S級ヒーロー達何してんのって?……サボってなんかいませんよって話です。
※濃厚なBL要素(ぷりぷりプリズナー活躍回)あり!
苦手な方はブラウザバック推奨!
<<< V市 >>>
「くっ……流石に【鬼】は強い……!!」
「救援はまだ来ねぇのか!?もう俺達じゃ押さえられねぇぞ!?」
「来やしねーよバーカ!」
「今頃各地で怪人騒ぎだ!どうせここには誰も来られねー!ギャハハハハ!」
……ひらけた道のど真ん中で怪人の群れに囲まれていた二人のヒーローは、ボロボロの身でありながら助けが来るまで必死になって持ち堪えていた。
怪人達はそんな彼らを嘲笑するが知ったことではない。
A級92位 マジックハンド
B級3位 黄金のヒザ戦士
かつて〝どすけべ〟だとか〝ヅラ戦士〟だとか散々に言われてきた彼らは、キングとチャイルドエンペラーの働きかけによって自由に好きなヒーローネームを名乗れるようになっていた。
加えて地獄の如き〝強化訓練〟を乗り越えることで以前とは比べ物にならないほどの、それこそ名前負けしないほどの強さを身に付けることが出来た。
加えて今回の
彼が自分達を見捨てるなどあり得ないのだ。
「ヒーローとしての矜持ゆえか、限界も近いはずなのによく立っていられる。……しかし残念だが、その不屈の正義とやらが報われることはないぞ」
マジックハンドは、自分達を取り囲む怪人の群れの中でもとりわけ強く厄介な吸血鬼風の怪人を睨む。
「一つ教えておいてやる。このバンパイア様は怪人協会の中で唯一の本物の怪人、先祖代々異能の血を引く吸血鬼だ。少し戦っただけでほかとの違いが分かるだろう?」
バンパイア(血統書付) 災害レベル【鬼】
「……フッ、紛い物の雑魚とはいえコイツらを半分以上も削ったのは褒めるべきかな?」
嘲笑混じりに足元を見やる。そこにはマジックハンド達によって呆気なく倒された怪人の死骸が転がっていた。
「血液タンクを減らされたという意味では確かに大打撃だ。誇っていいぞヒーローども」
「ふざけんなバンパイア!!」
「俺達はテメェの血液タンクじゃねえ!!」
バンパイアのあまりにもあんまりな発言にブーイングを上げる怪人達。だいぶ仲が悪いことが伺えるが、突破口にはなり得ないとマジックハンドは判断する。
「(クソッ、もう包囲網を破るだけの体力がない。仮に包囲網を破ったとして、あの吸血鬼がやすやすと逃がしてくれるワケがない。アレは俺達の手に余る。)……ここで大人しく諦めたら、ヒーローになった意味がない……!」
「……そうだよな、諦めるワケにはいかねぇ……!」
死を覚悟するほどの脅威を前にしても決して怯えたりせず、また最後まで抵抗することを放棄したりしない。
マジックハンド達のそんな不屈の精神を挫かんとバンパイアは更に言葉で追い込んでいく。
「人間、群れて行動せねば何も出来ん劣等種族風情がこうも抵抗してくるなど不愉快でしかない。……決めたぞ、お前達は四肢を引きちぎった上で死ぬまで私の食糧にして―――」
「ギャアァァァ!!?」
「な、なんだァァァ!!?」
「て、敵―――ぐぺっ!!」
言葉が続かなかった。
突然の発砲音。……直後に飛来した弾丸がバンパイアの近くにいた怪人を抉り貫きミンチに変えたからだ。
「よぅ。……助けに来たぜ」
「「 あ、あなたは……!? 」」
「新手か。フッ、面白い……!」
急速に減っていく仲間の怪人に目もくれず、弾丸が飛んでくる先、即ち己の真後ろをバッと振り向くバンパイア。
そこには、黒のタンクトップの上からコートを羽織る、病的なまでに色白な男が立っていた。
どういうワケか
「(助けに来たということは奴もまたヒーロー。よほど腕に自信があるようだが、ここで完膚なきまでに蹂躙すればあの二人の心も折れよう。)お前、ランクはS級か?なんというヒーローだ?世俗に疎いものでな、名乗れ」
由緒正しい吸血鬼としての矜持ゆえか、はたまた残忍な怪人としての本能ゆえか、ニタニタと嗤いながら上から目線で
色白の男は、うつむき加減に左の掌をグーパーさせた後に改めてバンパイアと視線を合わせ、右手で後頭部をポリポリ掻きながら口を開く。
「掌に集めた血液を限界まで凝縮する、か……。おっと、すまない申し遅れた。俺は―――」
言い切る前に奴の頸動脈を噛み切ってやる。……バンパイアのそんな下衆な考えは―――
「……こういう者だ」
……開かれた左の掌から飛び出た
「なっ……!!?」
目で追うことは叶わなかった。
それでも即死しなかったのは流石本物の怪人と呼ぶべきか。眉間からドクドクと血を垂れ流しながら自分に不意打ちをかました色白の男を睨みつけるバンパイア。
「貴様、ゆる、すま、じ……?」
言葉が続かない。
喉の奥から込み上げてくるのは、目の前の色白の男への呪詛ではなく自らの血。
……それも生命維持に支障をきたすレベルの血が喉元まで込み上げ、その全てを滝のように吐き出してしまう。
「……俺の血には【鬼】の怪人を即死させる猛毒が含まれているんだよ。恨むんだったら最初の技で死ねなかった自分の頑丈さを恨め」
S級8位 ゾンビマン
ゾンビの如く何度致命傷を受けてもそのたびに立ち上がり続ける不死身のヒーロー。
キングの手によって壊滅した〝進化の家〟の元リーダー・ジーナスに更なる改造手術を施してもらった彼は、毒血の体質とその血を自在に操る能力に覚醒している。
時として自分の血液を消耗することもあるが、不死身と呼んで差し支えない異常な再生能力によって実質失血死のリスクを帳消しにしている。
掠っただけで並の怪人を即死させる猛毒の血を湯水の如く生成し手足の如く自在に操る。
ある意味、その脅威度はキング以上である。
「……聞いてるワケないか」
全身の血を吐き出すだけ吐き出し完全に干物と化したバンパイアを冷たく見下ろし、すぐ視線をマジックハンド達に移すゾンビマン。
ちょっとだけ引いていたが、慣れたものだとニヒルに笑うと懐からタバコを取り出し一服する。
「(血も汗も流さずに済むならそれに越したことはないがあんまり無理しすぎるなよレイタロウ。なにせ
今もなお人命救助と人員移送を行っているであろうキングの身を案じながら空を仰ぐゾンビマン。
イヤに青く澄み渡っていた。
<<< N市 >>>
「(バランス重視の肌にジャストフィットしたタンクトップ。長時間の継戦を可能とするが、それ以外にこれといった特徴がない平坦なタンクトップでは流石に決定打に欠けるか……!)」
S級15位 タンクトップマスター
数ある〝タンクトッパー〟の頂点に君臨するタンクトップヒーロー。
軍の一個師団に匹敵する個人戦闘能力を有する彼は今、かつてないほどの窮地に立たされていた。何故なら―――
「ブモォォォォ!!ブモォォォォォォォ!!」
ハグキ 災害レベル【竜】
……怪人協会内にて幹部と呼ばれ畏れられる、凶悪なビッグマウス怪人がこの街に襲来してきたからだ。
血をポタリポタリと垂らしながらもタンクトップマスターは思考する。
「(物理攻撃が効きづらい相性最悪な敵というのもある。だがそれ以上に―――)」
「グモォォォォォォォォォォォ!!!」
ハグキが、その巨大な口を開いて突進を仕掛ける。
マスターとぶつかり合い、鈍い音が響いた。
「オ"ォ"ォォォ"ォォォォ"ォォ!!!」
「ぐっ!!?……うおぉぉぉぉ!!!」
拮抗したのも一瞬、ハグキは即座にマスターを捕食しようと口の中に半ばまで押し込み、渾身の力で噛み締める。
さながら断頭台のように迫る上下の歯に必死で抗いながらマスターは、走馬灯のようにここ数ヶ月の内に起こった出来事を回想していた。
具体的には、キングと初めて会食した時のことを。
『……俺から……教えられる…ことは…ない』
「(……俺は馬鹿だ。タンクトップの真理を他者から聞こうとし、
キングの完璧なタンクトップの着こなしに憧れ、目指し、羨み、妬んだ。
「(タンクトップとともにあることこそがタンクトッパーの基本であると言うのに、俺はタンクトップを裏切りかけた。……探求を、理解を放棄したんだ)」
ハグキの歯にプレス機の如く押し潰されるマスター。
災害レベル【竜】の怪人が相手と言うのもあるが、マスターは現在タンクトップスランプに陥り本領を発揮できずにいた。……彼の根幹を成していたタンクトップを裏切りかけたのだ。仕方のない話である。
「(……もういっそ、消えてなくなりたい)」
マスターの目から生気が失われてゆく。
「(このまま力を緩めれば俺はあっという間に死ぬだろう。……それでいい、俺はタンクトップを裏切った卑劣な男だ。こんな俺に生きる価値など―――)」
ハグキの上下の歯が完全に閉じる。
それはつまり、マスターの敗北を意味していた。
「(……俺は死んでも構わない)」
ハグキの体内にて、マスターは自らの死を受け入れた。
タンクトップが徐々に溶ける。
「(……だが、だがせめて―――)」
それでもマスターは、希わずにはいられなかった。
タンクトップが溶け落ちる。
「……今一度、タンクトップを―――」
か細い声で、タンクトップへの愛を口にする。
マスターは死んだ。
その
「ゲェェェェェェップ……ブモ?」
直後、マスターを飲み込んだハグキにある異変が起こる。
「ブモ……ブモ、ブモォォォォォ!!」
胃袋の中で
「オゲェェェェェェェェェ!!」ゲロリンチョ
激痛と不快感、嘔吐感のままに胃袋の中身、マスターを吐き出した。
「っ、ンハァ、ハァ、ハァ……な、にが……!?」
ハグキの胃液でタンクトップを溶かされ上半身裸になったマスターが周囲を見渡す。
どうやら何故自分が助かったのか理解っていないらしい。本当に不思議そうな表情を浮かべていた。
……否、心当たり自体はあった。
「まさか、そんな、タンクトップが、俺を……?」
「ブモォォォォォォォォォォォ!!!」
呆然とするマスターにお預けを食らって怒り狂ったハグキが迫る。
「……違う。俺は、俺こそが―――」
死に近付く地獄を、タンクトッパーとしての苦悩を乗り越え、マスターは成ったのだ。
……否、断じて否、今の彼はマスターに非ず。
其の名は―――
「……タンクトップだ」
S級15位 タンクトップマスター
マスターを捨てることで真理へと至ったタンクトップ。
彼はもはやヒーローでもなければ怪人でもない。
文字通りのタンクトップなのだ。
……あんまり変わってないんじゃね?とか突っ込んではいけない。
「タンクトップマジック」
「ブモッ!!?」
何もない場所から突然発生したタンクトップがハグキに纏わりつき、その体をピチピチに締め上げる。
「お前もタンクトップと一つになり、タンクトップの喜びを知るがいい」
「ブモォォォォォォ!!ブモォォォ―――」
タンクトップに締め上げられたハグキの体はやがて限界を迎え、空気が抜けるような音とともにタンクトップと一体化する末路を遂げてしまった。
地面にひらりと落ちるタンクトップ。そこには剥き出しの歯茎のデザインが印字されていた。
「タンクトップキング。……今はただ、お前に感謝を」
<<< 〝臭蓋獄〟 >>>
「もうやだ、なんなのコイツ……」
ニャーン 災害レベル【竜】
臭いものに蓋をする。……まさしくこの世の
直立した細身のネコ怪人、怪人協会幹部のニャーンは目の前にいる手負いの男に思わずドン引きしている。
「託されたんだキングちゃんに。……
S級17位 ぷりぷりプリズナー
全身に裂傷を負い、びゅーびゅーと血を噴き出しながらも一切衰えることなく覚悟を示すぷりぷりプリズナーであったが、自分をここまで切り刻んだニャーンの予想外の強さに内心焦りも感じていた。
「(……クソッ、攻撃を当てようにもあのネコ怪人、ウナギよりも滑らかにすり抜けていくぞ―――)」
「激・猫罰」
「ぐっ―――(……加えて、狭い隙間に潜り込んでからの奇襲も厄介だ……!
……あなたの言う通りだったキングちゃん、このネコ怪人、俺では手に余る―――)」
〝それでいいのか、ぷりぷりプリズナー?〟
……その言葉が脳裏を過ぎり、ギリギリで踏ん張ることで倒れずに済んだぷりぷりプリズナー。
「何なのお前……引くわー」
全く倒れる気配のない強面オカマの相手をするのがなんだか嫌になり始めてきたニャーン。……ふと心の内で不快感が湧き上がっていることを自覚する。
不快感の正体……それは過去、愛情を強引に押し付けてきた昔の飼い主との忌々しい嫌悪の記憶であった。
強弱ではなく本能的に苦手とする相手だったと理解した時点で、ニャーンの取るべき行動は決まった。
「……本当はここの囚人どもを全員怪人にするつもりだったけど、やっぱや〜めた」
「(逃げる気か……!!?)」
「私は我儘に生きると決めてるんだ。怪人協会なんかに頼らなくてもどうとでもなる。というワケでバイバ〜イ」
今日限りで野良の怪人に戻ると決めたニャーンは、するりと地面の割れ目に入り込み逃走を図る。
「(やれやれ、何の成果も挙げずに逃げ帰ればそれこそオロチに殺られちゃうよ。私はただ雑魚を甚振れればそれでいいんだ……)」
作戦決行直前のことを思い起こすニャーン。
……あの時のギョロギョロの鬼気迫る雰囲気といったら、思い返すたびに滑稽だとつい笑いが込み上げてしまう。
「(そもそも怪人が徒党を組んで組織だった行動をしようとする時点でちゃんちゃらおかしいんだよ。殆どがただ暴れたいだけの乱暴者ばっかなんだからさ)」
弱いものイジメが出来れば怪人主体の世界が訪れなくても構わない。
「(でもまさか
おかしい。
何かがおかしい。
変だ。
「(……ぷりぷりプリズナーとは十分距離を離したはずだ。このまま行けば連中の警戒網を突破できる―――)」
唐突だが、ネコの空間認識能力は高い。
一度通った道であれば、どの経路が最短コースかを瞬時に把握できるくらいにはずば抜けている。
無論、ニャーンも例外ではない。
「(……私は何故
その時気付いた。
自分はいま臭蓋獄を―――ぷりぷりプリズナーを目指していることを。
「(……どういうことだ?なんで、なんで私は、
我儘に生きるだとか、雑魚を甚振るだとか、そんなことがどうでもよくなってしまうほどにぷりぷりプリズナーのことを強く意識してしまう。
「(あ、会いたい、今すぐにでも、一秒でも早く、ぷりぷりプリズナーと―――)」
……やがて、地上の輝かしい光が双眸に差し込む。
ニャーンにはその光が希望のように映り―――
「エンジェル☆ブラックホール
……あなたはもう、逃げられない……♡」
……本来これは、
ブラックホールと銘打っているが、これは重力を操る能力ではない。……ある意味それ以上に最悪な代物である。
「ぷ、ぷりぷりプリズニャー……♡ようやく、ようやく出会えたニャ〜……♡」
「さぁネコちゃん、俺の胸に飛び込んでおいで……」
「ニャ、ニャ〜〜〜♡♡♡♡♡」
……最高潮まで発情し身も心も蕩けきったニャーンが
「ニャン♡ニャ〜〜ン♡ご主人様♡ごしゅじんさま〜〜♡♡よしよししてニャ〜〜♡♡♡」
「エンジェル☆ハグ
……んふ♡いいのか、よしよし程度で?」
「ニャ?♡もしかして―――」
……〝エンジェル☆ブラックホール〟とは、簡単に言うとぷりぷりプリズナー本人に意識を強制的に向けさせる
怪人姫弩Sと似た能力であるが、最大の違いとして弩Sが相手に痛みを与えて洗脳するのに対し、ぷりぷりプリズナーは相手に痛みを
ちなみに、能力発動のタイミングは任意で決められる。
尻尾巻いて逃げ出すような悪いニャンコを連れ戻すにはうってつけだ。
「悪いネコちゃんにはお仕置きだ……♡」
「ニャ―――」
満開の薔薇が咲き乱れ、両者の舌と舌が触れ合う。
世にも悍ましい光景を前にして、看守も囚人も思うことは一つであった。
「……おい看守、外で怪人二体が好き勝手してるぞ。
……なんとかしろよ」
「……おい、ヒーロー協会にヒーローを派遣するよう要請してくれ。俺じゃどうにもならん」
「無理ッス。羽の生えたアイツがヒーローなんですよ」
「「「「 うわぁ…… 」」」」
……監獄の外で
ぷりぷりプリズナーはキングへの愛を誓いながら、怪人ならセーフ(アウト)の理論で昂ぶる本能を鎮めていた。
世界が薔薇色に染まる。
S級ってヤバいのしかいないね。
感想・高評価いただけると幸いです!