ワンパンマン:REY【完結】   作:びよんど

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キングと呼ばれる男にだって悩みはあるよって話です。

今回も割と長めです。


三王目 王の苦悩

 

 

泣きたい。……ていうかヒーロー辞めたい。

 

何でこんな事になっちゃったんだろォォォォォォ(泣)

 

……きっかけはおそらくあの時だ。とある日、協会本部内にて童帝、いやイサムくんが項垂れているところを見かけた時だろう。

 

あまりの憔悴ぶりに無視することもできなかったため、つい声をかけてしまった。……それが始まりだった。

 

 

「…………どう…した……?」

 

グスッ……ハッ!キングさんすみません!お見苦しいところを……」

 

「何か…あった…のか……?」

 

「うぇッ!?そ、そんな事は……」

 

「……………………………………」

 

 

ごめん、会話続かないねぇ。よっぽど馴れ馴れしい間柄じゃないと会話もロクにできないなんて、俺はどう考えてもダメな大人だぁ……。

 

 

「じ、実は昨日、久しぶりに学校に行ったんですが……」

 

 

どうやら話してくれるらしい。ヤッタネ!

 

イサムくんの話を要約すると、同級生に自分のヒーローネームをバカにされ、そこで初めてドーテーの意味を知ったとのこと。

 

……嗚呼、いつかバレるとは思っていたけれど、()()()()()()()()()()()()自分のヒーローネームの意味を知ってしまうなんて……。

 

原作を読んでいれば分かると思うが〝ヒーロー協会〟の腐敗ぶりは設立されてから僅か三年しか経っていないとは思えないほどに酷い。……腐ったミカンのバーゲンセールって奴だな。

 

その中でも地味ながらタチの悪いものがヒーローネームである。

 

 

戦慄のタツマキ

 

シルバーファング

 

 

……などはまだ良いほうで、

 

 

よっぱらい

 

どすけべ

 

ハゲマント

 

 

……なんていう明らかな蔑称を付けることがままある。

 

たかがコンプレックス、されどコンプレックスで人間が怪人化するような世界観なのに現場で命を懸けているヒーロー達を侮辱するようなヒーロー協会のスタンスには多少なりとも不満はある。……不満はあるが、言えるわけがない。言える度胸がない。

 

 

「(一社会人(いちヒーロー)でしかない俺が、いわば大企業のトップ達に意見するなんて即左遷ものの暴挙だよぉ。……でも流石に)酷いな……」

 

「だ、大丈夫です!ヒーローがヒーローネーム程度で落ち込んでたらヒーローなんて務まりませんから!」

 

 

精一杯の作り笑い(虚勢)

 

身の丈に合わない重責を大人から背負わされ、それなのに理不尽(ブラック)な仕打ちを受けている。……聞けば学校にもロクに通えていないというじゃないか。

 

いくら天才といえどこのままでは目の前の天才少年は()()()しまう。

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

「え……?キングさん……?」

 

「……イサムくん…上層部と…話し合おう……俺も…一緒に…行く……」

 

「え、え、今からですか!?」

 

「……俺では…大した力に…なれないと…思うが……見過ごす…ことは…できない……」

 

「待って!待ってください!!僕は本当に大丈夫ですから!」

 

「心配…ない」

 

「ふぇ……?」

 

〝正義〟は…俺達に……ある……!」

 

「キ、キングさん……」

 

 

未成年(小学生)に労働させている時点でアウトなのだ。ヒーローネームの件も含めて問い詰めればこっちのお願いも少しは聞いてくれるかもしれない。

 

それに俺は、自分のヒーローネームに名前負けしているような気がして今すごくプライドがズタボロなんだ。まぁ、元々プライドなんてあってないようなものだったが、イサムくんと同じように俺に対しても悪ノリを暴走させた可能性だってあるんだヒーロー協会は!

 

許せねぇ……!

 

……そうだ、今の俺に必要なのは揺るぎない〝怒り〟と頼れる〝同胞〟

 

迷う時間すら惜しい、後は当たって砕けるのみ!!!

 

 

「……ヒーローの時間だ………!」

 

「っ、はい!」

 

 

道中は手を繋ぎながら歩いた。やっぱり怖いものは怖い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言って上手くいった。……上手くいきすぎた。

 

 

「非道帝というのはどうでしょうキングさん!?」

 

「……チャイルドエンペラー…で……どうだ……?」

 

「チャイルドエンペラー……すごく、すごく良いですキングさん!!」

 

 

イサムくんからの尊敬の眼差しが止まない。

 

上層部の人達には正直言い過ぎたなぁとちょっぴり反省している。……ついさっきのことが思い起こされる。

 

 

<<< 数時間前 ヒーロー協会 幹部会議 >>>

 

 

「……見た感じから彼のヒーローネームはデカッ鼻

 

「これで彼も新人から一人前のヒーローになったようなもんだ」

 

「ヒーローネームはヒーローを目指す者達にとっては憧れのようなもの。聞いたら喜ぶだろうな。ほっほっほっ」

 

「デカッ鼻の今後の益々の働きに期待しましょう」

 

「(……ちっ、こんなどうでもいい命名に1時間も談笑しおって……!真に優先すべきヒーロー強化会議は10分もかけずに終わりだ……!)」

 

 

『心配はいらんよシッチ』

 

『ヒーロー協会にはブラストやタツマキ―――……』

 

『……なによりキングがいる』

 

『あの脅威を飼い慣らせている間は我々(人類)の安全は絶対だ』

 

『『『『 異議なし 』』』』

 

 

「(低能楽観主義者どもめ……!そのキングを上回る脅威が襲ってきたとして同じ戯言が吐けるのか……!?)」

 

 

シッチは非常に苛立っていた。あまりに危機管理能力が欠如した幹部(低能楽観主義者)どもに対して。

 

年々凶悪化している怪人災害を前に負傷、あるいは敗走を余儀なくされているヒーロー達は決して少なくない。

 

そんなヒーロー達をサポートするのがヒーロー協会の本分であるはずなのに御覧の体たらくだ。……ハッキリ言って、現場で命を懸けているヒーロー達の足を引っ張ってしまっている。

 

ただ足を引っ張るだけならまだマシなほうで、中にはヒーローを侮辱する者までいる始末。

 

この命名などが最たるものだ。

 

 

「(誰がデカッ鼻と言われて喜ぶ?そんな事も想像できんのかコイツらは……!)」

 

 

時間の無駄だった。こんな下らない連中に苛立つ自分がバカみたいだ。さっさと自分の仕事に戻ろう―――……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……としたその時だった。突然、会議室内に爆裂音が響き渡ったのだ。

 

 

「これにて会議を終―――……へ?」

 

 

誰も彼も何が起きたのか理解できていない。……いや、()()()()()()()と言ったところか。

 

出入口の前。……そこには、キングエンジンを鳴り響かせる()()()(キング)が立っていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(へ?何この空気?すんなりとお通しされたからてっきり向こうもこっちの動向を把握しているものとばかり思ってたけど?……うっ、たくさんの人に見られると人見知りが発動してぇ……)」

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

「(さ、さっさと用件を済まして帰ろうッ!)……会議中…に…失礼……する……」

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

「キ、キング。何故君がここに……?」

 

「(あの人は確か……)……シッチ…さん。忙しい…ところ……大変……申し訳…ない。……今日は…皆さん……に…大事な…話が……あって…来た」

 

「大事な話……?それは一体……?」

 

「(頑張れ、俺ガンバレ!)……ヒーロー…ネーム……に…ついて」

 

「っ!?(今まさにやっていた……しかし何故いま………?)」

 

「結論…から……言おう。……時と…して…悪口の……ような…命名を…する…その……真意を…問いたい」

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

「「「「 ッッッ?!??! 」」」」

 

 

いつもなら怪人に向けられるはずのキングエンジン。それがいま突き刺さらんばかりに自分達を襲っていた。

 

気を失っている者はいない。……()()()()()()()()()()()()そう言わんばかりだ。

 

キングの真剣さが伝わってくる。

 

 

「ここに…いる…童…イサム…くん…は……学校…にも…ほとんど……通えず…協会の…人類の…ために……命を…削って…働き…続けて…いる」

 

 

ドッドッドッドッドッドッドッドッ

 

 

「大人…達に……代わって…だ。……そんな…イサム…くんを……ヒーロー…として……心の…底から…尊敬……する」

 

 

何も言えない。まるで自分の罪状を読み上げられているような、親に叱られる子供のような心持ちだ。

 

キングへの畏怖と、自分自身の怠慢、幼稚さを突き付けられ、否定の言葉を吐くこともままならない。

 

 

「イサム…くんは…自分の……ヒーロー…ネームに…酷く…ショックを……受けて…いた。……イサム…くん…だけでは…ない。……自分に…付け…られた……ヒーロー…ネームに……影で…苦悩…する……者は…必ず…いる」

 

 

ゆえに、とキングは言葉を紡ぐ。

 

 

「皆さん…に……悪意は…ないの…かも…しれない。……知って…おいて…ほしかった。……皆さんの…選択……一つで…ヒーローを…生かす……ことも…あれば……殺す…ことも……できると…いうことを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脅威(キング)は去った、少年(イサム)を連れて。……だというのに、全員その場から動けない。

 

彼らの頭にこびりついて離れないキングの言葉。

 

 

『選択一つでヒーローを生かすこともあれば殺すこともできる』

 

 

ちょっと前までの自分達はまさしくこども(最強の存在)であった。地上最強の男を飼い慣らし、その脅威を我が力の如く振るう妄想で悦に浸る、そんな程度のこども(最強の存在)だ。

 

……知る由もなかった、真の最強を。……思い知らされた、真の脅威を。

 

良くも悪くも夢から覚め、彼らは大人(凡人)へと成長した。

 

 

「……もう一度、最初から話し合おう。子供ばかりに頼っては、大人の立つ瀬がない」

 

「……ヒーローネームの件については流石にふざけすぎていた。現場で戦うヒーロー達の意見を積極的に取り入れよう」

 

「デカッ鼻なんて呼ばれても、喜ばんだろうなぁ」

 

「シッチ君、ヒーロー強化計画について、もっと詳しく説明してもらえるかね?」

 

 

空気が、変わった。

 

シッチは改めて思い知らされる事となった。……キングが(キング)と呼ばれるその所以を。

 

脅威的ともいえる強さもさることながら、人心を掴んで離さない常軌を逸したカリスマ性、苦しむ民草(ヒーロー)のために本気で悲しみ激怒する心優しさ、どれを取ってもまさに王。

 

……ヒーローの王だ。

 

 

「っっ、はい!それでは改めて説明します……」

 

 

まだだ、キングのおかげで取っ掛かりはできたが、それでようやくスタートラインに立てたに過ぎない。

 

シッチほか良識ある協会職員達の戦いはまだ始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<<< 後日 ヒーロー協会本部 >>>

 

 

「(うぅ、頼むぅ!俺だけは当てないでぇ……)」

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

「っっ、キングさん!引き受けてくれるんですね!!」

 

「(こんちくせう、どうしてそうなるぅ……!)」

 

 

童帝改めチャイルドエンペラーと新たに命名(俺発案)されたイサムくんによってS級ヒーロー達が招集された。

 

呼ばれた理由を簡潔に言うと、後進の育成のために一肌脱いでというものだ。

 

その要請に対しほかのS級達の反応は芳しくなかった。教えるのが下手、秘密主義、興味ない等々……中々に薄情な面子だ。

 

 

「(そんな俺も薄情なワケなんだけどね。いやいや、今日に至るまでずっと筋トレぐらいしかしていないほぼズブの素人に教えられることなんてそんなにないよぉ。ハハハハハハ……)」

 

 

そんな時だった。イサムくんがこっちを見た。……まるで捨てられた子犬のような瞳だった。

 

 

「(………………………………………や、やめてぇ。

俺をそんな目で見ないでぇ。心が痛むぅ……)」

 

 

ほかのS級達も俺を見る。様々な視線に晒される……。

 

最終的に引き受けることとなった。ちくせう。

 




次回あたりからあの弟子が出てくるかも?

強化訓練後の感想↓

キング「こっちは素手でやってんのに向こうは平然と凶器を振りかざしてくるのヤバすぎワロタ」
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