怪人協会の恐るべき計画が明らかに!?っていう話です。
<<< M市 >>>
「この地区で合っているのか?」
午前11時、各地で勃発していた怪人テロがプロヒーロー達の尽力によって終息に向かっていく中、人っ子ひとりいない静かな住宅地を
「
疾風のウィンド 災害レベル【鬼】
業火のフレイム 災害レベル【鬼】
忍者の〝里〟にて地獄の如き鍛錬を乗り越え〝黄金の37期〟と呼ばれる凄腕にまで至り、怪人化によって更なる進化を遂げた彼らは現在、怪人協会参謀の命令を受けて数十体の怪人とともにM市まで馳せ参じていた。
……そう、キングの住んでいるこのM市に。
「チッ、人質拉致るだけなら俺が出るまでもねーじゃねーかよ。コイツぁ
ウィンドとフレイムの後ろを不機嫌極まる様子で歩く
ブサイク大総統 災害レベル【竜】
ブサイクな見た目が原因で怪人化したブサイクモンスター、通称ブサモンの頂点に君臨するこの怪人は、自分を差し置いて先行するウィンドとフレイムに苛立ちを募らせながらも
「■■■■■■〜〜〜ッ」ジャラジャラ!!
「ひっ!?あ、暴れないでください!暴れないでェ!!」
「こ、怖すぎるって〜〜!」
ブサイク大総統のすぐ後ろで雑兵達が悲鳴を上げている。
闇よりも黒い
育ちすぎたポチ 災害レベル【竜】
「オマケにあんな狂犬まで引っ張り出してよ、やる気の方向性が違うんじゃねーのかぁ?」
普段は番犬としてアジト内で放し飼いにしているポチまで動員するのは流石にやり過ぎ―――だが、裏を返せばギョロギョロがそれだけこの作戦の成功に全力を傾けているということ。
ギョロギョロが語った作戦が成功すれば、間違いなく怪人側の勝率は一割未満から10割にまで持ち込める。
この場にいる誰もが(ポチは若干怪しいが)それだけは確かに理解していた。
だからこそブサイク大総統も、口ではあーだこーだ言っているがガラにもなく大真面目に取り組んでいるのだ。
ひとえに死にたくない故に。
「へっへっへ、これで俺の怪人協会内での地位は盤石だぁ……!!」
つい最近入会してきた新人が邪悪にほくそ笑む。
猿を彷彿とさせる毛深い巨体に四本の腕と三本の尻尾が特徴的なその新人は、この作戦を決行する上で重要な
バクザン 災害レベル【竜】
人間時代の彼は〝闇地獄殺人術〟という武術を極めた一流の武術家であり、最強になるために愚直に武の道を突き進む求道者であったが、今やその面影は微塵もない。
その瞳はさながら自分より弱い奴を甚振ろうと躍起になる外道の瞳であり、かつて僅かにでもあった武人としての高潔さは地に落ちてしまっている。
「……あんな奴が幹部を張れるとはな」
「最大の障害だったキングを最大の味方に出来る千載一遇のチャンスだからな。……まっ、俺達の敵ではないが」
「……あの
フレイムはつい数ヶ月前の出来事を回想する。
……A市に巨大宇宙船が襲来してから数日経ったある日のことだった。
怪人協会のアジトに突然人間が侵入してきたのだ。
『あぁあああああああ!!じに"だぐな"い"〜〜!!』
どうやら腕試しと称して雑兵を三体ほど惨殺していたらしいが、たまたま鉢合わせた幹部ゴウケツによって抵抗する間もなくフルボッコにされ、怪人王オロチの前に突き出される運びとなった。
発汗、涙、鼻水、涎、小便、脱糞―――ありとあらゆる生理現象をお披露目し雑兵達を大いに楽しませた侵入者は、周囲の気まぐれによってそのまま惨殺される
『待って、待ってくれ!待ってください!俺にはとっておきの情報があるんだ、ですッ!!』
『……何?そのとっておきって?』
『あのキングにはッ!実は女がいてッ!その女は子供を身籠ってるッ!!』
『『『『 っっっ!!? 』』』』
『キングの子供をだッ!』
無様に土下座しながら必死で助命を乞う侵入者の衝撃発言にその場が静まり返った。
『気が変わった。……ギョロギョロ』
『分かりました。おい人間、名前は?』
『バ、バクザンだ、です……』
『運がいいねバクザン、君に取れる選択肢がもう一つ増えたよ』ポイッ
バクザンめがけて無造作に放り投げられる〝怪人細胞〟
その後の顛末はもはや言うに及ばずだろう。
「……ヒーローという命がけの仕事をしている割には随分脇が甘い」
「ま、おかげで付け入る隙が出来たワケだ」
ウィンド達に任された仕事は単純明快。
キングの妻と腹にいる子を攫い、人質にすることだ。
「(実行役は俺とお前の二人だけだ。キングの女を確保次第すぐにアジトへ引き返すようギョロギョロから念押しされている)」
「(……その他大勢は捨て駒か)」
「(キングがこちらの動きを察知して来るかもしれんからな。ポチまで連れてきたのはそういうことだ)」
A市で起こった宇宙船騒動の顛末は怪人協会の耳にも入っていた。……当然キングのことについても。
半壊していたとはいえ巨大な宇宙船を遥か上空にある月ごと蒸発させた恐るべき白光の熱線と、原理不明ながら月を元通りに復元してのけた黒い熱線―――
『こんな化け物にどう勝てっていうんだよ(虚無)』
破壊と創造という超越した現象を一個人が、それもキングが実行してのけた事実にギョロギョロは計り知れない絶望感を覚えていたが、バクザンの密告によって状況は大きく一変したと言っても過言ではない。
『表向きはヒーローと認められたキング。しかしその裏で家畜同然の残酷な仕打ちを受けていた。そしてその魔の手はキングの妻子にも及ぼうとしていたのだ。だが、そんな非道を許す怪人協会ではない。我々は前もって妻子を
……要はキングの人間社会での立ち位置や居場所を完全に潰した上で、妻子を保護している怪人協会に迎え入れようという作戦なのだ。
念のため、意思の有無に関わらず食べた人間を強制的かつ安定的に怪人化させる怪人細胞・改も用意してある。
妻のほうも実は怪人でしたと報道しておけば完璧だ。
「世論は大いに揺れ動くだろう。だが果たしてキングは怪人に成り果てた自分の女の姿を見てどう反応するかな?」
「何の反応も示さない可能性もあるな」
「フッ、それならそれでいいさ。嫌がらせをするだけでも価値がある」
怪人化した妻に寄り添い、同じように怪人の道を歩むならそれも良し。怪人協会とも仲良くしてくれれば最高だ。
だが普通に考えて自分の妻を怪人に変えた連中と仲良くなれるワケがない。潰されると考えるのが自然だ。
……それもまた良し。キングがヒーローではなく怪人として迫害されれば人間への愛想も尽きて人間社会を滅ぼしてくれるかもしれない。
……キングが人間社会を滅ぼす。そう人間達に思わせ疑心暗鬼に陥らせるだけでも成果としては上々。
良くも悪くもキング一人がもたらす影響力の大きさを最大限悪用した非常に悪辣な計画である。
「着いたぞ。……ここだな」
M市の中でも一際背の高い超高層マンションを見上げ、思わずほくそ笑む怪人達。
ここの100階にキングの女がいる。
確かに、上階から僅かながら気配も感じ取れる。
「はぁ〜ようやくか、んじゃまぁさっさと拉致ってこいや」
ブサイク大総統が顔を醜く歪めながらウィンドとフレイムに命令する。……自分が捨て駒扱いされてることなど露ほどにも思っていないようだ。
その滑稽さを鼻で笑ったウィンド達はさっさと自分達の仕事を済ませようと超高層マンションに向き直り―――音もなく消えた。
「(壁走り……〝里〟で教わる初歩的な歩法だ)」
「(自慢なら辞めておけウィンド。どうせ俺達の動きを捉えられてはいない)」
音を置き去りに光に並ぶ速度でマンションの壁を駆け上がり、あっという間に気配を感じ取った場所(ちょうど100階)に辿り着いたウィンド達。
窓ガラスの向こうには金髪の女が一人。
「御機嫌ようお嬢さん。貴女を連れ去りにきましたよ」
「他愛なかったな」
「………」
特製の強化ガラスをいとも容易く蹴破り、室内に堂々と侵入するウィンドとフレイム。
金髪の女は微動だにしない。頭が現実に追いついていないとウィンド達は判断する。
「しかし―――
「全くだ。頭までノロマではいっそ憐れみすら覚える」
「……頭までノロマ?」
金髪の女が初めて口を開く。心なしかその声色には怒気が含まれていた。
「怒らせてしまったかな?……しかしこれも自然の摂理、遅い弱者から淘汰される世の常なのだから」
「恨むのなら間に合わなかったキングを恨め」
「………」
金髪の女の首筋に無数の怒筋が浮かび上がる。
「ハッ、可愛い可愛い、馬鹿にされてようやく怒り出したようだな女。だがその怒りもすぐに恐怖と苦痛に歪むことに―――」
「もういい、黙れ」
突然、男性の声が室内に響く。……響くと言ってもすぐに静寂の中に溶けていったが、ウィンド達にある一つの疑念を抱かせるには十分であった。
この場に生物の気配は自分達を含めて三つしかない。
ならばさっきの男の声は―――
「一つ訂正しておこう」
いつの間にか両手で顔全体を覆う金髪の女。男の声の発生源はその女からであった。
何かが、何かがおかしい―――
「キングの妻サキさんは、インドア派でゲーム好きの女性だが、その実頭の回転はとても速い。本能的な危機察知能力に優れていると言うべきかな。キミ達みたいに墓穴を掘るようなマヌケでは断じてない」
金髪の女の全身の骨肉が嫌な音を立てながら変形していく。それでも両手で顔を覆っているのは何故か……?
「嗚呼、やっぱり怪人なんて嫌いだ。人に戻してもらってもこの嫌悪感だけは拭えない。醜すぎる……!」
「「 ……ッ!! 」」
金髪は青髪に変じ、体つきが男性的になったことでようやくウィンド達は標的を間違えたことを悟る。
だが、あまりにも遅かった。
「何よりも許せないのは、僕の大切な人の大切な人を僕の目の前で侮辱したことだ。これはもはや聖戦、赦しを与えられると思うなよ醜い化け物ども―――」
顔を覆っていた両手が開かれる。
地獄の釜が開かれる。
その表情には―――
A級1位 イケメン仮面アマイマスク
……そもそも表情などなかった。
顔面のパーツが消失し、のっぺらぼうと化していたのだ。
強いて挙げるなら、ウィンド達を心の底から震え上がらせる純粋な殺意のみが今のアマイマスクの表情であった。
「「 嵐刃脚!! 」」
アマイマスクを排除すべくウィンドとフレイムは即座に怪人態となり、左右からの不可避の回転蹴りを見舞う。
「(舐めてかからず全力で殺す!人間と怪人の性能差を思い知ってからくたばれ―――)」
「(真の実力を解禁した俺達の速さにお前は対応できない!殺されたことを自覚する間もなく死ぬがいい―――)」
「「 ……ふぇ? 」」
「
……人間と怪人の性能差を思い知らされ、そのあまりの速さに対応することが出来ず、また殺されたと自覚することなく原子レベルにまで細かく切り刻まれ地獄に逝ったウィンドとフレイム。
そんな二人に一瞥もくれてやることなくベランダに出たアマイマスクは、眼下に映る怪人達を見下ろしその正確な数を数えていった。
「……残り36」
修羅と化したアマイマスクはベランダから飛び降りた。
「(は〜ぁ、早くアジトに帰って寝たいな……)」
一つ目怪人マナコは憂鬱であった。
何故、よりにもよって自分がこんな胸糞悪すぎる作戦に動員されてしまったのか。
「(人妻を攫って怪人にするなんて聞いた時は思わず吐き気がしたんだけど……)」
人目も気にせず好き勝手生きれればそれでいい。……大多数の弱小怪人が抱える本音であり、例に漏れずマナコもそうであった。
身勝手ながらも邪悪と呼ぶには程遠い感性を持っているからこそ、どうにもこういうテロ紛いな実力行使にも乗り気になれなかったのだ。
「(でもまぁ、そんなことを大っぴらに言ったら真っ先に殺されるんだけどね……)」
「……おい、おい!」
「うぉ、な、なんだよ!?」
「ボーッとすんなよ!ただでさえポチ様暴れ出しそうなんだからよ!」
「ご、ごめん―――(……ったく、なんで私がポチ様の手綱を握ってなきゃいけないんだよ。おかしいだろ)」
同じ雑兵にとっちめられて思わず不貞腐れるマナコ。
それもそのはず、
「……あぁん?」
「なんだぁ?」
「■■■……ッッ」
「……え?」
……コンクリートブロックを陥没させる勢いで何かが飛来してきた。
「………」ゴゴゴゴゴゴゴ…
ソレには顔のパーツがなく表情を伺うことは出来なかったが、こちらに向ける悍ましいほどの殺意で敵だということだけは理解できた。
「■■■■■■■■■■■!!!」
「ひっ……!?」
唐突に現れた天敵を前にポチが吼える。
そして―――超特大サイズの焦熱弾の
「お、おいおい待て待てポチ!まだ人質とっ捕まえてねーんだぞ―――」
ブサイク大総統の制止を無視して無情にも焦熱弾は発射された。
放たれた焦熱弾はマンションを根こそぎ消滅させて余りある規模感であり、当然直線上にはのっぺらぼうも含まれている。
終わった。……この場にいる怪人達が誰もが思った。
「……
だがしかし、死の極光を目前にしてなおアマイマスクの心は揺らがなかった。
「龍水旋律掌」
放たれた焦熱弾のエネルギーに素手で干渉し、雁字搦めになった糸をほぐすように丁寧に解体し完全消滅させる。
「えっ、えっ……?」
干渉から消滅までの時間はおよそ0.2秒、マナコの目には着弾して即消滅したかのようにしか見えない恐るべき早業である。
「■■■■■■■■■■■!!!」
自慢の攻撃を無力化されたことに腹を立てたのか、それとも単純に好敵手と見做したのか、ポチは悍ましい叫び声を上げながら次々と焦熱弾を発射―――
「気合、かけることの
……発射する刹那、ポチの頭上まで跳躍したアマイマスクが右の握り拳を固めながら自由落下する。
「
怒りによって力の高まった拳を光の速さでポチの脳天に叩き込む。
「■■〜〜〜」バタンッ
恐ろしい威力のおすわりを叩き込まれ地面に顔を埋める形となったポチは、弱々しい鳴き声とともに完全に意識を喪失することとなる。
「テメェ〜!!いい気になってんじゃねーぞクソ野郎がよぉ〜!!」
ポチに巻き込まれる形で即死したり重傷を負った雑兵を無視してブサイク大総統は突進を仕掛ける。
狙いは勿論アマイマスクだ。
「俺は分かるんだぜぇ!のっぺりとしたそのマスクの中にはクソイケメンの素顔があるってよぉ!!てひゃひゃひゃ!そのマスクごと俺好みに整形してやるぜぇ!!」
ブサイク大総統の肉体が目に見えて醜く肥大化する。
心の内に抱える劣等感が憎悪によって燃え上がったのだ。
「ポチの焦熱弾より面白いもん見せてやるぜぇ!劣等感で人格が最低にねじ曲がった俺様の超暴力―――尊厳崩壊パンチ!!」
「
ブサイク大総統のパンチとアマイマスクの掌が重なる。
「熱線砲」
……宇宙船を蒸発させた熱線に似た白光のエネルギーを
「次」
バクザンほか生き残りの雑兵数匹は、ようやく自分達の形勢が不利であることを理解した。
「……じょ、冗談じゃねえ!!俺ァ勝てる戦いだから参戦したんだぞ!?クソッ、クソクソクソッ!!俺はもう知らねぇからな!!」
「ちょ、ちょま……!」
あまりの恐ろしさに腰を抜かすマナコ一人を置いてバクザン達は一斉に逃げ出した。
言い訳の余地のない、完全なる敵前逃亡である。
「
無論、一匹たりとも逃がすつもりはない。
アマイマスクは能力を発動させる。
「(クソッ、クソッ、せっかく拾った命をこんなところで無駄にでき、る、か……?)」
脇目も振らず逃走していたバクザンであったが、急にアマイマスクのことを意識してしまい足を止めてしまう。
逃げ出していたほかの雑兵達も同じように足を止め、アマイマスクのいる方向を凝視する。
「
アマイマスクの胴体が縦に裂け、無数の凶悪な牙の生えた口のようなものが露となる。
「お、俺ンだ!俺のもんだァァァァァァ!!」
逃げ出そうとした怪人達の目にはそのグロテスクな姿があまりにも魅力的に映ったようで、逆に今度は我先にとアマイマスクめがけて駆け寄っていった。
目を血走らせ息を荒げ恍惚する怪人達の表情に、さしものマナコも気色悪さと困惑を隠せずにいた。
「(み、みんな一体どうしたんだ―――ひっ!!?)」
マナコの困惑をよそにソレは起こった。
アマイマスクの元まで駆け寄ったバクザン達。……そんな彼らを出迎えるようにアマイマスクの胴体から生えた口から更にあり得ない大きさの口が露出し、一気に彼らを丸呑みにしてしまったのだ。
「な、なんじゃこりゃあぁぁぁぁ!!?」
「嘘だろ!?イヤだ!イヤだァァァ!!」
「助けて母ちゃァァァァァァァァァん!!」
「は、はゎゎゎ……!」
ようやく正気に戻ったのか口の中で必死に藻掻き足掻くかつての仲間達。
「助け、て、たす、け―――」
最初は激しかった抵抗も徐々に弱まり、口の中で消化されたのかあっという間に影も形もなくなってしまった。
「………」チラッ…
「ひぃぃ、ひぃぃぃぃ!!?」
怪人サイドの生き残りは、マナコ一人。
迫るアマイマスク。
漏らすマナコ。
「(あ、終わった)」
自らの末路を悟った彼女が最期に耳にしたのは―――
〜〜♪〜〜♪〜〜♪〜〜♪〜〜♪
……携帯端末の着メロ音。
それも今売り出し中の『星の王様』のメロディーがアマイマスクのズボンのポケットから鳴り響いていた。
「誰からだ?……レイタロウ君!!?はいもしもし!」
電話の相手は誰かは分からないが、のっぺらぼうだった顔面はいつの間にかイケメン顔になっており、なんか物凄く嬉しそうというか尻尾でも付いてたらフリフリしてそうなくらいハイテンションになっている。
さっきまでの冷え切ったテンションとの落差に思わず風邪を引きそうだ。
『もしもしビュウト君、今そっちはどうなってる?』
「こっちには今さっきサキさんを連れ去ろうと屑どもがやってきてね、その殆どを駆除したところだ。一匹、もとい二匹は生き残っているな」
えっと思わず声が出そうになるマナコ。
もう自分一人しか生き残っていないはず―――
「■〜〜」
「ポ、ポチ様!!?」
……いた。というか生きていたポチ。
先程まで怪獣サイズだったのが大型犬サイズにまで縮小したものの確かにポチは生きていた。
「僕の失態だ。僕が責任をもって駆除するよ―――」
『ちょ、待って待って、その生き残ってる怪人達に敵意はあるの?』
「敵意―――ハッ!?僕としたことが大事なことを失念していた!!」
突然マナコとポチに向き直るアマイマスク。
その表情にはかつてないほどの真剣さが張り付いていた。
「キミ達、抵抗するかそれとも降伏するか、好きなほうを選び給え」
「こ、降伏します!お願いです命だけは……!」
「■■!」
「……嘘はないな。もしもしレイタロウ君、彼らに抵抗の意思は認められなかったよ」
『それは良かった。それじゃあ予定通り正午に決行するから、君を回収がてらその二体を協会に送り届けるよ』
「建前は重要参考怪人としてね。了解したよ」
『……君に身代わりを頼んで良かった。やっぱり最後に頼れるのは親友だね』
「っ〜〜〜、い、忙しそうだから切るよ!」ピッ
気恥ずかしそうに通話を切ったアマイマスクの表情には、隠しきれないほどの歓喜の花が咲き乱れていた。
余談となるが、今作戦におけるアマイマスクの働きは非常に多岐に渡っている。
〝親衛隊〟のまとめ役として、ヒーロー協会がカバーしきれない箇所をつつがなく補填し、一般人の迅速な避難やきめ細かい支援を行うことで混乱を最小限に留めたり、
キングに救われたあの日から、キングの力になるべく血反吐を吐くほどの努力を積み重ねることで肉体変形能力を肉体
肉体模倣能力。……一度視た相手の心身の状態を完璧に模倣し、自在に使いこなすことが出来るアマイマスクのみが到達した極致。
一度視たものであれば(アマイマスク自身の戦闘センスにも依るが)オリジナルより威力も精度も優れた技を、ほかの技と組み合わせて繰り出すという芸当も可能であり非常に応用性に富む。
その総合的な戦闘能力はA級の枠を大きく逸脱し、キングやブラスト、タツマキに比肩するレベルに達していると上層部から評価されている。
ちなみにキングの妻サキはヒーロー協会本部にて匿われている。そこら辺も抜かりないのだ。
「さぁキミ達!僕が協会本部までエスコートしよう!」
「は、はい!」
「■■!」
メチャクチャ上機嫌にスキップするアマイマスクの先導に従って急ぎ足で駆けるマナコとポチ。
「あ、あの〜、少し伺ってもいいですか……?」
「うん?なんだい?」
「さっき電話で正午がなんたらとか……一体何をするつもりで?」
「……あ〜、キミ達になら言ってもいいか!」
ニコニコ笑顔で口を開くアマイマスク。
その言葉を聞いたマナコは、自分がとんでもない幸運を引き当てちゃったことに驚愕を露わにした。
「正午ちょうどになったらキミ達のアジトにヒーロー総出で襲撃を仕掛けるんだよ!だいぶ向こうの戦力を潰せたはずだしキングの奥義が開幕で炸裂するかもしれないね!」
「うわぁ……」
というワケで、アマイマスク無双回です。
自分の愛妻を怪人にしようなどという糞共相手にキングさんはどう出るのか!?
次回『オロチ死す』乞うご期待!