ワンパンマン:REY【完結】   作:びよんど

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キングと呼ばれる男が街を守るぞいって話です。


十七王目 王の防衛 ①

 

 

<<< A市 ヒーロー協会本部 作戦室 >>>

 

 

「それじゃあ、早速だけど会議を始めるね」

 

 

S級ヒーローが一堂に会する場にて進行役を任された少年チャイルドエンペラーがS級会議の開始を告げる。

 

 

「……この場に来ていないS級はどうしているんだ?」

 

 

サイボーグジェノスは、この期に及んで来ていない同僚達の薄情ぶりに思わず苦言を呈する。

 

 

駆動騎士とはどういうワケか連絡がつかん。番犬マンはQ市以外じゃ活動しないし、メタルナイトは普通に出席を拒否している。……ブラストとも連絡はつかないが、これは平常運転だな」

 

 

ジェノスの疑問に答えるようにシッチが各々の状況を簡単に説明した。

 

 

「ここに来ないってことは単純に興味がないのか、あるいは独自の思惑で行動しているか……どちらにせよ来ない奴をこれ以上待ってもしょうがない。始めてくれチャイルドエンペラー」

 

 

ゾンビマンに催促されたチャイルドエンペラーは早速この会議の議題……〝怪人協会〟について取り上げた。

 

 

「人工衛星『障子に目あり号』の怪人用サーモグラフィと敵アジトに拉致・監禁されていた人達の証言、何よりキングさんの調査によって敵アジトに潜む怪人の正確な数と戦力をほぼ特定することができたよ。あらかじめ渡しておいた発信機があるでしょ?アジトの地図と一緒に諸々の情報も入れておいたから」

 

「ふーん、見た限り大した奴はいなさそうね」

 

 

戦慄のタツマキの余裕発言は華麗にスルーし、チャイルドエンペラーは話を続ける。

 

 

「災害レベル【竜】の怪人は軒並み幹部と呼ばれてる。S級でも苦戦は免れない存在だから要注意だよ」

 

「……数ミリの隙間に潜り込める猫ちゃんにビッグマウスな子、ブサイクな子に光弾を操る子、兆単位で分裂・合体できる群体な子に水そのものな子、メチャクチャ大っきいワンコまで……よくここまで調べ上げられたなキングちゃん!」

 

「大ムカデに……コイツは初代スーパーファイトの王者だったのか?マジでなんでもありじゃな」

 

 

ぷりぷりプリズナーシルバーファングが思わず感心するほど、事前に手渡された発信機には怪人協会に関する情報が記されていた。

 

 

「打てる手を…打っただけだ。……時間がなかったから…【鬼】以下の怪人の詳細は…バッサリ省いたし……」

 

「……情報は量より質だ。その点で言えばこれはまぁまぁ及第点をやれなくもない」

 

「師匠が命がけで掴んだ情報をまぁまぁだと……!?」

 

 

閃光のフラッシュの尊大な物言いに食ってかかるジェノス。……裏側の世界とは無縁そうなキングがやったにしては上出来という意味でフラッシュは賞賛したのだが、どちらにせよ上から目線であることに変わりない。

 

 

「まぁまぁ二人とも……せっかくキングさんがここまでお膳立てしてくれたんだから、争い合うより協力し合おうじゃないか!」

 

「あっ……コーラ5リットル追加で」

 

「正直こんなところでくっちゃべってるよりさっさとアジトごと捩じ切ったほうがいい気がするんだけど……」

 

「……万全を期すためっていう協会(お前ら)の言葉がなけりゃ、俺はとっくに弟子を連れて斬り込んでたんだがな」

 

 

超合金クロビカリの仲裁虚しく火花を散らすフラッシュとジェノスをよそに、タツマキとアトミック侍はそれとなく(自分単独での)強行案を提案する。

 

そこに待ったをかけたのがキングであった。

 

 

「……すまないが……今日攻め込むのは…反対だ」

 

「ハァ!?なんでよ!?」

 

「身代わり兼…発信機代わりに創った肉……もとい分身が今さっき……向こうにバレてしまった」

 

「「「「 !!? 」」」」

 

「バレていなければ…それこそ今日中に強襲を仕掛ける案も…悪くはなかったんだが……今頃向こうも…警戒レベルを引き上げているはずだ。…今日行くのは得策じゃないだろう」

 

「敵にも切れ者がいるということですね……」

 

「……大体、タツマキ(お前)一人でどうにかなるならとっくにキングが解決しているはずだろう。殲滅ではなくあくまで偵察に留めた時点でこれは個人で解決できる域を超えている。その程度のことは少し考えれば分かるはずだが?」

 

「「 ……… 」」

 

「ストップストーップ!!そこまで!!」

 

 

タツマキ(とアトミック侍)を遠回しにバカ扱いするフラッシュの発言を遮ったチャイルドエンペラー。……どうにか会議を進めるべく無理矢理話を元に戻す。

 

 

「……ロクに準備や対策もしないまま敵アジトに突入というのはボクも反対です。あまりにリスクが高すぎる」

 

「つーていつ暴れるかもしれねー連中を指咥えて待ってろっていうのは俺はどうも納得がいかねーよ!【虎】や【鬼】はともかく【竜】の相手は俺達S級が出張らなきゃ被害が拡大するだけだろーが!」

 

 

チャイルドエンペラーの慎重な意見に食ってかかる金属バット。……彼も彼なりに現在のA級以下のプロヒーロー達の戦力を正しく評価しているのだ。

 

相性にも依るがA級は二人以上で組めば【鬼】相手にも勝てる。……それでも殆どは【竜】の相手を務めるには些か力不足なのだ。

 

 

アマイマスク三剣士フブキ組でもなきゃ【竜】の相手なんて務められねー。街の被害を抑えたいっつーなら今日襲撃(カチコミ)を仕掛けるべきだぜ!!」

 

「「「「 ……… 」」」」

 

 

金属バットの発言は理解できる。……この場にいるS級の殆どは自分が出れば大体解決すると信じて疑わず、またそれを実行できるだけの実力を兼ね備えた強者揃いなのだ。

 

意見が真っ二つに割れている現状を見てこれは荒れるぞと最悪の事態を覚悟するチャイルドエンペラー。

 

 

「問題ない……俺が被害を…出させない……!」

 

 

そこに一石を投じたのは、何を隠そうキングであった。

 

 

「俺は明日……人命救助と…ヒーロー達の()()()()をメインに…全市を行き来する。……君達には…怪人退治を頼みたい……」

 

「現地移送?……あっ、そうか!」

 

「なるほどのう、キングに能力で送ってもらえば―――」

 

「……何処でどんな怪人が現れようと、即座に駆け付けることが出来るってことか」

 

「全市の主要な箇所は……巡回済みだ。……加えて…何処に敵幹部が来るかも……ある程度予測できている……」

 

「すごい、流石キングさん!」

 

 

チャイルドエンペラーからの尊敬の眼差しが止まない。

 

ほかの面子もキングの仕事の早さに感心している。……この場の空気は完全にキング一人が支配していると言っても過言ではなかった。

 

 

「まずは〝臭蓋獄〟……ここの凶悪犯罪者達を怪人にすべく幹部が襲来してくるだろう」

 

「!!?……キングちゃん、ここは俺に任せてくれないか?ハニー達は俺の手で守りたい」

 

「……君の実力で……【竜】は厳しいだろう」

 

「それでもだ!……大丈夫、勝ち目がないワケじゃない。俺ならヤれる、ヤッてみせる!」

 

「……ならいいが。……次にC市で明日開催される〝スーパーファイト〟……高名な武術家を纏めて怪人にすべく初代王者がやってくる可能性が高い」

 

「キング、ここはワシ()に任せてもらえるかのう?」

 

「……ちょうどお願いしようと…思っていた。……シルバーファング………頼んだぞ」

 

「武術家は同じ武術家で対処したほうがいいですからね」

 

「そして…俺がもっとも…倒しておきたいと思う怪人……大怪蟲ムカデ長老についてだが……」

 

「かつてブラストが倒し損ねた怪人か。……もしかしてソイツの発生場所も目処が立っているのか?」

 

「恐らくは……S市で暴れると…思う。……すまない…ムカデ長老が移動の足として……使われている以上…確信を持っては……言えない」

 

「決まりね。……大ムカデは私が相手してあげるわ」

 

「おい、師匠がまだ話しているのに勝手なことを言うな」

 

「何よ?私は非力なアンタ達のためを思って……」

 

「……ムカデ長老は…発見したS級ヒーローが……責任をもって倒す。……相性が悪かろうと…逃げれば……民間人に被害が及ぶことを……理解しておいてくれ……」

 

「了解しました師匠!」

 

「……フンッ!いいわよ、私が真っ先に見つけてあげるんだから!」

 

「大ムカデは接敵したヒーローで対処と。それじゃあ一応、ほかの幹部の相手をどのヒーローが担当するのかも決めておきましょう―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……以降つつがなく会議は進み、明日に向けた詰めの段階に入ったと同時に作戦室の扉が開かれた。

 

 

「待たせたねキング!……準備は整ったよ」

 

 

A級1位 イケメン仮面アマイマスク

 

 

100人が100人振り返る絶世のイケメンヒーローが爽やかな笑顔とともに入室してくる。……どうやらキングに何らかの頼み事をされていたらしく、その足取りは非常に軽やかだ。

 

 

「……アマイマスク…首尾は…どうだ……?」

 

完璧(パーフェクト)だよキング!〝親衛隊〟のメンバーには全員連絡済み、既に全市規模で配置が成されている!民間人の避難も迅速かつ的確に行われることだろうね!!」

 

「親衛隊か……この状況だと心強いな……」

 

 

〝親衛隊〟

 

 

キング(非)公式のファンクラブメンバーの総称であり、キングをこの救われない地上に降り立った唯一絶対の救世主と崇める狂信者集団でもある。

 

その総数はキングですら把握しきれていないほどに膨大で、噂によると政官財それぞれの要職に就いている幾人かの大物までもが親衛隊なのではないかと言われている。

 

親衛隊であることを明かしている有名人として、ヒーロー協会最高顧問ナリンキ、自警団〝ハンターズ〟とそのリーダーアクセル、超相撲横綱ライデン〝異世界転生教〟とその教祖インフェルシネイヴ、大資産家ゼイダッツ、人気アイドル歌手ウェビギャザ、同じくアイドルで〝B小町〟のセンターアイ等、様々だ。

 

当然、民間人ともなるともっといる。

 

 

「あらゆる情報媒体を駆使して、たった今ゴーストタウン周辺の住民を退避させることが出来た。……週一回のペースで行う避難訓練の成果が発揮されて僕も鼻が高いよ」

 

「……ありがとう。ここまで統制が取れているのも、ひとえに君が指揮を執ってくれたおかげだ」

 

「まっ……待ってくれキング!……まさか褒められるなんて思ってもいなかったから心の準備が……!!」ワタワタ

 

「えっ?……ま、まぁこれで準備は出来たと思う。……それとアマイマスク、その―――」

 

「……みなまで言わなくていいよ。分かっているさ、僕は僕の役目を全うしてみせるよ」

 

 

キングとアマイマスクだけで進められる話を黙って聞いていたS級一同。……特に異常があるワケではないことだけはよく分かった。

 

 

「……それじゃあ、会議はこれで閉じたいと思います。ほかに何かありますか?」

 

「「「「 特になし 」」」」

 

「分かりました。……最後にキングさんに締めてもらいたいと思います。お願いします」

 

 

締めの挨拶をチャイルドエンペラーに振られたキング。

 

おもむろに席から立ち上がり、今回の会議の集大成とも言える決意表明を口にする。

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

「……明日決行されるであろう怪人テロの脅威から民間人を必ず守り抜く。……だから、君達は安心して正義を執行してほしい。……勝つぞ!!

 

 

返答はなかった。

 

気迫には気迫で返す。……それだけで十分だったからだ。

 




ギョロギョロ「(ヤバいってェ!キングが?潜入?ナニソレあり得ないィィィ!!どうしようどうしよう、もし日にちをズラしたら全体の士気に関わるぞォ!!?もうこのまま強行するしかない!!)」
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