キングと呼ばれる男が攻勢に打って出るって話です。
怪人協会壊滅RTAはっじまっるよー!
<<< 〝怪人協会〟 アジト >>>
午前11時55分、各地で勃発する怪人テロをもって華々しいデビューを飾るはずだった怪人協会は、かつてないほどのお通夜モードにあった。
「ゴウケツが、死んだ……?」
思わずそう呟き、膝から崩れ落ちそうになったがなんとか持ちこたえるギョロギョロ。
しかし、分身を介して見るゴウケツの死体とそのゴウケツ相手に勝利を収めたであろうヒーロー達の勝鬨を上げる姿はあまりにも衝撃的すぎた。
「(一人はS級ヒーローのシルバーファング、後の二人は……様子から察するにシルバーファングと同じ武術家か?ゴウケツを相手にしておきながら深手を負っている様子はない……)」
禿げ上がった鋭い目付きの老人と、さながら狼を彷彿とさせる白髪の青年がゴウケツの首無し死体を囲みながらシルバーファングとハイタッチを交わしている。
「(クソッ!ゴウケツ相手に渡り合えるのはキングかタツマキくらいだと見積もっていたが過小評価だったか!!……街の様子を見るにC市の怪人どもは全滅しているだろう……)」
居残り組の怪人達にも動揺が広がる。
「あのゴウケツがか?」
「ヒーローども強すぎね?」
「なんでこんなことに……」
「好きに暴れられるって聞いて来たのに……」
自分達はもしかしたら、沈没寸前の泥舟に乗ってしまったのかもしれない。
一度芽生えた疑念は染みのように瞬く間に伝播し、やがて恐怖となって心を蝕んでゆく。
これはさっさと逃げたほうがいいかもしれない。そんな及び腰な雑兵達を恐怖で律するように威厳ある声が響く。
「ギョロギョロ、キングの妻を拉致する計画はどうなっている……?」
怪人王オロチ 災害レベル【竜】以上
地球上にアレより強い化け物はいないとゴウケツから評価される怪人協会最強のボスにしてギョロギョロが育て上げた最高傑作が計画の進捗状況を尋ねる。
……そう、災害レベル【鬼】や幹部の殆どを使い捨てる勢いで今日の怪人テロに出向かせたのは、キングの家族を人質に取る計画のためであったのだ。
余談となるが、ギョロギョロが把握している範囲で戦闘不能あるいは死亡が確認された怪人達を列記していく。
・ヒトトリ草、ムカデ後輩、ラフレシドン、ムカデ先輩
S級金属バットにぶっ飛ばされ即死。
・ヘドロクラゲ
A級グリーンによって養分を吸われ枯死。
・サイレスラー
A級主将ミズキとニードルスターの連携によって脳天を貫かれ死亡。
・フェニックス男
グリーンの植物に絡め取られ拘束されている隙を突かれニードルスターにトドメを刺され死亡。
・大怪蟲ムカデ長老
金属バットに月までぶっ飛ばされ即死。
・シャワーヘッド、超マウス、イッカク
C級無免ライダーと交戦。予想以上の抵抗を受けて重傷を負い、最期はバキューマに吸収される。
・バキューマ
上記三体を吸収したパワーアップ状態で無免ライダーと交戦。あと一歩のところまで追い詰めるが、覚醒した無免ライダーのキックを受けて跡形もなく爆死。
・電気ナマズ男、舞妓プラズマ
A級雷光ゲンジとの交戦の末、撲殺される。
・マーシャルゴリラ
A級ヘヴィコングに闇討ちされ死亡。
・弩S
A級ダークネスブレイド、デスガトリング、
・百々目蛸
〝フブキ組〟の連携によって圧死。
・ガンリキ
A級イアイアンに首を刎ねられ即死。
・エビル天然水
S級戦慄のタツマキの超能力によってあえなく消滅。
・魔ロン毛
同じく戦慄のタツマキに捩じ切られ即死。
・デストロクロリディウム
ヒーロー協会の警備に当たっていたA級ギアスパーによって誰にも寄生することなく圧死。
・拳闘魔人
A級スマイルマンと激闘の末敗北、戦死する。
・フリーハガー
〝タンクトッパー〟の猛撃を受け敢え無く死亡。
・カオハギ
白髪の青年(ヒーロー名簿に載っていないため恐らくボランティア)と交戦。攻撃をことごとく受け流された末致命の一撃を受けて死亡。
・蟲神
S級超合金クロビカリに殴られ即死。
・ダイショッカン
自警団〝ハンターズ〟との交戦の末敗北、戦死する。
・バンパイア(血統書付)
S級ゾンビマンと交戦。全身から血を噴き出して死亡。
・ハグキ
S級タンクトップマスターと交戦。意味が分からない。
・ニャーン
S級ぷりぷりプリズナーと交戦。ネコにされた。
・三羽ガラス
禿げ上がった老人(こちらも恐らくボランティア)に輪切りにされ死亡。
・ゴウケツ
S級シルバーファングと二名の協力者の手のよって死亡。
……これだけの犠牲を払って何の成果もなかったなどあり得ない。あってはならない。
「そうだぜギョロギョロ〜、ブサイクやポチまで連れ出したんだから上手くいってなきゃおかしいよな〜?」
「むしろあの二人では殺しかねんがな」
黒い精子 災害レベル【竜】
ホームレス帝 災害レベル【竜】
怪人協会のツートップを飾る最上級の怪物達が嘲笑混じりにギョロギョロをからかう。
例えキングが相手であろうと自分が勝つと信じて疑わない傲慢なまでの自信に満ちあふれている故に、計画がどう転ぼうと実害はないと踏んでの態度なのだ。
余裕綽々な一部の強豪怪人達に内心苛立ちを覚えながらも、どうにか激情を抑えてギョロギョロは計画の進捗について答える。
「……ヒーローどもが予想以上に強かったことは認める。だが最後に笑うのは我々だ」
「ブサイク大総統やポチはあくまで時間稼ぎ。本命であるあの忍者コンビならば必ずキングの妻を連れてきてくれることだろう」
「(……これでいいはずだ。怪人であるキングを怪人協会に招き入れる、そのための餌としてキングの妻を攫う、そのために多大な犠牲を払ったがこれでいいはずなんだ―――)」
「(……なのに何故、胸騒ぎが収まらない?)」
「ギョロギョロ」
「……はい!?なんでしょうオロチ様」
「計画とやらは失敗だな。……上だ」
そこでようやく理解した。……胸騒ぎの正体を。
「……おいおいおい、嘘だろぉ……!?」
冷たい刃に背筋をなぞられるような感覚を覚え、ドッと冷や汗を流す黒い精子とホームレス帝。
自分のものではない
「……キ、キングエンジン……!!」
アジトを揺らしながら高らかに鳴り響く爆裂音。
徐々に勢いを増すその爆裂音に、ギョロギョロはふと
……それは、
「……ふっ、もはや怪人協会などどうでもよくなってきたな。面白い、受けて立とう……!」
「えっ、オロチ―――ぐはァァァァァァ!!?」
突如として雑兵や幹部、そしてギョロギョロめがけて無数に枝分かれした頭のツノを伸ばし突き刺すオロチ。
誰一人余すことなくツノを突き刺したオロチは順番にソレらを自らの口元にまで近付け―――捕食する。
「や、やめろー!俺を食うバクッ
「いやだー!ママー!マムチャッ
「私は美味しくないやめろオロボリッ
「畜生!なんで分離できねモチャッ
雑兵はおろか幹部であるホームレス帝や黒い精子を淡々と容赦なく捕食するオロチの姿に、腹部を串刺しにされたギョロギョロは激痛とともに困惑した。
「オ、ロチ、なぜ……?」
「ハハハ、これは素晴らしい!恐ろしいほどのエネルギーが流れ込んでくるぞォォォォォォ!!!」
死に体のギョロギョロを放置してオロチは、ホームレス帝を食らったことで無限とも言える凄まじいエネルギーを獲得したことに至上の喜びを噛み締めていた。
……同時に、そのエネルギーの出どころである〝神〟との邂逅を果たしたことで、彼は天命を悟るに至る。
「この力をもって私は、地球上の全ての生物と融合を果たし、やがて星一個の完全な生命体となる。キングを抹殺することで我が天命は成就されるのだ!」
<<< 怪人協会 地下1,500m >>>
「なんて、ことだ……!!」
グロテスクかつ巨大な怪物が保管される広大な地下空間で、ギョロギョロの本体であるサイコスはオロチの裏切りにひたすら驚愕を露わにしていた。
ギョロギョロの視界を通じて見る光景はまさに地獄絵図。
オロチが無数に伸ばしたツノによって一人また一人と怪人達が貫かれ引きずられ口元まで運ばれ咀嚼される。
アジト内で生き残っている怪人はもはや数えるほどしかおらず、全滅はもはや時間の問題であった。
「ここにもすぐにオロチの魔の手が迫る。怪人協会はもう終わりだ―――クソッ!せっかく苦労して築き上げてきた私の全てがこんなところで……!!」
「ぐはっ!!?」
逃げ支度を行おうとソファーから移動しようとした刹那、目にも止まらぬ速度でオロチのツノが迫り、サイコスの腹部を抉り貫いてしまった。
これにはたまらず吐血するサイコス。
『……サイコス、お前には感謝しているのだ。お前がせっせと生贄を捧げてくれたおかげで、私は限りなく完璧に近い生命体に成ることができたのだから』
恐らく捕食したギョロギョロから得た超能力を使ってテレパシーを送っているのだろう。
脳に直接響くその声色は不気味なくらいに弾んでいた。
「や、めろ、やめ、て……!」
『褒美だ、お前には死の苦痛ではなく私と一つになる快楽を与えてやろう』
「あ――――――」
ツノを通じてオロチの怪人細胞を過剰に注入される。
自分が自分でなくなる恐怖と大瀑布の如く押し寄せる快楽によって瞬く間に理性を破壊された彼女は、自分が何者であったのかも忘却し、オロチの中に溶けて逝った。
「まだだ、まだ足りぬ……」
保管されていた自分の後継やサイコスを食らってもまだ足りないと、ツノを更に下へ潜行させるオロチ。
……かつて、地底深くに眠っていた遺跡の壁画に描かれていた古代文字。
読めるはずもないその文字を解読したことが、ある意味オロチの始まりだったと言っても過言ではない。
「そう急くなキング。お互い全力で殺り合わねば張り合いがなかろう?」
そしてツノは地球の内核へと到達した。
「雑多な怪人どもを吸収して自身を強化し、ダメ押しに地球のエネルギーを汲み上げお前にぶつける。これが最初で最後だキング、食らうがいい―――」
自らの肉体を砲台そのものとし、ソレを発射する。
地上に向けて放たれた必殺光線。これを食らえば例えキングであろうと無事では済まな―――
<<< Z市 ゴーストタウン >>>
……はぁ、午前11時55分、なんとか突入一歩手前まで漕ぎ着けたなぁ……。
瞬間移動ありきの強引すぎる作戦だったけど、それもようやく終わりだ。
『こちらチャイルドエンペラー、配置が完了しました。いつでも突入できます』
「こちらキング、了解した。合図があるまで待機してくれ」
『こちらチャイルドエンペラー、了解です!』
……ふっ、ホント便利だなこの発信機。
発信機能だけじゃない、通話も出来るし何ならゲームアプリもある。これだけで従来の携帯端末が不要になるくらいなんだから相当だよなぁ。
後で貰えないかイサム君に聞いてみるか。
……あっ、俺はキングですはい。
今ちょっと
『おぅキング、ワシじゃ』
「こちらキング―――どなた?」
『お師匠、名前を言わないと分かりませんゆえ』
『おっとそうじゃったそうじゃった。……ワシじゃよワシワシ、ニチリンじゃよ。剣聖会の』
……〝剣聖会〟の人かぁ。確かアトミック侍が所属しているところだったな。何の用だろ?
「ニチリンさん、いったい何用で……?」
『いや何、弟子のバネヒゲを鍛えてくれた礼を言ってなかったんでの、言える時に言っておきたかったんじゃ』
「……礼を、言われるほどの、ことじゃ―――」
『まぁ礼はあくまで建前での、こっからが本題じゃが剣聖会も〝強化訓練〟に参加させてもらうぞい』
「…………………………えっ(汗)」
『勿論総出での。若い衆も連れてくるから楽しみにしといてくれ。ではの』
「えっ、ちょま―――」
……切りやがった。
おいおい勘弁してクレヨン、ただでさえA級三剣士で手一杯だって言うのにそれ以上の剣士が襲いかかってくるってこと?……うあぁぁぁぁ最悪すぎるぅぅぅ!!
……とはいえね、とても文句を言える立場じゃないんですよ。何せ大陸の規模に反して
でもね、こんなに外野の強者達が怪人退治のボランティアに名乗りを上げてくれるなんて思いもしなかったのよ。
日頃の行いのおかげ―――は流石に言いすぎかもだけど、ホントありがてぇ話。
さっき言った剣聖会を初め、腕に覚えのある高名な武術家や自警団の方々、相撲取り、クロビカリさん主催のボディビル会員の方々、傭兵集団、謎の宗教団体等、それはもう善意ある強き一般人が大勢集ってくれた。
怪人協会のアジトをぐるりと包囲するのだって手伝ってくれてる。……そこは流石に
『こちらジェノス、師匠聞こえますか!?』
「こちらキング、どうしたのジェノス?」
『異常事態です!アジト内部で測定不能なまでの高エネルギー反応を検知しました!』
……マジでぇ?
聴覚を『気』で強化してよ〜く聞いてみる。
……え、仲間割れ?敵のボスが味方を食ってるよ……?
あんなにバリボリ食って何を―――は?狙いは俺?
……………………。
「こちらキング、総員に告げる。狼煙を上げる。以上」
『えっ、分かりま―――』
ごめんねイサム君、今は君の話聞いてあげられないや。
俺を狙った攻撃が発射されるのよ、それも今すぐ。
殺らなきゃ俺が殺られちゃう。
うぉっ!?……このタイミングでこの揺れは偶然じゃないよな!?急がないと……!!
全身をくまなく巡る『気』を急速回転させ、圧縮。
圧縮した『気』を更に回転させ圧縮。これを繰り返す。
……限界ギリギリ、暴発寸前にまで圧縮した『気』を喉元までせり上げ―――
……荷電粒子砲みたく、アジトめがけて発射した。
ん?それだとZ市が無くなる?周辺の被害を考えろ?
ダイジョブダイジョブ、標的の選別くらいお茶の子さいさいですよ。無人街もアジトも傷一つ付けりゃせん。
俺が消し飛ばすのは怪人だけさぁ。
「(えっ……?)」
オロチはひたすら困惑する。
……同じ怪人を食らい、地球のエネルギーを汲み上げ、全力で撃ち放った必滅の極光が―――
……白く輝く一筋の光の柱に貫かれ粉微塵に砕けてゆく。
「(いや、光線だぞ、なんで
オロチの疑問を他所に、あっという間に白光の熱線は彼の肉体に直撃する。
ロクに抵抗できぬまま熱線を食らい、熱線を浴びている箇所から急速に肉体が蒸発していく。
「(バカな、私は、カミに―――)」
地獄の如き激痛と圧倒的格差を見せつけられた屈辱を抱え込みながら、オロチはオロチだったものの痕跡を一片も残さずに完全消滅した。
「……やばすぎだろキング。無理無理勝てねーって」
オロチの凄惨な最期、そしてキングの異常な強さの一端を見てしまった黒い小人は滝のような冷や汗を流しながら足早にアジトを後にする。
彼にはもはや抵抗する力も意志も残されてはいなかった。
正午ちょうど、怪人協会は壊滅する。
大規模怪人テロ発生から5時間経ってのことである。
……終わったかな?終わったよね?
耳を澄まして聞いてみよう。……うん、大丈夫そうだな。
「変身解除っと……」
……ふぅ〜、やっぱりヒトの姿のほうがいいぜぇ。
イヤまぁ俺ヒトなんだけどさ。
おっとそうだ、一応皆にも連絡しとかないと―――
「こちらキング、総員に告げる。狼煙を上げた。繰り返す。狼煙を上げた」
『こちらジェノス、了解しました。これよりモグラ叩きに移行します。……師匠、お疲れ様でした』
「ここからが正念場だジェノス。気を抜くなよ」
『はいッ!』
……ふふっ、なんかカッコいいよね。狼煙を上げるだとかモグラ叩きだとか。
まぁモグラ叩きって残存敵勢力の掃討なんだけどね。
人の嫁を怪人にしようとする連中だからね。放っておいたら何するのか分かったもんじゃない。
しょうがないよね、ぶっ潰―――ぶっ殺さなきゃこの激情は抑えられないからね……(怒)
『ちょっとキング!これは一体どういうことよッ!!?』
「っ〜〜〜タツマキか、一体全体なんだ……?」
も〜〜なんなの一体!?
発信機越しに大声は勘弁してよぉ!!
『アジトの中をちょちょっと探索してたら眼鏡をかけた真っ裸の女が倒れてたのよ!?ワケが分からないわ!!』
「…………………えぇ?」
……どゆこと?
もし皆さんが私の次回作を読みたい!ってなった時、三つの案があります。
A.レイタロウ、異世界に行くってよ。
B.完全新作を書け、あくしろよ。
C.お前才能ないよ、船下りろ。
……突然ですが次回で完結にします。
一つの区切りとしてちょうどいいので。