのはガッ
言葉が続かなかった。もぎ取ったはずの右腕が独りでにガロウの頸動脈を締め上げ窒息させようとしているからだ。
「ク、ソが………!」
「……言ったはずだ」
必死に引き剥がそうとするがびくともしない。そうこうしている内に右腕が急に光り出した。
「ショックウェーブ」
「カハ………ッ」
「俺を倒すのは不可能だとな。貴様が強いことは認める。
……だが、俺はもっと強い」
地に伏すガロウ、天を仰ぎ見るジェノス。どちらが勝者であるか明白であった。
「……とはいえ時間をかけすぎた。師匠であれば問題はないだろうが何もせず、なんてできようはずもない。とりあえずガロウを捕縛してそれから……」
即座にガロウの傍から離れるジェノス。……直後、ジェノスのいた場所とガロウとの間に嵐が吹き荒れる。
「っ、これは……!!」
「……フブキ組
ヒーロー協会に所属するヒーローグループの中でも、
地獄のフブキのすぐ傍に控えている
彼らの顔はジェノスも把握している。
フブキ組だけではない。……ここ最近のヒーロー達の急激なレベルアップに伴って、ヒーローに求められる強さの水準や勢力図が大きく激変する事態となっているのだ。
特に顕著なのが目の前にいるフブキ組で、この一ヶ月足らずの間に30人以上はいた構成員が、今やリーダー含めたったの5人しかいなくなってしまったが、その5人で挙げる怪人討伐成績が以前とは比べものにならないほど良くなっていたのだ。
代表的なものはやはりフブキ組による災害レベル【竜】相当の怪人の討伐だろう。よほど相性が良かったことを抜きに見ても戦慄のタツマキが出張らなければならないほどの脅威をS級ではないヒーロー5人が討伐した意味は計り知れない。
「(……全員本物の実力者だ。)……地獄のフブキ。その男はキング師匠の正義執行を幾度となく妨げてきた不穏分子だ。これ以上師匠の邪魔にならぬよう念入りに無力化する必要がある。……すぐこちらに引き渡してもらおう」
「お断りよ」
「何……?」
「ガロウがフブキ組の一員であることは間違いないわ。でも彼はヒーローでも怪人でもない一般人よ。
「……本気か?」
「そっちこそ、これ以上の手出しはヒーローとしての品位に関わるわよ?あなたの師匠の顔に泥を塗りたいのなら話は別だけど」
空間が軋んでいると錯覚するほどの威圧、プレッシャーがジェノスと地獄のフブキ両名から発せられる。……取り乱してはいないものの、思わず気圧されそうになるフブキ組の面々。
一触即発。この地獄のような状況を破ったのは―――……
「あばッふッ!!!」
……
「「「「「「 えっ……? 」」」」」」
降ってきた男は完全に気絶しているようで起きる気配がない。一瞬何が起きたのか理解できなかったが、男が降ってきた方向から近づいてくる
「あれぇ?……フブキ組の皆さん?……どういう状況なのこれぇ……?」
「「「「「 キング!? 」」」」」
「……師匠でしたか。すみません、話せば少し長くなるのですが……」
「……あー、えーと……。俺も話せば少し長くなっちゃうけど……良い?」
『我と貴様以外誰もいなくなった。さぁ我と戦え!』
『どうシた!今更怖気づイたカ!!』ピキッ パキッ
『dドシタた!イイマsらオじげづイタKAAAAA!!』ビキッ パキッ バギッ ベキッ
『dddddddddddddddddd―――――――――』ドバンッ!
「……………ふぅ、どうにかなったぜぇ……」
キングエンジンの爆裂音を一極集中して機神G4の体内部の本体に浸透させて破壊する作戦大成功だぁ!
本来ならジェノスが戦っていたであろう相手を横取りする形となってしまったが、奴さんが俺を指名してきたんだ。文句はないだろうたぶん。
……ボロスとのタイマンに勝ったとはいえ、いまだこのクソったれな世界にはとんでもない脅威がひしめいている。とてもじゃないが滅多なことがない限り底力など見せられるはずもないんだ。
いやしかし、キングエンジンだけで倒せて良かったよぉ。
大量の手裏剣が俺に殺到してくる。防ぐでもなく避けるでもなく、殴って跡形もなく破壊していく。
やがて手裏剣の弾幕がなくなってくると、俺に攻撃を仕掛けてきた張本人がやっと姿を現した。
「……ふっ、こうでなくては張り合いがない……!待たせたなキング!!この俺!音速のソニックが戻って来たぞ!!!」
……俺の殺気を一身に浴びて気絶した奴とは思えないほどに自信に満ちあふれた姿だ。でも最初会った時より強くなっているのが肌で感じられる。
割とついさっきまで本気で忘れていたが、コイツもコイツでかなり厄介な存在だったと思い返す。
「……そうか…戻って来たのか……」
「そうだ!貴様に敗れて以来、俺は死に物狂いで鍛錬に明け暮れ、遂には貴様を超える強さを身に付けた!!」
ソニックの体がブレ始め、やがて十人に分身した。
「前回までの俺のことは忘れていいぞ」
「(ゴメン、忘れてたわ)」
「これこそ俺の
究極奥義 十影葬!!」
分身したソニックが一斉に俺に刃を向ける。
「死ねぇぇぇ!!キングぅぅぅ!!!」
……全方位からの同時攻撃に対処するには、やっぱこの技が一番だな。
「……マジ錐揉み回転」
体を回転させただけでちょっとした竜巻を引き起こし、その衝撃だけでソニックを分身ごとぶっ飛ばした。
「あばッふッ!!!」
なんつー声出してんだよ。……あ、ぶっ飛ばし過ぎた。
「……とまぁ、ぶっ飛ばした先に人でもいたら大変だと思って駆け付けてみたら君達がいたってワケ」
「そうでしたか。俺がいればまとめて焼却していたのですが……」
「いやダメだからね人を焼却しちゃ。……んで、そこにいるフブキ組の皆さんは……?」
「奴らは……」
「キング!!!ここで会ったが百年目!!かつての部下達の無念、ここで晴らさせてもらうわ!!」
のわっ、びっくりした〜!
もう急に大きな声出さないでよぉ……。
「っ……そう、そっちがその気なら……!」
辺り一帯の小石やら砂利が浮かび上がる。って、待って待って!!俺別に臨戦体勢に入ってるワケじゃないから!
「地獄嵐!!」
「焼却」
もう止まらないって感じだぁ……!こうなったら全員まとめてぶん殴って気絶させるか?
「ガロウ君!?アナタ達は何をやっているんですか!!」
……ガロウ君のクラスの担任にして見た目こど……もとい、幼気な雰囲気を漂わせる
アイコ先生は、この場の状況を見て即座に何が起きたのか理解したらしく、顔色がみるみるうちに青褪めていく。
「アイコ先生……。お疲れ様です……」
「キ、キングさん……。こ、この度は誠に申しワケ……!」
最後まで言わなくて良いですよぉ……。先生が悪いワケじゃないのは分かっていますから……。
「その時俺は思ったんだ。『世の中に必要なのは不平等な正義ではない、平等な絶対悪だ』と……。キングが見せた真の姿……SSKモードと言ったか。ヒーローでは成しえない平等な恐怖による真の平和……キングの背中に俺は自分の理想を垣間見た!……だからこそ許せなかった……!キングという存在に自分勝手な希望を抱き、それを押し付けてくる愚民ども!……その現実を許容し、愚民どもの奴隷として虐げられる道を選んだキング!!……全て否定してやる……!キングに成り代わり、キングが必死になって守ってきたこんな不完全な偽物の平和は俺が否定してやると……そう心に決めたんだ……!誰よりも強く!どんな正義も存在を覆すことのできない〝絶対悪〟になることでな!!!」
「……それがテスト期間中に学校を抜け出した言い訳かぁ?君、反省してる?」
「師匠、今からでも遅くありません。コイツは即刻焼却しましょう」
「す、すみません!本当にすみません!!ガロウ君はこの通りしっかり反省していますから!
どうかここは穏便に……!」
「ちゃんと謝らんかいバカもんが!」
ゴン☆「あでッ」
……ここ最近の俺の日常はいつもこんな感じだ。
学校を抜け出したガロウ君が俺に襲いかかり、俺がぶっ飛ばして、担任のアイコ先生が怒れるバングさんを伴って謝罪とともにガロウ君を回収していく。
アイコ先生が可哀想でならないけど、ここはキチンと対策をしてもらわないと俺もだがジェノスやバングさんもヒーロー業が成り立たなくなる。
今回は初めてジェノスと戦わせてみたが、どうにか丸く収まったのが奇跡としか言いようがないほどにガロウ君は追い詰められていた。フブキ組の皆さんには感謝しかない。
そのフブキ組の皆さんはソニックの身柄を差し上げたことですんなり引き下がってくれた。……臭蓋獄(ぷりぷり地獄とも言う)から脱獄したS級賞金首の賞金だ。決して安くはないだろう。
「キング!変身して俺と戦え!!そうすりゃ俺は真の〝絶対悪〟に成れんだよ!!」
「そうホイホイと変身してたまるか。……っていうかやっぱりそれが目的かぁ……」
「俺は天才だからな!もう一度見りゃ完全にモノにできらァ!!」
「……師匠、離れていて下さい。今からこのクズを焼却します」
「まぁ待って。……ガロウ君、変身してもいい。但し一つ条件がある」
「あぁ?条件だぁ?」
「テストの全科目で合計450点以上取るんだ。……それを達成出来たら変身した上で本気で戦うことを約束するよ」
「っ!!」
「ホッ、こりゃまた……」
「そ、そんな無茶です!ただでさえロクに授業を受けていないガロウ君がそんな好成績を取れるはずが……」
「……やってやるぜ……!キング!言質は取ったからな!後でなかったことにしたら承知しねぇぞ!!」
「二言はない。天才のガロウ君に出来ればの話だけどね?」
「っ〜〜〜!!……へっ、勉強くれ〜すぐに片付けてやらァ!!」
……行ったか。ジェノスにボコボコにされたのに元気なもんだ。若いってのはいいねぇ。
「あっ……ガロウ君行っちゃった……。その、キングさん。……ありがとうございました。そして、ごめんなさい……。本来なら教師である私がガロウ君の面倒を見なければならないはずなのに……私、教師失格です……」
「……ガロウ君だって、アイコ先生の真っ直ぐさに何も思わないワケじゃないと思いますよ」
「へっ?」
「ヒーローにも同じことが言えますが、99人の命を救えたとしても一人の命を救えなかったら意味のないものになってしまう、もとい、
「……されて、しまう……」
「言い方は悪いですが、アイコ先生はこの対極にあると思います。……全員を救うことは出来なくとも、手の届く範囲にいる誰かを命懸けで救うことができる。……俺には出来ないことです」
「私が……?」
「すみません、結局何が言いたいかというと……今のアイコ先生は自分を追い詰め過ぎて本来の自分の良さを見失いかけているように見えたんです」
「そんな、私は……!」
「……勿論、責任を持って真面目に教師としての自分と向き合い続けていることはアイコ先生の美徳の一つです。どうでしょう、たまには学校とはそんなに関係のない俺達に悩みを打ち明けてみるというのは?」
「っ!?」
「話しづらいこともあるでしょうし、今は男連中しかいませんが、アイコ先生が良ければ……」
「……………………………っ!? (////////)……ま、まずはお友達からということでよろしいでひょうか!?」
「え?……あぁはい。大丈夫ですよ……?」
何か急に顔が赤くなったな、風邪か?……ガロウ君のことでこれからも苦労するであろう彼女を放っておけなかったから三人でメンタルケアをしようって話だったんだけど?
……しかし友達か。こんなコミュ障な俺にもビュウト君みたいな友達がまた出来るだなんてなぁ……。
人生何があるか分かんないな。
……というワケで超問題児・ガロウ君に手を焼かされるアイコ先生でした。
今更ながら言っておくと、キングは既婚者です。
ここから本格的に怪人協会編に入ります。