キングと呼ばれる男が未来を視るって話です。
連載再開します。……十三王目から読むことをおすすめします。話を増量&変えたので。
<<< M市 >>>
「(……巨大隕石、深海王に続いてボロスも倒した。ここまではなんとか順調だな)」
夜の部の〝強化訓練〟を終えた地上最強の男キング。彼は現在、M市にある自宅を目指しながら前世の記憶を掘り起こしている真っ最中であった。
「(ストーリー的に次来るのが〝怪人協会〟とガロウ君だったな。……そのガロウ君は〝ヒーロー狩り〟ってより〝
もはや原作とは乖離してしまった筋書き、自分というイレギュラーすぎる存在によって生じてしまったオリ展開の連続にキング自身大いに戸惑っていた。
……自分は上手くやれるのだろうかと。
「(……状況を整理しよう。直近で起こるビッグイベント、もとい事件として怪人協会による同時多発テロが考えられる。全市規模の未曾有の怪人テロにどう対処すればいいのか……)」
単純な怪人退治なら余裕だが、組織的に連携して動き、各地で同時に破壊活動を行うテロリスト相手となると負けはしないが被害を完全にゼロに抑えることは難しい。
「(もどかしい……!
思考が堂々巡りとなり、頭がこんがらがっていく。
気が付けばもう自宅の玄関の前だ。……あまり考えすぎると頭が煮詰まってしまうと即座に思考を切り替え、キングはドアノブに手をかけた。
ガチャッ「ただいまぁ〜」
「おかえりレイタロウ氏〜」
「師匠、お疲れ様です」
自宅の扉を開き帰宅した彼を待ち構えていたのは、お腹が少しだけ大きくなった愛しの妻サキと、最近自分の弟子になったサイボーグの青年ジェノス。
「今日は随分と遅かったですが、何か問題でもあったんでしょうか?」
「問題?……あー、え〜っとね、問題っていうか単純にアレだよ。ヒーローの皆が強くなって倒れにくくなったんだよぉ。も〜大変よホント……」
「ヒーローが頼りになるなんて嬉しいことじゃない。まぁそんなことより早く上がって!今日はたこ焼きパーティーだよ!」
「へー、たこ焼きかぁ……」
そういえばイヤにたこ焼きの香りが立ち込めているなと今更気付いたキング。……その時であった、奥からドタドタと足音が近付いてきた。
「も〜遅いタロちゃん!ど〜こほっつき歩いてたの!?今か今かと待ってたんだから!」
「あっ、モスキートちゃん。……そっか、君がいるってことは……」
プリプリと怒る
その美女の後に続くように二人の男も現れる。
「……本日の主役がようやく来たようだな」
「早く来いよレイタロウ、お前待ちだぜ?」
「博士、ゾンビマンさん……」
博士と呼ばれる眼鏡とエプロンをかけた男ジーナスと、自分と同じS級である不死身のヒーローゾンビマンを見てつい顔を綻ばせるキング。
どうやら妊娠祝いに来てくれたようだった。
「……それでは、レイタロウの妻サキの妊娠を祝って」
「「「「「「 かんぱ〜い!! 」」」」」」
広々としたリビングが狭く感じられるほどの大人数が、二人の男女のおめでたを祝い、お互いのグラスを景気よく打ち鳴らす。
「さぁ〜〜〜じゃんじゃん飲み明かすわよぉ〜〜!!」
蚊みたいな美女……モスキート娘が手に持っていた缶ビールをプシューと開け豪快に飲み干していく。
「羽目を外しすぎるなよ。一応
「わ〜〜ってるわよゴリラっちょ!……あっ、たこ焼き一つちょ〜だい!」
「全く……」
リビングの大テーブルの上に置かれた大きなたこ焼きプレートでたこ焼きを作るゴリラ……アーマードゴリラはモスキート娘に注意しつつも調理の手は止めずにいる。ほぼ調理専門である。
「ほふほふ……うまっ」ゲコッ
「今日も楽しいたこ焼きパーティーか……」
「レイタロウに子供が出来るんだからな、当然さ」
祝い事のたびにたこ焼きパーティーになるウチはだいぶ変わってるよなぁと思いつつ、カエル男やナメクジャラス、グランドドラゴンはたこ焼きを食べる手を止めていない。……長年作り食べ続けてきた秘伝のたこ焼きの味は、彼らの胃を虜にしていたのだ。
「やれやれ……進化の家が壊滅して早9年、一般社会にどう溶け込むべきか頭を悩ませていた昔が懐かしいな」
「まさかたこ焼き屋のマスコットキャラとして売り出すなんてな。それが上手く行った時はメッチャ驚いたし、ローカル人気が出た時なんて変な笑いが出たもんだ」
グラスの中の赤ワインをグッと飲み干し昔を懐かしむ獣王にそう返しながらニホン酒をチビチビと飲むカマキュリー。……その様子から社会に適応するために色んな苦労を重ねてきたことが伺える。
「レイタロウ……私は別に怒っているワケじゃない。断りもなく怪人形態を晒したその軽率な判断に呆れているだけなんだ。……結果的に
「い、いやぁ……その件について誠に申し訳なく思っているというか……(汗)」
「……師匠は必要なことをやっただけだ。師匠の選択にお前が口出しする権利はない」
「「 ……… 」」
「ホ、ホントにすみませんでした!だからそんなバチバチしないで二人とも〜(泣)」ドッドッドッ
「(やれやれ、祝いの席で口論とは……まぁこのくらい喧しいほうがいいかもしれんな)」
怪人形態を世間に晒したキングを咎めるジーナスに噛み付くジェノス。険悪なムードになりかけている二人に思わず謝罪しながら割って入るキングの姿を横目に見ながら、呆れてものも言えないと静かに酒を嗜むゾンビマン。
「……お腹の中に赤ちゃんが?」
「はい、そろそろ三ヶ月になります」
「さ、触っても大丈夫ですか……?」
「いいですよスナージさん!」
レイタロウの名付け親である児童養護施設〝こどもの家〟の児童指導員スナージは、恐る恐るといった様子でサキの少しだけ膨らんだお腹を優しく撫でる。
ドムッ!!「っきゃあ!?お腹の子が……蹴ってきたぁ!?」
「ふふっ、お腹を撫でるといっつもそうなんですよ?まるで返事をするみたいに蹴ってきて……
「妊娠三ヶ月でですか?……少し早いような、でも元気な証拠ですものね!」
女性二人、気が合えば話も弾むというもの。サキとスナージはお互いの身の上話(主にレイタロウに関する話題)に花を咲かせ、それはもう楽しく語り尽くした。
「……ということは、師匠は図らずも進化の家の最終兵器を一撃で撃破し、結果連中を改心させたワケですね」
「うんにゃ?博士が言うには
「……私の研究が敗北した、とだけ言っておく」
「はっ、いい気味だな。精々レイタロウのために頑張れよジーナス?俺がしっかりと見といてやるからな」
「☆$>%×・〒×>@gtnwdjpa〜〜〜(///////)」
「博士ー!モスキート娘がイカれましたー!!」
「……ふっ、物好きめ」
リビングのあちこちで飲んで食べて騒いで寝て―――……気付けば日付は変わり、すっかりお開きムード。
痛む頭を押さえながら帰っていく
「奴ら……辛うじてゴミだけは持っていったようですが、今後出禁も検討しなければならないかもしれません」
「いーのいーの!せっかく遊びに来てくれたんだから。それにこの程度ならまだカワイイもんだよぉ」
「俺も手伝うぜレイタロウ。せめて掃除ぐらいはな」
「俺達だけで大丈夫ですよゾンビマンさん!お客さんに掃除をさせるなんて―――……あっ」
キングは思い出した。……自宅に来るまでのことを。
S級ヒーロー三人、同じ場に会する状況もそうはない。
「ジェノス、ゾンビマンさん。……実は二人に相談したいことがあるんだ」
「っ、何でしょうか師匠!?」
「急に真剣味が増したな。マジな話ってことか……」
……リビングの掃除を進めながらキングは、宇宙船に続いて人類社会を襲う新たな脅威……怪人協会が何を仕掛けてくるのかを
一通り話を聞き終えたジェノスとゾンビマン。……なんでそんなことが分かるのか、なんて野暮な突っ込みはしなかった。彼らは理解っていたのだ。キングがそんなつまらない嘘をつく男でないことを。
「敵の正体と戦力、アジトが分かっているならいくらでも対策しようはあるぜ。……俺はレイタロウの言葉を信じる。ジェノスはどうなんだ?」
「無論だ。俺は既に師匠から
「……二人に打ち明けて良かった。今の俺の話をほかの人にしたところで一笑に付される可能性もなくはなかったんだ。でも正直一人だけじゃ全市はカバー出来ないし、もどかしかったんだよ……」
「Z市の〝ゴーストタウン〟……すぐにでも襲撃を仕掛けますか?今なら人質もおらず、周囲の被害を考えずに暴れられるはずです」
「……う〜ん」
ジェノスからの過激な提案を受けて考え込むキング。
その様子を見かねたゾンビマンが慎重案を提示する。
「……いや、兎にも角にもまずは協会に報告して念入りな調査をしてもらう必要がある。というかチャイルドエンペラーに頼んで調査してもらったほうが確実だろう」
「何を悠長な……早急に叩き潰せば怪人テロなどというふざけた蛮行を未然に防ぐことが出来る。それに今すぐにでも動けば人員は師匠と俺だけで事足りる」
「それが失敗する可能性もあるからレイタロウは俺達に相談を持ちかけてきたんだろう。……〝神〟っつー存在まで干渉してくるかもしれないのにお前ら二人だけに押し付けられんさ」
「ふんっ、それこそ師匠がいれば問題ない。逆に師匠以外で〝神〟を倒せるヒーローがいるのか?」
「待て待て、話が少し逸れちまったぞ……」
いつの間にか議論がヒートアップしていたジェノスとゾンビマンの様子を見て、キングは思わず待ったをかける。
「二人とも落ち着いてくれ。……俺としては今すぐ攻め込む気はない。流石にリスクが高すぎるからな」
「っ、すみません師匠……」
「と同時に、起こると分かっている事件を指を咥えながら悠長に待つ気もない。……被害は最小限に抑える、これは前提条件だ」
「……何か考えがあるのか、レイタロウ?」
勿論。……ゾンビマンの言葉に無言で首肯したキングは、今さっき思いついた自分の考えを口にする。
「ジェノス達はこの話を協会に報告してくれ。俺は今から一人で敵のアジト……怪人協会に潜入する」
「「 っっ!!? 」」
キングのあまりに大胆不敵な考えに驚愕を露わにするジェノスとゾンビマン。
「これは時間との戦いだ。……皆、ベストを尽くそう」
……早朝、目を覚ましたサキがリビングに来た頃にはジェノスはおろかキングすらいなかった。
リビング(綺麗に掃除された後である)の大テーブルの上にはメモ書きが残されており、そこには朝食の作り置きがキッチンにあること以外何も記されていなかった。
「……多分そういうことだよね」
こういう時は大抵、強大な敵に立ち向かっているのだと長年の経験則で理解っていたサキ。……だからこそ彼女は
「……頑張れ、レイタロウ氏」
お腹を優しく撫でながら
その表情に寂しさはなかった。
あまり話数をかけずに終わらせたいと思います。
キングさんの好感度パラメーター(上限100%)
・ジェノス←(95%)信頼レベル
・ゾンビマン←(90%)尊敬レベル
・アトミック侍←(9%)危険レベル